季語|朝凪(あさなぎ)

晩夏の季語 朝凪

朝凪朝方に起こる海辺の無風状態のこと。好天時には、陸と海の気温差のために、日中は海風、夜間は陸風が吹く。朝夕は、その切り替わり時に当たり、風が止まる時間がある。特に、海陸の温度差が大きくなる夏に顕著に表れる。

【朝凪の俳句】

朝凪や霞みて遠き島一つ  正岡子規

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季語|競べ馬(くらべうま)

初夏の季語 競べ馬

競馬(きそいうま・けいば)

競べ馬本来は、5月5日に京都の上賀茂神社の馬場で行われる「賀茂競馬」のことを指す。これは、今日の日本競馬の発祥とされるもので、1093年から行われている。天下泰平と五穀豊穣を祈る神事であり、馬を競わせることは「競馳(きょうち)」という。乗尻(のりじり)と呼ばれる騎手が、右方と左方に分かれて、二頭で早さを競う。

今日、JRA日本中央競馬会などが開催している「競馬」も夏の季語ととらえて差し支えはないが、「ダービー」として詠まれることが一般的である。

【競べ馬の俳句】

ぺちやんこの財布で競馬賭けてゐし  阿波野青畝

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季語|夜濯ぎ(よすすぎ)

晩夏の季語 夜濯ぎ

夜濯ぎ夜にする洗濯のことをいう。昼間の暑さを避けて夜に洗濯をしても、気温が高いために一晩で乾く。洗濯機のない頃、洗濯は主に女性が受け持ち、重労働であった。

【夜濯ぎの俳句】

夜濯ぎの更け来し水の澄みわたり  中村汀女

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季語|流し(ながし)

仲夏の季語 流し

流し「流し」とは、楽器を持って酒場などを回って歌を歌ったり、客のリクエストに応じて伴奏をしたりすることや、その芸人をいう。昭和初期から見られた営業形態であるが、カラオケの普及とともに減少傾向にある。
元は「新内流し」であり、これは、2人一組で三味線を弾き合わせながら街頭を歩く、新内節の修業の一つであった。江戸時代の末期から見られたものである。

【流しの俳句】

遠ざかる流しの三味にあはせ唄  安田蚊杖

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季語|代掻き(しろかき)

初夏の季語 代掻き

田掻(たかき)

代掻き水田の整地作業のことで、種まきから30日、田植えの5日ほど前に行う。行う時期は地方や農家によって異なるが、5月頃となる。
古くは牛馬を用いて行った作業であるが、現代ではトラクターが主役となっている。代掻きを行う前日には、田圃に水を張っておかなければならない。

代掻きは、田圃を平らにして水持ちをよくさせるとともに、雑草などを取り除いて有機物豊富な肥えた状態にする目的がある。また、田植えなどの作業性向上にも必要な作業である。
「代」とは、田地のことで、古代令制前の田地の測量単位でもあった。一代とは稲1束(米五升)を収穫できる面積で、一段(一反)の50分の1であった。

【代掻きの俳句】

夜を旅に代掻く小田の行き戻り  松尾芭蕉

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季語|夜鷹(よたか)

三夏の季語 夜鷹

蚊吸鳥(かすいどり)

夜鷹ヨタカ目ヨタカ科ヨタカ属の鳥。日本には、インドネシアなどで越冬していたものが夏鳥として飛来し、繁殖活動を行う。
夜行性で、昼間は木に擬態して休む。大きな口を開けて飛翔し、主に昆虫を食す。
夜に活動し、鷹のような羽毛を持つところから、「夜鷹」と名付けられたと考えられる。宮沢賢治の童話に「よだかの星」があるが、醜い鳥として描かれている。

江戸時代に、辻に立って商売をした最下層の遊女も、「夜鷹」と呼ばれた。これは、夜行性のヨタカに掛けてつけられた呼び名である。また、夜間に屋台で商売をした蕎麦屋は、「夜鷹蕎麦」と呼ばれた。夜鷹蕎麦は冬の季語になっている。

【夜鷹の俳句】

夜鷹鳴き月またくらしやぶれがさ  水原秋桜子

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季語|ハンカチ

三夏の季語 ハンカチ

ハンケチ汗拭(あせぬぐい)

ハンカチ英語の「handkerchief」のことで、日本ではハンカチーフ、それを略してハンカチ、ハンケチという。
紀元前3000年頃の古代エジプトには、既にハンカチは存在していたと考えられている。ハンカチが正方形になったのは、マリー・アントワネットの提言によると言われている。

刺繍が施された四角いハンカチが日本で普及したのは、明治時代に入ってからである。それまでは、汗拭という小さな手拭が、ハンカチの役目を担っていた。
ハンカチはファッション的要素も大きい生活グッズであるが、俳句の世界では、汗を拭くための道具と見なし、夏の季語になる。

近年では、ハンカチを取り上げた芸術作品も多く、映画「幸福の黄色いハンカチ」や1976年のヒット曲「木綿のハンカチーフ」は特によく知られている。

【ハンカチの俳句】

たはむれにハンカチ振つて別れけり  星野立子

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季語|鳧(けり)

三夏の季語 

水札(けり)

鳧チドリ目チドリ科タゲリ属ケリ。日本で春夏に繁殖する。中部以西には留鳥として生息するものが多いが、東北や関東のものは夏鳥として東南アジアなどから渡ってくるものが多い。水田や湿地などで、昆虫や魚、動物などを捕食して生活する。警戒心が強く、カラスなどの外敵が近付くと、鳴きながら威嚇する。この時の鳴き声が「ケリッ」と聞こえることから、「ケリ」の名がついた。
俳諧歳時記栞草(1851年)には夏之部五月に「鳧羹(けりのあつもの)・鳧炙(けりのあぶりもの)」があるが、今日の歳時記にある「梟の羹(ふくろうのあつもの)」である。古代中国では端午の節句に、これを悪鳥として、羹や炙にして百官に下して食べたという。

同属にタゲリという冠羽を持った「田鳧」があるが、こちらは冬鳥として飛来し、冬の季語になる。
「けりをつける」の「けり」は、助動詞から来ているが、「鳧を付ける」と書くこともある。

【鳧の俳句】

水札の子の浅田に渡る夕かな  久村暁台

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季語|花筵(はなむしろ)

晩春の季語 花筵

花筵花筵は、春の季語として用いられる時と、夏の季語として用いられる時がある。通常は、花見で使う筵の意で用い、「花見茣蓙」とも呼んで春の季語となる。また、一面に咲きそろった草花や、桜が地面に散ったさまを筵にたとえて「花筵」と呼び、春の季語にすることもある。
花模様を持つ茣蓙を「花茣蓙」というが、これを「花筵」と呼ぶことがあり、この場合は夏の季語となる。

【花筵の俳句】

風立つや坐り直して花筵  岸田稚魚

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季語|萬緑(ばんりょく)

三夏の季語 萬緑

萬緑一面のみどりを指す言葉で、1939年(昭和14年)に詠まれた中村草田男の代表的な俳句「萬緑の中や吾子の歯生え初むる」から生まれた夏の季語。元になっているのは、北宋の王安石の詠柘榴詩にある「万緑叢中紅一点」である。現在では、多くの男性の中に一人だけ女性がいることをいい、一つだけ目立つものがまじっていることをいう慣用句になっている。
草田男は、1946年10月に創刊した俳誌にも「萬緑」の名をつけた(2017年廃刊)。

【萬緑の俳句】

萬緑の中や吾子の歯生え初むる  中村草田男

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