季語|白酒(しろざけ)

仲春の季語 白酒

お白酒(おしろざけ)

季語と俳句で花見酒季語となる「白酒」は、みりん・蒸米・米麹などでつくられる混成酒の一種で、雛祭に供される。俳諧歳時記栞草(1803年)には、春之部三月に分類し、「本朝食鑑」の引用で「酵は白酒の甘き也。和名、之良加須(しらかす)、云々。和俗、三月三日節物として、雛祭に供ず」とある。さらに「句作によりて、三春にわたるべき也」と追記がある。
古代中国では3月3日の上巳に、厄をはらうために、桃の花びらを浮かべた酒を飲むという行事があった。日本に伝わり、時代が下るにつれ、桃の花の赤い色との対比から「白酒」が供されるようになったとされる。「桃(もも)」と「百(もも)」を掛けて、百歳までも長生きできるようにとの願いを込めて飲まれるものである。
江戸では「豊島屋の白酒」が名物となっており、「山なれば富士、白酒なれば豊島屋」と謳われ、2月の売り始めの日には大勢の客が押し寄せたという。豊島屋は、現在でも豊島屋本店として東京で酒類醸造販売業を営んでおり、清酒「金婚」の総発売元としても知られている。

中国では白酒と書いてパイチュウと読み、穀類を原料とする蒸留酒の総称となっている。
古代から日本には、神酒に黒酒や清酒などとともに白酒を捧げる風習がある。ここでは白酒を「しろき」と読む。
また、濁酒(どぶろく)を白酒と呼ぶこともある。因みに濁酒は秋の季語である。

【白酒の俳句】

白酒の紐の如くにつがれけり  高浜虚子

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季語|花見酒(はなみざけ)

晩春の季語 花見酒

季語と俳句で花見酒花見の際に飲む酒を「花見酒」と言うが、特に桜を見ながら飲む酒を言う。「花見酒」の言葉自体は、酒を売って金儲けをしようとして向島に行き、結局酒を飲んだだけで終わってしまったという落語の噺から来ている。
桜の花を愛でることは平安時代から続く行事であるが、そこに酒宴が定着したのは、慶長3年3月15日(1598年4月20日)に豊臣秀吉が醍醐寺で開催した「醍醐の花見」だと言われている。

花札では、「菊に盃」と「桜に幔幕」の二枚の札が揃った時、「花見酒」という。

【花見酒の俳句】

むさし野やつよう出てきた花見酒  井原西鶴

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季語|花粉症(かふんしょう)

晩春の季語 花粉症

花粉症植物の花粉によるアレルギー症状のことで、くしゃみ・鼻水・鼻詰まり・目のかゆみなどの症状が現れる。花粉症を引き起こす植物には、スギ・ヒノキ・イネ・ブタクサなどがあり、花粉症は春に限ったアレルギー症状ではない。しかし、季語で「花粉症」を用いる時には、スギ・ヒノキによりもたらされる春の花粉症となる。
スギの花粉の飛散は、1月頃から始まり、2・3月をピークとして5月頃まで続く。ヒノキは2月頃に始まり、3月をピークとして6月頃まで続く。近年では、PM2.5との関連も報告されるようになり、PM2.5の濃度が上昇する冬から春にかけては症状が悪化しやすいとの研究もある。

西洋での「花粉症」は1800年代より研究され、アメリカでは乾草熱としてその存在が知られていた。日本ではブタクサ公害として1970年代頃から認識されるようになり、戦後の杉の植林の影響で、平成になってからは大きく社会問題化したと言われている。

日本書紀の一書では、素戔嗚尊(すさのおのみこと)の髯が杉になったと記されている。

【花粉症の俳句】

花粉症かほのさびしくなるばかり  都筑典子

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季語|虎杖(いたどり)

仲春の季語 虎杖

季語と俳句で虎杖1.5メートルほどの高さに育つタデ科の多年生植物。東アジア原産で日本全土に分布し、近年ではヨーロッパやアメリカで帰化したものが生態系を破壊し、問題になっている。
雌雄別株で、冬は地下茎や根で越冬し、春に地上から新芽が出てくる。春にはこの新芽を食したり、中空になっている茎の皮を剝いで食したりする。因みに花期は7月から10月頃で、白い小さな花をたくさんつける。

若葉に止血と痛み止めの効果があることから、「痛み取り」が転訛して「イタドリ」になったと考えられている。「虎杖」の漢字は杖に使われたことによるもので、茎の虎斑模様から「虎杖(こじょう)」とされたことに因る。
別称に「左伊多津万(さいたづま)」があり、この名は春の若草の代名詞でもあり、襲の色目にもなっている。「大和物語」(平安時代)に、虎杖を摘みに出た娘がその美しさに魅せられて「明日また来る」と袋を被せておいたところ、一夜の内に葉が広がって見る影もなくなり

きのふ見し沢の虎杖けふははや 葉びろになりぬ衣たべ君

と歌った。これがきっかけとなり、「裂いた爪(先)」の意で「さいたづま」と呼ぶようになったという。

日本では古くから馴染みのある植物で、日本書紀の反正天皇項にも出てくる。そこでは「多遅(たじ)」と呼ばれ、産湯に使った井戸に花が落ちたことから、天皇の幼名である「多遅比瑞歯別」に反映されたとある。
俳諧歳時記栞草(1851年)には春之部二月に分類されている。
茎を切り取り、両端に切り込みを入れて水に晒すと、外側に反る。中空になっている茎の中に棒を入れ、水の流れの中でくるくる回す玩具を、「虎杖水車」と呼ぶ。

【虎杖の俳句】

虎杖の手応へもなく折られけり  柚山美峯

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季語|襟巻(えりまき)

三冬の季語 襟巻

マフラー(まふらー)ショール(しょーる)

襟巻の俳句と季語防寒を主目的とする服飾品。江戸時代には首巻と呼び、隠居や病人が使用するものだった。素材には、ウール・絹・ナイロンなどがあり、大きさや形などによって、マフラー・ショール・ストール・スカーフ・ネッカチーフなどと呼び分ける。この内、季語として認知されているのはマフラーとショールで、共に冬の季語である。
マフラーの語源は、ラテン語で包み込むことを意味する「maffle」である。ショールの語源は、ペルシャ語で大きな布を意味する「shāl」で、折ったりなどして三角形にしたものを肩に羽織る。

【襟巻の俳句】

襟巻を別れてよりは二重にす  福井隆子

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季語|蕪(かぶ・かぶら)

三冬の季語 

赤蕪(あかかぶ)

蕪の俳句と季語アブラナ科アブラナ属の根菜類の一つ。蕪菜・鈴菜・豊菜・大頭菜などとも呼ぶ。鈴菜として、春の七草のひとつとなっている。淡色野菜に分類される根(胚軸)や、緑黄色野菜に分類される茎や葉を食用にする。
原産は地中海地方で、アジア系とヨーロッパ系の二変種が存在する。京野菜など西日本を中心に栽培されるものは中国伝来のアジア系で、東日本にはシベリア経由のヨーロッパ系が在来種として存在する。関ケ原付近で二分されるため、それを専門家は「かぶらライン」と呼ぶ。
日本では約80品種が生産され、白菜・チンゲンサイ・小松菜なども蕪の仲間になる。冷涼な気候を好み、野菜としては10月から12月と、3月から5月の2回旬がある。

日本へは弥生時代に中国からもたらされたとの説があり、「古事記」に「吉備の菘菜(あおな)」として登場する。また、万葉集にも長忌寸意思吉麻呂の歌で

食薦敷き青菜煮持来む梁に 行縢懸けて息むこの君

がある。俳諧歳時記栞草(1851年)には冬之部兼三冬物に分類され、「蕪菁(かぶら)」として掲載されている。
語源は、丸く育った根の部分を頭に見立てて、頭を意味する「かぶり」と呼んだところから「かぶら」と呼ばれるようになり、「かぶ」に転訛したとの説が有力。

【蕪の俳句】

おく霜の一味付けし蕪かな  小林一茶

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季語|寒牡丹(かんぼたん)

三冬の季語 寒牡丹

冬牡丹(ふゆぼたん)

寒牡丹の季語と俳句(いま姿 寒牡丹)牡丹」は夏の季語であるが、冬に開花するものがあり、それを「寒牡丹」「冬牡丹」という。ただし、寒牡丹と冬牡丹の間には違いがある。
つまり、「寒牡丹」とは、初冬と早春に咲く二季咲きの品種の牡丹が冬に花をつけたものを言う。「冬牡丹」とは、夏季に咲く品種の開花を温度調整で抑制して、冬に開花させるものを言う。見た目には、「寒牡丹」には葉がほとんどないのに対し、「冬牡丹」は葉をつけるといった違いがある。また、「冬牡丹」は寒さに弱いため「わらぼっち」と呼ばれる藁囲いをつけるのに対し、「寒牡丹」はわらぼっちがなくても育つ。

俳諧歳時記栞草(1851年)には「冬牡丹」のみ冬之部十月に立項されており、「大和本草」の引用で「冬牡丹、八月より葉出て十月より花さく。臘寒の時も花あり。凡、如此なるは、人功を以て天地造化の力をぬすみてこれを成。怪むべし」とある。

【寒牡丹の俳句】

狂はねば恋とは言はず寒牡丹  西嶋あさ子

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季語|正月の凧(しょうがつのたこ)

新春の季語 正月の凧

武者絵凧(むしゃえだこ)武者凧(むしゃだこ)遠凧(とおだこ)

正月の凧の俳句と季語「凧」では三春の季語であるが、「正月の凧」で新春の季語となる。本来は測量や通信などの軍事目的で使用されたものであり、中国では紀元前4世紀には用いられていた。
日本では平安時代までには伝来し、次第に凧合戦が行われるようになってきた。凧合戦は全国いたる所で開催されていたが、時期は一定ではなく、主に新春から初夏にかけて開催されていた。江戸時代の俳諧歳時記栞草には、既に「春之部」に立項されている。

新春の凧は、俳句の世界では「正月の凧」として詠み込むことが多く、その他「初凧」「飾り凧」なども用いられる。
また「いかのぼり」は新春にも春にも挙げられる季語で、烏賊の形に似ていることから、本来の「凧」の呼び名であったと考えられている。江戸時代初めにいかのぼり禁止令が出たため、禁止を回避するために「たこ」と呼ばれるようになったと言われている。

正月の風物詩として凧が定着したのは、男子の健康成長を願うために用いられたからである。また、俳諧歳時記栞草には、小児の熱を冷ますために凧を揚げて空を見上げさせたともあり、新年に健康を祈る遊びとして定着していった。

【正月の凧の俳句】

かの童まだ遠凧につながれる  林翔

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季語|去年今年(こぞことし)

新春の季語 去年今年

去年今年の俳句と季語「行く年来る年」のようなニュアンスで用いられる。文字通り「去年と今年」という意味。
俳諧歳時記栞草(1851年)では、正月項に「去年、今年」があり、雑談抄の引用で「貞徳の説に、去年・今年、春也。今年とばかりは句によるべし。師説に、連歌には去年と云詞は春也。今年は雑」とある。つまり、「去年」単体でも新春の季語となる。その場合は、過ぎ去った年を回想するものとなる。

【去年今年の俳句】

去年今年貫く棒の如きもの  高浜虚子

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季語|姫始(ひめはじめ)

新春の季語 姫始

姫始その年はじめての性交を、近世以降「姫始」と呼ぶ。「姫」は「秘め事」に通じる。
俳諧歳時記栞草(1851年)には、「ひめ始」として掲載され、糄(ひめ:粥のようなもの)を食べる意で説明されている。その他にも、「飛馬始」として馬の乗り初めの日、「姫糊始」として女性が洗濯を始める日として「ひめ始」が用いられることがある。「ひめ始」の元は、暦の「火水始(ひめはじめ)」にあると考えられており、火や水を使い始める日である。正月2日の行事である。

【姫始の俳句】

姫始め闇美しといひにけり  矢島渚男

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