カテゴリー: 晩夏
季語|夜濯ぎ(よすすぎ)
季語|羽抜鶏(はぬけどり)
季語|お花畑(おはなばたけ)
晩夏の季語 お花畑
花畑は秋の季語であるが、「お花畑」は夏の季語となり、高山植物の群生している様を指す。高山に咲く花々を山神のものとして、「花畑」に接頭辞をつけたものである。
登山が盛んになった近代に生まれた季語であり、登山シーズンの夏に見られる黄菅などの群生地のことである。
【お花畑の俳句】
お花畑岩に棲む鳥来て隠る 堀口星眠
▶ 夏の季語になった花 見頃と名所
▶ 俳句の季節「脳内お花畑からはじめる俳句」
季語|芭蕉の花(ばしょうのはな)
晩夏の季語 芭蕉の花
バショウ科バショウ属バショウは、7月から9月頃に花をつける。中国原産とされるが、英名はジャパニーズ・バナナである。花も実もバナナによく似ているが、実は種が多くて苦みが強いために食用に適さない。
バショウの花は雌雄異花で、花序の基部近くに雌花が先に咲く。花茎を垂らしながら伸ばした先端の苞の間に雄花が咲く。雌性先熟で自家受粉を避けている。
▶ 関連季語 芭蕉(秋)
【芭蕉の花の俳句】
法の世や在家のばせを花が咲く 小林一茶
季語|竜の鬚の花(りゅうのひげのはな)
晩夏の季語 竜の鬚の花
蛇の髭の花(じゃのひげのはな)
キジカクシ科スズラン亜科ジャノヒゲ属ジャノヒゲは、北海道から九州の森林に自生する常緑の多年生草本で、7月から8月頃に白色または薄紫の花を下向きにつける。庭などを緑で覆うためのグラウンドカバープランツとしてよく利用される。また、水に強いために、アクアプランツとして水槽で利用されることもある。
その葉を能面の「尉(じょう)」の顎鬚に見立て、「尉の鬚(じょうのひげ)」と呼んでいたものが、「蛇の髭(じゃのひげ)」に転訛したものと考えられている。そこから「竜の鬚」という呼称が生まれた。
万葉集に14首歌われる「山菅(やますげ)」はカヤツリグサ科スゲ属の植物であるとの見方が強いが、ジャノヒゲであるとの説もある。
ジャノヒゲの実は、「竜の玉」として冬の季語になる。
【竜の鬚の花の俳句】
おもむろに花をもたげぬ竜のひげ 室積波那女
季語|棉の花(わたのはな)
晩夏の季語 棉の花
「綿花(めんか)」とすれば、綿の実であるふわふわとしたコットンフラワーのことであるが、「綿の花」として夏の季語になるのは、本当の花の方である。因みに、収穫した綿は「新綿」として秋の季語となり、「綿」は防寒に用いられることから冬の季語になる。
木綿がとれるワタは、アオイ科ワタ属の植物の総称で、約50種が知られている。花は7月から8月頃に咲く一日花で、花が萎んで約1か月すると、実が割れてコットンボールと呼ばれる繊維のかたまりが現れる。
アジアや中南米の熱帯地方原産の多年草であるが、日本では寒さのために一年草となる。平安時代初期にインドから渡来したが根付かず、安土桃山時代に中国経由で入ってきたものが九州で栽培され始め、広まった。
季語|胡麻の花(ごまのはな)
晩夏の季語 胡麻の花
ゴマ科ゴマ属ゴマは、アフリカのサバンナ原産の一年草で、7月から8月頃に花をつけ、「胡麻の花」で夏の季語になる。種を採る「胡麻」は秋の季語になる。分類学上、ゴマ属の植物は数十種あるが、食用にされるのは一種のみ。ただし、数千にのぼる品種がある。
胡麻の花は朝に開花するが、その時には既に受粉を終えている。花は葉の付け根に付き、下から順に咲いていく。
インドやエジプトでは、紀元前3000年頃に既に栽培が行われていたと考えられている。中国には紀元前1世紀頃に胡から伝わったとされ、「胡」の「麻」という意味で「胡麻」と名付けられた。日本ではそれを音読みにして「ごま」と呼ぶ。因みに日本では縄文時代の遺跡から種子が出土しており、かなり古くに渡来していたものと考えられる。
【胡麻の花の俳句】
胡麻咲いて人にけものに鍵ある世 大木あまり
季語|糸瓜の花(へちまのはな)
季語|鷺草(さぎそう)
晩夏の季語 鷺草
ラン科ミズトンボ属サギソウは、本州から九州の湿地帯に自生する日本原産の植物で、準絶滅危惧種に指定されている。園芸品種には「天の川」「銀河」などの名がつくものがある。スズメガによる虫媒花で、7月から8月頃に花をつける。
「鷺草」の名は、白鷺を思わせる花の形からきている。
東京都世田谷区には、「さぎ草物語」が伝わる。それによると、当地の城主の側室となった常磐姫は、美しさのあまり他の側室から妬まれ、噂話を信じた城主も遠ざけるようになった。それを憂いた常磐姫は、可愛がっていた鷺の足に父母への手紙をくくりつけて放った。狩りをしていた城主は、たまたまその鷺を射ち落とし、手紙を見て真実を知ることになる。城主は常磐姫のもとに使者を送ったが、時すでに遅く自害していた。
白鷺を埋めて供養した所から咲いた花が「鷺草」だという。そこはかつて奥沢城だったが、現在は浄真寺(九品仏)になっている。
【鷺草の俳句】
めざめれば鷺草ひとつ咲いて待つ 澁谷道