季語|花梨(かりん)

晩春の季語 花梨

榠樝の花(かりんのはな)

花梨バラ科カリン属カリンは、中国原産の植物で、実は生食に適さないが、のど飴などの原料にする。マメ科シタン属の花梨とは別種で、季語とする場合、通常はバラ科カリン属の「花梨」となる。花は4月頃に咲く。
唐木の「花櫚(かりん)」に木目が似ていることから「かりん」と命名されたとされる。諏訪地方で「かりん」と呼ばれるものは、バラ科マルメロ属のマルメロ(榲桲)である。
日本には江戸時代に渡来したとの説があるが、香川県には空海御手植の花梨が伝わっており、その木(初代)は821年に植えられたという。

【花梨の俳句】

榠樝咲くと見て眠りたり霽れてをり  臼田亞浪

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季語|榲桲の花(まるめろのはな)

晩春の季語 榲桲の花

榲桲の花バラ科マルメロ属マルメロは、「西洋かりん」とも呼ばれる落葉高木で、4月頃に芳香のある白やピンクの花を咲かせる。秋の季語になる「榲桲(まるめろ)」は、10月頃に収穫される実で、ジャムなどに加工する。中央アジア原産で、日本には1634年に長崎に入った。
ポルトガル語でマルメロの実を指す「Marmelo」が、そのまま日本でも使われ、「まるめろ」と発音するようになった。この「Marmelo」は、ママレードの語源にもなっている。
かりんに似た実がなることから、「西洋かりん」の別名があり、地方によっては「かりん」とも呼ばれるが、本来の「かりん」はバラ科カリン属の植物になるので注意を要する。

【榲桲の花の俳句】

まるめろの花咲き家の主かはる  加藤塔陵

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季語|春蘭(しゅんらん)

仲春の季語 春蘭

ほくろ・じじばば

春蘭ラン科シュンラン属シュンランは、日本を代表する野生蘭。北海道から九州の、山地の雑木林などに自生する。3月から4月頃に咲くところから、「春蘭」と名付けられた。花にホクロのようなものが見えることから「ほくろ」、花が爺の髯と婆の頬かむりを合わせたように見えることから「じじばば」などとも呼ばれる。
花を塩漬けにして湯を注いだものは、蘭茶として祝い事に用いる。

【春蘭の俳句】

春蘭のあはれ花なきいほりかな  小沢碧童

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季語|アネモネ

晩春の季語 アネモネ

アネモネアネモネは、キンポウゲ科イチリンソウ属の多年草で、牡丹一華(ぼたんいちげ)、花一華(はないちげ)とも呼ばれる。アネモネ属は約100種が知られているが、一般的には園芸種のアネモネ・コロナリアを指すことが多い。
地中海沿岸原産で、明治初期に渡来した。3月から4月頃に赤白青紫などの花を咲かせる。

アネモネは、ギリシャ語の「風(anemos)」が語源になっている。ギリシャ神話には、西風の神ゼピュロスが恋したのが妖精アネモネだったとされる。また、愛を象徴する花でもあり、女神アフロディーテが恋した美少年アドニスが、戦神マルスの嫉妬の牙にかかり亡くなった時、アフロディーテの涙から咲いたともされる。

【アネモネの俳句】

アネモネはしをれ鞄は打重ね  高浜虚子

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季語|ミモザ

初春の季語 ミモザ

銀葉アカシア(ぎんようあかしあ)

ミモザミモザは、オーストラリア原産のマメ科アカシア属の植物の俗称で、主にフサアカシアを指す。本来は、マメ科オジギソウ属の植物の総称で、葉の形がよく似ていることから、フランスで誤用されて「ミモザ」の名が定着した。オジギソウの葉は、刺激によって閉じていくことから、身ぶりを主体とする劇「mimos」に因んで「ミモザ」と呼ばれていたが、アカシア属の植物にはそのような特徴はない。
夏の季語にアカシアの花があるが、これはマメ科ハリエンジュ属ニセアカシアである。本来は「ミモザ」と呼ばれるアカシア属のフサアカシアなどを「アカシア」と呼ぶべきであるが、日本では定着していない。
なお、ミモザとして華道で使われるのは、ハナアカシアとも呼ばれる「ギンヨウアカシア」であることが多い。葉が銀色を帯びている。

フサアカシアは、明治時代初期に渡来した。2月から4月頃に、香りのよい黄色い花をつける。
イタリアには「ミモザの日」があり、女性の日として、男性が女性に感謝の気持ちを込めてミモザをプレゼントすることになっている。

【ミモザの俳句】

ミモザ咲くベスビオの山曇る日は  有働亨

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季語|アカシアの花(あかしあのはな)

初夏の季語 アカシアの花

アカシヤの花(あかしやのはな)

アカシアの花日本でアカシアと呼ばれているのは、北アメリカ原産のマメ科ハリエンジュ属ニセアカシアである場合が多い。ミモザとも呼ばれるマメ科アカシア属の植物とは別種である。日本では、棘があるエンジュという意味で、「針槐(はりえんじゅ)」の別名があり、ウィーン万博から持ち帰った種子を1875年に東京大手町に植えて日本初の街路樹とした。この時に「アカシア」と呼ばれたために、現在でも「アカシア」の名が定着している。札幌のアカシア並木や、童謡「この道」のあかしやの花、歌謡曲「アカシアの雨がやむとき」は全て、このニセアカシアである。
ニセアカシアは痩せた土地でもよく育つため、当初は治山などに活用されたが、現在ではマツ林などを侵食する日本の侵略的外来種ワースト100に選ばれている。

ミモザ(アカシア)が3月から4月に黄色い花をつけるのに対し、ニセアカシアは4月から6月頃に白い花をつける。その蜜は「アカシアの蜂蜜」として上質な蜂蜜になり、花を酒につけ込めばアカシア酒となる。

【アカシアの花の俳句】

アカシヤの花こぼしつつ時を告ぐ  山口青邨

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季語|樫の花(かしのはな)

晩春の季語 樫の花

樫の花樫は、ブナ科コナラ属の一群の総称で、アカガシ・アラカシ・イチイガシ・ウバメガシ・ウラジロガシ・オキナワウラジロガシ・シラカシ・ツクバネガシの8種がある。木質がひじょうに堅いことから「樫」の国字が当てられ、「かたし」が語源となっているとの説がある。古代から日本人に馴染み深い樹木であり、初代天皇である神武天皇は、白檮原宮(かしはらのみや・現在の奈良県橿原神宮のあたり)で天下を治めた。
樫の木は、種によって開花期が異なるものの、概ね3月から5月頃に花をつける。雄花と雌花を持つ風媒花で、花弁はない。

【樫の花の俳句】

樫の木の花にかまわぬ姿かな  松尾芭蕉

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季語|ヒヤシンス

晩春の季語 ヒヤシンス

風信子(ふうしんし)

ヒヤシンスユリ(キジカクシ)科ヒヤシンス属ヒヤシンスは、「ヒアシンス」とも書く球根性多年草で、ギリシャ地方原産。水栽培でも馴染み深く、秋植えすると3月から4月頃に香りのよい花をつける。
オスマン帝国で園芸化され、16世紀頃にヨーロッパに広がり、数千もの園芸品種がつくられた。園芸品種には、花をたくさんつけるダッチ・ヒヤシンスと、ややまばらなローマン・ヒヤシンスの2系統がある。
日本には、江戸時代末期の1863年にフランスから渡来した。当初は、西洋の発音に合わせて「飛信子(ひやしんす)」「風信子(はやしんす)」の字が当てられた。

ヒヤシンスの語源は、ギリシャ神話の美青年ヒュアキントスにある。太陽神アポロンと円盤投げに興じていた時、嫉妬した西風の神ゼピュロスが風を起こしたために、円盤が頭に当たって亡くなった。その時、血に染まった草の中から咲いたのがヒヤシンスだったという。このことから、「悲しみを超えた愛」の花言葉を持つ。

【ヒヤシンスの俳句】

銀河系のとある酒場のヒヤシンス  橋閒石

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季語|蚕豆の花(そらまめのはな)

晩春の季語 蚕豆の花

蚕豆の花マメ科ソラマメ属ソラマメは地中海沿岸原産で、日本での栽培は、奈良時代にインドから渡来した菩提僊那(ぼだいせんな)が行基に贈ったものがもとになっているとの説がある。
花は3月から4月頃に咲き、蚕豆は5月から6月頃に収穫される。実が空に向かって伸びていくことから「そらまめ」と呼ばれ、さやの中がカイコの繭に似ていることから「蚕豆」の漢字が当てられたと言われる。

【蚕豆の花の俳句】

そら豆の花の黒き目数知れず  中村草田男

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季語|杏の花(あんずのはな)

晩春の季語 杏の花

花杏(はなあんず・かきょう)花杏子(はなあんず)

杏の花バラ科サクラ属アンズは、中国原産の落葉小高木。桜よりやや早く、3月から4月頃に開花する。「杏」として夏の季語になる実は、生食したり、ジャムなどの加工食品にする。
日本では古くは「唐桃(からもも)」と呼ばれ、奈良時代に唐から渡来したと考えられている。漢名であった「杏子」の唐音「あんず」が、そのまま日本でも用いられたと言われている。俳諧歳時記栞草(1851年)では、春之部三月に「杏花(あんずのはな・からもも)」として立項されている。
英名ではアプリコットである。近世まではアルメニアが原産地であると考えられていたため、学名は「Prunus armeniaca」である。

実は、杏仁などと呼ばれる生薬になる。神仙伝(古代中国)に、廬山の董奉が、金を受け取る代わりに貧乏な患者に杏の木を植えさせたという話がある。見事な杏の林ができ、自ら董仙杏林(とうせんきょうりん)と号したところから、「杏林」は医者の美称ともなった。

【杏の花の俳句】

しをるるは何かあんずの花の色  松永貞徳

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