季語|治聾酒(じろうしゅ)

仲春の季語 治聾酒

治聾酒春の社日(3月20日頃)、あるいは立春から5番目の戌の日(3月30日頃)に、土地の神に供える酒。また、この日に飲む酒をいう。春の社日には五穀豊穣を祈る。土をいじると土地の神の怒りにふれると言われている。この日に酒を飲むと、耳の遠いのがなおるという俗信がある。

【治聾酒の俳句】

治聾酒の淋しき齢となりにけり  小林康治

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季語|枸杞(くこ)

仲春の季語 枸杞

枸杞の芽(くこのめ)

枸杞ナス科クコ属の落葉低木。東アジア原産で、全国の日当たりのよい土手などの平地に自生する。
夏から秋にかけて紫色の花をつけ、秋に採れる実は枸杞酒やドライフルーツなどになる。枸杞が春の季語になるのは、若芽を摘んで和え物やお浸しなどにして食すからである。

【枸杞の俳句】

枸杞茂る中よ木歩の残り居る  富田木歩

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季語|帰雁(きがん)

仲春の季語 帰雁

帰る雁(かえるかり)行雁(ゆくかり)・雁帰る(かりかえる)・去ぬる雁(いぬるかり)・雁の別れ(かりのわかれ)・雁の名残(かりのなごり)

帰雁「雁」と呼ばれるマガン、カリガネ、コクガン、ハクガン、ヒシクイなどは冬鳥として日本で越冬し、2月頃から北方へ帰っていく。七十二侯の「鴻雁北(こうがんきたへかえる)」は4月中旬となり、越冬地ではほとんど見られなくなるが、渡りの中継地となる北海道ではよく観察されるという。
津軽地方には雁風呂という風習がある。羽根を休めるためにくわえてきたとされる枝が、雁が去ったあとの浜辺に残っていると、その雁は命を落としたものと考え、その枝で風呂を焚き、供養をしたという。

「行雁」は春の季語となるが、「雁行」は秋の季語となる。

▶ 関連季語 雁(秋)

【帰雁の俳句】

帰る雁田毎の月の曇る夜に  与謝蕪村
壁ちかくねまりて聞けり帰る雁  石橋秀野

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季語|晋子忌(しんしき)

仲春の季語 晋子忌

其角忌(きかくき)・晋翁忌(しんおうき)

晋子忌陰暦2月30日で、松尾芭蕉第一の門人其角の忌日。宝永4年2月30日(1707年4月2日)に47歳で亡くなった。辞世は、「鶯の暁寒しきりぎりす」。
「其角」の俳号は易経の「晋其角」からつけられたもので、「晋子」の別号もあるため、この日を「晋子忌」ともいう。

▶ 宝井其角

【晋子忌の俳句】

俗腸に晋子を祭る大酒かな  宇佐美不喚楼

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季語|雪崩(なだれ)

仲春の季語 雪崩

雪崩山の斜面に積もった雪が崩れ落ちる自然現象で、振動や気温の上昇などによって、結合していた雪の塊が崩れて発生する。積雪があるところではいつでも発生する可能性があるが、雪が融け始める春に発生しやすいと言える。
かつて表層雪崩は「あわ」、全層雪崩は「なで」などと呼ばれていたが、明治初頭に官林調査で「頽雪(なだれ)」に統一され、大正時代の末ころから「雪崩」が使われるようになった。語源は「なだれる」にあり、「傾れる」などと書き、崩れ落ちることを言った。
雪崩の初出は1076年の連歌で、前右衛門佐経仲歌合で澄覚法師が歌った「雪ふかみ夜半の嵐になだれして いとど越路はうづもれぬるらん」だと考えられている。

【雪崩の俳句】

遠雪崩ひとりの旅寝安からず  藤田湘子

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季語|残雪(ざんせつ)

仲春の季語 残雪

雪残る(ゆきのこる)残る雪(のこるゆき)

残雪春になっても融け残っている雪のこと。俳諧歳時記栞草(1851年)では、春之部正月に「残雪(のこりのゆき)」を分類し、続拾遺集にある一条前関白の「春なれどなほ風さゆる山かげにこほりてのこるこぞのしら雪」の和歌を載せる。
万葉集には柿本人麻呂の和歌が載る。

御食向かふ南淵山の巌には 降れるはだれか消え残りたる

ここにあるはだれは「斑雪」で、春になって降る雪のことである。
水無瀬三吟の宗祇の発句「雪ながら山本かすむ夕べかな」は、残雪のことだと言われている。

▶ 関連季語 春の雪(春)

【残雪の俳句】

雪残る頂一つ国境  正岡子規

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季語|名残雪(なごりゆき)

仲春の季語 名残雪

忘れ雪(わすれゆき)雪の果(ゆきのはて)・名残の雪(なごりのゆき)・雪の名残(ゆきのなごり)・雪の別れ(ゆきのわかれ)・涅槃雪(ねはんゆき)

名残雪春になっても消えずに残っている雪や、春に降る雪のことをいう。
「雪の果」と言うと、その冬最後に降る雪という意味合いが強くなる。これは、陰暦二月十五日の涅槃会前後に降る雪のことで、「涅槃雪」とも言う。

1974年に「かぐや姫」が発表した「なごり雪」は、1975年にイルカが歌って大ヒットした。またこの楽曲をモチーフとして、大林宣彦監督が同名映画を2002年に公開している。

▶ 関連季語 春の雪(春)
▶ 関連季語 淡雪(春)

【名残雪の俳句】

発心の小机作る雪の果  石田波郷

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季語|貝寄(かいよせ)

仲春の季語 貝寄

貝寄風(かいよせ)

貝寄聖徳太子命日(旧暦2月22日)に行われる四天王寺の聖霊会では、かつて大阪住吉の浜辺に打ち寄せられた貝殻から造花を作ったという。その貝殻は、3月下旬頃(新暦)に吹く冬の季節風の名残の西風によって打ち寄せられるものである。仏縁ゆえに、竜宮から捧げられるものだと言われていた。
現在、四天王寺の聖霊会は4月22日に行われているが、造花は貝殻ではなくなった。「貝寄風」も死語となりつつある。なお、大阪湾では西風が吹くと波が高くなる。

【貝寄の俳句】

貝寄る風の手じなや若の浦  松尾芭蕉

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季語|薇(ぜんまい)

仲春の季語 

ぜんまい・狗脊(ぜんまい)

薇(ぜんまい)ゼンマイ科ゼンマイ属ゼンマイは、シダ植物の一種。全国の、平地から山地までの水気の多い草原などに生える。
多年草であり、早春に胞子葉、やや遅れて栄養葉の若芽を出す。3月から5月頃の渦を巻いた栄養葉の若芽は、山菜として灰汁抜きをして食す。

鋼板を巻いて作られる「ぜんまい」は、この薇の若芽の渦に似ているところから名付けられた。「ぜんまい」の語源は、「千巻き」に由来するという説が有力である。

▶ 関連季語 蕨(春)

【薇の俳句】

ぜんまいののの字ばかりの寂光土  川端茅舎

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季語|茅花(つばな・ちばな)

仲春の季語 茅花

茅萱の花(ちがやのはな)

茅花茅花は、イネ科チガヤ属チガヤの花の事。全国の草地に群生し、雑草として扱われることがある。4月から6月頃に、白い綿毛に包まれた花穂を出す。サトウキビの近縁種でもあり、花穂には甘みがある。昔は子供のおやつ代わりになった。
茅花の花穂をなびかせる風は「茅花流し」と呼んで、夏の季語になる。「茅萱」や「茅」は秋の季語になる。
万葉集には「茅花」を歌った和歌が4首あり、紀女郎が大伴家持に贈った和歌に

戯奴がためわが手もすまに春の野に 抜ける茅花ぞ食して肥えませ

それに応えた大伴家持の和歌に

我が君に戯奴は恋ふらし給りたる 茅花を食めどいや痩せに痩す

がある。

【茅花の俳句】

夕べ淋しさや茅花茅花の明り持つ  高田蝶衣

▶ 春の季語になった花 見頃と名所

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