季語|草虱(くさじらみ)

三秋の季語 草虱

藪虱(やぶじらみ)

草虱セリ科ヤブジラミ属ヤブジラミのことで、高さ約50センチ。全国の野原の藪などに生える二年草。
花期は5月から7月頃で、白い花を咲かせる。秋になる果実は鉤状の刺毛を持ち、衣類にくっつく。そのため「虱」の名を含む。秋の季語になっており、主にその果実を詠む。

【草虱の俳句】

けふの日の終る着物に草虱  山口誓子

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季語|朱鷺(とき)

三秋の季語 朱鷺

鴇(とき)・桃花鳥(とうかちょう・つき)

朱鷺ペリカン目トキ科トキ属トキは、学名を Nipponia nippon(ニッポニア・ニッポン)といい、日本を代表する鳥であった(ただし国鳥はである)。しかし、明治時代以降の羽毛目的の乱獲や農薬による影響などにより減少し、1981年に佐渡の5羽が保護されて野生絶滅した。1999年には中国産トキの贈呈を受け人工繁殖が始まり、2008年からは野生復帰の試みもなされている。現在までに数百羽が放鳥され、野生で生活している。なお、トキに亜種などはなく、中国産トキも日本産と同一種である。
朱鷺は秋の季語とされるが、秋には大きな集団をつくって行動していたことによる。朱鷺色の語源にもなった鳥であるが、その色が目立つのは春から夏にかててだと言われている。また、その色から桃花鳥とも呼ばれ、日本書紀には陵墓名として使われている。
古くは「つき」と呼ばれており、墓を表す奥津城(おくつき)と関係する鳥だったのかもしれない。古代エジプトではトートと呼ばれ、知恵を司る神だとされる。

【朱鷺の俳句】

狼も朱鷺も絶えたる国に生く  伊藤白潮

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季語|椋鳥(むくどり)

三秋の季語 椋鳥

椋鳥ムクドリは、スズメ目ムクドリ科に属する留鳥で、椋の実を好み、椋の木でよく観察されるために「椋鳥」の名がついている。
夏の繁殖期を過ぎると、大きな群れを形成して街路樹などで寝るようになるため、秋の夕方に目立つ鳥である。「ギャーギャー」と鳴く声は大きく、騒音と認識されることが多く、糞害も問題になっている。
俳諧歳時記栞草(1851年)では秋之部八月に分類され、「その声、に似て喧く、好んで群をなす」とある。

【椋鳥の俳句】

椋鳥渡る山に焚火を消しをれば  大野林火

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季語|鴫(しぎ)

三秋の季語 

鴫チドリ目シギ科に属する鳥の総称で、シギ科もヤマシギ属など16属に分かれ、約100種が知られている。代表種はヤマシギで、北海道では夏鳥、西日本では冬鳥となる。田圃でよく見られるタシギは、渡りの途中に飛来する旅鳥であり、春と秋によく見かける。
万葉集では大伴家持が

春まけてもの悲しきにさ夜ふけて 羽振き鳴く鴫誰が田にか棲む

と春に歌っているが、新古今和歌集に歌われ三夕の和歌としても知られる西行の

心なき身にもあはれは知られけり 鴫立つ沢の秋の夕暮れ

により、秋の景物との色合いが濃くなり、「連珠合璧集」(室町時代:一条兼良)では秋季に分類された。
西行法師ゆかりの地である湘南の大磯鴫立沢には、日本三大俳諧道場の一つに数え上げられる「鴫立庵」がある。1664年に崇雪が西行の旧跡に結んだ草庵で、後に大淀三千風が入り、第一世庵主となっている。

鴫には、熟慮しているように見えることをいう「鴫の看経」、回数が多いことをたとえる「鴫の羽掻き」といった慣用句がある。
「鴫」の字は国字であり、奈良時代には、田に来る鳥の代表種と見られていたことが分かる。シギの語源には諸説あるが「繁き」からきているとも言われている。

【鴫の俳句】

鴫たってなきものを何よぶことり  大淀三千風

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季語|時化(しけ)

三秋の季語 時化

時化悪天候のために海上が荒れることを「時化」と呼び、「湿気る(しける)」が語源になっていると考えられている。漁との関連で使用されることが多く、かつては、天候の悪化を予想しながら使われていたと言われる。
現在では気象用語にもなっており、波高が4mを超えると「しける」と言う。さらに、6mから9mまでの波高では「大しけ」、9mを超えると「猛烈にしける」と言う。
台風接近時に耳にすることが多く、最近になって秋の季語として使われ始めた。

【時化の俳句】

時化波の運河に魂を送りけり  加藤三七子

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季語|やんま

三秋の季語 やんま

蜻蜓(やんま)・鬼やんま(おにやんま)

やんま(ネアカヨシヤンマ)トンボ目不均翅亜目ヤンマ科の蜻蛉の総称であるが、オニヤンマ科やミナミヤンマ科、ムカシヤンマ科の蜻蛉、エゾトンボ科やサナエトンボ科に属する蜻蛉の大型のものもヤンマと称することがある。
通常は「蜻蛉」の子季語として秋の季語に分類されるが、種類によって活動時期は異なる。概ね、活動のピークは7月頃となるが、ヤンマの代表格であるギンヤンマの成虫は4月頃から11月頃まで見られ、オニヤンマは5月から10月頃まで見られる。

ヤンマ科に属するヤブヤンマやマルタンヤンマ、カトリヤンマなどは、黄昏時に捕食のために大群で飛び回る黄昏飛翔を行うことが知られている。オニヤンマは全長10センチを超える日本最大の蜻蛉であるが、黒地に黄色の紋を持つ大型のヤマトンボ科の蜻蛉は、誤認されて「鬼やんま」と呼ばれることが多い。

古くは、その飛翔力を称えて「ヱンバ(笑羽)」などと呼ばれていた。山に多く見られることから「ヤマ」と「ヱンバ」が絡まって、「ヤンマ」と呼ばれるようになったとの説がある。ちなみに「鬼やんま」の名は、いわゆる鬼のパンツの柄をもつところからきている。

【やんまの俳句】

鬼やんま鋭く通る不破の関  田川飛旅子

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季語|牛膝(いのこづち・ごしつ)

三秋の季語 牛膝

ゐのこづち(いのこづち)・猪子槌(いのこづち)・ふしだか・こまのひざ

牛膝ヒユ科イノコヅチ属の多年草で、木陰などの日の当りにくい場所に生えるため、ヒカゲイノコヅチとも呼ばれる。同属に、日向を好むヒナタイノコヅチがあり、こちらも「牛膝」と詠んで差し支えない。
8月から9月頃、淡緑色の小花を穂状につけ、そのあとにできる籾殻のような果実は服にくっつきやすく、「ひっつきむし」などとも呼ぶ。根を乾燥させたものは漢方薬になり、牛膝(ごしつ)と呼ぶ。夏場の若芽は食用になる。
茎の節が、猪のかかとににているために、「イノコヅチ」と呼ばれる。

【牛膝の俳句】

ゐのこづちむかし野原でつきしまま  平井照敏

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季語|花畑(はなばたけ)

三秋の季語 花畑

花畠(はなばたけ)花壇(かだん)花圃(かほ)花園(はなぞの)

花畑近代俳句では、「花畑」は概ね秋の季語とする。俳諧御傘(松永貞徳1651年)では「花畠」が春に置かれ、俳諧歳時記栞草(1851年)では「花圃(はなばたけ)」「花園」が春三月に、「花畠」が秋八月に置かれている。ただし俳諧歳時記栞草に、「花圃」「花園」は「種(うう)るところ」とあり、花を植える場所を指す意で分類されている。滑稽雑談(四時堂其諺1713年)では「花壇」を秋八月に分類し、「是も草花の多時を以て、秋とするならし」とある。

「花畑」と「花園」に明確な違いはないが、「花畑」はどちらかというと作物の延長線上にあり、下を向いて咲く花がある場所。それに対して「花園」は、上を向いて咲く花がある場所を指す傾向がある。
「お花畑」という季語もあるが、これは、近代になって登山が盛んになって生まれた季語であり、その花は高山植物を指し、夏の季語となる。

【花畑の俳句】

彳めば昴が高し花畑  松本たかし

▶ 秋の季語になった花 見頃と名所
▶ 俳句の季節「脳内お花畑からはじめる俳句」

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季語|カンナ(かんな)

三秋の季語 カンナ

花カンナ(はなかんな)・曇華(だんどく)・檀特(だんどく)

カンナカンナ科カンナ属カンナは、熱帯アメリカ原産の「檀特」の園芸品種としてつくられ、「ハナカンナ」と呼ばれる。葉が芭蕉に似ていることから、「美人蕉(びじんしょう)」と呼ぶこともある。ただし、通常「美人蕉」はヒメバショウを指す。
花は6月から10月中頃に咲く。花は独特の形状をしており、花弁のように見えるのは雄蕊で、本当の花弁は小さく目立たない。
日本へは江戸時代前期に、カンナの原種である檀特が渡来し、俳諧歳時記栞草(1851年)にも秋之部八月に「檀特花(だんどくくわ)」として立項されている。「檀特」の名は、仏陀の流した血がカンナになったという伝説から、ガンダーラに位置する苦行の地「檀特山」から取られた。

カンナは、茎の形状が似ていることから、ラテン語で「葦」を意味する「Kanna」が語源との説がある。

【カンナの俳句】

月明やカンナは土をつとはなれ  加藤楸邨

▶ 秋の季語になった花 見頃と名所

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季語|草の実(くさのみ)

三秋の季語 草の実

草の実の俳句と季語木にならない植物を「草」とか「草本」などと呼ぶが、日本に見られるものだけで6000種近くになる。俳句の世界では「草」と言えば山野草、人里植物、耕地雑草を指すが、これらを合わせると5000種になる。よって、実を結ぶ季節は秋に限られたものではないが、秋に実る植物は多い。「俳諧歳時記栞草」(1851年)にも、「諸草のたぐひ、春夏に花を開く者あれど、秋多き故、無名の草花を秋とす。実もまた然り」とある。

▶ 関連季語 秋草(秋)

【草の実の俳句】

いち早く枯れる草なれば実を結ぶ  野村朱鱗洞

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