季語|筒鳥(つつどり)

三夏の季語 筒鳥

筒鳥カッコウ目カッコウ科ツツドリは、東南アジアなどから夏鳥として飛来するホトトギスによく似た鳥で、主に毛虫を食べる。5月から6月頃に、山地の森林内でウグイス科の鳥類に托卵して繁殖する。
その鳴き声が、紙筒の口を叩く音に似ていることから、筒鳥とされた。東北地方などでは、「トット(ツツドリ)鳴いたら粟をまけ、カッコウ鳴いたら豆をまけ、ホトトギス鳴いたら田植えせよ」などと言われ、タネマキドリと呼ぶ地方もあった。

【筒鳥の俳句】

筒鳥の霧重くなりし声音かな  大須賀乙字

【筒鳥の鳴き声】
ホトトギスと似ているが、ホトトギスより一回り大きい。その鳴き声は「ポポ ポポ」などと聞きなす。(YouTube 動画)

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季語|大瑠璃(おおるり)

三夏の季語 大瑠璃

大瑠璃ヒタキ科オオルリ属オオルリは、ウグイスコマドリとともに日本三鳴鳥のひとつに挙げられる鳥で、日本へは繁殖のために夏鳥として東南アジアからやってきて、4月から10月頃に山地で姿を見ることができる。その美しい囀りは、雄が雌を呼ぶものであり、沢沿いの木の先端で囀っていることが多い。
雌は茶褐色であるが、雄の背面は美しい青色であるため、「大瑠璃」の名がついた。

【大瑠璃の俳句】

大瑠璃や岨高く額も花をそふ  水内鬼灯

【大瑠璃の鳴き声】
「ピピールリ、ピーリ」などと聞きなす。渓流の近くで囀ることが多いため、録音は難しいとされる。(YouTube 動画)

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季語|麦茶(むぎちゃ)

三夏の季語 麦茶

麦湯(むぎゆ)

麦茶殻付きの大麦の種子を焙煎して煮出したり浸出したりして作った飲料で、麦湯とも言う。初夏は大麦の収穫時期にあたるため、古くから夏場に好まれて飲用された。近年では冷蔵庫で冷やしたり、氷を入れて飲むことが多く、体温を下げる効果もあることから、麦茶は夏の飲料として定着している。
麦茶の歴史は古く、平安時代には既に麦湯が飲用されていた。普及しているティーバッグ麦茶は、常陸屋本舗が1963年に発売したのが始まりである。
1986年には、全国麦茶工業協同組合が、夏の始まりとも言える6月1日を麦茶の日に制定している。

【麦茶の俳句】

どちらかと云へば麦茶の有難く  稲畑汀子

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季語|蚤(のみ)

三夏の季語 

蚤節足動物門昆虫綱ノミ目に属する微小な昆虫で、世界で約1800種が知られている。昆虫ではあるが翅はなく、脚が発達していてよく跳ね、その跳躍力は体長の100倍に達する。成虫は動物の血を吸って生活し、人に寄生するものとしてヒトノミも存在するが、日本では衛生状態の向上によって減少しているため、普段目にするのはネコノミやイヌノミがほとんどである。ただし、これらの蚤も、人の血を吸う。吸血部は激しい痒みを生じる。伝染病の媒介者としてもよく知られ、ネズミノミはペストを媒介する。
古くから人間と関わってきた生物であり、「蚤の心臓」など、様々な慣用句が生まれている。露天の古物市を「蚤の市」と呼んだりするが、これには、蚤がついた古着が主商品となったことに由来するとの説もある。
「のみ」の語源は、人間の血を吸うことを「飲む」と表現したところにあるとの説がある。

【蚤の俳句】

切られたる夢は誠か蚤の跡  宝井其角

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季語|蝙蝠(こうもり)

三夏の季語 蝙蝠

かわほり・かはほり・蚊食鳥(かくいどり)

蝙蝠哺乳類翼手目に属する。世界では約1000種が知られており、日本では家蝙蝠とも呼ばれるアブラコウモリなど35種が生息している。蝙蝠は、天鼠(てんそ)や飛鼠(ひそ)とも呼ばれ、その名の通り、空を飛ぶ鼠のような生物である。夜行性の昆虫などを捕食する種類が多く、それらは視力は発達せず、超音波を用いた反響定位を行いながら飛行する。
近年では、新型コロナウイルス感染症の宿主として注目された蝙蝠であるが、その他にも狂犬病など多くの感染症のキャリアとなることでも知られている。

俳諧歳時記栞草(1851年)では夏之部兼三夏物に分類し、「夏出て冬蟄す」とある。西洋では吸血鬼のイメージと繋がる。

【蝙蝠の俳句】

蝙蝠や暮れては会へぬ人なれば  河原白朝

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季語|海猫(うみねこ)

三夏の季語 海猫

ごめ・夏鴎(なつかもめ)

海猫チドリ目カモメ科カモメ属ウミネコ。同属のカモメは冬鳥として日本に渡ってくるため、「冬鴎」として冬の季語になるが、海猫は、夏場に繁殖のために南下してくるものや、留鳥として一年中見られるものがいる。このため、近年までは他の季語とともに詠まれることが多かったが、最近では夏の季語として認識されることが多く、「夏鴎」とも呼ばれる。
「波にチャップチャップ浮かんでる」と歌われた「かもめの水兵さん」のイメージや、日本郵便の「カモメール」から、カモメに夏を連想する者も多いが、夏に見られるカモメは「海猫」である。

「海猫」の名は、鳴き声が猫ににているところから来ている。別称の「ごめ」は、オオセグロカモメとともに使われる名前であり、漁師の守り神としての「加護女(かごめ)」からの転訛だという説がある。

青森県八戸市の蕪島、岩手県陸前高田市の椿島、山形県酒田市の飛島、宮城県女川町の江島、島根県出雲市の経島が、ウミネコ繁殖地として国の天然記念物に指定されている。

【海猫の俳句】

海猫鳴くや鉄路の終は潮くさき  岡本眸

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季語|夏酒(なつざけ)

三夏の季語 夏酒

夏酒特定の種類の酒を指すのではなく、夏に飲む酒を「夏酒」と呼ぶ。夏の季語になる「酒」には、焼酎ビール甘酒蝮酒冷酒煮酒などがある。
近年では、夏の日本酒の販促のために「夏酒」という、夏でもスッキリ飲める日本酒のカテゴリーが生まれている。

【夏酒の俳句】

夏酒やわれと乗りこむ火の車  立花北枝



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季語|鵺(ぬえ)

三夏の季語 

虎鶫(とらつぐみ)・鵺鳥(ぬえどり)

鵺鵺は、トラツグミのことであるが、「ヒョーヒョー」と薄気味悪く鳴く声から、猿の顔、狸の胴体、虎の手足、蛇の尾を持つ想像上の生物をも生み出した。この想像上の生物は、平家物語の「鵺の事」に取材し、謡曲にもなっている。
古事記の八千矛の神の歌物語に、他の鳥と並んで「青山に鵼(ぬえ)は鳴きぬ」と出てくるところから、古くから鳥と認識されていたものと考えられる。万葉集には鵺鳥として6首に歌われ、「うらなけ」「片恋づま」「のどよふ」の枕詞となっている。柿本人麻呂には

久方の天の川原に鵺鳥の うら嘆けましつすべなきまでに

の和歌がある。
俳諧歳時記栞草(1851年)では、秋の部八月に分類されている。

トラツグミは、留鳥または漂鳥として周年生息する鳥で、北海道では夏鳥として見られる。山地の広葉樹林を棲み処とし、夏場に繁殖する。その独特の鳴き声は、雄の縄張り宣言であり、夜間に聞かれる。

【鵺の俳句】

頼政も鵺も昔の宿帳に  高浜虚子

【鵺の鳴き声】
鵺とも呼ばれるトラツグミは、体長30センチほどの鳥。夜間に気味悪く鳴くため、「幽霊鳥」とか「地獄鳥」と呼ばれることもある。(YouTube 動画)

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季語|蟻(あり)

三夏の季語 

蟻の道(ありのみち)蟻の塔(ありのとう)蟻塚(ありづか)

蟻ハチ目アリ上科アリ科に属する昆虫の総称。日本に生息する主なものに、アミメアリ・トビイロケアリ・サムライアリ・ヒメアリ・イエヒメアリなどがある。通常は土壌に穴を掘って巣をつくり、女王蟻・雄蟻・兵隊蟻・働き蟻で構成される。兵隊蟻や、蟻の大部分を占める働き蟻は全て雌である。働き蟻は女王や幼虫などの世話、餌の運搬などの仕事を分担する。餌の運搬は老齢蟻が担当することが多い。
繁殖は年一回であり、夏場に翅を持った雄蟻と翅を持った新女王蟻が現れ、それぞれ巣を離れて結婚飛行を行い、他の巣の個体と交尾する。一生分の精子を得た新女王蟻は翅を落として新しい巣で卵を産み続けるが、雄蟻は交尾後すぐに死んでしまう。卵は、餌やフェロモンによって女王蟻になったり働き蟻になったりする。

身近な昆虫のため、「蟻」を使った慣用句は多く、群衆が列を作ってそぞろ歩く「蟻の熊野詣」や、油断大敵を言った「千里の堤も蟻の穴から」などの言葉がある。最近では社会構成を蟻にたとえる「働きアリの法則」がよく使われる。これは、よく働く蟻と、普通に働く蟻と、さぼっている蟻の割合が、2:6:2になることを示したものである。
文学では、イソップ物語の「アリとキリギリス」がよく知られる。

シロアリは、ゴキブリ目シロアリ下目に属し、この項目における蟻とは別種である。また、蟻の巣として「蟻の塔」「蟻塚」を季語として利用することもある。蟻の中にはエゾアカヤマアリのように蟻塚をつくるものもあるが、目につきやすいのはシロアリの蟻塚である。ちなみに白蟻も夏の季語となる。

【蟻の俳句】

たゞ蟻の為すまゝに蝶の衰へる  嶋田青峰

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季語|蟻地獄(ありじごく)

三夏の季語 蟻地獄

あとずさり

蟻地獄ウスバカゲロウの幼虫のことを、蟻地獄と言う。軒下等の砂地にすり鉢状の巣をつくり、などの生物が落下してくるのをつかまえて体液を吸う。後方にしか進めないことから、「あとずさり」とも呼ばれる。成虫になるとウスバカゲロウ(薄翅蜉蝣)と呼ばれ、これも夏の季語になる。ただし、ウスバカゲロウはアミメカゲロウ目であり、儚いことの象徴のような存在であるカゲロウ目の蜉蝣(秋の季語となる)とは別種である。
ウスバカゲロウの幼虫期間は数年に及ぶので一年中見られるが、夏場は終齢幼虫として体の大きくなった個体が存在する上、餌となる蟻の活動が活発なために夏の季語となっている。常に待ちの姿勢で生きているが、餌がなくても数カ月生きていられるという。

すり鉢状の巣のこと自体を「蟻地獄」と言うこともあり、蟻地獄は脱け出せない苦しい状況のことを指す言葉にもなっている。

【蟻地獄の俳句】

蟻地獄みなゆふかげを地獄にし  山口誓子

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