仲春の季語 三椏の花
ジンチョウゲ科ミツマタ属ミツマタは、ヒマラヤ地方原産の落葉性低木で、3月から4月頃に芳香のある球状の黄色い花を咲かせる。園芸種には赤い花を咲かせるものもある。花のように見える部分は、萼が変化したものであり、花弁は持たない。
江戸時代に入る前の1590年頃、和紙の原料として中国から渡来したとされるが、万葉集に「三枝(さきくさ)」として出てくるのが三椏だという説がある。柿本人麻呂は
春さればまづ三枝の幸くあらば 後にも逢はむな恋ひそ我妹
と歌っている。ただし三枝は、福寿草あるいは沈丁花を指すという説もある。
枝が三つに分かれるために「みつまた」の名を持つ。樹皮は和紙の原料となり、紙幣に使われることで有名である。
【三椏の花の俳句】
二又に咲く三椏もありしこと 後藤比奈夫

バラ科シモツケ属ユキヤナギは、日本原産の落葉低木。本来は岩場を好む植物であるが、庭木にもよく用いられる。小手毬と同属であるが、小手毬が小さな手毬のように小花が集合して咲くのに対し、雪柳は散房花序となり、3月から4月頃に咲く。
マメ科レンリソウ属スイートピーは、シチリア島原産の蔓性の一年草。「麝香豌豆(じゃこうえんどう)」「香豌豆(かおりえんどう)」「麝香連理草(じゃこうれんりんそう)」とも呼ばれ芳香を持つが、近年市場で見られるものは、品種改良で香りが弱くなったものが多い。
ミズキ科ミズキ属サンシュユは、中国・朝鮮半島原産で、江戸時代享保年間に薬用植物として渡来した。花期は2月から3月頃で、若葉が出る前に黄色い小花をたくさんつける。秋になる果実は「山茱萸」という生薬にされ、頻尿などの改善に用いられる。
キク科フキ属フキは、「蕗」や「蕗の葉」として夏の季語になるが、1月から3月頃に見られる若い花茎は、「蕗の薹」として春の季語になる。フキは食用として栽培されるが、全国の湿り気の多い場所に自生する植物でもある。
マンサク科マンサク属マンサクは、北海道から九州に自生する落葉小高木で、1月から3月頃に、房状に個性的な芳香のある花をつける。庭木としてもよく植えられる。赤花の品種などもある。
サイネリアは、キク科ペリカルリス属のシネラリアのこと。シネラリアでは「死」を連想させるため、「サイネリア」の名で流通している。
キク科キンセンカ属キンセンカは、地中海沿岸原産の一日花で、12月から5月頃に花が見られる。「常春花」「長春花」「ときしらず」と呼ばれたり、冬咲の「冬しらず」と呼ばれるものもあり、花期は長いが、花の最盛期である晩春の季語となる。
スミレ科スミレ属サンシキスミレはヨーロッパ原産の野生植物であるが、他のスミレ属の植物と交配させた園芸種が、パンジーと呼ばれて日本でも親しまれている。なお、花径4センチメートル以下の小さなものは、ビオラと呼んで区別することがある。パンジーには多くの種類があり、10月から5月くらいまで、カラフルな花を観察することができる。
キンポウゲ科フクジュソウ属フクジュソウは、北海道から九州に自生する多年草で、毒草である。花の中の温度を下げないために花弁を開閉するため、日が出ると開き、隠れると萎む。