俳句

季語|満天星の花(どうだんのはな)

晩春の季語 満天星の花

満天星躑躅(どうだんつつじ)

満天星の花ツツジ科ドウダンツツジ属ドウダンツツジは、西日本の岩山に自生する落葉広葉樹で、4月頃に釣鐘型の白い花をつける。現在では庭木としても親しまれている。
同属には10種が知られており、ドウダンツツジやサラサドウダンなど、その内の4種が日本に自生している。しかし、サラサドウダンの花期は6月頃であり、夏の花となる。
花のつき方が、宮中で用いられた結び灯台の脚部の枝分かれに似ていることから「とうだいつつじ」と呼ばれ、「どうだんつつじ」に転訛したと言われている。11月頃に見られる紅葉も美しい。

【満天星の花の俳句】

満天星の花より蜂の大きけれ  阿部みどり女

▶ 春の季語になった花 見頃と名所

季語検索を簡単に 季語検索を簡単に 季語検索を簡単に 季語検索を簡単に

季語|海棠(かいどう)

晩春の季語 海棠

花海棠(はなかいどう)・垂糸海棠(すいしかいどう)・眠れる花(ねむれるはな)・睡花(すいか)

海棠海棠は、バラ科リンゴ属ハナカイドウのことで、4月頃に桜に似た花を下向きにつける。中国原産で、江戸時代初期に渡来。室町時代に渡来した同属のミカイドウ(実海棠)に対して、花を愛でるために「花海棠」とも呼ばれる。
「海棠」は中国名で、日本ではこれを音読みして「かいどう」と呼んでいる。「棠」は山梨を表す漢字で、「海棠」は海辺に生る山梨の意を持つ。
俳諧歳時記栞草(1851年)では春之部三月に分類し、唐の明皇(玄宗皇帝)が楊貴妃を呼んだ時、酒に酔って眠たげな姿を見て「海棠の睡り未だ足らずのみ」と評したことが記されている。このことにより、「眠れる花」とも呼ばれる。
久米三汀の忌日(3月1日)は、その風格を偲び、石塚友二が「海棠忌」とした。

【海棠の俳句】

海棠のしたたる雨となりしはや  福永耕二

▶ 春の季語になった花 見頃と名所

季語検索を簡単に 季語検索を簡単に 季語検索を簡単に 季語検索を簡単に

季語|花蘇枋(はなすおう・はなずおう)

晩春の季語 花蘇枋

紫荊(はなすおう・はなずおう)

花蘇枋マメ科ジャケツイバラ亜科ハナズオウ属ハナズオウは、中国原産の落葉低木で、4月頃に、葉が出るのに先駆けて花が咲く。「花蘇芳」「紫荊(はなずおう)」とも書く。同属にセイヨウハナズオウがあり、欧米ではユダが首吊りに使った樹木として、「ユダの木」と言われている。
江戸時代のはじめに渡来し、花の色が染料の蘇枋に似ていることから「花蘇枋」と名付けられた。

【花蘇枋の俳句】

瓦礫もて隣家をへだつ花蘇枋  下村ひろし

▶ 春の季語になった花 見頃と名所

季語検索を簡単に 季語検索を簡単に 季語検索を簡単に 季語検索を簡単に

季語|花梨(かりん)

晩春の季語 花梨

榠樝の花(かりんのはな)

花梨バラ科カリン属カリンは、中国原産の植物で、実は生食に適さないが、のど飴などの原料にする。マメ科シタン属の花梨とは別種で、季語とする場合、通常はバラ科カリン属の「花梨」となる。花は4月頃に咲く。
唐木の「花櫚(かりん)」に木目が似ていることから「かりん」と命名されたとされる。諏訪地方で「かりん」と呼ばれるものは、バラ科マルメロ属のマルメロ(榲桲)である。
日本には江戸時代に渡来したとの説があるが、香川県には空海御手植の花梨が伝わっており、その木(初代)は821年に植えられたという。

【花梨の俳句】

榠樝咲くと見て眠りたり霽れてをり  臼田亞浪

▶ 春の季語になった花 見頃と名所

季語検索を簡単に 季語検索を簡単に 季語検索を簡単に 季語検索を簡単に

季語|榲桲の花(まるめろのはな)

晩春の季語 榲桲の花

榲桲の花バラ科マルメロ属マルメロは、「西洋かりん」とも呼ばれる落葉高木で、4月頃に芳香のある白やピンクの花を咲かせる。秋の季語になる「榲桲(まるめろ)」は、10月頃に収穫される実で、ジャムなどに加工する。中央アジア原産で、日本には1634年に長崎に入った。
ポルトガル語でマルメロの実を指す「Marmelo」が、そのまま日本でも使われ、「まるめろ」と発音するようになった。この「Marmelo」は、ママレードの語源にもなっている。
かりんに似た実がなることから、「西洋かりん」の別名があり、地方によっては「かりん」とも呼ばれるが、本来の「かりん」はバラ科カリン属の植物になるので注意を要する。

【榲桲の花の俳句】

まるめろの花咲き家の主かはる  加藤塔陵

▶ 春の季語になった花 見頃と名所

季語検索を簡単に 季語検索を簡単に 季語検索を簡単に 季語検索を簡単に

季語|春蘭(しゅんらん)

仲春の季語 春蘭

ほくろ・じじばば

春蘭ラン科シュンラン属シュンランは、日本を代表する野生蘭。北海道から九州の、山地の雑木林などに自生する。3月から4月頃に咲くところから、「春蘭」と名付けられた。花にホクロのようなものが見えることから「ほくろ」、花が爺の髯と婆の頬かむりを合わせたように見えることから「じじばば」などとも呼ばれる。
花を塩漬けにして湯を注いだものは、蘭茶として祝い事に用いる。

【春蘭の俳句】

春蘭のあはれ花なきいほりかな  小沢碧童

▶ 春の季語になった花 見頃と名所

季語検索を簡単に 季語検索を簡単に 季語検索を簡単に 季語検索を簡単に

季語|アネモネ

晩春の季語 アネモネ

アネモネアネモネは、キンポウゲ科イチリンソウ属の多年草で、牡丹一華(ぼたんいちげ)、花一華(はないちげ)とも呼ばれる。アネモネ属は約100種が知られているが、一般的には園芸種のアネモネ・コロナリアを指すことが多い。
地中海沿岸原産で、明治初期に渡来した。3月から4月頃に赤白青紫などの花を咲かせる。

アネモネは、ギリシャ語の「風(anemos)」が語源になっている。ギリシャ神話には、西風の神ゼピュロスが恋したのが妖精アネモネだったとされる。また、愛を象徴する花でもあり、女神アフロディーテが恋した美少年アドニスが、戦神マルスの嫉妬の牙にかかり亡くなった時、アフロディーテの涙から咲いたともされる。

【アネモネの俳句】

アネモネはしをれ鞄は打重ね  高浜虚子

▶ 春の季語になった花 見頃と名所

季語検索を簡単に 季語検索を簡単に 季語検索を簡単に 季語検索を簡単に

季語|ミモザ

初春の季語 ミモザ

銀葉アカシア(ぎんようあかしあ)

ミモザミモザは、オーストラリア原産のマメ科アカシア属の植物の俗称で、主にフサアカシアを指す。本来は、マメ科オジギソウ属の植物の総称で、葉の形がよく似ていることから、フランスで誤用されて「ミモザ」の名が定着した。オジギソウの葉は、刺激によって閉じていくことから、身ぶりを主体とする劇「mimos」に因んで「ミモザ」と呼ばれていたが、アカシア属の植物にはそのような特徴はない。
夏の季語にアカシアの花があるが、これはマメ科ハリエンジュ属ニセアカシアである。本来は「ミモザ」と呼ばれるアカシア属のフサアカシアなどを「アカシア」と呼ぶべきであるが、日本では定着していない。
なお、ミモザとして華道で使われるのは、ハナアカシアとも呼ばれる「ギンヨウアカシア」であることが多い。葉が銀色を帯びている。

フサアカシアは、明治時代初期に渡来した。2月から4月頃に、香りのよい黄色い花をつける。
イタリアには「ミモザの日」があり、女性の日として、男性が女性に感謝の気持ちを込めてミモザをプレゼントすることになっている。

【ミモザの俳句】

ミモザ咲くベスビオの山曇る日は  有働亨

▶ 春の季語になった花 見頃と名所

季語検索を簡単に 季語検索を簡単に 季語検索を簡単に 季語検索を簡単に

季語|アカシアの花(あかしあのはな)

初夏の季語 アカシアの花

アカシヤの花(あかしやのはな)

アカシアの花日本でアカシアと呼ばれているのは、北アメリカ原産のマメ科ハリエンジュ属ニセアカシアである場合が多い。ミモザとも呼ばれるマメ科アカシア属の植物とは別種である。日本では、棘があるエンジュという意味で、「針槐(はりえんじゅ)」の別名があり、ウィーン万博から持ち帰った種子を1875年に東京大手町に植えて日本初の街路樹とした。この時に「アカシア」と呼ばれたために、現在でも「アカシア」の名が定着している。札幌のアカシア並木や、童謡「この道」のあかしやの花、歌謡曲「アカシアの雨がやむとき」は全て、このニセアカシアである。
ニセアカシアは痩せた土地でもよく育つため、当初は治山などに活用されたが、現在ではマツ林などを侵食する日本の侵略的外来種ワースト100に選ばれている。

ミモザ(アカシア)が3月から4月に黄色い花をつけるのに対し、ニセアカシアは4月から6月頃に白い花をつける。その蜜は「アカシアの蜂蜜」として上質な蜂蜜になり、花を酒につけ込めばアカシア酒となる。

【アカシアの花の俳句】

アカシヤの花こぼしつつ時を告ぐ  山口青邨

▶ 夏の季語になった花 見頃と名所

季語検索を簡単に 季語検索を簡単に 季語検索を簡単に 季語検索を簡単に

季語|樫の花(かしのはな)

晩春の季語 樫の花

樫の花樫は、ブナ科コナラ属の一群の総称で、アカガシ・アラカシ・イチイガシ・ウバメガシ・ウラジロガシ・オキナワウラジロガシ・シラカシ・ツクバネガシの8種がある。木質がひじょうに堅いことから「樫」の国字が当てられ、「かたし」が語源となっているとの説がある。古代から日本人に馴染み深い樹木であり、初代天皇である神武天皇は、白檮原宮(かしはらのみや・現在の奈良県橿原神宮のあたり)で天下を治めた。
樫の木は、種によって開花期が異なるものの、概ね3月から5月頃に花をつける。雄花と雌花を持つ風媒花で、花弁はない。

【樫の花の俳句】

樫の木の花にかまわぬ姿かな  松尾芭蕉

▶ 春の季語になった花 見頃と名所

季語検索を簡単に 季語検索を簡単に 季語検索を簡単に 季語検索を簡単に