季語|金木犀(きんもくせい)

仲秋の季語 金木犀

木犀(もくせい)・銀木犀(ぎんもくせい)

金木犀の俳句と季語モクセイ科モクセイ属の常緑小高木に、金木犀・銀木犀・薄黄木犀などがある。中国原産。単に「木犀」と言った場合には「銀木犀」を指す。
9月から10月頃に、金木犀はオレンジ、銀木犀は白、薄黄木犀は淡いオレンジ色の花を咲かせて、特に金木犀はよく薫る。雌雄異株で、日本で雌株を見ることは、まず無い。
「木犀」の名は「下学集」に見られることから、室町時代には渡来していたと考えられる。金木犀は、江戸時代に雄株が渡来し、挿し木で増やされていった。

サイの足に似た樹皮を持つために「木犀」と言う。中国では「木犀」のことを「桂花」とも言い、日本でも「桂の花」と呼ぶことがある。
1970年代から1990年頃まで、金木犀の香りが芳香剤としてしばしば使用されていたため、トイレを連想する者がある。中国では、金木犀の花を茶に入れて、桂花茶にする。

【金木犀の俳句】

木犀のこぼれ花より湧ける香も  皆吉爽雨

▶ 秋の季語になった花 見頃と名所

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季語|燕帰る(つばめかえる)

仲秋の季語 燕帰る

帰燕(きえん)燕去る(つばめさる)去ぬ燕(いぬつばめ)秋燕(しゅうえん・あきつばめ)

燕帰る春に渡ってきた燕は、子作りをした後、9月から10月頃、集団を作って南へ帰っていく。七十二候にも玄鳥去があり、9月の中旬から下旬に当たる。
中には、日本国内で越冬する燕もおり、「越冬ツバメ」などと呼ばれる。

▶ 関連季語 燕(春)

【燕帰るの俳句】

ある朝の帰燕高きを淋しめり  鈴木真砂女
篁に一水まぎる秋燕  角川源義

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季語|コスモス(こすもす)

仲秋の季語 コスモス

秋桜(あきざくら)

コスモスの俳句と季語メキシコ原産、キク科の一年草。メキシコからスペインに渡り、コスモスと名づけられた。日本には明治12年に、イタリアから渡来。コスモスとは、ギリシャ語で秩序ある世界の意味で、宇宙を表す。「秋桜」の表記は、さだまさし作詞作曲の「秋桜」で初めて用いられた。花言葉は「真心」。

【コスモスの俳句】

コスモスの君と言はれし人思ふ  山口青邨

▶ 秋の季語になった花 見頃と名所

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季語|野分(のわき)

仲秋の季語 野分

颱風(たいふう)台風(たいふう)

野分の俳句と季語東経100°から180°までの北半球に発生する、最大風速17.2m/s以上の強い低気圧を台風という。その中心は「台風の目」と言われるが、下降気流となり、晴れ渡っている。
古くは、風が野の草を吹き分けるところから、野分(のわき、のわけ)と呼んだ。源氏物語二十八帖「野分」には、夕霧の幼い恋が歌われている。

風騒ぎむら雲まがふ夕べにも忘るる間なく忘られぬ君

台風の語源は、台湾や中国福建省の「大風」にあるという説が有力。それがヨーロッパで「typhoon」となり、漢字圏に逆輸入されて「颱風」となったと言われる。

【野分の俳句】

一期はゆめ野分の鳥のただ狂へ  後藤綾子
芭蕉野分して盥に雨を聞く夜かな  松尾芭蕉

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季語|秋彼岸(あきひがん)

仲秋の季語 秋彼岸

後の彼岸(のちのひがん)秋分(しゅうぶん)

秋彼岸の俳句と季語雑節の一つで、春分・秋分を中日とし、前後各3日を合わせた各7日間を彼岸と言い、秋分を中日とするものを秋彼岸、あるいは後の彼岸と呼ぶ。単に「彼岸」ならば、春の彼岸を指す。最初の日を「彼岸の入り」、最後の日を「彼岸明け」と言う。お彼岸にはお墓参りをし、おはぎを先祖に供え感謝し、極楽往生を願う。
真西に太陽が沈む春分・秋分に、遙か西方の極楽浄土に思いをはせたのが彼岸の始まり。大同元年(806年)、日本で初めて彼岸会が行われた。なお彼岸の行事は、インドや中国の仏教にはなく、日本独自のものだとされる。

語源は、サンスクリット語の Pāramitā つまり「波羅蜜」にあるとされ、これを意訳した「至彼岸」が元となっている。迷いや煩悩を川にたとえ、その向こうの涅槃を目指すもの。

【秋彼岸の俳句】

風もなき秋の彼岸の綿帽子  上島鬼貫

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季語|名月(めいげつ)

仲秋の季語 名月

十五夜(じゅうごや)三五の月(さんごのつき)月見(つきみ)今日の月(きょうのつき)望月(もちづき)十六夜(いざよい・じゅうろくや)既望(きぼう)立待月(たちまちづき)十七夜(じゅうしちや)居待月(いまちづき)十八夜(じゅうはちや)臥待月(ふしまちづき)寝待月(ねまちづき)更待月(ふけまちづき)二十日月(はつかづき)二十三夜(にじゅうさんや)明月(めいげつ)良夜(りょうや)無月(むげつ)・雨月(うげつ)・初月(しょげつ)初月夜(はつづきよ)二日月(ふつかづき)三日月(みかづき)新月(しんげつ)待宵(まつよい)小望月(こもちづき)

名月の俳句と季語(東錦絵)単に「月」といえば三秋の季語である。毎月十五夜はあるものの、単に「十五夜」と言った場合、通常は、仲秋の名月がのぼる旧暦8月15日の夜を指す。
月見は、平安時代に日本に伝わった中国の「中秋節」に由来する風習で、「観月の宴」が開かれていた。中国ではこの日、月を祭り、幸せを祈りながら月餅を切り分けて食べる。
稲刈り前の農閑期と重なることや、気候の良さもあり、近世に入って庶民にも広まった。
別名「芋名月」とも呼ばれるが、芋の収穫祭の意味も込められ、かつては里芋を高く盛って月に供えられた。現在では里芋の代わりに団子を用いる。海外でも収穫祭に因んだ名が用いられており、秋分の日に最も近い満月のことを「ハーベストムーン」と呼ぶ。

月見行事には「栗名月」「豆名月」とも呼ぶ「十三夜」もあるが、こちらは仲秋の名月から約1カ月後の陰暦9月13日の名月をいう。仲秋の名月だけを愛でることを「片見月」として忌む。

▶ 関連季語 月(秋)
▶ 関連季語 後の月(秋)

【名月の俳句】

名月をとつてくれろと泣く子かな  小林一茶
名月や池をめぐりて夜もすがら  松尾芭蕉

▶ 俳句の季節「狼男と秋の月」

初月初月初月夜
名月となる月が初めて出たのを初月という。旧暦8月1日の月を指すが、朔に当たるため、二日月や三日月を「初月」と呼ぶことがある。

二日月二日月
月の第二日目の夜に出る月のことを「二日月」というが、俳句の世界では、特に旧暦8月2日の月を指して仲秋の季語とする。

三日月三日月新月
俳句の世界では、特に旧暦8月3日の月を「三日月」として、仲秋の季語とする。「三日の月」「新月」とも言う。

待宵待宵小望月
旧暦8月14日の夜は「待宵」。「待宵」で十四夜月をも指す。また、小望月ともいう。日の入り前に昇り始める。

十五夜十五夜名月明月三五の月望月今日の月良夜
旧暦8月15日の月。月の出た夜は「良夜」という。望月(もちづき)は、「みてりつき(満月)」から来ているという説がある。月の模様がウサギに見えることから、中国では不老不死の薬をウサギが搗いているいると言われているが、日本では「もちづき」から「餅つき」と結び付けられた。

十六夜十六夜既望
旧暦8月16日の月。十五夜より少し遅れて昇り始め、「いざよい出る」の意味がある。

十七夜立待月十七夜
旧暦8月17日の月。十五夜以降、月の出は遅れるが、十七夜は、立って待てばたちまち出てくることから「立待月」と呼ばれる。

居待月居待月十八夜
旧暦8月18日の月。月の出がやや遅くなるので、坐って待たなければならないという意味が込められている。

臥待月臥待月寝待月
旧暦8月19日の月。月の出がかなり遅れ、寝て待たなければならないほどだという意味が込められている。

臥待月更待月二十日月
旧暦8月20日の月。この頃になると、日の入りから4時間くらい遅れて月が出てくる。夜が更けて月を待つの意。

臥待月二十三夜
旧暦8月23日の月。この月はちょうど真夜中に出てくる。「二十三夜待」ともいう。

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季語|曼珠沙華(まんじゅしゃげ・まんじゅしゃか)

仲秋の季語 曼珠沙華

彼岸花(ひがんばな)死人花(しびとばな)・地獄花(じごくばな)・幽霊花(ゆうれいばな)・狐花(きつねばな)曼朱沙華(まんじゅしゃげ)

曼珠沙華の俳句と季語「情熱」の花ことばを持つ。秋の彼岸に開花することから彼岸花とも言い、秋の季語となる。赤い花をつけるが、白いものなどもある。稲作の伝来とともに中国から入ってきたと言われている。古い文献にはほとんど登場しないが、これは、「火事につながる」「摘むと死人が出る」などと言われて、忌避されてきたからだと考えられる。実際、全体に毒を有し、そのまま食すと中枢神経を侵して死に至ることも。しかし、薬として活用されることもあり、毒抜きをすれば救荒食にもなる。

曼珠沙華の語源はサンスクリット語にあり、サンスクリット語では manjusaka と発音し「赤」を指す。

【曼珠沙華の俳句】

なかなか死ねない彼岸花さく  種田山頭火

▶ 秋の季語になった花 見頃と名所

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季語|初紅葉(はつもみじ)

仲秋の季語 初紅葉

初紅葉の俳句と季語その年、はじめて出現した紅葉。代表は楓。北海道の大雪山では9月頃から始まる。色づき始めると、完全に散るまで1カ月間は紅葉を楽しむことができる。
紅葉するという意の「もみつ」が、平安時代以降濁音化して「もみづ」となり「もみじ」の語源になったと言われている。尚、「もみつ」は染色に関わる言葉で、「揉み出づ」のこと。ベニバナを揉んでで染め上げた絹織物のことを、紅絹(もみ)といった。

【初紅葉の俳句】

山ふさぐこなたおもてや初紅葉  宝井其角

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