カテゴリー: 晩春
季語|花梨(かりん)
季語|榲桲の花(まるめろのはな)
晩春の季語 榲桲の花
バラ科マルメロ属マルメロは、「西洋かりん」とも呼ばれる落葉高木で、4月頃に芳香のある白やピンクの花を咲かせる。秋の季語になる「榲桲(まるめろ)」は、10月頃に収穫される実で、ジャムなどに加工する。中央アジア原産で、日本には1634年に長崎に入った。
ポルトガル語でマルメロの実を指す「Marmelo」が、そのまま日本でも使われ、「まるめろ」と発音するようになった。この「Marmelo」は、ママレードの語源にもなっている。
かりんに似た実がなることから、「西洋かりん」の別名があり、地方によっては「かりん」とも呼ばれるが、本来の「かりん」はバラ科カリン属の植物になるので注意を要する。
【榲桲の花の俳句】
まるめろの花咲き家の主かはる 加藤塔陵
季語|アネモネ
晩春の季語 アネモネ
アネモネは、キンポウゲ科イチリンソウ属の多年草で、牡丹一華(ぼたんいちげ)、花一華(はないちげ)とも呼ばれる。アネモネ属は約100種が知られているが、一般的には園芸種のアネモネ・コロナリアを指すことが多い。
地中海沿岸原産で、明治初期に渡来した。3月から4月頃に赤白青紫などの花を咲かせる。
アネモネは、ギリシャ語の「風(anemos)」が語源になっている。ギリシャ神話には、西風の神ゼピュロスが恋したのが妖精アネモネだったとされる。また、愛を象徴する花でもあり、女神アフロディーテが恋した美少年アドニスが、戦神マルスの嫉妬の牙にかかり亡くなった時、アフロディーテの涙から咲いたともされる。
【アネモネの俳句】
アネモネはしをれ鞄は打重ね 高浜虚子
季語|樫の花(かしのはな)
季語|ヒヤシンス
晩春の季語 ヒヤシンス
ユリ(キジカクシ)科ヒヤシンス属ヒヤシンスは、「ヒアシンス」とも書く球根性多年草で、ギリシャ地方原産。水栽培でも馴染み深く、秋植えすると3月から4月頃に香りのよい花をつける。
オスマン帝国で園芸化され、16世紀頃にヨーロッパに広がり、数千もの園芸品種がつくられた。園芸品種には、花をたくさんつけるダッチ・ヒヤシンスと、ややまばらなローマン・ヒヤシンスの2系統がある。
日本には、江戸時代末期の1863年にフランスから渡来した。当初は、西洋の発音に合わせて「飛信子(ひやしんす)」「風信子(はやしんす)」の字が当てられた。
ヒヤシンスの語源は、ギリシャ神話の美青年ヒュアキントスにある。太陽神アポロンと円盤投げに興じていた時、嫉妬した西風の神ゼピュロスが風を起こしたために、円盤が頭に当たって亡くなった。その時、血に染まった草の中から咲いたのがヒヤシンスだったという。このことから、「悲しみを超えた愛」の花言葉を持つ。
【ヒヤシンスの俳句】
銀河系のとある酒場のヒヤシンス 橋閒石
季語|蚕豆の花(そらまめのはな)
季語|杏の花(あんずのはな)
晩春の季語 杏の花
バラ科サクラ属アンズは、中国原産の落葉小高木。桜よりやや早く、3月から4月頃に開花する。「杏」として夏の季語になる実は、生食したり、ジャムなどの加工食品にする。
日本では古くは「唐桃(からもも)」と呼ばれ、奈良時代に唐から渡来したと考えられている。漢名であった「杏子」の唐音「あんず」が、そのまま日本でも用いられたと言われている。俳諧歳時記栞草(1851年)では、春之部三月に「杏花(あんずのはな・からもも)」として立項されている。
英名ではアプリコットである。近世まではアルメニアが原産地であると考えられていたため、学名は「Prunus armeniaca」である。
実は、杏仁などと呼ばれる生薬になる。神仙伝(古代中国)に、廬山の董奉が、金を受け取る代わりに貧乏な患者に杏の木を植えさせたという話がある。見事な杏の林ができ、自ら董仙杏林(とうせんきょうりん)と号したところから、「杏林」は医者の美称ともなった。
【杏の花の俳句】
しをるるは何かあんずの花の色 松永貞徳
季語|山桜桃の花(ゆすらのはな)
晩春の季語 山桜桃の花
「山桜桃の花」は、バラ科サクラ属ユスラウメの花で、3月から4月頃に咲く。中国原産で、江戸時代初期に渡来したと言われ、俳諧歳時記栞草(1851年)には「桜桃花(ゆすらのはな)」として春之部三月に分類されている。ただし、現代では「桜桃の花」というと、サクランボを指すことが普通である。
ユスラウメの花は、「ウメ」とはいうもののサクラに似ており、中国で生まれた「櫻」の漢字は、もともとこのユスラウメに当てられたものだとされている。語源には、移植を楽しむ意のある朝鮮名「移徒楽(いさら)」からの転訛説や、梅と実のなる時期が重なり、木をゆすって収穫するために「ユスラウメ」の名がついたとの説などがある。
【山桜桃の花の俳句】
日あたりてぬくき素足やゆすら咲く 日野草城
季語|銀杏の花(いちょうのはな・ぎんなんのはな・ぎんきょうのはな)
晩春の季語 銀杏の花
イチョウ科イチョウ属イチョウは、生きた化石とも言われる世界最古の樹木種で、中国原産の一種のみが知られている。ただ、変種としては94種がある。日本へは15世紀頃に渡来したとの説が有力である。
裸子植物で雌雄異株。4月から5月頃に開花するが、目立たない。雌花はむき出しの胚珠を2つつけ、雄花(画像)は房状になる。風媒花である。尾花にできた花粉は、風に乗って1キロメートル以上飛散する。雌花の先に付着した花粉は、約5カ月後に精子となり、卵まで移動して受精する。
中国語の「鴨脚」の発音をまねて、日本では「いちょう」と呼ぶようになったとする語源説がある。また、「一葉(いちよう)」が語源との説もある。
【銀杏の花の俳句】
銀杏の花や鎌倉右大臣 内藤鳴雪