晩夏の季語 白南風
梅雨時の暗い空に吹く湿った風を「黒南風」というが、それに対して、梅雨が明ける頃、あるいは梅雨明け後に吹く南風を「白南風」という。
黒南風が曇天の風であるのに対し、白南風は好天を予想させる風である。ただし、梅雨の最中に雨が小降りになって、明るくなってきた空から吹いてくる南風を「白南風」と呼ぶこともある。
「白ばえて」と動詞にして使うこともある。
▶ 関連季語 南風(夏)
梅雨時の暗い空に吹く湿った風を「黒南風」というが、それに対して、梅雨が明ける頃、あるいは梅雨明け後に吹く南風を「白南風」という。
黒南風が曇天の風であるのに対し、白南風は好天を予想させる風である。ただし、梅雨の最中に雨が小降りになって、明るくなってきた空から吹いてくる南風を「白南風」と呼ぶこともある。
「白ばえて」と動詞にして使うこともある。
▶ 関連季語 南風(夏)
梅雨初めの南風という説もあるが、概ね梅雨時の南風をいう。雲が低く垂れ込めた、暗い空から吹き寄せてくる湿った風である。「黒ばえて」と動詞にして使うこともある。
黒南風に対して、梅雨が明ける頃に吹く南風を「白南風」という。
俳諧歳時記栞草(1851年)では夏之部五月に「黒ばえ、白ばえ」があり、次のような解説がつく。
梅雨中の空合をいふ也。たとへば、かきくらして今も降やうなる空のうちに、又あかるくなるけしきを黒ばえといひ、又、小雨ふりながら折々はれんとするけしきあるを白ばえといふ。夕がたに暮かかる空の、ひとしきり晴てあかるくなるを夕ばえといふこころなるべし。
この「黒ばえ、白ばえ」というのは、風のことではなく、空の状態のことを指している。
▶ 関連季語 南風(夏)
夏至後の第三庚を初伏、第四庚を中伏、立秋後初めての庚を末伏と呼び、それを総称して「三伏」と言う。七月中旬から八月上旬に当たり、一年で最も暑いころである。
五行思想に基づくもので、金は火に伏せられること(火剋金)から、陽金である庚は、火性を当てられる夏には凶となる。つまり晩夏は、秋の金気が勢いを増しながらも、夏の火気におさえられて伏している状態であり、庚の日にはそれが特に強くなるとする。種蒔き、男女和合など、諸々の行いが慎まれてきた。
酷暑の頃を表す言葉として、手紙などで「三伏の候」「三伏の猛暑」などとして使われてきた。
三伏の琴きんきんと鳴らしけり 長谷川かな女
ミズキ科ミズキ属ヤマボウシ亜属の落葉高木「ハナミズキ」は、アメリカヤマボウシとも呼ぶ。北米原産で、日本に入ってきたのは明治時代以降である。
ミズキ科ミズキ属の落葉高木にクルマミズキ(車水木)があるが、本来「ミズキ」と言った場合にはこちらを指し、その花を「水木の花」と呼んで区別する。「花水木」が春の季語なのに対して、「水木の花」は夏の季語になる。
水木の花は、白色の小花が散房花序となり5月から6月に咲くのに対し、花水木は、4月下旬から5月上旬にかけて白やピンクの総苞の中心に目立たない花をつける。ただ、花のように見える総苞の華やかさゆえに、「ハナミズキ」の名を持つ。
大正4年(1915年)に、ワシントンD.C.に贈ったサクラの返礼として東京市に贈呈され、日比谷公園などに植えられたのが、日本における花水木の植栽の始まりである。現在では街路樹として植えられるなど、晩春の代表的な花のひとつとなっている。
歌手一青窈の2004年のヒット曲に「ハナミズキ」があり、結婚式の定番ソングとなっている。
一つづつ花の夜明けの花みづき 加藤楸邨
浜万年青(はまおもと)
ヒガンバナ科の常緑多年草で、関東から九州にかけての海岸に、7月から9月にかけて芳香のある白い花を咲かせる。浜芭蕉ともいう。
神道で神事に用いる木綿(ゆう)に似ていることから「浜木綿(はまゆう)」の名がついた。また、葉が万年青に似ることから、「浜万年青」とも呼ぶ。
海岸の砂地に育つが、海流によって種子が運ばれたためである。温暖な地域に育つ植物であり、主に黒潮に乗って分布域を広げてきた。
浜木綿は、古く万葉集にも取り上げられた植物で、柿本人麻呂には
み熊野の浦の浜木綿百重なす 心は思へど直に逢はぬかも
の和歌がある。俳諧歳時記栞草(1851年)には「浜木綿の花」が立項されているが、ここでは秋之部八月に分類されている。因みに、「浜木綿の実」は、秋の季語になる。
雲よりも白き帆船浜木綿咲く 小島花枝
バラ科バラ属の落葉低木で、日本では島根県を南限として、浜辺に分布する。地下茎をのばす匍匐性の植物で、5月から7月頃に芳香を持つ紅紫色の花をつける(白色のものもある)。枝には棘が密生する。
ハマナシとも呼び、「浜茄子」「浜梨」の字をあてることもある。果実が茄子、あるいは梨に似ているとして名がついた。「玫瑰」の字は漢名からきており、「まいかい」と読む。
花は「玫瑰(まいかい)」という名の生薬になり、血流を良くすると言われている。また、茶にしたり、ハマナス油として化粧品にもする。実になったものは、ローズヒップとして食用にする。
皇后雅子様のお印は、旅行で訪れた北海道での印象から玫瑰に決まったという。
蝮を焼酎に浸した薬酒で、強壮剤として用いる。また、打ち身に効く塗り薬にもする。
蝮をひと月ほど絶食させた後に、アルコール度数の高い焼酎に漬け込み3年ほど放置すると、飴色をした蝮酒となる。独特の強い臭気を持つ。瓶に一尾まるまま漬け込まれた姿は異様でもある。
「蝮酒」が飲めるのは夏に限ったことではないが、夏の季語となる「蝮」から派生する季語となっており、漬け込み開始直後の「姿」を詠み込むのが本来の形である。しかし、夏バテ防止の滋養強壮剤と見るのも可。
平凡の長寿願はず蝮酒 杉田久女
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スイレン科コウホネ属の多年生の水草で、ナガバコウホネや、萼片が赤いベニコウホネなどがある。日本固有種で、北海道から九州の、水深が浅い湖沼や河川や水路などに生育するが、現代では分布域が縮小し、絶滅危惧種に指定されている地域も多い。
花期は5月から10月で、地下茎から水上へと伸びた花柄の先に、5センチくらいの黄色い花を咲かせる。地下茎を乾燥させたものは川骨(せんこつ)と呼び、止血や利尿効果などがある生薬となる。
河骨の名の由来は、水中の白い地下茎が骨のように見えるところにあると言われる。俳諧歳時記栞草(1851年)では夏之部五月に分類され、「萍蓬」の字が当てられている。
観賞用に栽培されたり、生け花に用いられたりもする。
河骨や終にひらかぬ花盛 山口素堂