季語|草の実(くさのみ)

三秋の季語 草の実

草の実の俳句と季語木にならない植物を「草」とか「草本」などと呼ぶが、日本に見られるものだけで6000種近くになる。俳句の世界では「草」と言えば山野草、人里植物、耕地雑草を指すが、これらを合わせると5000種になる。よって、実を結ぶ季節は秋に限られたものではないが、秋に実る植物は多い。「俳諧歳時記栞草」(1851年)にも、「諸草のたぐひ、春夏に花を開く者あれど、秋多き故、無名の草花を秋とす。実もまた然り」とある。

▶ 関連季語 秋草(秋)

【草の実の俳句】

いち早く枯れる草なれば実を結ぶ  野村朱鱗洞

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季語|小鳥(ことり)

仲秋の季語 小鳥

小鳥の俳句と季語渡って来る鳥も含めて、秋に見られる小型の鳥。「小鳥」の定義は難しいが、概ね手の平サイズの鳥で、水鳥は含まないことが多い。秋に渡ってくる小鳥としては、アトリ、ジョウビタキ、ヒワなどがある。

「小鳥」が秋の季語となったのは、「渡り鳥」の派生季語である「小鳥来る」に由来し、本来は「渡ってくる色々な小鳥」の意で「色鳥」と呼ぶ。かつては、山頂などに網を張ってこれらを捕獲したが、その時に使用する網を「小鳥網」と呼び、秋の風物詩であった。
また、秋に相撲人を召すことを「ことり使」と呼んだが、「小鳥」が秋の季語に昇格したのは、この古来の行事の影響もあったかもしれない。ただ、「小鳥」が秋の季語として定着したのは近年のことである。

【小鳥の俳句】

小鳥来て午後の紅茶のほしきころ  富安風生

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季語|すだち

晩秋の季語 すだち

糸瓜の季語と俳句漢字では「酢橘」と書き、代表的な「酢みかん」として、酢の代りに使用される「香酸柑橘類」に分類される。
原木は、徳島県鳴門市にあったとされ、現在でも徳島名産で、ほぼ100%を徳島県内で生産している。文献上は「大和本草」(1706年)に「リマン」として初出するが、太古からあったとの説もある。
徳島県では、「すだちくん」というイメージキャラクターを使って、全国にアピールしている。

実がなるのは8月から10月頃で、青いうちに出荷する。1980年代に全国に広く知られるようになり、現在ではハウス栽培もあり、年中入手することができる。

【すだちの俳句】

すだちしぼる手許や阿波の女なる  京極杞陽

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俳句が詠める街

根を張る土壌はそこになくても、酒を注げば花は咲く。是、場末に生きる騒客の、四季の巡りを知る処。

vol.2 目黒|美人がいたまち恋の町

国会図書館デジタルコレクションより 朱引と墨引の中間にあり、江戸であって江戸ではない場所、それがかつての目黒であった。江戸五色不動の一つ、瀧泉寺の目黒不動があるために、江戸時代では、ちょっとした旅行気分が味わえたという。明治時代には、門前に筍飯屋が立ち並び、目黒を訪れた正岡子規が「筍や目黒の美人ありやなし」の俳句を残している。付近は孟宗竹の産地で、筍飯は「さんま」と並ぶ目黒名物であった。
 といっても、本当の目的は信仰や食欲にあるのではなく、どうやら給仕の女性。各店は、客を呼び込むために美人を立たせ、子規は、牡丹亭の十七、八の娘に恋をした。奥手な子規には空しい恋となったが、それは生涯で一番ときめいた瞬間だったのかもしれない。

* 上画像は「武蔵百景之内目黒不動」(小林清親1884年:国会図書館デジタルコレクションより)

俳句でハイク|目黒不動の門前町にときめきを探して

 もう恋など忘れて何年もたつが、思い立って目黒に出かけることに。しかし、最初から失敗。JR目黒駅に降り立てば、そこは目黒区ではなく品川区。「不動前」という東急の駅もあったのに、「目黒」の名に惑わされて迷路に入り込むことに…

権之助坂商店街【俳句でハイク1 権之助坂商店街】
JR目黒駅を西に出れば、昭和の香りに遭遇。古びた赤い片側アーケードがついたその街の名は、権之助坂商店街。急坂の行人坂を避けるバイパスとして、元禄時代に菅沼権之助が開いた坂は、ビジネスマンが立ち止まる飲食店街となった。その一店の暖簾をくぐり、中華そばで腹ごしらえ。しかし、そこに女性は存在しない。麺の上のメンマをつまんで、期待ばかりを膨らませている。

かむろ坂【俳句でハイク2 かむろ坂】
目黒川を渡って南下して約15分、かむろ坂に出た。吉原の遊女・小紫は、惚れた男の死を知って、目黒の墓前で自害した。小紫についていた禿(かむろ)は小紫を追うが間に合わず、傷心の帰路、暴漢から逃れるために池に身を投じて亡くなった。都市化にも、入水した地につけられた「かむろ坂」の地名だけは残り、ひとつの恋愛が導いた不幸な出来事を語り継いでいる。

羽根つき餃子の金春【俳句でハイク3 目黒不動門前の比翼塚】
小紫と恋仲だったのは、人を斬って鳥取を出奔した権八。吉原では金に窮し、辻斬を重ねることに。目黒の東昌寺で改心した権八は、故郷に帰って両親の他界を知り、自首して処刑された。それを知った小紫は、東昌寺に建てられた墓の前で後追い心中してしまう。歌舞伎の題材ともなった有名な事件で、東昌寺は廃寺となったが、目黒不動門前に比翼塚が建てられている。

目黒不動【俳句でハイク4 目黒不動こと瀧泉寺】
目黒の由来となった目黒不動は、808年に慈覚大師が安置したもので、その不動尊を本尊として瀧泉寺が創建された。江戸で3本の指に入る富くじ興行の場としても賑わい、行楽客で溢れるラスベガスのような時代もあった。境内の愛染明王は、良縁成就の明王として名高い。ただ、とてつもなく恐ろしい御顔をした明王様である。腹をくくらぬ者は祈らぬ方がよい。

目黒不動商店街【俳句でハイク5 目黒不動商店街】
かつて目黒駅付近の行人坂から目黒不動門前までは、ぎっしりと店が立ち並んでいたというが、現在では道順も分からないほどにまばらである。かろうじて目黒不動商店街と名付けられた通りがあるが、車の通行の方が多いくらいである。この中に、「目黒のさんま」や「筍飯」を提供する店を探してみるが、見つからない。ましてや、若い女性が給仕する飲み屋など…

大国家【俳句でハイク6 見つからなかった大国家】
筍飯の名店に、角伊勢・内田屋・大国家などがあったとされる。廃れたならせめてもと、大国家跡地にあるという由緒の石碑を探してみた。しかし、それさえも見つからず、ある店舗の前に置かれていた大黒様だけ写真に収めて帰ってきた。高浜虚子の俳句が、一晩中頭の中を駆け巡っていた。「目黒なる筍飯も昔かな」・・・筍飯は夢だった…

 目黒の門前に、まだ見ぬ恋は破れた。再びJR目黒駅を目指すと、道端に「お七の井戸」が。
 八百屋お七は、恋のために火を起こして処刑された。恋心に火がつけば、人は身を滅ぼすものなのかもしれない。目黒のお不動様は、そのことを教えるために導いてくれたのだと思う。感謝を込めて一句、
「動かざる心をもってひとり虫」(泰)

苦界ただよふ萍に もつれて零る夜の雨
酔夢覚めゆく朝には 浮かびをるなり青蓮華

水中花ちひさき魚およがせて (

俳句が詠める街

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季語|水芭蕉(みずばしょう)

仲夏の季語 水芭蕉

水芭蕉の俳句と季語サトイモ科ミズバショウ属の多年草。北海道や本州の冷涼な山間部の湿地に自生する。特に、「夏の思い出」に歌われる尾瀬が有名。
花に見える純白の仏炎苞は、葉の変形したもの。尾瀬では、5月中旬から6月にかけて、仏炎苞の中央に花序をつける。雪解水の中に花を咲かせるが、本州では主に高地に見られることから夏の季語になっている。
水芭蕉の名は、水の中に育つその佇まいが芭蕉に似ているところから来ている。別名に牛の舌(べこのした)。花言葉は「美しい思い出」。

【水芭蕉の俳句】

影つねに水に流され水芭蕉  木内怜子

▶ 夏の季語になった花 見頃と名所

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季語|竹の秋(たけのあき)

晩春の季語 竹の秋

竹秋(ちくしゅう)・竹落葉(たけおちば)

竹の秋と季語と俳句養分が筍にまわる晩春、竹の葉は活力を失くして黄変する。これを、春にもかかわらず「竹の秋」という。
夏に入るころ落葉することから、夏の季語として「竹落葉」がある。ただし、竹は常緑であるので、全てが落葉するものではない。秋には若葉が映えることから、これを「竹の春」という。
「竹秋」ともいうが、これは陰暦3月の異称としても用いられる。

【竹の秋の俳句】

いざ竹の秋風聞かむ相国寺  大伴大江丸

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季語|桜鯛(さくらだい)

晩春の季語 桜鯛

桜鯛の季語俳句ハタ科の海水魚にサクラダイがあるが、季語となるのは、真鯛。
桜が花盛りの頃、瀬戸内海などの内海沿岸では、産卵のために真鯛が集まってくる。繁殖期の雌の真鯛の体色は桜色に染まり、脂がのって旨いとされる。丁度、年度初めにも時期が重なるため、「めでたい」に掛けて縁起物として扱われる。
ブランド物として知られているものには、明石の鯛、鳴門鯛などがある。産卵が終わった鯛は、体色も落ち、「麦わら鯛」という。
俳諧歳時記栞草には、春之部三月に分類され、本朝食鑑の引用で「歌書に云、春三月、さくらの花ひらきて、漁人多くこれをとる。故に桜鯛と云」とあり、併せて「夫木和歌抄」藤原為家の

ゆく春のさかひの浦のさくらだひ あかぬかたみにけふや引らん

を載せる。

【桜鯛の俳句】

桜鯛かなしき目玉くはれけり  川端茅舎

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季語|弥生(やよい)

晩春の季語 弥生

弥生の季語と俳句陰暦三月のことであるが、新暦3月の別名としても用いる。俳諧歳時記栞草に、奥儀抄の引用で「此月をやよひと云ことは、春至りて萌出たる草の、この月いよいよ生れば、いやおひ月と云を、やよひとは云也」とある。

【弥生の俳句】

終日の雨めづらしき弥生かな  伊藤信徳

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季語|日永(ひなが)

三春の季語 日永

永き日(ながきひ)永日(えいじつ)

季語と俳句で日永春の日中は、日脚がのびて長く感じる。因みに、「短夜」は夏、「夜長」は秋、「日短」は冬の季語。
東京では、12月に16時半頃に日の入りしていたものが、3月下旬には18時をまわる。

万葉集には作者不詳の和歌で、

霞立つ春の永日を奥処なく 知らぬ山路を恋ひつつか来む

がある。

▶ 関連季語 遅日(春)

【日永の俳句】

飛べそうな気がする永き日の岬  五島高資

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季語|糸瓜(へちま)

三秋の季語 糸瓜

糸瓜棚(へちまだな)

糸瓜の季語と俳句インド原産のウリ科、蔓性の一年草。奈良時代以前に渡来したとの説もあるが、江戸時代初期に中国から渡来したとするのが通説。
7月から9月に、雌花と雄花に分かれて開花し、8月から10月頃に実をつける。緑陰を得るために植えられることが多い。実は、南九州などでは食用にもするが、繊維質のために、成熟したものをたわしにしたりなどする。また、蔓から出る水は「へちま水」と言って、化粧水にしたり痰切などの薬に使用したりもする。
子規の一連の糸瓜の句は、肺結核に苦しみ、咳止めに糸瓜水を使用したことから生まれている。この糸瓜の句に因み、子規忌は糸瓜忌ともいう。

繊維が多く「いとうり」と呼んでいたのが「とうり」に転訛した。さらに、「とうり」の「と」が、いろは歌の「へ」と「ち」の間にあることから「へち間」となった。
俳諧歳時記栞草(1851年)には秋之部に「布瓜(へちま)」として載る。糸瓜の花は夏之部六月に掲載されている。

▶ 関連季語 糸瓜の花(夏)

【糸瓜の俳句】

をととひのへちまの水も取らざりき  正岡子規

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