季語|蝮酒(まむしざけ)

三夏の季語 蝮酒

蝮酒の季語と俳句蝮を焼酎に浸した薬酒で、強壮剤として用いる。また、打ち身に効く塗り薬にもする。
蝮をひと月ほど絶食させた後に、アルコール度数の高い焼酎に漬け込み3年ほど放置すると、飴色をした蝮酒となる。独特の強い臭気を持つ。瓶に一尾まるまま漬け込まれた姿は異様でもある。

「蝮酒」が飲めるのは夏に限ったことではないが、夏の季語となる「蝮」から派生する季語となっており、漬け込み開始直後の「姿」を詠み込むのが本来の形である。しかし、夏バテ防止の滋養強壮剤と見るのも可。

【蝮酒の俳句】

平凡の長寿願はず蝮酒  杉田久女



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季語|鱚(きす)

三夏の季語 

鱚の俳句と季語スズキ目スズキ亜目キス科。シロギスやアオギスなどがあるが、特にシロギスを「鱚」とすることが多い。因みに「鱚」は国字。
シロギスは、北海道から九州のきれいな浅海の砂地に棲む。夏場、シロギスは浅いところに移動してきて、目にしやすい。また、淡白で上品な味わいが特徴で、産卵前の夏が旬とされる。天ぷらが特に人気であるが、刺身も美味い。

素直で飾り気のないことを指す「きす」が語源とされ、かつては、魚を表す接尾語「ご」をつけて「きすご」と呼んでいた。
江戸時代には、レジャーとして品川などで盛んにアオギス釣りが行われていたという。それを「脚立釣り」と呼び、海中に立てた脚立が東京湾の初夏の風物詩だったというが、埋め立てに伴い、東京湾のアオギスは1962年に絶滅してしまった。

【鱚の俳句】

引潮の今がさかひや鱚を釣る  高浜年尾

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季語|皮剥(かわはぎ)

三夏の季語 皮剥

皮剥の俳句と季語カワハギは、フグ目カワハギ科に分類される魚の一種で、地方によってはハゲ、ハギ、マルハゲ、メンボウなどとも呼ぶ。カワハギ科の中には、カワハギよりやや食味が劣るとされるウマヅラハギもあり、俳句では「馬面」として詠むことがある。
青森から九州の比較的浅い海に生息し、一年を通じて釣れるが、口が小さいためになかなか釣れない高級魚である。産卵期は5月から8月であり、比較的この時期に目にしやすい。身は夏が美味とされるが、皮剥の最大の特徴である肝は、冬場に備えて栄養を蓄える秋が旬となる。
ざらざらした皮に身が覆われており、調理する時には面白いように剥げることから、「皮剥」の名がついた。

【皮剥の俳句】

うまづらかははぎ長き泣顔いかにせん  加藤楸邨

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季語|鮑(あわび)

三夏の季語 

鮑の俳句と季語鮑は殻に渦巻きがあり、ミミガイ科の大型の巻貝に分類される。鮑と呼ばれるものは1種類ではなく、クロアワビ・メガイアワビ・マダカアワビ・エゾアワビがある。北海道から九州までの水深数十メートルまでの岩礁に生息し、クロアワビ⇒メガイアワビ⇒マダカアワビの順に深いところで生活している。
鮑の殻の背面には4、5個の穴が開いているが、これは排泄物や卵、精子などを放出するためのものである。

クロアワビ・メガイアワビ・マダカアワビの旬は夏であるが、北海道や東北でとれるエゾアワビは冬が旬である。高級食材として流通しており、中国の干し鮑は「乾鮑」と書き、大変な高値で取引されている。

日本では、縄文時代の貝塚からも貝殻が出土しており、古くから食用にされていたと考えられている。また、万葉集にも「鰒」の字で登場し、

伊勢の海人の朝な夕なに潜くといふ 鰒の貝の片思にして

の和歌は、片思いの洒落言葉「磯の鮑の片想い」の元になっている。
鮑は神聖なものと考えられ、古くは長寿をもたらす食物と考えられていた。そこから熨斗鮑が生まれている。また、殻を出入り口に吊すと魔よけの効果があると考えられてきた。

【鮑の俳句】

うかみくる顔のゆがめり鮑採  伊藤柏翠

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季語|いさき

三夏の季語 いさき

いさきの俳句と季語スズキ目イサキ科スズキ目イサキ。漢字では、「伊佐木」「伊佐幾」「鶏魚」などと書く。東北以南の外洋に面した岩礁に生息する、体長約40センチの白身魚である。
産卵期は6月から9月で、産卵前のものは脂が乗っており旨い。特に、6月から7月に獲れるものは「麦わらいさき」「梅雨いさき」と呼ばれ、絶品である。

「磯」に棲む「魚(き)」で「イソキ」と呼ばれていたものが転訛したとも、幼魚の頃にある「斑(いさ)」が語源であるとも言われている。
また、トサカのような背びれを持つところから漢字では「鶏魚」と書くようになったとも言われている。

【いさきの俳句】

汐よしとうなづきて出づいさき船  松崎鉄之介

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季語|鯵(あじ)

三夏の季語 

鯵売(あじうり)

鯵の季語俳句スズキ目アジ科アジ亜科に属す青魚で、主にマアジを指す。「ぜんご」「ぜいご」と呼ばれる体側の稜鱗が特徴であり、白身魚と赤身魚の中間の身質を持つ。
マアジは北西太平洋の固有種で、北海道から南シナ海までに分布し、春には北上、秋には南下する回遊性のものと、居つき型(瀬つき)のものが存在する。西日本では1月から5月、東日本では5月から7月が産卵期であり、回遊性のものは3月頃の九州にはじまり、5月に房総沖、9月に三陸沖で旬となる。居つき型の鯵の旬は夏で、その代表格である「関アジ」はブランド魚として有名であり、大分県大分市佐賀関の名産である。
体側に縦帯があるシマアジは、「縞鯵」「島鯵」と書き、1メートルにもなる大型の鯵で、最高級のアジとも言われている。6月から8月が旬である。

味が良いことから「アジ」の名がついたとされる。ちなみに「鯵」は国字ではないが、「旨くて参る」の意味を持っていると説明されることがある。
「俳諧歳時記栞草」には夏之部五月に分類され、「大和本草」の引用で「東南の海に生るもの、形肥大たり。夏秋、肉多く味美なり。冬春、美ならず。又室鯵・島鯵あり、味劣る」とある。

【鯵の俳句】

活鯵や江戸潮近き昼の月  小林一茶
世の中を知らずかしこし小鯵売  宝井其角

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季語|飛魚(とびうお)

三夏の季語 飛魚

飛魚の俳句と季語ダツ目トビウオ科の魚で、世界に50種ほどが知られている。日本でも30種ほどが獲れ、ツクシトビウオやハマトビウオ、ホントビウオがよく揚がる。日本海側では、顎が落ちるほど美味いために「アゴ」と呼ばれるようになった(学名からきたなどの異説もある)。
回遊する魚で、春から夏にかけて日本近海を北上して産卵し、秋に南下する。春にはハマトビウオがよく獲れて、「春トビ」と呼ぶ。夏に獲れるのはツクシトビウオ・ホソトビウオ・ホントビウオで、「夏トビ」と呼ぶ。
宮崎の都井岬の、光に集まる習性を利用した「飛魚すくい」は夏の風物詩であり、長崎の平戸のアゴ漁は秋の風物詩である。

青魚で胸鰭が発達しており、時速50キロメートルほどで数百メートル滑空することが可能である。滑空するのは、主に捕食者から逃げるためであると考えられているが、航海する船舶の下から飛び出すのもよく目撃される。
刺身にしても美味で、塩焼きやフライなど、様々に料理される。島根県では県魚となっており、「アゴ野焼き」と呼ばれる蒲鉾が有名である。また、飛魚の卵はトビッコと呼ばれ、軍艦巻きなどにして食す。

【飛魚の俳句】

飛魚の干物にされてしまひけり  鈴木真砂女

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季語|穴子(あなご)

三夏の季語 穴子

穴子の俳句と季語ウナギ目アナゴ科に属する、鱗のない魚。同じ科にチンアナゴなどもあるが、「穴子」と言った場合にはマアナゴを指す。夏場は日本各地の浅い海の底に生息し、雄は50センチ、雌は100センチになる。冬場は、水深の深い海に移動する。産卵は、6月から9月に沖ノ鳥島南方沖に移動して行う。
旬は7月から8月で、細長い塩化ビニル管を用いたアナゴ筒漁などで獲られる。天ぷらや蒲焼など、様々に調理して食されるが、血液や粘膜に微毒があるため、刺身にはしない。稚魚は「ノレソレ」「ベラタ」「ハナタレ」などと呼んで、これも食用にする。

砂泥に穴を掘り、昼間は頭を穴の中から出しているために、「穴子」の名がついた。

【穴子の俳句】

ひらかれて穴子は長き影失ふ  上村占魚

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季語|帆立貝(ほたてがい)

三夏の季語 帆立貝

帆立貝の俳句と季語帆立貝は、膨らみが大きい貝殻と小さい貝殻が合わさる二枚貝であり、イタヤガイ科に属する。日本では、北海道・東北の浅い海から捕れる。
帆立貝の旬は、貝柱が最も大きくなる6月から8月。主に貝柱が食され、貝柱の周りにはヒモと呼ばれる外套膜がある。
敵に襲われると、貝殻を開閉し、外套膜から水を吐きながら泳いで逃げる。平たい方の貝を帆として風を受け、膨らみがある方の貝を船体にして海を走るという俗説から、「帆立貝」の名がつき、単に「帆立」とも呼ぶ。貝殻を扇に見立てて「海扇」という名もある。
帆立貝に似たものに、より南方に生息するイタヤガイやヒオウギガイなどがある。

サンドロ・ボッティチェッリの「ヴィーナスの誕生」に見られるように、西洋では豊穣の象徴としてビーナスとともに描かれる。

【帆立貝の俳句】

帆立貝すなどる舟の帆を立てて  山口青邨

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季語|蝦蛄(しゃこ)

三夏の季語 蝦蛄

蝦蛄の俳句と季語十脚目に属する海老とは違い、蝦蛄は口脚目に属する節足動物である。日本各地の内海の水深10mから30mの泥底に浅い穴を掘って生活し、捕脚を用いてカニなどを叩き割って捕食する。時化のあとによく動き回る習性を利用して、刺し網漁などが行われる。
俳句の世界では夏の季語で、産卵期である春から初夏にかけてが旬。この頃、カツブシと呼ばれる卵巣が発達する雌は特に好まれる。いつから食されてきたかは定かでないが、江戸時代には江戸前鮨の定番であったほか、蝦蛄を焚き込んだ「品川めし」も名物であった。

茹でた時の色が石楠花に似ていることから、江戸時代にはシャクナゲと呼ばれていた。石楠花を指す「石花(シャクカ)」が転訛して、「シャコ」になった。

【蝦蛄の俳句】

透きし身を重ねて暗し蝦蛄の桶  きくちつねこ

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