俳句

季語|紅葉(もみじ・こうよう)

晩秋の季語 紅葉

紅葉狩(もみじがり)紅葉山(もみじやま)・もみぢ葉(もみじば)・色葉(いろは)・夕紅葉(ゆうもみじ)・谷紅葉(たにもみじ)・紅葉見(もみじみ)・観楓(かんぷう)・紅葉酒(もみじざけ)・紅葉茶屋(もみじぢゃや)・黄葉(もみじ・こうよう)黄落(こうらく)末枯(うらがれ)末枯るる照葉(てりは)

紅葉の俳句と季語春の花・夏の時鳥・冬の雪とともに、四季を代表する景物。連俳では、花・時鳥・月・雪とともに、「五個の景物」になる。いずれにしても、秋の季語の代表のようなものである。

紅葉の実態は、葉緑素がなくなりアントシアンなどの色素が蓄積して起こる、葉の赤変や黄変。代表は楓。北海道の大雪山では9月頃から始まり、九州では12月中旬ころまで見られる。色づき始めると、完全に散るまで1カ月間は紅葉を楽しむことができる。桜と同じように、日本気象協会では紅葉情報を提供しており、紅葉前線としてメディアで取り上げられる。
「もみいづる」「もみづる」の動詞もある。古くは、紅葉するという意の「もみつ」が、平安時代以降濁音化して「もみづ」となり「もみじ」の語源になったと言われている。尚、「もみつ」は染色に関わる言葉で、「揉み出づ」のこと。ベニバナを揉んでで染め上げた絹織物のことを、紅絹(もみ)といった。

万葉集には黄葉で「もみち」と読み、100首あまりが載る。柿本人麻呂に

秋山に落つる黄葉しましくは な散り乱ひそ妹があたり見む

がある。また、伊勢物語の「楓のもみぢ」では、宮仕えする男が大和の女に向けて、自らの心を紅葉するもみじに掛けて

君がため手折れる枝は春ながら かくこそ秋のもみぢしにけれ

と歌うと、女がその心変わりを疑い

いつのまにうつろふ色のつきぬらむ 君が里には春なかるらし

と、飽き(秋)を連想させる歌を返すという話がある。

【紅葉の俳句】

うらをみせおもてを見せてちるもみじ  良寛
黄落や或る悲しみの受話器置く  平畑静塔

▶ 秋の季語になった花 見頃と名所

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季語|菜の花(なのはな)

晩春の季語 菜の花

花菜(はなな)・菜種の花(なたねのはな)・菜種菜(なたねな)・油菜(あぶらな)

菜の花の俳句と季語アブラナ科アブラナ属の花の総称で、種は菜種油の原料となることから、その植物を油菜ともいう。花を食するものは菜花という。晩春の季語ではあるが、年末に花をつけ始める地方もある。
「肴(な)」と語源が同じだと言われ、食用植物の花の意である。

【菜の花の俳句】

菜の花や月は東に日は西に  与謝蕪村
菜の花の遙かに黄なり筑後川  夏目漱石

▶ 春の季語になった花 見頃と名所

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季語|冬の海(ふゆのうみ)

三冬の季語 冬の海

冬海(ふゆうみ)・冬の波(ふゆのなみ)冬の浪(ふゆのなみ)冬波(ふゆなみ)冬濤(ふゆなみ)冬の潮(ふゆのしお)寒潮(かんちょう)・氷海(ひょうかい)・冬の浜(ふゆのはま)

冬の海の俳句と季語大きいことを表す「う」と水の「み」が結びつき、「うみ」となった。また海は、母なる海として「産み」に結び付けられることもある。

【冬の海の俳句】

ふゆしほの音の昨日をわすれよと  久保田万太郎
たわむれに老い行く如し冬の海  永田耕衣

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季語|春の海(はるのうみ)

三春の季語 春の海

春濤(しゅんとう)春の波(はるのなみ)春潮(しゅんちょう)春の潮(はるのしお)

春の海の俳句と季語大きいことを表す「う」と水の「み」が結びつき、「うみ」となった。また海は、母なる海として「産み」に結び付けられることもある。
穏やかなイメージのある「春の海」であるが、その表情はゆたか。春一番に始まる嵐で荒れる日がある一方、晩春に近づくにつれ、穏やかな表情を見せることが多くなる。
宮城道雄の箏曲「春の海」は、瀬戸内海をイメージしていると言われている。

【春の海の俳句】

春の海ひねもすのたりのたりかな  与謝蕪村
島々に灯をともしけり春の海  正岡子規

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季語|秋の海(あきのうみ)

三秋の季語 秋の海

秋の潮(あきのしお)・秋潮(しゅうちょう)・秋の波(あきのなみ)・秋の浜(あきのはま)

秋の海の俳句と季語大きいことを表す「う」と水の「み」が結びつき、「うみ」となった。また海は、母なる海として「産み」に結び付けられることもある。

【秋の海の俳句】

夕暮はいつもあれども秋の海  岩田凉菟

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季語|夏の海(なつのうみ)

三夏の季語 夏の海

夏海(なつうみ)・夏濤(なつなみ)夏の波(なつのなみ)・夏の潮(なつのしお)・夏潮(なつしお)・青葉潮(あおばしお)・青潮(あおしお)・夏の浜(なつのはま)・青岬(あおみさき)

夏の海の俳句と季語大きいことを表す「う」と水の「み」が結びつき、「うみ」となった。また海は、母なる海として「産み」に結び付けられることもある。
海水浴客が訪れる夏の海は、四季を通じて最も賑やかになる。夏は、海の青さが最も印象的な季節である。

【夏の海の俳句】

よるべなく光あかるし夏の浜  山口誓子
島々や千々に砕けて夏の海  松尾芭蕉

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季語|蜻蛉(とんぼ・とんぼう・せいれい)

三秋の季語 蜻蛉

秋津(あきつ・あきづ)・赤蜻蛉あかとんぼ

蜻蛉(とんぼ)同じ蜻蛉でも、糸蜻蛉や川蜻蛉、早苗蜻蛉は夏の季語となる。また、「蜻蛉生る」も夏の季語である。トンボの古名とされることから、「カゲロウ」にも蜻蛉の字をあてるが、現在ではカゲロウ目の昆虫を指し、トンボ目の昆虫とは全く異なる。
蜻蛉の幼虫は水生で、水蠆(ヤゴ)と呼ばれ、夏の季語になっている。
日本のことを秋津洲(あきつしま)とも言うが、これは、日本書紀神武天皇三十一年夏四月に腋上の嗛間丘(国見山)に登られた神武天皇が「内木綿の真迮き国といへども、猶し蜻蛉(あきつ)の臀呫の如くあるかな」と述べたことによる。日本のことを、トンボの尾繋がりのようだと表現されたのである。
また、日本書紀雄略天皇四年秋八月、吉野宮行幸の折、河上の小野で雄略天皇の腕にたかった虻を蜻蛉がさらって行ったことから、これを誉めて「…その虻を蜻蛉はや囓ひ昆ふ虫も大君にまつらふ汝が形は置かむ蜻蛉嶋倭」とも歌われている。このように勇猛に天皇に従う様を以て蜻蛉嶋とするという異説もある。
古くは「トンボウ」と呼ばれていたことから、「飛ぶ棒」が語源なのではないかと言われている。

▶ 関連季語 やんま(秋)

【蜻蛉の俳句】

赤とんぼ筑波に雲もなかりけり  正岡子規
行く水におのが影追ふとんぼかな  加賀千代女

▶ 国を背負って虫が飛ぶ

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季語|躑躅(つつじ)

晩春の季語 躑躅

白躑躅(しろつつじ)山躑躅(やまつつじ)・曙躑躅(あけぼのつつじ)・平戸躑躅(ヒラドツツジ)

躑躅の俳句と季語常緑低木。古くから園芸品種として交配され、品種が多い。山野に自生するものもあるが、ヒラドツツジは街路樹として数多く栽培され、晩春に色鮮やかな花をつける。古くからの伝統色に躑躅色(つつじいろ)があるが、これは、赤い躑躅の花のような鮮やかな赤紫色のことである。見る人の足を引き止める美しさから、躑躅を「てきちょく」と読み、躊躇の意にも用いる。

次々に咲くことから、「続き咲き木」と呼ばれたことが語源になっているという説がある。ネパールでは国花となっている。

【躑躅の俳句】

近道へ出てうれし野の躑躅哉  与謝蕪村
死ぬものは死にゆく躑躅燃えてをり  臼田亞浪

▶ 春の季語になった花 見頃と名所

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季語|柿(かき)

晩秋の季語 

柿の秋(かきのあき)・渋柿(しぶがき)・甘柿(あまがき)・熟柿(じゅくし)・西条柿(さいじょうがき)・富有柿(ふゆうがき)・次郎柿(じろうがき)・御所柿(ごしょがき)・愛宕柿(あたごがき)

俳句と季語の柿(昇雲いますがた)縄文時代の遺跡から柿の種が発掘されており、日本の在来果樹の一つと考えられている柿の木は、5月の終わり頃から6月にかけて白黄色の花をつけ、秋に結実する。1214年には、川崎市で突然変異による甘柿・禅師丸が生まれ、現存する世界最古の甘柿となった。この禅師丸や、富有柿、次郎柿、御所柿などの甘柿はそのまま食することができるが、愛宕柿などの渋柿はタンニンが多く含まれており、干し柿にするなど渋抜き処理をして食す。

語源は、赤い実をつけることから「アカキ」と呼ばれ、それが転訛したものと考えられている。なお、日本の柿は、1789年にヨーロッパへ、1870年には北アメリカへ伝わり、学名は Diospyros kaki である。
10月26日は、正岡子規の「柿くへば鐘が鳴るなり法隆寺」の俳句が生まれた日とされ、全国果樹研究連合会カキ部会が「柿の日」に定めた。

▶ 関連季語 柿の花(夏)

【柿の俳句】

柿くへば鐘が鳴るなり法隆寺  正岡子規
里古りて柿の木持たぬ家もなし  松尾芭蕉

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