俳句

季語|鱈場蟹(たらばがに)

三冬の季語 鱈場蟹

鱈場蟹の俳句と季語十脚目ヤドカリ下目タラバガニ科タラバガニ属タラバガニ。タラバガニ属に属する近縁種に、秋の季語となるハナサキガニがある。「カニ」の名を持つが、「ヤドカリ」の一種である。
「鱈場蟹」の名の通り、漁場はと重なり、日本では主に北海道で獲られる。小林多喜二の「蟹工船」で知られる蟹である。
鱈場蟹の漁期は春夏と冬であり、冷凍技術の発達により年中食される食材となったが、鍋のイメージが強く、冬の季語になっている。
日本では、雌の捕獲は禁止されている。刺身で食すこともあるが、茹でると甘みが増す。通常、鱈場蟹の蟹味噌は食べない。

【鱈場蟹の俳句】

鱈場蟹おのが甲羅で煮られをり  長谷川櫂

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季語|鱸(すずき)

三秋の季語 

鱸の俳句と季語スズキ目スズキ科スズキ属スズキは、沖縄を除く日本沿岸の河口部を中心に生息している。春から秋にかけて、より淡水域に近いところまで入り込んきて、河川の奥深くの純淡水域まで達することもある。
産卵期は冬であり、夏場によく肥える高級魚である。旬は夏であるが、秋には産卵に備えて岸に寄ってくるので、「鱸釣」は秋の風物詩となり、「鱸」は秋の季語に分類されることになった。釣り人は鱸のことを、英名に因んで「シーバス」とも呼ぶ。
出世魚としても知られており、約10年の寿命を持ち、「コッパ」⇒「セイゴ」⇒「フッコ」⇒「スズキ」と名が変わり、スズキは30センチ以上のもの。その、すすいだように白い身から「すすぎ」が「すずき」になったという説など、語源には諸説ある。

万葉集には鱸釣の和歌で2首が載り、柿本人麻呂に

荒栲の藤江の浦に鱸釣る 海人とか見らむ旅行く我れを

がある。俳諧歳時記栞草には八月に「鱸釣(すずきつる)」があり、「大和本草」の引用で下記のようにある。

鱸魚、大なる者二三尺、三月以後七月まで肥ゆ。暑月、脂多くして味よし。八月よりやする。夏秋、さしみ鱠とし鮓となす。夏月、腸の味よし。クモワタといふ腸あり、脂多く味よし。小なるをセイゴといふ。松江(せうこう)なるべし。中華松江の鱸は、其大さ、日本のセイゴの如しと云。河鱸、味尤よし、暑月の佳品也。海と河の間にあるもの味よし。漁人、これを釣、或は戈にて突てとる。

【鱸の俳句】

打つ櫂に鱸はねたり淵の色  宝井其角

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季語|秋刀魚(さんま)

晩秋の季語 秋刀魚

初秋刀魚(はつさんま)

秋刀魚の季語俳句ダツ目サンマ科に属する大衆魚。日本近海から北太平洋に広く分布し、群れをつくって回遊している。日本では、オホーツク海あたりを回遊していたものが、気温の低下とともに南下する。産卵前の秋は、脂が乗って非常に美味で、秋の味覚の代表的存在である。
かつては日本とロシアの一部でしか食されない魚であったが、近年では日本食ブームとともに、世界的に人気が出つつある。

語源は、細長い魚を意味する「狭真魚(さまな)」とする説がある。
漢字の「秋刀魚」は、旬の「秋」と「刀」に似た魚体を組み合わせてつくられた。「鰶」も「さんま」と読むが、「このしろ」も「鰶」の字を使うので、注意が必要。
落語で有名な「目黒のさんま」は、鷹狩に目黒に来た殿様を登場させた滑稽噺。目黒の庶民が無造作に調理した秋刀魚をいたく気に入り、後に所望したものの、城内で丁寧に調理されたものは風味が損なわれ、「さんまは目黒に限る」と断言するというもの。

【秋刀魚の俳句】

火だるまの秋刀魚を妻が食はせけり  秋元不死男
夕空の土星に秋刀魚焼く匂ひ  川端茅舎

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季語|さより

三春の季語 さより

さよりの俳句と季語ダツ目サヨリ科に属する海水魚である。漢字では「鱵」「細魚」「針魚」「水針魚」「竹魚」などと書き、「長鰯(ながいわし)」ともいう。トビウオと近縁で、下顎が長く突き出しているのが特徴である。日本全国の沿岸の海面近くに、群れて生息している。
春から秋を中心に、年中水揚げされるが、産卵直前の3月から5月にかけて獲られるものが美味い。白身の高級魚である。

細いことを表す「狭(さ)」に、群れを表す「寄り」がくっついたものが語源になったとの説がある。
「さよりのように腹黒い」という言葉があるが、さよりの腹膜が黒いために、見かけによらず腹黒い人を指す。

【さよりの俳句】

夕風にそよりともせぬさよりかな  赤尾兜子

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季語|このしろ

初秋の季語 このしろ

このしろの俳句と季語ニシン目ニシン科 コノシロ属コノシロ。東北以南の内湾などに、群れで定住しており、汽水域にも進入する。寿命は約3年で、成長とともに名前が変わる出世魚であり、「シンコ」⇒「コハダ」⇒「ナカズミ」⇒「コノシロ」となる。
光ものの代表として酢締めにすることが多く、秋祭で広くふるまわれることから、「このしろ」には「鰶」の字が当てられる。また、冬場に脂が乗って旨くなることから「鮗」の国字も用いられる。ただし、骨が邪魔になるため、あまり大きいものは好まれず、「新子(しんこ)」「小鰭(こはだ)」で目にすることが多い。

古くは「ツナシ」と呼んでおり、万葉集では大伴家持の長歌に「都奈之」として登場する。
「このしろ」の名が定着したのは戦国時代であり、大量に獲れたために、飯の代わりという意から「飯代魚(このしろ)」と呼ばれた。武士は、腹開きにすることから「腹切魚」と呼び、「この城」に通じることからも、食べるのを避けた。
また、焼くと人体が焦げるような匂いがすると言われ、子の身代わりであるとの信仰が生まれ、そこから「子の代」と呼ばれるようになったという説もある。

【このしろの俳句】

鍛治の火に鰶焼くと見て過ぎつ  山口誓子

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季語|鱚(きす)

三夏の季語 

鱚の俳句と季語スズキ目スズキ亜目キス科。シロギスやアオギスなどがあるが、特にシロギスを「鱚」とすることが多い。因みに「鱚」は国字。
シロギスは、北海道から九州のきれいな浅海の砂地に棲む。夏場、シロギスは浅いところに移動してきて、目にしやすい。また、淡白で上品な味わいが特徴で、産卵前の夏が旬とされる。天ぷらが特に人気であるが、刺身も美味い。

素直で飾り気のないことを指す「きす」が語源とされ、かつては、魚を表す接尾語「ご」をつけて「きすご」と呼んでいた。
江戸時代には、レジャーとして品川などで盛んにアオギス釣りが行われていたという。それを「脚立釣り」と呼び、海中に立てた脚立が東京湾の初夏の風物詩だったというが、埋め立てに伴い、東京湾のアオギスは1962年に絶滅してしまった。

【鱚の俳句】

引潮の今がさかひや鱚を釣る  高浜年尾

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季語|皮剥(かわはぎ)

三夏の季語 皮剥

皮剥の俳句と季語カワハギは、フグ目カワハギ科に分類される魚の一種で、地方によってはハゲ、ハギ、マルハゲ、メンボウなどとも呼ぶ。カワハギ科の中には、カワハギよりやや食味が劣るとされるウマヅラハギもあり、俳句では「馬面」として詠むことがある。
青森から九州の比較的浅い海に生息し、一年を通じて釣れるが、口が小さいためになかなか釣れない高級魚である。産卵期は5月から8月であり、比較的この時期に目にしやすい。身は夏が美味とされるが、皮剥の最大の特徴である肝は、冬場に備えて栄養を蓄える秋が旬となる。
ざらざらした皮に身が覆われており、調理する時には面白いように剥げることから、「皮剥」の名がついた。

【皮剥の俳句】

うまづらかははぎ長き泣顔いかにせん  加藤楸邨

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季語|鮑(あわび)

三夏の季語 

鮑の俳句と季語鮑は殻に渦巻きがあり、ミミガイ科の大型の巻貝に分類される。鮑と呼ばれるものは1種類ではなく、クロアワビ・メガイアワビ・マダカアワビ・エゾアワビがある。北海道から九州までの水深数十メートルまでの岩礁に生息し、クロアワビ⇒メガイアワビ⇒マダカアワビの順に深いところで生活している。
鮑の殻の背面には4、5個の穴が開いているが、これは排泄物や卵、精子などを放出するためのものである。

クロアワビ・メガイアワビ・マダカアワビの旬は夏であるが、北海道や東北でとれるエゾアワビは冬が旬である。高級食材として流通しており、中国の干し鮑は「乾鮑」と書き、大変な高値で取引されている。

日本では、縄文時代の貝塚からも貝殻が出土しており、古くから食用にされていたと考えられている。また、万葉集にも「鰒」の字で登場し、

伊勢の海人の朝な夕なに潜くといふ 鰒の貝の片思にして

の和歌は、片思いの洒落言葉「磯の鮑の片想い」の元になっている。
鮑は神聖なものと考えられ、古くは長寿をもたらす食物と考えられていた。そこから熨斗鮑が生まれている。また、殻を出入り口に吊すと魔よけの効果があると考えられてきた。

【鮑の俳句】

うかみくる顔のゆがめり鮑採  伊藤柏翠

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季語|赤貝(あかがい)

三春の季語 赤貝

赤貝の俳句と季語フネガイ目フネガイ科に属するアカガイ。血液が赤く身が赤いことから、赤貝の名がついた。「蚶」とも書く。
浅海の砂泥に潜って生活しており、比較的簡単に採取できるため、潮干狩の盛んな春の季語となる。旬は、身が太くなる冬から春。夏の産卵期になると、貝毒を発生し、身がやせて不味くなる。

古語では蚶貝(きさがい)といい、古事記の「大国主の神」の項に出てくる。大火傷を負った大国主を、蚶貝比売(きさがいひめ)と蛤貝比売(うむがいひめ)が協力して治療している。
また、貝は女陰の隠語として用いられることがあり、成長に合わせて蜆⇒蛤⇒赤貝と呼ばれることがある。

【赤貝の俳句】

赤貝のひもに終りし夜の鮓  森澄雄

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季語|いさき

三夏の季語 いさき

いさきの俳句と季語スズキ目イサキ科スズキ目イサキ。漢字では、「伊佐木」「伊佐幾」「鶏魚」などと書く。東北以南の外洋に面した岩礁に生息する、体長約40センチの白身魚である。
産卵期は6月から9月で、産卵前のものは脂が乗っており旨い。特に、6月から7月に獲れるものは「麦わらいさき」「梅雨いさき」と呼ばれ、絶品である。

「磯」に棲む「魚(き)」で「イソキ」と呼ばれていたものが転訛したとも、幼魚の頃にある「斑(いさ)」が語源であるとも言われている。
また、トサカのような背びれを持つところから漢字では「鶏魚」と書くようになったとも言われている。

【いさきの俳句】

汐よしとうなづきて出づいさき船  松崎鉄之介

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