俳句

季語|馬鈴薯の花(ばれいしょのはな・じゃがいものはな・じゃがたらのはな)

初夏の季語 馬鈴薯の花

馬鈴薯の花ナス科ナス属ジャガイモはアンデス山脈原産で、日本には1598年にオランダ人によって持ち込まれたとされる。ジャガタラ(ジャカルタ)を経由して長崎へ伝来したため、ジャガタライモとされたが、ジャガイモと呼ばれるようになった。形が馬鈴に似ることからバレイショとも呼ばれる。ただし中国で「馬鈴薯」は、マメ科のホドイモを指す。
江戸時代後期には、飢饉対策として北海道や東北地方に持ち込まれ、現在でも北海道が全国の収穫量の8割を占める。

ジャガイモには春植えされる品種と秋植えされる品種があり、「馬鈴薯の花」として夏の季語になるジャガイモは春植えのもので、「男爵」や「メークイン」がそれに当たる。6月から7月頃に男爵は淡紫の花、メークインは紫や白い斑入の花を咲かせる。
ジャガイモは、地下茎を芋として収穫するため、栄養を花に取られないようにするために花を摘み取ることがある。ただし、受粉能力が低く、実をつけることが稀であるため、通常は花を咲かせる。
マリーアントワネットは、ジャガイモ栽培を推奨するためにジャガイモの花を好んで身につけたという。

【馬鈴薯の花の俳句】

馬鈴薯の花の日数の旅了る  石田波郷

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季語|石楠花(しゃくなげ)

初夏の季語 石楠花

石楠の花(しゃくなげのはな)

石楠花の俳句と季語ツツジ科ツツジ属シャクナゲ亜属無鱗片シャクナゲ節の総称で、日本ではアズマシャクナゲやツクシシャクナゲなどが自生し、4月から5月頃に花が咲く。
石楠花を大まかに分類すると、日本石楠花と西洋石楠花がある。日本石楠花は葉の裏に細かい毛があり、山奥で咲くために幻の花とも見なされてきた。西洋石楠花は、19世紀にイギリス人がヒマラヤから持ち帰って普及させたもの。近代になって日本にも西洋石楠花が入ってくると、街中で園芸種が栽培されるようになった。

初夏の季語に分類されることが多いが、晩春の季語に分類する歳時記もあり、俳諧歳時記栞草(1851年)には春之部三月に分類されている。ここでは「しゃくなんげ」と読ませ、「しゃくなぎとも云う」とある。本草書からの引用で、「石間の陽に向の処に生ず。故に石南と名づく」とある。

【石楠花の俳句】

石楠花の紅ほのかなる微雨の中  飯田蛇笏

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季語|浜昼顔(はまひるがお)

初夏の季語 浜昼顔

浜昼顔の季語と俳句ヒルガオ科ヒルガオ属の多年草で、浜辺に生えるため、蔓はあるが匍匐性である。仲夏の季語となる「昼顔」の仲間であるが、浜昼顔の方が開花が早く、5月から6月頃に咲いて初夏の季語となる。
日本では、北海道から沖縄までの海岸に群生し、琵琶湖畔でも見られる。近年では、外来種であるコマツヨイグサ(月見草の一種)に押されて減少している。

1974年に発売された五木ひろしの歌謡曲「浜昼顔」は、寺山修司の作詞である。

【浜昼顔の俳句】

雨やめば浜ひるがほを見に行かん  高野素十

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季語|栃の花(とちのはな)

初夏の季語 栃の花

橡の花(とちのはな)

栃の花の季語と俳句ムクロジ科トチノキ属トチノキは、日本原産の落葉高木。北海道から九州に分布し、5月から6月頃に、小さな花が集合して円錐形になる。これが「栃の花」である。
トチノキは両性花と雄花をつけ、大半の花は雄花である。栃の実のなる両性花は、花序の下部につく。その蜜はミツバチを誘引し、栃の花から作られた蜂蜜は濃厚な風味を持つ「トチ蜜」となり、高級品である。

「とち」の語源は「十千(とち)」であるとの説がある。たくさんの実がなることを表しているとされる。因みに「栃」は国字で、「杤」とも書く。「十」に「千」を掛けると「万」になるところから、それに木偏を添えて作られたとの説もある。中国では「橡」と書く。

【栃の花の俳句】

橡の花きつと最後の夕日さす  飯島晴子

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季語|金雀枝(えにしだ)

初夏の季語 金雀枝

金雀花(えにしだ)

金雀枝の季語と俳句マメ科エニシダ属エニシダは、地中海沿岸が原産の常緑性低木。5月頃に、樹を覆うように黄色い花が咲く。エニシダ属の別品種に、白い花を咲かせるシロバナエニシダや、黄色い花びらに紅色のぼかしが入るホオベニエニシダなどもある。
金雀枝は、江戸時代の1670年頃に渡来したと考えられている。オランダで「エニスタ」と呼ばれることから、「えにしだ」になったと言われている。
元々は「金雀花」の漢字が当てられていた。中国では、「金雀花」と書いて同じマメ科のムレスズメを表すために、「金雀枝」を用いるようになった。

聖母マリアがイエス・キリストを抱いてヘロデ王から逃げる時、金雀枝は莢を鳴らして居場所を教えようとしたため罰を受け、枝を束ねて箒にされたという。魔女の箒も金雀枝製だという。

【金雀枝の俳句】

えにしだの夕べは白き別れかな  臼田亞浪

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季語|紫蘭(しらん)

初夏の季語 紫蘭

紫蘭の季語と俳句ラン科シラン属シランは、日本・台湾・中国原産で、4月から6月頃に花を咲かせる多年草。本州から沖縄の草原などに自生するが、野生のものは準絶滅危惧種である。
育てやすい植物で、本種は紫色の花を咲かせるが、白い花を咲かせる「白花紫蘭」、花の先端が赤紫の「口紅紫蘭」などもある。

俳諧歳時記栞草(1851年)には、夏之部四月に「白及(しらん)」「蕙(けい)」が立項されている。これは「紫蘭」と同じものであると見て良いが、黄色や白い花もあると書かれるなど、「紫」は強調されていない。「紫蘭」がシランという種を指すものだとすれば、ここではシラン属をカバーしているようである。

【紫蘭の俳句】

君知るや薬草園に紫蘭あり  高浜虚子

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季語|朴の花(ほおのはな)

初夏の季語 朴の花

朴散華(ほおさんげ)

朴の花の季語と俳句モクレン科モクレン属ホオノキは、南千島から九州の山間部に自生する落葉高木で、日本固有種とも言われている。5月から6月頃に、日本に自生する樹木の中では最大級となる、芳香のある花をつける。
アサ科エノキ属エノキ(榎)も「朴」と書く場合があるが、「朴の花」と言った場合はホオノキの花を指す。エノキの花は「榎の花」で夏の季語になる。

川端茅舎の俳句から、「朴散華」という季語も生まれた。花は散るには散るが、茅舎が「朴散華即ちしれぬ行方かな」と詠んだように、華やかなものではない。むしろ、「朴の花」の形態を「」に見立てて造語したものだろう。

かつて朴葉は食べ物を包むのに使われ、そのために「ほお」の語源は「包(ほう)」にあるとの説がある。万葉集に朴葉を「ほほがしは」として歌った和歌が二首あるが、朴の花を歌ったものはない。
「朴の花」は高所に上向いて咲くため、大きさの割に見つけにくい花である。

【朴の花の俳句】

朴散華即ちしれぬ行方かな  川端茅舎
三つ咲いて空を占めたる朴の花  岸田稚魚

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季語|棕櫚の花(しゅろのはな)

初夏の季語 棕櫚の花

棕櫚の花の季語と俳句ヤシ目ヤシ科シュロ属の植物の総称が「シュロ」であるが、「棕櫚の花」は、日本各地で見られる「ワジュロ(和棕櫚)」を詠むことが多い。ワジュロは日本原産とも、平安時代に中国から持ち込まれ九州に定着したとも言われ、現在では東北地方でも栽培されている。
中国から持ち込まれたものを「トウジュロ(唐棕櫚)」として区別する場合がある。この場合、葉柄が長く、葉が垂れ下がりやすいものが「ワジュロ」である。
栽培されたものではなく、林内などに野性化したものは、「ノジュロ」「ノラジュロ」と呼ぶ。
雌雄異株で、雌株は5月頃に粟状の黄色い花をつける。

俳諧歳時記栞草(1851年)には夏之部四月に、「椶櫚の花(しゆろのはな・すろのはな)」として掲載され、「かたち、魚腹のはらめるが如し。これを椶魚(そうぎょ)、また椶笋(そうじゅん)といふ」とある。
関連季語に「棕櫚剥ぐ」があり、冬の季語になる。幹を包む「シュロ皮」を剥ぐ作業のことをいうが、このシュロ皮は、縄・タワシ・ホウキなどに加工される。

鐘を撞く「撞木」には、撞いた時の音色の良さから、棕櫚の木が使われることが多い。
棕櫚の花言葉は「勝利」である。古代ギリシャでは、勝者に、オリーブの冠とともに棕櫚の枝が贈られたという。

【棕櫚の花の俳句】

吾も亦愛す吾廬や棕櫚の花  正岡子規

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季語|黐の花(もちのはな)

初夏の季語 黐の花

黐の花の季語と俳句モチノキ科モチノキ属モチノキは常緑広葉樹で、4月から5月頃に黄緑色の小花をつける。日本を含む東アジア原産で、本州から南西諸島に分布する。
モチノキは、完全な雌雄異株で、両方向の性転換を行うことが知られており、咲く花は、年によって雄花だけだったり雌花だけだったりする。
赤い果実は「黐の実」で秋の季語になる。この実が美しいため、多くの園芸品種が開発されている。

「黐」の名は、樹皮から鳥黐(とりもち)を作るところから来ている。

【黐の花の俳句】

まぶしかる海に垣して黐の花  森澄雄

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季語|柿の花(かきのはな)

初夏の季語 柿の花

柿の花の季語と俳句キク類ツツジ目カキノキ科カキノキ属カキノキ。中国揚子江沿岸原産で、日本では野生種であるヤマガキから果樹として改良されたと考えられている。果実は「」と呼び、秋の季語になる。
柿には雄花と雌花があり、雄花は群がって咲き、雌花は単体で咲く。雌雄同株のものと、雄花をつけない品種があり、多くの品種は受粉しなくても結実する。5月から6月頃に、目立たない白黄色の花をつける。

刺し子のポピュラーな図案に「柿の花」があり、「五穀豊穣」の意味を持つ目出度い図柄となっている。

▶ 関連季語 柿(秋)

【柿の花の俳句】

二三町柿の花散る小道かな  正岡子規

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