俳句

季語|松茸(まつたけ)

晩秋の季語 松茸

松茸キシメジ科キシメジ属キシメジ亜属マツタケ節のキノコの一種で、秋の赤松林などで子実体(キノコ)が見られる。日本では高級食材として利用され、「香り松茸味しめじ」の慣用句でも知られる。マツタケオールによる独特の芳香を持っている。ただし、海外では不快な臭いだとされることが多い。
松茸が採れる山は「松茸山」と呼ばれ、痩せた乾燥気味の赤松林であることが多い。松茸の傘が開き切ってしまえば、味も香りも落ちるため、地表から少し顔を出したタイミングで採取しなければならない。近年では松枯れなどの影響で国産のものは減少しており、韓国や中国産のものなどが多く出回っている。

古くから日本人に親しまれてきた食材であり、万葉集にある

高松のこの峰も狭に笠立てて 満ち盛りたる秋の香のよさ

も、松茸を歌ったものだとされている。
俳諧歳時記栞草(1851年)では秋之部八月に分類され、「山城の北山の産、最も佳也」とある。

【松茸の俳句】

松茸や知らぬ木の葉のへばりつく  松尾芭蕉

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季語|朱鷺(とき)

三秋の季語 朱鷺

鴇(とき)・桃花鳥(とうかちょう・つき)

朱鷺ペリカン目トキ科トキ属トキは、学名を Nipponia nippon(ニッポニア・ニッポン)といい、日本を代表する鳥であった(ただし国鳥はである)。しかし、明治時代以降の羽毛目的の乱獲や農薬による影響などにより減少し、1981年に佐渡の5羽が保護されて野生絶滅した。1999年には中国産トキの贈呈を受け人工繁殖が始まり、2008年からは野生復帰の試みもなされている。現在までに数百羽が放鳥され、野生で生活している。なお、トキに亜種などはなく、中国産トキも日本産と同一種である。
朱鷺は秋の季語とされるが、秋には大きな集団をつくって行動していたことによる。朱鷺色の語源にもなった鳥であるが、その色が目立つのは春から夏にかててだと言われている。また、その色から桃花鳥とも呼ばれ、日本書紀には陵墓名として使われている。
古くは「つき」と呼ばれており、墓を表す奥津城(おくつき)と関係する鳥だったのかもしれない。古代エジプトではトートと呼ばれ、知恵を司る神だとされる。

【朱鷺の俳句】

狼も朱鷺も絶えたる国に生く  伊藤白潮

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季語|椋鳥(むくどり)

三秋の季語 椋鳥

椋鳥ムクドリは、スズメ目ムクドリ科に属する留鳥で、椋の実を好み、椋の木でよく観察されるために「椋鳥」の名がついている。
夏の繁殖期を過ぎると、大きな群れを形成して街路樹などで寝るようになるため、秋の夕方に目立つ鳥である。「ギャーギャー」と鳴く声は大きく、騒音と認識されることが多く、糞害も問題になっている。
俳諧歳時記栞草(1851年)では秋之部八月に分類され、「その声、に似て喧く、好んで群をなす」とある。

【椋鳥の俳句】

椋鳥渡る山に焚火を消しをれば  大野林火

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季語|坂鳥(さかどり)

晩秋の季語 坂鳥

坂鳥朝早く山を越えていく小鳥の群をいう。「軽皇子宿于安騎野時柿本朝臣人麻呂作歌」と題された万葉集にある柿本人麻呂の長歌に「坂鳥の朝越えまして」とあり、「坂鳥の」は「朝越ゆ」に掛かる枕詞となっている。

【坂鳥の俳句】

坂鳥の胸をうたるる笞かな  久村暁台

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季語|鴫(しぎ)

三秋の季語 

鴫チドリ目シギ科に属する鳥の総称で、シギ科もヤマシギ属など16属に分かれ、約100種が知られている。代表種はヤマシギで、北海道では夏鳥、西日本では冬鳥となる。田圃でよく見られるタシギは、渡りの途中に飛来する旅鳥であり、春と秋によく見かける。
万葉集では大伴家持が

春まけてもの悲しきにさ夜ふけて 羽振き鳴く鴫誰が田にか棲む

と春に歌っているが、新古今和歌集に歌われ三夕の和歌としても知られる西行の

心なき身にもあはれは知られけり 鴫立つ沢の秋の夕暮れ

により、秋の景物との色合いが濃くなり、「連珠合璧集」(室町時代:一条兼良)では秋季に分類された。
西行法師ゆかりの地である湘南の大磯鴫立沢には、日本三大俳諧道場の一つに数え上げられる「鴫立庵」がある。1664年に崇雪が西行の旧跡に結んだ草庵で、後に大淀三千風が入り、第一世庵主となっている。

鴫には、熟慮しているように見えることをいう「鴫の看経」、回数が多いことをたとえる「鴫の羽掻き」といった慣用句がある。
「鴫」の字は国字であり、奈良時代には、田に来る鳥の代表種と見られていたことが分かる。シギの語源には諸説あるが「繁き」からきているとも言われている。

【鴫の俳句】

鴫たってなきものを何よぶことり  大淀三千風

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季語|時化(しけ)

三秋の季語 時化

時化悪天候のために海上が荒れることを「時化」と呼び、「湿気る(しける)」が語源になっていると考えられている。漁との関連で使用されることが多く、かつては、天候の悪化を予想しながら使われていたと言われる。
現在では気象用語にもなっており、波高が4mを超えると「しける」と言う。さらに、6mから9mまでの波高では「大しけ」、9mを超えると「猛烈にしける」と言う。
台風接近時に耳にすることが多く、最近になって秋の季語として使われ始めた。

【時化の俳句】

時化波の運河に魂を送りけり  加藤三七子

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季語|やんま

三秋の季語 やんま

蜻蜓(やんま)・鬼やんま(おにやんま)

やんま(ネアカヨシヤンマ)トンボ目不均翅亜目ヤンマ科の蜻蛉の総称であるが、オニヤンマ科やミナミヤンマ科、ムカシヤンマ科の蜻蛉、エゾトンボ科やサナエトンボ科に属する蜻蛉の大型のものもヤンマと称することがある。
通常は「蜻蛉」の子季語として秋の季語に分類されるが、種類によって活動時期は異なる。概ね、活動のピークは7月頃となるが、ヤンマの代表格であるギンヤンマの成虫は4月頃から11月頃まで見られ、オニヤンマは5月から10月頃まで見られる。

ヤンマ科に属するヤブヤンマやマルタンヤンマ、カトリヤンマなどは、黄昏時に捕食のために大群で飛び回る黄昏飛翔を行うことが知られている。オニヤンマは全長10センチを超える日本最大の蜻蛉であるが、黒地に黄色の紋を持つ大型のヤマトンボ科の蜻蛉は、誤認されて「鬼やんま」と呼ばれることが多い。

古くは、その飛翔力を称えて「ヱンバ(笑羽)」などと呼ばれていた。山に多く見られることから「ヤマ」と「ヱンバ」が絡まって、「ヤンマ」と呼ばれるようになったとの説がある。ちなみに「鬼やんま」の名は、いわゆる鬼のパンツの柄をもつところからきている。

【やんまの俳句】

鬼やんま鋭く通る不破の関  田川飛旅子

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季語|阿波踊(あわおどり)

初秋の季語 阿波踊

阿波踊阿波国(徳島県)発祥の盆踊りで、日本三大盆踊りの一つ。現在では全国的な広がりを見せ、高円寺阿波おどりは本場に迫る規模を持つ。会場によって開催日は異なるが、本場徳島市の阿波踊は、8月12日から8月15日の間に開催され、「連(れん)」と呼ぶ踊りの集団が全国から集結し、桟敷席に囲まれた会場や通りを練り歩く。また、「踊る阿呆に見る阿呆、同じ阿呆なら踊らな損々」と歌われるように、飛び入り参加できる「にわか連」があったりなど、誰でも参加できるのが特徴である。
念仏踊りに起源をもつという考えがあるが、地元では、徳島藩藩祖の蜂須賀家政が無礼講として許可したことが起源だとされている。

▶ 関連季語 踊(秋)

【阿波踊の俳句】

手をあげて足をはこべば阿波踊  岸風三樓

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季語|不知火(しらぬい・しらぬひ)

仲秋の季語 不知火

不知火旧暦7月の晦日に、八代海(不知火海)や有明海に現れる怪火で、千灯籠(せんとうろう)・竜灯(りゅうとう)とも呼ばれる。現代では、蜃気楼の一種だと考えられており、その正体は漁火だとされる。
日本書紀の景行天皇十八年五月壬辰の朔に、人の火ではないものに導かれて、八代県の岸に着くことができたという話が出る。このことにより、現在の熊本県を「火の国」と名付けたという。ただし、肥後の國風土記には、日本書紀と同じ説話に触れるも、さかのぼる崇神天皇の時代、空から火が降って山に燃え広がったことをもとに、「火の国」と名付けたという話がある。
「不知火」はいつから使い始められた言葉であるのかは分かっていないが、万葉集には既に、筑紫にかかる枕詞として三首に歌われている。内の二首の長歌には「しらぬひ筑紫の国」と歌われ、本来は肥後の海の怪火を指したものではないのかもしれない。三巻の「沙彌満誓、綿を詠める歌一首」では、

しらぬひ筑紫の綿は身につけて いまだ著ねど暖かに見ゆ

と歌われ、縫物との関連付けが見られる。

【不知火の俳句】

不知火でないかもしれぬ眠たくて  正木ゆう子

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季語|牛膝(いのこづち・ごしつ)

三秋の季語 牛膝

ゐのこづち(いのこづち)・猪子槌(いのこづち)・ふしだか・こまのひざ

牛膝ヒユ科イノコヅチ属の多年草で、木陰などの日の当りにくい場所に生えるため、ヒカゲイノコヅチとも呼ばれる。同属に、日向を好むヒナタイノコヅチがあり、こちらも「牛膝」と詠んで差し支えない。
8月から9月頃、淡緑色の小花を穂状につけ、そのあとにできる籾殻のような果実は服にくっつきやすく、「ひっつきむし」などとも呼ぶ。根を乾燥させたものは漢方薬になり、牛膝(ごしつ)と呼ぶ。夏場の若芽は食用になる。
茎の節が、猪のかかとににているために、「イノコヅチ」と呼ばれる。

【牛膝の俳句】

ゐのこづちむかし野原でつきしまま  平井照敏

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