黄水仙(きずいせん)

仲春の季語 黄水仙

季語ヒガンバナ科。南ヨーロッパ原産。江戸末期に渡来。
水仙は晩冬の季語であるのに対し、黄水仙は春の季語。

ギリシャ神話には、よく知られたナルキッソスの他に、黄水仙にまつわる物語もある。それによると、ベルセポネに恋をした冥界の主ハーデスがベルセポネを誘拐した時に、落ちた白いスイセンが黄水仙になったという。

▶ 関連季語 水仙(冬)

わがままのとほるさびしさ黄水仙  宮澤映子

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燕(つばめ・つばくら・つばくろ・つばくらめ)

仲春の季語 

燕来る(つばめくる)初燕(はつつばめ)飛燕(ひえん)

季語燕は、スズメ目ツバメ科ツバメ属に分類される。3月頃から南方より飛来し、4月頃に巣作りを始める。
ツバメは、前年と同じ巣に帰ってくる確率が高いことが分かっているが、必ずしも同じペアで育雛するとは限らない。5月頃から数回に渡って繁殖を行い、8月頃まで育雛が見られる。孵化から巣立ちまでに要する日数は、約20日。
七十二候には、玄鳥至(つばめきたる)と玄鳥去(つばめさる)があり、4月上旬と9月下旬に当たる。なお、南日本では越冬するものも存在し、「越冬燕」と呼ばれる。

日本では、稲の害虫を退治してくれるため、古くから大切にされてきた鳥で、家に巣をつくると縁起が良いと言われている。古くは、雁と入れ替わりに、常世からやってくると言われ、万葉集には大伴家持の歌が載る。

燕来る時になりぬと雁がねは 国おもひつつ雲隠り鳴く

繁殖期のオスのさえずりは、「土食て虫食て口渋い(つちくてむしくてくちしーぶい)」と聞きなす。「燕が低く飛ぶと雨が降る」とも言われるが、これは、雨が降る前に、餌である昆虫が低く飛ぶからである。
古くから親しまれてきた鳥だけに、文化面にも大きな影響を及ぼしている。そのひとつに、最上級の礼服である燕尾服があるが、勿論のこと、燕をまねてデザインされたものではない。裾の割れは、乗馬を考慮したものである。
また、年上の女に養われている若い男を指して「燕」というが、これは、平塚雷鳥と青年画家の恋に由来する。その画家・奥村博史は、別れを決し、「若い燕は池の平和のために飛び去って行く」と手紙を書いた。

燕は、古くは「ツバクラメ」といい、光沢があることをいう「ツバ」と黒いことを指す「クラ」に、鳥類の接尾語「メ」を加えた名前である。

つばめつばめ泥が好きなる燕かな  細見綾子
今来たと顔を並べるつばめかな  小林一茶

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土筆(つくし)

仲春の季語 土筆

つくづくし

季語シダ植物門トクサ綱トクサ目トクサ科トクサ属の植物にスギナがあり、その胞子茎をツクシという。地下茎で繁茂し、根が深いことから「地獄草」の別名もある。ツクシは胞子を放出すると枯れ、緑色のスギナが繁茂する。スギナの名は、その栄養茎が杉に似ていることに因る。
茎に巻き付いている袴の部分でつながっているように見えることから、「継く子」が語源という説がある。さらに、胞子形成部が子供の頭のように見えることから、親しみを込めて「つくしんぼう」とも呼ぶ。その袴を取り、灰汁を抜いて、食用にする。

古くは大伴家持が歌ったとされる

片山のしづが畠に生ひにけり 杉菜まじりのつくづくしかな

があるものの、万葉集などに土筆の歌は見られず、存在感の割に露出度の低い植物であった。近代に入り、正岡子規らが取り上げ、生活に密着した素材として注目されている。「寒の土筆」として詠んだ川端茅舎の「白痴」の句は特に有名。

ままごとの飯もおさいも土筆かな  星野立子

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辛夷(こぶし)

仲春の季語 辛夷

季語モクレン目モクレン科モクレン属の落葉高木で、「田打ち桜」とも呼ばれる。日本原産。3月から5月に白い花をつける。果実の形状が握りこぶしのように凸凹していることが、コブシの名前の由来である。
同じモクレン属で花季も重なるハクモクレンと似ているが、コブシは花の付け根に葉が観察されるのに対し、ハクモクレンは花が散ってから葉が出る。

平安時代の「本草和名」には「やまあららぎ」の古名も見え、すでに薬効が知られていた。夫木和歌抄には藤原為家の

うち絶えて手を握りたるこぶしの木 心狭さをなげく頃かな

が載る。昭和52年には、千昌夫の演歌「北国の春」がヒットし、歌詞の中で使われた「辛夷」が郷愁を誘うものとなっている。

咲く枝を折る手もにぎりこぶしかな  松江重頼

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木蓮(もくれん)

仲春の季語 木蓮

白木蓮(しろもくれん・はくもくれん)

季語モクレン目モクレン科モクレン属の落葉低木で、紫色の花をつけるため「シモクレン」とも。花がランに似ていることから、木蘭と呼ばれていたとも言われるが、現在では、蓮に似ているとして「木蓮」と呼ぶ。1億年前から既に存在していたことが判明しており、「最古の花木」の異名を持つ。
花が白い「ハクモクレン」や「コブシ」も、モクレン目モクレン科モクレン属。コブシの花期は3月から5月、ハクモクレンの花期は3月から4月、シモクレンの花期は4月から5月。コブシが日本原産なのに対し、シモクレン、ハクモクレンは中国原産。日本では、平安時代の「和名類聚抄」にその名が見えることから、古くから渡来していたと考えられている。

香色と呼ばれる薄紫色は、かつてシモクレンで染められ「木蘭染」となり、法衣に使われていたという。ハクモクレンは、太陽を浴びると蕾の先端が北を向くことから、「コンパスフラワー」と呼ばれる。

花木蘭という名の女性の物語が中国にあり、ディズニー映画「ムーラン」となった。老病の父に代わり、従軍して勝利するというストーリーである。

木蓮の風のなげきはただ高く  中村草田男

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彼岸(ひがん)

仲春の季語 彼岸

彼岸会(ひがんえ)彼岸過ぎ(ひがんすぎ)

季語雑節の一つで、春分を中日とし、前後各3日を合わせた各7日間を彼岸と言う。秋分を中日とする秋彼岸もあるが、単に「彼岸」ならば、春の彼岸を指す。最初の日を「彼岸の入り」、最後の日を「彼岸明け」と言う。
盆には、亡くなった先祖が帰ってくると言われているが、彼岸には帰ってこない。彼岸は、ぼたもちなどで先祖を供養し、悟りの境地「彼岸」へと思いを馳せる日。

真西に太陽が沈む春分・秋分に、遙か西方の極楽浄土に思いをはせたのが彼岸の始まり。大同元年(806年)、日本で初めて彼岸会が行われた。なお彼岸の行事は、インドや中国の仏教にはなく、日本独自のものだとされる。

「和漢三才図会」(1712年)には、「龍樹菩薩天正験記」の引用があり、彼岸について述べている。それによると、春と秋の彼岸の7日間には、色界摩醯首羅天尊を中心とする神々が集って、人々の善悪を記すという。

語源は、サンスクリット語の Pāramitā つまり「波羅蜜」にあるとされ、これを意訳した「至彼岸」が元となっている。迷いや煩悩を川にたとえ、その向こうの涅槃を目指すもの。
「暑さ寒さも彼岸まで」と言われ、彼岸を過ぎると、春の陽気が支配的になる。

▶ 関連季語 春分(春)

吹きよどむ風もをさまり彼岸過ぐ  加藤三七子
庭の木に同じ鳥くる彼岸入り  勝又星津女

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春分(しゅんぶん)

仲春の季語 春分

中日(ちゅうにち)

季語二十四節気の第4。太陽暦では3月20日頃が「春分の日」として祝日になり、彼岸の中日でもある。
昼の長さと夜の長さがほぼ等しい(太陽が点ではなく、大きさを持った球体としてあるため、太陽の直径分が移動するだけ、昼の方が長くなる)。また、ほぼ真東から太陽が昇り、ほぼ真西に日が沈む(春分点にある時間は、春分の日の中の一瞬なので、日の出・日の入りが春分点に当たらない限り、若干のずれが生じる)。
春分期間の七十二候は、雀始巣(すずめはじめてすくう)・桜始開(さくらはじめてひらく)・雷乃発声(かみなりすなわちこえをはっす)。

春分の日なり雨なり草の上  林翔
たにぐゝの日ねもすなきぬお中日  原石鼎

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雛祭(ひなまつり)

仲春の季語 雛祭

雛(ひな・ひいな)雛飾(ひなかざり)立雛(たちびな)流し雛(ながしびな)

季語3月3日、女児の健やかな成長を願う節句の年中行事。明治の改暦以後、太陽暦の3月3日に行うことが一般的だが、現在でも旧暦の3月3日や4月3日に行うところもある。旧暦3月3日は、桃の花が咲く時期であるため「桃の節句」と呼ばれる。
雛祭の起源は定かではないが、平安時代には既に、雛祭のもととなった流し雛が行われている。現在のように、かつての「人形遊び」と「節句の儀式」が結びついて、華やかな祝い事となったのは江戸時代のことと考えられている。曲亭馬琴の俳諧歳時記栞草には、「古へ、女児のひな遊び、三月にかぎらざること、源氏物語等にてしらる。今、三月三日にこれを祭り遊ぶ事は、全く上巳の祓の贖物の人形より移れるとみえたり。」とある。

かつて雛人形は、嫁入り道具の一つとされ、母方の実家から贈る習わしであった。現代では男雛を左、女雛を右に置くが、これは文明開化による西洋化の影響があると言われる。なお、男雛を「お内裏様」女雛を「お雛様」と呼ぶのは、童謡「うれしいひなまつり」の影響で、本来「お内裏様」は男雛と女雛、「お雛様」は雛壇の人形全てを指す。

「雛」は、「ひよこ」のことも指す言葉であるが、俳句で「雛」を用いる場合は、春の季語として「お雛様」のことを指すことが普通である。「雛型」のように接頭語として成り立つところから、本来は「小さい」「可愛い」を表現する言葉である。

鎌倉に雪降る雛の別れかな  宮下翠舟
草の戸も住替る代ぞひなの家  松尾芭蕉

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三月(さんがつ)

仲春の季語 三月

季語新暦3月は、旧暦の1月下旬から2月にあたる。この時期になると、ようやく気温も上がり始め、待っていた花もちらほらと咲き始める。しかし、雨の日も増え、晴れた日には花粉が舞う。日本では年度替りにもあたり、何かと忙しく、別れも多い。
英語で3月は March だが、これはローマ神話の戦と農耕の神の名からきている。

三月や茜さしたる萱の山  芥川龍之介

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如月(きさらぎ)

仲春の季語 如月

衣更着(きさらぎ)きさらぎ

季語旧暦二月。まだ寒さが残り、衣をさらに重ね着ることがあるから「衣更着」となったという語源説がある。奥儀抄によると、「のどかな正月が過ぎると冴え返って、衣を更に着る」とある。
如月の和歌としては、新古今和歌集に載る西行法師の

ねがはくは花のもとにて春死なむ その如月の望月のころ

が、あまりに有名。

衣更着のかさねや寒き蝶の羽  広瀬惟然

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