俳句

季語|茅花(つばな・ちばな)

仲春の季語 茅花

茅萱の花(ちがやのはな)

茅花茅花は、イネ科チガヤ属チガヤの花の事。全国の草地に群生し、雑草として扱われることがある。4月から6月頃に、白い綿毛に包まれた花穂を出す。サトウキビの近縁種でもあり、花穂には甘みがある。昔は子供のおやつ代わりになった。
茅花の花穂をなびかせる風は「茅花流し」と呼んで、夏の季語になる。「茅萱」や「茅」は秋の季語になる。
万葉集には「茅花」を歌った和歌が4首あり、紀女郎が大伴家持に贈った和歌に

戯奴がためわが手もすまに春の野に 抜ける茅花ぞ食して肥えませ

それに応えた大伴家持の和歌に

我が君に戯奴は恋ふらし給りたる 茅花を食めどいや痩せに痩す

がある。

【茅花の俳句】

夕べ淋しさや茅花茅花の明り持つ  高田蝶衣

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季語|苧環の花(おだまきのはな)

晩春の季語 苧環の花

糸繰草(いとくりそう)

苧環の花苧環は、キンポウゲ科オダマキ属の植物のことであり、日本原産のミヤマオダマキと、ヨーロッパ原産の西洋オダマキに大別され、約70種がある。日本に自生するのはミヤマオダマキとヤマオダマキで、山野草として愛好されている。ミヤマオダマキを園芸用に改良した基準変種に「オダマキ」がある。4月から6月頃に花をつける。

花の形が麻糸(苧)を巻く「苧玉」に似ているところから「苧環」の名がついた。糸繰草とも呼ぶ。静御前が歌った「しづやしづ賤のおだまきくりかえし むかしをいまに なすよしもがな」の「おだまき」は、糸玉から糸を繰り出すことを歌ったものである。

【苧環の花の俳句】

をだまきの花もしじまのひとつにて  加藤楸邨

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季語|リラの花(りらのはな)

晩春の季語 リラの花

ライラック(らいらっく)

リラの花「リラの花」とは、モクセイ科ハシドイ属ライラックの花のことである。「リラ」はフランス名で、和名は紫丁香花(むらさきはしどい)である。ヨーロッパ原産で、日本には明治時代中頃に渡来し、北海道中心に植樹された。4月から5月頃に香りのよい紫や白い花を咲かせる。
札幌では市の木に指定され、5月に開催される「さっぽろライラックまつり」は多くの人を集める。また、北海道ではライラックが咲くころの冷え込みを「リラ冷え」と呼ぶ。これは、札幌の俳人・榛谷美枝子氏による造語で、「リラ冷えや睡眠剤はまだきいて」などと詠まれた。後に渡辺淳一の小説「リラ冷えの街」(1980年)により定着した言葉である。

【リラの花の俳句】

私にも二つの名前ライラック  櫂未知子

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季語|二人静(ふたりしずか)

晩春の季語 二人静

早乙女花(さおとめばな)

二人静センリョウ科チャラン属フタリシズカは、丘陵地の林内などに自生する多年草で、4月から6月頃に花が咲く。穂状花序が、通常は2本つく。この花序を、能楽「二人静」の静御前と菜摘女に見立てて名がついたとされる。同属に、花序を一つだけ持つ「一人静」がある。

【二人静の俳句】

幽かなる穂花は二人静なる  加藤三七子

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季語|一人静(ひとりしずか)

仲春の季語 一人静

吉野静(よしのしずか)・眉掃草(まゆはきそう)

一人静センリョウ科チャラン属ヒトリシズカは、山野の林内に自生する多年草で、4月から5月頃に花が咲く。そのブラシ状の花の形状から、眉掃草の別名がある。また、「吉野山みねの白雪ふみわけて 入りにし人の跡ぞ恋しき」と歌った源義経の寵妾・静御前に因んで、「吉野静」とも呼ばれる。
花序を2本持つ近縁種の「二人静」に対比させて「一人静」と呼ばれるようになったとも、静御前がひとり舞う姿に見立てて「一人静」と名付けられたとも言われる。
万葉集の中の長歌に一所だけ登場し、「山背」の枕詞(つぎねふ山背道)となる「つぎね」は、一人静あるいは二人静のことだという説がある。

【一人静の俳句】

一人静むらがりてなほ淋しけれ  加藤三七子

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季語|枸橘の花(からたちのはな)

晩春の季語 枸橘の花

花枳殻(はなからたち)

枸橘の花ミカン科カラタチ属カラタチは、長江上流域を原産地とする落葉低木で、生薬などにされる実は「枳殻の実」として秋の季語になる。刺があるため、生垣などによく利用され、花は4月から5月頃に咲く。
日本には奈良時代以前に中国から渡来したと考えられており、「からたち」の名は「唐橘(からたちばな)」が語源になっていると考えられている。中国では枸橘(くきつ)と表現される。「枳殻」と書いて「からたち」とも読むが、通常は「きこく」と読んで生薬名となる。
万葉集には1首、「枳(からたち)」の字を用いて歌われている忌部首の和歌がある。

枳と茨刈り除け倉建てむ 屎遠くまれ櫛造る刀自

北原白秋作詞、山田耕作作曲の童謡に「からたちの花」があり、「からたちの花が咲いたよ 白い白い花が咲いたよ…」と歌われる。

【枸橘の花の俳句】

からたちの花の昔の昔かな  岸田稚魚

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季語|豌豆の花(えんどうのはな)

晩春の季語 豌豆の花

豌豆の花中央アジア原産で世界最古の農作物ともいわれるマメ科エンドウ属エンドウは、エンドウマメとかグリーンピースなどとも呼ばれる「豌豆」が夏の季語になる植物で、4月から5月頃に花が咲く。硬莢種のアオエンドウ・アカエンドウ、軟莢種のサヤエンドウなどの栽培種、現在では雑草の扱いとなっているカラスノエンドウなどがある。春の季語に「花豌豆」があるが、これはマメ科レンリソウ属のスイートピーのことである。
原産地の大宛国(フェルガナ)から漢に伝来した際、その国名を漢字に組み入れて「豌豆」としたとの語源説がある。日本には遣唐使により持ち込まれたと考えられているが、さやのまま食せる軟莢種は、江戸時代にヨーロッパからもたらされたとされている。

【豌豆の花の俳句】

豌豆の花に瀬音のひゞく朝  中坪潦月

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季語|通草の花(あけびのはな)

晩春の季語 通草の花

通草の花アケビ科アケビ属アケビは山野に自生し、実は「通草」として秋の季語となる。通草の花は雌雄同株・雌雄異花で、4月から5月頃に見られる。大きな雌花と小さな雄花が垂れ下がって咲く。
同属に花の色が濃い「ミツバアケビ」があり、こちらも「通草の花」として俳句に詠まれる。

「あけび」は「朱実」が語源との説があるが、現在では、秋に実が割れる様を「開け実」と言ったことによるとの説が定着している。割れた実の形を、人があくびをしている様に見立てたという説もある。
あけびは、「通草」の他、「木通」「山女」「丁翁」とも表記する。
万葉集では「さのかた」として歌われているという説があり、作者不詳で

さのかたは実にならずとも花のみに 咲きて見えこそ恋のなぐさみに
さのかたは実になりにしを今さらに 春雨降りて花咲かめやも

の2首がある。

【通草の花の俳句】

海鳴れり通草も黒き花を垂れ  相生垣瓜人

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季語|樺の花(かばのはな・かんばのはな)

晩春の季語 樺の花

花樺(はなかんば)白樺の花(しらかばのはな)

樺の花「樺の花」とは、白樺の花のこと。白樺とは、カバノキ科カバノキ属シラカンバのこと。明るい場所を好む樹木で、その名は、樹皮が白いことからきている。古くは「かには」と呼ばれた。主に、東日本の山地に自生する。
花期は4月から5月頃で、葉が出始めると同時に花がつく。雌雄同株で、雄花は黄褐色で尻尾のように垂れ下がる。雌花は緑色で、枝に直立する。風媒花で、雄花の花粉は花粉症の原因になっている。

【樺の花の俳句】

白樺の花を覚えて穂高去る  後藤比奈夫

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季語|楓の花(かえでのはな)

晩春の季語 楓の花

花楓(はなかえで)

楓の花一般には、葉の切れ込みが深いものを「もみじ」、浅いものを「かえで」と呼んでいるが、植物学上はモミジとカエデは同属であり、明確な区分はなく、ムクロジ科カエデ属の植物の総称として「楓」を使う。日本には約30種が自生し、代表的なものにイロハモミジがある。
秋に紅葉する植物の代表でもあるイロハモミジは、4月から5月頃に花をつけるが、若葉の勢いに押されて目立たない。雄花と両性花を持つ風媒花である。

「かえで」は、蛙の手に似た葉をもつことから「かえるで」が転訛したものだとの説がある。

【楓の花の俳句】

苔の雨かへるでの花いづこゆか  芝不器男

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