俳句

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星野立子 

しんしんと寒さがたのし歩みゆく 
鞦韆に腰かけて読む手紙かな 
囀りをこぼさじと抱く大樹かな 
芍薬の芽のほぐれたる明るさよ 
美しき緑走れり夏料理 
草笛の子や吾を見て又吹ける 
薔薇の香が今ゆき過ぎし人の香か 
新涼や起きてすぐ書く文一つ 
所望して小さきむすび夜食とる 
この先はいかなる処紅葉狩 
聞き伝へ語りつたへて震災忌 
門火焚き終へたる闇にまだ立てる 
暁は宵より淋し鉦叩 
銀杏を焼きてもてなすまだぬくし 
障子しめて四方の紅葉を感じをり 
子の摘める秋七草の茎短か 
女郎花少しはなれて男郎花 
日の温み障子いよいよましろなり 
息白く恐れげもなく答へたる 
かみしめて切山椒の香ぞあまき 
皆羽織ぬげば春着や並びけり 
初笑ひたしなめつつも祖母笑ふ 
繭玉の静かに高し炉の人に 
秋灯を明うせよ秋灯を明うせよ 
濃き秋日何かたのしくわからなく 
つんつんと遠ざかりけりみちをしえ 
いくたびも秋篠寺の春時雨 
ままごとの飯もおさいも土筆かな 
水澄むやとんぼうの影ゆくばかり 
雨又も降りきし花火つゞけ打つ 
残暑とはかかる日のこと庭を掃く 
落ちかかる葉先の露の大いさよ 
下萌えぬ人間それに従ひぬ 
車窓より瀬戸の島山春隣 
春眠のこの家つつみし驟雨かな 
紙とんでゐしにはあらず仔猫かな 
子の瞳遠くを眺め風車 
春寒し赤鉛筆は六角形  (露の世)
雛飾りつゝふと命惜しきかな 
大原女の荷なくて歩く春の風 
たはむれにハンカチ振つて別れけり 
摘草にくたびれし子の無理をいふ 
冷淡な頭の形氷水 
ばたばたと夕風強き日除巻く 
誰も来よ今日小正月よく晴れし 
若水にざぶと双手やはしけやし 
旅衣花衣ともなりながら 
梅雨の人コートをぬげば服白き 
鮓桶の塗美しき燈下かな 
帯しめて心きまりぬ汗もなし 
この門をくゞりし記憶春の雨 
秋風のどこにも吹けり竜飛崎 
梅雨冷や坐し静まりし身ほとりに 
夏の朝よく歩きしと戻り来し 
日もすがら卯の花腐し茶を淹るゝ 
滝見茶屋大鉄瓶のたぎりをり 
この窓に燕見しは今朝のこと 
水底にまがり立ちをり浮人形 
目高ゐるとのぞきゐる子にまだ見えず 
蛭のゐる処ときけど渉る 
見おぼえの山百合けふは風雨かな 
小説はかなしきものよ絹糸草 
先にゆく人すぐ小さき野路の秋 
庭に出て線香花火や雨あがり 
ふなべりに得し菱の実を並べつゝ 
紫の数かちゆきぬスヰートピー 
一歩ゆき一歩もどりて丁字の香 
一村は杏の花に眠るなり 

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