季語|鮑(あわび)

三夏の季語 

鮑の俳句と季語鮑は殻に渦巻きがあり、ミミガイ科の大型の巻貝に分類される。鮑と呼ばれるものは1種類ではなく、クロアワビ・メガイアワビ・マダカアワビ・エゾアワビがある。北海道から九州までの水深数十メートルまでの岩礁に生息し、クロアワビ⇒メガイアワビ⇒マダカアワビの順に深いところで生活している。
鮑の殻の背面には4、5個の穴が開いているが、これは排泄物や卵、精子などを放出するためのものである。

クロアワビ・メガイアワビ・マダカアワビの旬は夏であるが、北海道や東北でとれるエゾアワビは冬が旬である。高級食材として流通しており、中国の干し鮑は「乾鮑」と書き、大変な高値で取引されている。

日本では、縄文時代の貝塚からも貝殻が出土しており、古くから食用にされていたと考えられている。また、万葉集にも「鰒」の字で登場し、

伊勢の海人の朝な夕なに潜くといふ 鰒の貝の片思にして

の和歌は、片思いの洒落言葉「磯の鮑の片想い」の元になっている。
鮑は神聖なものと考えられ、古くは長寿をもたらす食物と考えられていた。そこから熨斗鮑が生まれている。また、殻を出入り口に吊すと魔よけの効果があると考えられてきた。

【鮑の俳句】

うかみくる顔のゆがめり鮑採  伊藤柏翠

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季語|いさき

三夏の季語 いさき

いさきの俳句と季語スズキ目イサキ科スズキ目イサキ。漢字では、「伊佐木」「伊佐幾」「鶏魚」などと書く。東北以南の外洋に面した岩礁に生息する、体長約40センチの白身魚である。
産卵期は6月から9月で、産卵前のものは脂が乗っており旨い。特に、6月から7月に獲れるものは「麦わらいさき」「梅雨いさき」と呼ばれ、絶品である。

「磯」に棲む「魚(き)」で「イソキ」と呼ばれていたものが転訛したとも、幼魚の頃にある「斑(いさ)」が語源であるとも言われている。
また、トサカのような背びれを持つところから漢字では「鶏魚」と書くようになったとも言われている。

【いさきの俳句】

汐よしとうなづきて出づいさき船  松崎鉄之介

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季語|鯵(あじ)

三夏の季語 

鯵売(あじうり)

鯵の季語俳句スズキ目アジ科アジ亜科に属す青魚で、主にマアジを指す。「ぜんご」「ぜいご」と呼ばれる体側の稜鱗が特徴であり、白身魚と赤身魚の中間の身質を持つ。
マアジは北西太平洋の固有種で、北海道から南シナ海までに分布し、春には北上、秋には南下する回遊性のものと、居つき型(瀬つき)のものが存在する。西日本では1月から5月、東日本では5月から7月が産卵期であり、回遊性のものは3月頃の九州にはじまり、5月に房総沖、9月に三陸沖で旬となる。居つき型の鯵の旬は夏で、その代表格である「関アジ」はブランド魚として有名であり、大分県大分市佐賀関の名産である。
体側に縦帯があるシマアジは、「縞鯵」「島鯵」と書き、1メートルにもなる大型の鯵で、最高級のアジとも言われている。6月から8月が旬である。

味が良いことから「アジ」の名がついたとされる。ちなみに「鯵」は国字ではないが、「旨くて参る」の意味を持っていると説明されることがある。
「俳諧歳時記栞草」には夏之部五月に分類され、「大和本草」の引用で「東南の海に生るもの、形肥大たり。夏秋、肉多く味美なり。冬春、美ならず。又室鯵・島鯵あり、味劣る」とある。

【鯵の俳句】

活鯵や江戸潮近き昼の月  小林一茶
世の中を知らずかしこし小鯵売  宝井其角

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季語|飛魚(とびうお)

三夏の季語 飛魚

飛魚の俳句と季語ダツ目トビウオ科の魚で、世界に50種ほどが知られている。日本でも30種ほどが獲れ、ツクシトビウオやハマトビウオ、ホントビウオがよく揚がる。日本海側では、顎が落ちるほど美味いために「アゴ」と呼ばれるようになった(学名からきたなどの異説もある)。
回遊する魚で、春から夏にかけて日本近海を北上して産卵し、秋に南下する。春にはハマトビウオがよく獲れて、「春トビ」と呼ぶ。夏に獲れるのはツクシトビウオ・ホソトビウオ・ホントビウオで、「夏トビ」と呼ぶ。
宮崎の都井岬の、光に集まる習性を利用した「飛魚すくい」は夏の風物詩であり、長崎の平戸のアゴ漁は秋の風物詩である。

青魚で胸鰭が発達しており、時速50キロメートルほどで数百メートル滑空することが可能である。滑空するのは、主に捕食者から逃げるためであると考えられているが、航海する船舶の下から飛び出すのもよく目撃される。
刺身にしても美味で、塩焼きやフライなど、様々に料理される。島根県では県魚となっており、「アゴ野焼き」と呼ばれる蒲鉾が有名である。また、飛魚の卵はトビッコと呼ばれ、軍艦巻きなどにして食す。

【飛魚の俳句】

飛魚の干物にされてしまひけり  鈴木真砂女

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季語|穴子(あなご)

三夏の季語 穴子

穴子の俳句と季語ウナギ目アナゴ科に属する、鱗のない魚。同じ科にチンアナゴなどもあるが、「穴子」と言った場合にはマアナゴを指す。夏場は日本各地の浅い海の底に生息し、雄は50センチ、雌は100センチになる。冬場は、水深の深い海に移動する。産卵は、6月から9月に沖ノ鳥島南方沖に移動して行う。
旬は7月から8月で、細長い塩化ビニル管を用いたアナゴ筒漁などで獲られる。天ぷらや蒲焼など、様々に調理して食されるが、血液や粘膜に微毒があるため、刺身にはしない。稚魚は「ノレソレ」「ベラタ」「ハナタレ」などと呼んで、これも食用にする。

砂泥に穴を掘り、昼間は頭を穴の中から出しているために、「穴子」の名がついた。

【穴子の俳句】

ひらかれて穴子は長き影失ふ  上村占魚

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季語|帆立貝(ほたてがい)

三夏の季語 帆立貝

帆立貝の俳句と季語帆立貝は、膨らみが大きい貝殻と小さい貝殻が合わさる二枚貝であり、イタヤガイ科に属する。日本では、北海道・東北の浅い海から捕れる。
帆立貝の旬は、貝柱が最も大きくなる6月から8月。主に貝柱が食され、貝柱の周りにはヒモと呼ばれる外套膜がある。
敵に襲われると、貝殻を開閉し、外套膜から水を吐きながら泳いで逃げる。平たい方の貝を帆として風を受け、膨らみがある方の貝を船体にして海を走るという俗説から、「帆立貝」の名がつき、単に「帆立」とも呼ぶ。貝殻を扇に見立てて「海扇」という名もある。
帆立貝に似たものに、より南方に生息するイタヤガイやヒオウギガイなどがある。

サンドロ・ボッティチェッリの「ヴィーナスの誕生」に見られるように、西洋では豊穣の象徴としてビーナスとともに描かれる。

【帆立貝の俳句】

帆立貝すなどる舟の帆を立てて  山口青邨

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季語|蝦蛄(しゃこ)

三夏の季語 蝦蛄

蝦蛄の俳句と季語十脚目に属する海老とは違い、蝦蛄は口脚目に属する節足動物である。日本各地の内海の水深10mから30mの泥底に浅い穴を掘って生活し、捕脚を用いてカニなどを叩き割って捕食する。時化のあとによく動き回る習性を利用して、刺し網漁などが行われる。
俳句の世界では夏の季語で、産卵期である春から初夏にかけてが旬。この頃、カツブシと呼ばれる卵巣が発達する雌は特に好まれる。いつから食されてきたかは定かでないが、江戸時代には江戸前鮨の定番であったほか、蝦蛄を焚き込んだ「品川めし」も名物であった。

茹でた時の色が石楠花に似ていることから、江戸時代にはシャクナゲと呼ばれていた。石楠花を指す「石花(シャクカ)」が転訛して、「シャコ」になった。

【蝦蛄の俳句】

透きし身を重ねて暗し蝦蛄の桶  きくちつねこ

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季語|車海老(くるまえび)

三夏の季語 車海老

車海老の俳句と季語車海老は、十脚目クルマエビ科に分類される海老で、その美味さと姿の美しさから、海老の代表格とされてきた。ハルエビと呼ぶ地方もあるが、夏の季語となっている。ただし、ほとんどの歳時記に記載はない。
北海道以南の内湾や汽水域の砂泥底に生息し、天然物の旬は、産卵期にさしかかる6月から8月である。現在では養殖が盛んであり、南方の海で養殖されることから、養殖物は冬場が旬となっている。

「車海老」の名は、身を丸めた時に縞模様が車輪のように見えるところからきており、一般に、その模様がはっきり見える10センチ以上のものを車海老と呼ぶ。「細巻」⇒「巻」⇒「車」⇒「大車」と、大きさにより違う名前で呼ばれることもあり、「出世魚」ならぬ「出世海老」である。ただし、大きなものは30センチに達するが、食味は小ぶりな方が勝る。

【車海老の俳句】

朝顔や潮がしら跳ぶ車海老  水原秋桜子

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季語|烏賊(いか)

三夏の季語 烏賊

烏賊の俳句と季語軟体動物門頭足綱十腕形上目に属し、コウイカ・ヤリイカ・ケンサキイカ・アオリイカ・スルメイカ・ホタルイカなどがある(*ホタルイカは春の季語)。8本の腕と2本の触腕を持ち、敵の目を眩ませるために墨を吐く。体内にはイカの骨というものがあり、ヤリイカなどでは有機質の薄膜であるが、コウイカでは発達して石灰質の舟形になる。

種類によって旬に違いがあるが、一番多く獲れるスルメイカは、「真烏賊」とも呼ばれ、夏場に水揚げが最も多くなる。また、呼子の烏賊で有名なケンサキイカは「夏烏賊」とも呼ばれ、夏が旬となる。この他、コウイカやヤリイカの旬は冬、アオリイカは春である。
夏の日本海では、光に集まる烏賊の習性を利用して、夜に烏賊釣り漁が行われる。その漁火は、夏の風物詩となっている。

「いか」の語源は、角ばっているところから「厳めしい」にあるという説がある。死んだふりをして烏を捕らえたという中国の「南越志」の話から、「烏賊」の字が当てられたという説がある。
出雲国風土記や播磨国風土記には、「烏賊」の記載がある。日本人にとっては古くから身近な生物であり、三内丸山遺跡の遺物から、縄文時代には既に食されていたと考えられている。

【烏賊の俳句】

銀行員等朝より蛍光す烏賊のごとく  金子兜太

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季語|鰻(うなぎ)

三夏の季語 

鰻の季語俳句ウナギ科ウナギ属の魚には、オオウナギなど世界で19種類が知られているが、俳句に詠まれる「鰻」はニホンウナギである。冬の季語に「八目鰻」もあるが、このヤツメウナギは別種で、一般的な魚類にすら分類されない。
ニホンウナギは東アジアに広く分布し、海で孵化した稚魚は海流に乗って日本付近に到達し、シラスウナギとなって川を遡上して、成長しながら川や湖で生活する。10年ほどすると海へと向かい、マリアナ海嶺付近まで移動して産卵する。

2014年に、ニホンウナギは絶滅危惧種の指定を受けた。流通しているもののほとんどは養殖ものであるが、完全養殖されたものではなく、シラスウナギを河川で捕獲して、養殖池で養殖している。シラスウナギ漁は、12月から4月頃の夜間に、河口に火を灯して行われる。

関西では「まむし」とも呼ぶが、古くは「むなぎ」と呼ばれていた。万葉集に「痩せたる人をわらへる歌二首」として大伴家持の和歌で、

石麻呂に我れ物申す夏痩せに よしといふものぞ鰻捕り食せ
痩す痩すも生けらばあらむをはたやはた 鰻を捕ると川に流るな

がある。ここにおける「鰻」は「武奈伎」と記され、「むなぎ」と読まれていた。
この「むなぎ」の語源は、胸が黄色く見えるところから「胸黄(むなぎ)」にあるという説や、丸くて細長いことから「棟木(むなぎ)」と見なしたという説などがある。

縄文時代にも食されていた鰻は、古くから滋養強壮に良いと認識されていたようである。宝暦年間においては、「江戸前」といえば「鰻」のこととされるほどに一般的な食物となっていたが、夏場のものは食味が落ちるために人気がなかった。そこで平賀源内が一計を案じ、丑の日に「う」のつくものを食べると良いという伝承を利用し、「本日土用の丑の日」と大書して、夏場の鰻屋の窮状を救ったという。
現在でも、栄養豊富で夏バテに効くと信じられており、夏場には、土用の丑の日を中心にしてよく食べられている。料理方法で一般的なのは蒲焼であるが、関東と関西ではさばき方が違う。関東では背開き、関西では腹開きである。
その他に、白焼・肝吸い・うざく・う巻き・ひつまぶし等。

慣用句に、「うなぎの寝床」「うなぎのぼり」などがある。

▶ 関連季語 土用鰻(夏)

【鰻の俳句】

浅草の鰻をたべて暑かりし  臼田亞浪



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