俳句

季語|吾亦紅(われもこう)

仲秋の季語 吾亦紅

吾亦紅バラ科ワレモコウ属ワレモコウは、北海道から九州までの草地に自生し、7月から10月頃に花弁のない花を、花穂の上から下へと順に開花させていく。開花したてはピンクであるが、やがて赤褐色になる(画像の花穂の下部は、咲いたばかりでピンク色をしている)。根は乾燥させて地楡(ちゆ)という生薬にする。
「吾木香」「我毛紅」「我毛香」「我妹紅」とも書く。語源に定説はないが、「吾もまた紅なり」と吾亦紅が言ったというおとぎ話や、木香に似た香りがするために「吾(われ)木香」と言ったという説などがある。
源氏物語の第四十二帖「匂宮」に登場し、「ものげなきわれもかう」と表現される。「ものげなき」とは、「みすぼらしい」などの意味がある。

【吾亦紅の俳句】

吾亦紅ぽつんぽつんと気ままなる  細見綾子

▶ 秋の季語になった花 見頃と名所

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季語|白粉花(おしろいばな)

仲秋の季語 白粉花

白粉の花(おしろいのはな)・白粉草(おしろいぐさ)・夕化粧(ゆうげしょう)

白粉花オシロイバナ科オシロイバナ属オシロイバナはメキシコ原産で、江戸時代初期に渡来。夕方4時ころから咲き始めるため、英語では「フォーオクロック」と呼ぶ。
7月から9月頃に赤・白・黄色の花を朝まで開き、次から次へと咲いていく。一つの株から異なる色の花が咲くものもある。なお、花弁は退化しており、花弁のように見えるのは萼である。寒さには弱いため、日本では冬には枯れることが普通である。
花が萎むと黒くて丸い実をつけ、この実を割ると白い粉が採れるために「白粉花(おしろいばな)」と呼ばれるようになった。俳諧歳時記栞草(1851年)には秋之部八月に分類され、「これを採て婦人の面に塗。光沢、鉛粉(おしろい)に優れり」とあり、江戸時代には白粉として実用化されていたことが分かる。現代では、子供がおしろいに見立てて遊ぶことが多い。また、花の奥の蜜を吸って遊んだりもする。

「夕化粧」の別名もある。分類学上では、月見草の仲間にアカバナ科マツヨイグサ属ユウゲショウがあるが、こちらは通常「赤花夕化粧」と呼んで区別する。

【白粉花の俳句】

おしろいは妹のものよ俗な花  正岡子規

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季語|南瓜(かぼちゃ・なんきん・なんか)

仲秋の季語 南瓜

南瓜の季語と俳句ウリ科カボチャ属の蔓性の一年草で、栽培品種は大きく分けてニホンカボチャ・セイヨウカボチャ・ペポカボチャの3系統がある。
原産はアメリカ大陸で、ニホンカボチャは、大航海時代に広まり東南アジアで栽培されていたものが、戦国時代にポルトガル船によって九州に伝播したものである。カンボジアから持ち込まれ、豊後国の大友宗麟に献上されたとされる。
ニホンカボチャは、溝が入った形状から「菊南瓜」とも呼ばれる。有名な品種に、瓢箪型をした京都特産の鹿ケ谷南瓜がある。春に播種し、秋に収穫する。
ちなみにセイヨウカボチャは、幕末の1863年にアメリカから伝わり、冷涼な北海道などに広まった。

「かぼちゃ」の語源は、伝来した「カンボジア」にあり、「南瓜」には、南蛮渡来の瓜の意がある。「なんきん」は、伝来において寄港地となった「南京」に由来する。
「唐茄子」と呼ばれることもあるが、「羇旅漫録」(曲亭馬琴1803年)には「とうなすといふもの箱根より西になし」とあり、かつては関東で栽培されていた一品種だったと考えられている。

冬の季語に「冬至南瓜」があるが、明治時代ころからの風習で、風邪をひかないように冬至に栄養価豊富な南瓜を食べるというものである。
ハロウィンには南瓜が活躍するが、本来は、魔よけの力を持つとされる蕪が用いられていたとされる。しかし、アメリカに伝来すると、入手しやすい南瓜が用いられるようになったという。
慣用句の「南瓜に目鼻」は、丸顔で太った背の低い人を指す。同じような不器量を表す言葉に、「南瓜頭」がある。

【南瓜の俳句】

鶺鴒がたたいて見たる南瓜かな  小林一茶

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季語|小鳥(ことり)

仲秋の季語 小鳥

小鳥の俳句と季語渡って来る鳥も含めて、秋に見られる小型の鳥。「小鳥」の定義は難しいが、概ね手の平サイズの鳥で、水鳥は含まないことが多い。秋に渡ってくる小鳥としては、アトリ、ジョウビタキ、ヒワなどがある。

「小鳥」が秋の季語となったのは、「渡り鳥」の派生季語である「小鳥来る」に由来し、本来は「渡ってくる色々な小鳥」の意で「色鳥」と呼ぶ。かつては、山頂などに網を張ってこれらを捕獲したが、その時に使用する網を「小鳥網」と呼び、秋の風物詩であった。
また、秋に相撲人を召すことを「ことり使」と呼んだが、「小鳥」が秋の季語に昇格したのは、この古来の行事の影響もあったかもしれない。ただ、「小鳥」が秋の季語として定着したのは近年のことである。

【小鳥の俳句】

小鳥来て午後の紅茶のほしきころ  富安風生

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季語|柘榴(ざくろ)

仲秋の季語 柘榴

実柘榴(みざくろ)

柘榴の俳句と季語ミソハギ科ザクロ属の落葉小高木にザクロがあり、その実は秋の季語となる。初夏に花をつけ、花柘榴の季語もある。実がなるのは9月から11月頃。
厚く硬い果皮を持つ拳状の果実は、熟すと不規則に裂ける。その裂け目から、多汁性の赤い歯のような形の、種子を含んだ粒が現れる。粒は生食したりジュースにしたりする。また近年では、更年期障害や乳癌に対する効果が期待されるとして、女性に人気となった。

日本には平安時代に中国から渡来し、中国語名の「石榴」の字が当てられ、中国風に「ザクロ」と呼ばれるようになった。原産地と考えられているペルシアのザグロス山脈に語源があるとの説がある。

むかし、子供を食う鬼神がいたが、釈迦は人肉を食べないように約束させて、柘榴の実を与えた。以来、その鬼神は鬼子母神として子育ての神になったとされ、柘榴は人肉の味がすると言われるようになった。
世界的には、豊穣や子宝に恵まれる吉木とされる。

【柘榴の俳句】

深裂けの柘榴一粒だにこぼれず  橋本多佳子

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季語|太刀魚(たちうお)

仲秋の季語 太刀魚

太刀魚の俳句と季語スズキ目サバ亜目タチウオ科タチウオ。北海道から九州の沿岸部や大陸棚に生息する。鱗はなく、銀色のグアニンで覆われている。
太刀のような魚体を持つことや、垂直に立って泳ぐことから「タチウオ」と呼ばれ、「太刀魚」「立魚」などと書く。
大型のものほど高級とされ、旬は、産卵期の6月から10月。その頃は、沿岸部に寄ってきてよく釣れる。
俳諧歳時記栞草には、秋之部八月項に「太刀魚(たちのうを)」として載る。

【太刀魚の俳句】

太刀魚の太刀に細かき鱗あり  山口誓子

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季語|はららご

仲秋の季語 はららご

はららごの俳句と季語魚類の産卵前の卵を「はららご(鮞)」という。腹子とも呼び、特にの卵巣を指す。その塩蔵品は「筋子」と呼び、卵巣膜を取り除き、卵を1粒づつに分けたものは「イクラ」と呼ぶ。「イクラ」の語源はロシア語にあり、魚卵を指す。
10月から11月頃、産卵のためにカムチャツカから南下してくる鮭を水揚げして、卵を採る。

「俳諧歳時記栞草」(曲亭馬琴1851年)秋之部八月項に「鮞」がある。「鮏の子也。其子二胞あり、胞中数千粒、明透、上に一紅点あり、鮞といふ。又筋子・甘子と云ものあり」とある。

【はららごの俳句】

産み捨てのはららごは散り四海波  三橋敏雄

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季語|濁り酒(にごりざけ)

仲秋の季語 濁り酒

濁酒(だくしゅ・にごりざけ)どぶろく・どびろく

濁り酒の俳句と季語 米と米麹と水を原料として発酵させて醪となるが、これを濾過していない酒を「どぶろく」と言う。酒税法では「その他の醸造酒」に分類される。なお、濁りを残して絞られた「濁り酒」の多くは、「清酒」に分類される。
「どぶろく」は、未発酵の米が含まれるために甘味を有している。自家醸造が比較的容易であるため、年中作られていた。ただし、日本酒の醸造年度が10月1日から始まるように、日本酒の兄弟のような存在である「どぶろく」の醸造もまた、秋が起点となる。
11月23日の新嘗祭では、白酒と黒酒が供されるが、白酒は白濁した濁酒である。
今では酒税法により、免許なしでの醸造が厳しく禁じられているが、自家醸造自由化運動などを経て、免許なしでも醸造できる「どぶろく特区」が、地域振興のために誕生している。

「どぶろく」の語源は、醪の混ざった状態の「濁醪(だくろう)」の転訛だと言われている。俳諧歳時記栞草には、「大和本草」の引用で「酴醿花の条下に云、本邦のは白花、千葉菊の如し。依て筑紫にて菊いばらといふ。中華には黄色なる者ありと、農政全書に記せり。故に黄色の醁(のごりざけ)を酴醿醁(どびろく)といふ。」とある。「どぶろく」は「溷六」とも書くが、これは泥酔した者を指す言葉でもある。

【濁り酒の俳句】

どぶろくにゑうて身を投ぐ大地あり  森川暁水
山里や杉の葉釣りてにごり酒  小林一茶

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季語|竹の春(たけのはる)

仲秋の季語 竹の春

竹の春の俳句と季語竹は常緑性ではあるが、四季それぞれに違った表情を見せる。
5月頃にタケノコとして現れた竹は、6月いっぱいは地上部がグングン伸びるが、それと同時に栄養分を取られた葉は、黄変して落葉する。これを竹落葉と言い、夏の季語になっている。その後、来春に向けて地下茎に栄養分をためこむために、葉を青々と茂らせる。特に秋の半ばには若葉が映え、これを竹にとっての春ととらえて「竹の春」という。

「竹の春」は、旧暦八月の異名で、俳諧歳時記栞草には「筍譜」の引用で、「竹は八月、これを小春といふ。熱去んと欲し寒来んと欲す、故に小春といふ」とある。

▶ 関連季語 竹の秋(春)

【竹の春の俳句】

おのが葉に月おぼろなり竹の春  与謝蕪村

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季語|葡萄(ぶどう・えび)

仲秋の季語 葡萄

葡萄園(ぶどうえん)

葡萄の俳句と季語ブドウ科のつる性落葉低木は、8月から10月にかけて実をつける。ペルシアやカフカスを原産とするヨーロッパブドウと、北アメリカを原産とし、狐臭いとも表現されるラブルスカ種があり、大航海時代から交雑がはじまった。また、生食用のテーブルグレープと、酒造用のワイングレープに分ける分類もある。
世界的には、バナナ、柑橘類に次いで生産量が多く、日本では、ウンシュウミカン、リンゴ、ナシ、カキに次いで多い。ワインでも知られる山梨県が、国内生産量トップの地位にある。国内で生産される品種は、巨峰・デラウェア・ピオーネ・キャンベルアーリー・ナイアガラ・マスカットベリーA・スチューベン・甲州など。

葡萄栽培の歴史は古く、世界最古の果物とされる。カスピ海南部では、紀元前3000年には栽培が始まっており、ワインの醸造も行われていたと考えられている。
紀元前2世紀頃にはヨーロッパブドウが中国にも伝播し、日本でも平安時代末期には栽培が始まっていたとされる。1186年には、甲斐国勝沼地方の雨宮勘解由によって甲州ブドウが発見され、栽培された。

「ぶどう」の語源は、ギリシア語の「botrus」にある。中国に伝わり「葡萄」となり、それを音読みして「ぶどう」になったとされる。
日本には、古くからの野生種として山葡萄があり、葡萄葛(えびかづら)・海老蔓(えびづる)と呼ばれていた。その葉の裏が海老柄に見えることが語源とされる。
古事記や日本書紀には既に「蒲子(えびかずら)」として山葡萄が出てくる。黄泉の国の項で、伊邪那岐が逃げ帰る際に、黄泉醜女に黒御縵を投げると蒲子が生り、それを食べている間に逃げたとあるから、既に食用にされていた可能性がある。
また、染色の名に葡萄染(えびぞめ)があり、元は山葡萄の実の色の染め色を言ったが、次第に織物の色、襲(かさね)の色目をも表すようになった。

【葡萄の俳句】

枯れなんとせしをぶだうの盛りかな  与謝蕪村

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