落鮎(おちあゆ)

三秋の季語 落鮎

錆鮎(さびあゆ)・秋の鮎(あきのあゆ)

季語秋は鮎の産卵期。体は鉄錆のような色となり、川を下って産卵地である河口へと向かい、一生を終える。なお、雌の中には越冬する個体もあるという。

▶ 関連季語 鮎(夏)

落ち落ちて鮎は木の葉となりにけり  前田普羅



狗尾草(えのころぐさ・えのこぐさ)

三秋の季語 狗尾草

犬ころ草(いぬころぐさ)・猫じやらし(ねこじゃらし)

季語イネ科。語源は、小犬の尾に似ているところから。「イヌコロ」は、「犬来よ」から来ているとの説もある。

寛弘3年(1006年)、阿波の鳴門が鳴動し天変地異が起こった折、横山八幡宮神官が鳴門に赴き

山畠に作りあらしのえのこ草 粟のなるとは誰かいふらむ

と詠じると、元の静かな海に戻ったという。これを喜んだ帝に召された神官は、

我が国に年経し宮の古ければ 御幣の串の立つところなし

と応えると、帝は「宮の古ければ」の一節をとり、横山八幡宮一帯を「宮古」の地名に改めたという。

夢いくつ見て男死ぬゐのこぐさ  能村登四郎



秋草(あきくさ)

三秋の季語 秋草

秋の草(あきのくさ)千草(ちぐさ)色草(いろくさ)

季語一年を通じ、様々な季語となってあらわれる「草」。中でも秋は、草が最も印象的な季節。「草の花」「草の実」もまた秋の季語となり、生い茂る夏には名前も分からなかった草が、この季節になって種類ごとの特徴を明らかにする。

毎年腐っていくことから、「腐る」が元になっているなどの語源説があるが、明らかではない。古くから、人の増える様は、草にたとえられてきた。古事記では「青人草」といい、神々の父神イザナギは「汝、吾を助けしがごと、葦原中国にあらゆる現しき青人草の、苦き瀬に落ちて、患い悩む時に助くべし」と、オオカムヅミに命じた。旧約聖書にも人を「草」にたとえる表現が見られる。また、「種」を「くさ」と読ませて、物事の原因をいう。
万葉集には石川賀係女郎の秋草の和歌がある。

神さぶといなにはあらず秋草の 結びし紐を解くは悲しも

古くは、草を結んで願をかけるという風習があった。時代を下ると、草を結び枕にしたことから、「草を結ぶ」ということは野宿をすることの意に用いられてきた。

秋草のすぐ萎るるをもてあそび  中村汀女
名は花にさだまる秋の小草かな  勝見二柳



秋(あき)

三秋の季語 

白秋(はくしゅう)・白帝(はくてい)・金秋(きんしゅう)

季語秋が五行説の金行にあたり、白色を配することから、「白秋」「金秋」ともいう。その秋を司るのは、白帝である。太陽暦では9月から11月まで、陰暦では7月から9月までを秋という。二十四節気では、立秋から立冬の前日まで。晴れた空が印象的で、動物が冬支度をする秋は、「天高く馬肥ゆる秋」ともいわれる。その他にも、数多くの秋に関連する慣用句があり、「女心と秋の空」「一日千秋」「秋の日は釣瓶落とし」「一葉落ちて天下の秋を知る」「実りの秋」などがある。童謡では、サトウハチロー作詞の「ちいさい秋みつけた」が有名。
小倉百人一首で、「秋の田の」ではじまる天智天皇の和歌は第1番であるのをはじめ、第5番には猿丸大夫の

奥山に紅葉踏み分け鳴く鹿の声聞く時ぞ秋は悲しき

が載る。

空の清々しい様を「あきらか」と言ったという、秋の語源説がある。また、語源は「飽きる」にあるという説もあり、夏に向かって満ちて行ったものに嫌気がさすことを「あき」と言ったというものである。

くろがねの秋の風鈴鳴りにけり  飯田蛇笏



秋の灯(あきのひ)

三秋の季語 秋の灯

秋の燈(あきのひ)・秋ともし(あきともし)秋燈(しゅうとう)

季語秋の長い夜を照らす明り。

秋の灯やゆかしき奈良の道具市  与謝蕪村



夜長(よなが)

三秋の季語 夜長

夜永(よなが)・長き夜(ながきよる)秋の夜(あきのよる)・夜長し(よるながし)

季語秋の夜の長く感じられることを言う。「日永」は春、「短夜」は夏、「日短」は冬の季語。百人一首3番には、柿本人麻呂の

足曳の山鳥の尾のしだり尾の長々し夜を獨りかも寝む

が選ばれているが、これは、万葉集に「思へども思ひもかねつあしひきの山鳥の尾の長きこの夜を」の異歌によみびと知らずとして挙げられる和歌。

あいつらも夜永なるべしそそり唄  小林一茶
夜長寝てその後の雁は知らざりき  日野草城



秋風(あきかぜ・しゅうふう)

三秋の季語 秋風

秋の風(あきのかぜ)あきの風(あきのかぜ)・金風(きんぷう)・色なき風(いろなきかぜ)・爽籟(そうらい)

季語秋が五行説の金行にあたるので「金風」ともいう。その爽やかな響きを爽籟という。「飽き」に掛けて、男女間の愛情が冷めることにもたとえられる。万葉集には「秋風」を詠んだ歌が60首あまりあり、大伴家持は夫人を亡くしてひと月経って、

うつせみの世は常なしと知るものを秋風寒み偲ひつるかも

と歌った。芭蕉の句「物いへば~」は、半ば慣用句。

物いへば唇寒し秋の風  松尾芭蕉
石山の石より白し秋の風  松尾芭蕉
あかあかと日は難面もあきの風  松尾芭蕉
秋風やむしりたがりし赤い花  小林一茶



すすき

三秋の季語 すすき

芒(すすき)花すすき(はなすすき)穂芒(ほすすき)・乱れ草(みだれぐさ)・尾花(おばな)

季語イネ科ススキ属の植物。「茅(かや)」と呼ばれ、茅葺屋根の材料となる。万葉集には44首歌われていると言われ、「すすき」「をばな」「草(かや)」「み草」として出てくる。「すすき」として歌われる場合、しばしば「ハダススキ」として現れるが、この「ハダ」は「旗」のことだと言われ、「穂に出ず」の枕詞となる。

はだすすき穂にはな出でそ思ひたる心は知らゆ我れも寄りなむ  よみ人しらず

我が宿の尾花が上の白露を消たずて玉に貫くものにもが  大伴家持

「すす」は「ささ」と同義で細いことを表し、「すすき」は「細い茎」の意だとされる。

何ごともまねき果たるすゝき哉  松尾芭蕉
をりとりてはらりとおもきすすきかな  飯田蛇笏



色鳥(いろどり)

三秋の季語 色鳥

季語秋に渡って来る羽の色の美しい小鳥。

色鳥の残してゆきし羽根一つ  今井つる女



秋の雨(あきのあめ)

三秋の季語 秋の雨

秋雨(あきさめ)秋霖(しゅうりん)

季語秋の長雨は、秋雨前線によってもたらされる。秋はまた台風の季節であり、雨の降りやすい時期である。

雨の語源は、「天(あめ)」にある。雨が降るということは、大地が天と一体となることでもある。

なき人の発句きゝけり秋の雨  高桑闌更