季語|熱燗(あつかん)

三冬の季語 熱燗

燗酒(かんざけ)

季語と俳句で熱燗湯煎で温めた酒を燗酒と言う。燗酒全般を熱燗とも呼ぶが、現在ではその温度帯に応じて、様々な呼び名がつけられている。55℃付近を「飛び切り燗」、50℃付近を「熱燗」、50℃付近を「上燗」、45℃付近を「ぬる燗」、37℃付近を「人肌燗」、それ以下を「日向燗」などと呼ぶ。
古くは銚子を直火にかけたりなどしていたが、江戸時代には、チロリや燗徳利を用いて湯煎することが主流になった。現代では、電子レンジを用いることも多い。

延喜式に酒を温める土熬鍋(どごうなべ)が出てくることから、酒を燗にして飲む習慣は、平安時代以前からあったという。菊の節句(陰暦9月9日)から桃の節句(陰暦3月3日)までが酒を温めて飲む期間とされ、重陽の日に無病息災を祈って飲む中国の風習が定着したものか。ルイス・フロイスの「日欧文化比較」の中に、日本人は一年中酒を温めて飲むと書かれており、戦国時代には熱燗が一般的になっていたものと考えられる。
なお、温かい酒でも「湯割り」は燗酒ではない。また、「温め酒」と言った場合、重陽の節句に飲む酒となり、秋の季語となる。

燗にする酒は日本酒や紹興酒が一般的であるが、ワインやビールも温めて飲むことがある。焼酎は、水割してから燗にする。
日本酒には、燗をして風味が増すものとそうでないものがあり、風味が増すことを「燗上がり」という。生酛造りの純米酒などは燗上がりしやすいのに対し、吟醸酒などの香味ゆたかなものは、熱燗にすると風味が損なわれやすい。

▶ 関連季語 温め酒(秋)

【熱燗の俳句】

熱燗やふすまあくたびあぐる顏  久保田万太郎

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季語|梟(ふくろう)

三冬の季語 

梟の俳句と季語「森の物知り博士」「森の哲学者」の呼称でも知られる猛禽類の一種で、フクロウ目フクロウ科フクロウ属に分類される。夜行性で、待ち伏せて狩りをする。
日本に生息するフクロウ科の鳥には、フクロウの他に、シマフクロウ、シロフクロウ、ワシミミズク、トラフズク、コノハズク、コミミズク、アオバズクなどがある。フクロウは留鳥であるが、コノハズク(木葉木菟)・アオバズク(青葉木菟)は渡り鳥であり、夏の季語となる。

飛翔時には羽音を立てることがないため、「森の忍者」と呼ばれることも。その風切羽の構造は、新幹線のパンタグラフなどに応用され、消音に役立てられている。
鳴き声は、「五郎助奉公」「ボロ着て奉公」と聞きなされる。

現在では「不苦労」「福老」の当字で、幸せを呼ぶ鳥と見なされているが、古代中国や西欧文化が伝わる近代までの日本では、母を食う鳥として「不孝鳥(不幸鳥)」とされた。
日本書紀(景行紀)には、敵対するものとして川上梟帥(かわかみのたける)などに「梟」の文字が当てられる。川上梟帥を討った日本童男は、日本武(やまとたける)の名が譲られた。ここに見るに、古代日本では、「梟」に、強くて悪いもののイメージがあったと考えられる。因みに古事記では、「タケル」に「建」の字が充てられる。
梟を詠んだ和歌として、夫木和歌抄に西行上人の

山ふかみけぢかき鳥の音はせで 物おそろしきふくろふのこゑ

が載る。
西欧でフクロウに対するイメージが良いのは、ギリシャ神話で、女神アテナの従者として描かれているためか。
長野には、「梟の染め物屋」という昔話があり、カラスを黒く染めたところ激怒され、カラスに追いかけまわされるようになったという。それ以降、森の奥で「糊付けほっほ」と鳴きながら営業をしているという。

フクロウの語源は、毛が膨れた鳥にあるとも、鳴き声からきたとも言われる。「梟」の文字が「木」の上に「鳥」を置いた形なのは、むかし、木の上に梟の死骸を置いて鳥除けにしたからとの説がある。「梟首」とはさらし首のことである。

【梟の俳句】

梟に奪はれさうな灯が一つ  藤本和子

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季語|万両(まんりょう)

三冬の季語 万両

万両の俳句と季語ヤブコウジ科ヤブコウジ属の常緑小低木で、7月頃に白い花を咲かせ、冬に赤い実をつける。もとは南方系の植物で、関東以南の林間に自生するものであるが、江戸時代から栽培も盛んに行われている。白い実をつけるシロミノマンリョウ、黄色い実をつけるキミノマンリョウなども知られている。
名前の目出度さより、正月の縁起物となる。同じく縁起物となる千両も同じように赤い実をつけるが、こちらはセンリョウ科の常緑小低木で、万両よりも実の数が少なく見えることから、千両と呼ばれる。万両は、実が互生の葉の下につくのに対し、千両は実が対生の葉の上につくといった違いがある。
他にも、ヤブコウジ科カラタチバナの別名「百両」、ヤブコウジ科ヤブコウジの別名「十両」、アカネ科アリドオシの別名「一両」があり、いずれも冬場に赤い実をつける。正月には、千両・万両とともに、これらのいずれかを並べ「千両・万両・有り通し」と縁起をかついで、 金運に恵まれることを願う。3

【万両の俳句】

万両にゆすらの花の白き散る  正岡子規
万両は兎の眼もち赤きかな  加賀千代女

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季語|冬の蝶(ふゆのちょう)

三冬の季語 冬の蝶

冬蝶(ふゆちょう)凍蝶(いてちょう)

冬の蝶の俳句と季語アゲハチョウやモンシロチョウなど、大多数の蝶は、蛹となって越冬するが、中には、卵や幼虫、成虫の形態で越冬するものもある。
冬の蝶と言う場合、モンシロチョウやモンキチョウなどの11月頃まで見られる種類と、タテハチョウなどの越冬種に分かれる。越冬種は、できるだけ動かずに寒さをしのぐが、気温が上昇した日だまりに見かけることが稀にある。

▶ 関連季語 蝶(春)

【冬の蝶の俳句】

冬蝶の影をはなしてとびにけり  松本ヤチヨ
凍蝶を過のごと瓶に飼ふ  飯島晴子

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季語|寒昴(かんすばる)

三冬の季語 寒昴

すばる

寒昴の俳句と季語「すばる」とは、地球から400光年離れた、おうし座にあるプレアデス星団。ギリシア神話のプレアデス七姉妹に擬され、オリオンから逃げ続けていると言われている。
日本でも古くから親しまれており、枕草子にも「星はすばる」と、彦星(アルタイル)・夕づつ(金星)・よばひ星(流星)を差し置いて、一番に挙げられている。現代においては、 谷村新司の歌った「昴」が一番馴染み深いか。

「すばる」とは、「統べる(すべる)」から来た言葉で、太古には玉を連ねたものを「すまる」と言った。古事記には、「御統(みすまる)」というオトタナバタの首飾りが出てくる。
また、古代天皇は「スメラミコト」「スメラギ」と呼ばれており、これも「統べる」からきた言葉である。

【寒昴の俳句】

寒昴身のすきとほるほどひとり  椿文恵

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季語|鷹(たか)

三冬の季語 

鷲(わし)

鷹の俳句と季語(生写四十八鷹白鷹五葉のまつ)鷲も鷹も、タカ目タカ科に属し、一般には大きめのものを鷲、小さめのものを鷹と呼んでいる。ただし、イヌワシと並ぶほどの大きさを持つクマタカも鷹と呼ばれるのを考えると、鷹斑模様がはっきりと出るものを「タカ」とすることの方が正しいか。
日本で有名なのは、体の大きい順に、イヌワシ、クマタカ、オオタカ、ハイタカであり、普通に「鷹」と言った場合は「オオタカ」を指す。成長すると肩羽が青みがかることから、「オオタカ」は、「アオタカ」の転訛と考えられている。
その他、日本で見られるタカ科の鳥に、トビ、ミサゴ、ノスリ、サシバ、ツミなどがある。似た形状を持つ猛禽類にハヤブサがあるが、こちらはハヤブサ目ハヤブサ科ハヤブサ属に分類され、近年の研究ではスズメに近い種類だと考えられている。

オオタカをはじめとする鷹は、古くから鷹狩に使われており、埴輪にも鷹匠と見られるものがある。仁徳紀には、百済で倶知(くち)と呼ばれる鷹が、罠にかかった話があり、調教した後、皮の縄を足につけ、尾に鈴をつけて鷹狩をしたとある。
万葉の時代、大伴家持は鷹を愛でていたと見られ、

矢形尾の真白の鷹をやどに据ゑ 掻き撫で見つつ飼はくしよしも

の歌が万葉集に載る。
高いところを飛ぶから「タカ」になったという語源説がある。古くから親しまれてきた鳥だけあって、慣用句になったものもいくつかあり、「鵜の目鷹の目」「鳶が鷹を生む」「能ある鷹は爪を隠す」「一富士二鷹三茄子」などがある。また、政治的分類で強硬派をタカ派と呼び、ハト派と対を成す。

春と秋にはタカの渡りが観測されるが、運が良ければ、多くの鷹が竜巻状に上昇していく鷹柱というものが見られる。芭蕉の句で有名な愛知県の伊良湖岬は、タカの渡りで有名なポイントで、秋にはサシバの鷹柱がよく観測されるという。

【鷹の俳句】

鷹一つ見つけてうれし伊良古崎  松尾芭蕉
かの鷹に風となづけて飼ひ殺す  正木ゆう子

【夢紡ぎの宿 月の渚】

伊良湖岬の先端にある全室露天風呂付、オーシャンビューの人気宿。月の美しさが売りであるが、運が良ければ部屋からタカの渡りも観測できる。楽天トラベル・お客さまが評価する「泊まってよかったランキング」全国1位にも輝いた実績。

季語|短日(たんじつ)

三冬の季語 短日

日短(ひみじか)

短日の俳句と季語日没が早くなるに従い、昼の時間が短く感じられる冬。冬至を境に、昼の時間は次第に長くなってくるものの、東京では1月下旬になってようやく、日没時間が17時をまわる。
春は日永、夏は短夜、秋は夜長の季語がそれぞれにある。

【短日の俳句】

妻よ我が短日の頬燃ゆるかな  石田波郷

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季語|枯草(かれくさ・こそう)

三冬の季語 枯草

草枯る(くさかる)

枯草の俳句と季語「草枯(くさかれ)」は秋のことを言うが、枯草は冬の季語になる。俳諧歳時記栞草に「枯草の露」は、秋之部に分類され、「枯野・枯草は冬なれども、露をむすびては秋なり」とある。


▶ 関連季語 秋草(秋)

【枯草の俳句】

枯草原白猫何を尋ねゆくや  石田波郷
枯草の一すぢ指にまきてはとく  横山白虹

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季語|枯野(かれの)

三冬の季語 枯野

枯れ野(かれの)

枯野の俳句と季語草木の枯れはてて荒涼とした原野は、郷愁を誘う。「枯野」の句で最も有名なのは、事実上の芭蕉の辞世とも言われる「旅に病んで夢は枯れ野をかけめぐる」だろう。芭蕉があこがれた西行には、

朽ちもせぬその名ばかりをとどめおきて 枯野の薄かたみにぞ見る

という中将実方を弔った歌がある。「奥の細道」の道中で笠島に入った芭蕉は、同じように中将実方の塚を訪ねようとしたが、雨がひどくて疲れもあって、遠くから眺めたと記している。

古代において「枯野」と言えば船の名である。古事記(仁徳記)と日本書紀(応仁紀)と、記述に違いは見られるが、いずれも枯野という名の優れた船があったことが書かれている。そして、その船が使えなくなった時、塩を焼いて、焼け残りで琴を作ったとある。その時に、

枯野を塩に焼き其が余り琴に作り掻き弾くや 由良の門の門中の海石に振れ立つ浸漬の木のさやさや

という歌が歌われている。日本書紀の記述を辿れば、枯野は伊豆の軽野(狩野)から贈られた船だと想像できる。
この船名の枯野は恐らく「狩野」の転訛だと思われるが、本来「枯」は、「刈」「狩」に通じる言葉である。

【枯野の俳句】

旅に病んで夢は枯れ野をかけめぐる  松尾芭蕉
吾が影の吹かれて長き枯れ野かな  夏目漱石

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季語|寒夜(かんや・さむよ)

三冬の季語 寒夜

冬の夜(ふゆのよ・ふゆのよる)夜半の冬(よはのふゆ)

寒夜の俳句と季語冬の夜の寒さは厳しい。現代でこそ暖房設備が整い、室内では快適に過ごすことができるようになったが、かつては、それを如何に遣り過ごすかは生きていく上での課題であった。古い句に、時代の変遷を見るのも面白い。

【寒夜の俳句】

冬の夜や古き仏を先づ焚かむ  与謝蕪村
抱く珠の貝のあはれを聞く冬夜  中村汀女

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