季語|草木瓜(くさぼけ)

晩春の季語 草木瓜

櫨子の花(しどみのはな)・地梨の花(じなしのはな)

草木瓜草木瓜は、バラ科ボケ属の植物で、関東以西の山地の斜面など、日当たりのよいところに自生する。同属の木瓜は、平安時代に中国から入ってきたと考えられており、日本の在来種がこの「草木瓜」である。
草木瓜は、木瓜よりも低木で、棘のある枝が横に広がり、草のように見える。木瓜よりやや遅れて、4月から5月頃に花が咲く。花は一重の朱色であるが、八重咲きや、黄色や白い花を咲かせるものもある。
別名に「櫨子(しどみ)」があるが、これは秋にできる果実からきた名前で、酸っぱいその実を「酸ど実」と呼んだものが転訛したと考えられている。
庭に植えると火事を招くとの俗説があり、庭木としては好まれない。

【草木瓜の俳句】

草木瓜や放牛の歩み十歩ほど  大野林火

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季語|菊戴(きくいただき)

晩秋の季語 菊戴

菊戴スズメ目キクイタダキ科キクイタダキ属キクイタダキは、スズメよりも小さな鳥で、頭頂部の黄色い冠羽が菊を思わせることから「菊戴」と呼ばれる。本州中部以北では留鳥として、山地の針葉樹林で繁殖する。秋の季語になるのは、越冬するために暖かい平地や西日本に飛来し、目にする機会が増えるためである。
ヨーロッパの伝承では「鳥の王」とされるが、黄色い冠羽が王冠のように見えるためである。ルクセンブルクの国鳥である。
別名に「松むしり」があるが、こちらの呼び名では春の季語になる。

【菊戴の俳句】

まなこ澄む菊戴の鳴くたびに  きくちつねこ

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季語|松むしり(まつむしり)

三春の季語 松むしり

松毟鳥(まつむしり・まつむしりどり)

松むしり「松むしり」は、スズメ目キクイタダキ科キクイタダキ属キクイタダキ(菊戴)のこと。系統的にはウグイスに近く、かつてはウグイス科に分類されていた。日本で最も小さな鳥とも言われている。
中部以北で繁殖し、留鳥であるが西日本では冬鳥として飛来する。山地の針葉樹林に生息し、秋には暖かいところに移動し、平野部の公園でも見ることができる。
松の若葉をむしる習性があるところから「松むしり」の名があるが、菊戴の方が一般的な呼び名である。ただし、「松むしり」は春の季語になるのに対し、「菊戴」は秋の季語になる。
新芽のあたりに生息する昆虫を捕食している様子が、松をむしっているように見えて「松むしり」の名がついた。

【松むしりの俳句】

飛んでまたみどりに入るや松むしり  広瀬惟然

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季語|浅蜊(あさり)

三春の季語 浅蜊

浅蜊汁(あさりじる)

浅蜊「浅蜊」はマルスダレガイ科アサリ属の二枚貝の総称で、アサリやヒメアサリを指す。塩分が薄い砂浜の浅いところに生息する。
貝殻には様々な色があり、同じ模様を持ったものはないとも言われる。
浅蜊を中心とした貝を遠浅の砂浜で採る「潮干狩」は春の季語になっており、特に旧暦三月三日の大潮は一年で最も干満差が激しくなり、はるか沖まで行って貝を採ることができる。浅蜊はこの時期、産卵を控えて旨みが増す。

浅蜊は、古代から重要な食材であったと考えられており、貝塚などから夥しい数の貝殻が出土している。浅蜊汁や浅蜊飯など、現代でも様々な形で調理される。しかし、海底ではほとんど移動しないため、有毒プランクトンを食べ続けて貝毒に汚染される危険性が高い貝でもある。

「あさり」は、砂に棲む貝を指す「砂利(さり)」と「浅い」が結びついたものだとの説がある。つまり、浅蜊とは、浅いところに棲む貝という意味である。「漁る」は、浅蜊採りが語源になっているとの説があるが、逆に「漁る」が浅蜊の語源であるとの説もある。

【浅蜊の俳句】

あさり貝むかしの剣うらさびぬ  宝井其角

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季語|絵踏(えぶみ・えふみ)

初春の季語 絵踏

踏絵(ふみえ)

絵踏江戸幕府がキリシタンを発見するために用いた絵を「踏絵」といい、それを踏ませることを「絵踏」と言う。18世紀中頃の長崎奉行所では、絵踏は正月四日から八日に行われ、正月行事の1つとなっていた。このため春の季語に分類される。踏絵には、イエス・キリストや聖母マリアが描かれた紙や板を利用していたが、損傷が激しいために真鍮踏絵が用いられるようになった。
俳諧歳時記栞草(1851年)には春之部正月に「絵踏」があり、吾山遺稿の引用で「肥前長崎、五島、大村、平戸、此処にて、男女に限らず、絵ぶみす。是は邪宗を禁ぜしめ給ふによれり」とある。
徳川家康は1612年に禁教令を出し、徳川家光の時代の1629年に絵踏を導入した。九州では制度化され、その他の地方では疑いがある時に随時実施された。拒んだ者は「キリスト教徒」として処罰された。1856年に長崎や下田などの開港地で廃止され、1858年の日米修好通商条約締結により廃止された。
現在では、反対する者などを燻り出すために用いる手段を「踏絵」と呼ぶ。

【絵踏の俳句】

そのかみの絵踏の寺の太柱  富安風生

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季語|春寒(はるさむ・しゅんかん)

初春の季語 春寒

春寒し(はるさむし)春の寒さ(はるのさむさ)料峭(りょうしょう)

春寒立春以後の寒さのこと。春の寒さを指す季語に「余寒」もあるが、「余寒」は立春を過ぎても冬の寒さを引きずっている感があるのに対し、「春寒」には、春の温もりに一度覆われたあとの寒さといった感がある。
「料峭」とは、春風が寒く感じられるさまを言う。

【春寒の俳句】

春寒し恋は心の片隅に  竹久夢二

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季語|松露(しょうろ)

晩春の季語 松露

松露松露は、ショウロ科ショウロ属のキノコの一種で、形は球体でトリュフに似る。本州から九州の海辺の松林に春や秋に見られるが、希少価値が高い。食味は美味で香りもよい。
現代では春の季語に分類することが多いが、俳諧歳時記栞草(1851年)では、秋之部八月に分類される。松の津液が凝結してできたものだと考えられ、そのため「松露」の名がついた。

トリュフにはセイヨウショウロの和名があるが、ショウロは担子菌門であるのに対して、こちらは子嚢菌門で、同じキノコではあるが、分類学上は全くの別物である。また、ニセショウロというよく似たキノコもあるが、これは毒キノコになる。ショウロの内部が白色であるのに対し、こちらは内部が黒い。

【松露の俳句】

砂丘つみ重ねて僅か松露あり  百合山羽公

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季語|鷽替(うそかえ)

新春の季語 鷽替

鷽替太宰府天満宮で、古くから正月七日に行われてきた神事。酉の刻になると「替えましょ、替えましょ」の掛け声とともに、「木うそ」を互いに交換する。これには、嘘を誠心に替え、悪いことを嘘にして吉に取り替えるという意味がある。
現在では、亀戸天神社など、菅原道真を御祭神とする多くの天満宮で行われているが、神社によって日程に違いがある。参拝者は、古い木うそを神社に納めて、新しい木うそにとりかえる。菅原道真が蜂に襲われた時に、の大群が助けたという伝承に基づく神事だとも言われている。

【鷽替の俳句】

鷽ひとつ替ふることなく書架にあり  石田波郷

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季語|鷽(うそ・うそどり)

三春の季語 

鷽姫(うそひめ)

鷽スズメ目アトリ科ウソ属ウソ。ヨーロッパからアジア北部にかけて分布し、日本では漂鳥あるいは冬鳥として観察できる。
春に桜や桃の蕾などを食べ、繁殖期となる夏には昆虫を食べる。雄の頬や喉には赤い羽毛があるが雌にはなく、雄は照鷽(てりうそ)、雌は雨鷽(あめうそ)と呼ぶ。
その声は口笛に似ており、鷽の名は、口笛を意味する古語「うそ」から来ている。「琴弾鳥(ことひきどり)」とも呼ぶが、これは、鳴く時に脚を上げて琴を弾くような動作をするところから来ている。

新春の季語に「鷽替」があるが、これは、1月7日の夜に太宰府天満宮で行われる特殊神事を指す。御祭神の菅原道真が蜂に襲われた時、鷽が助けに来てくれたという故事に基づくものである。

【鷽の俳句】

照り雨や滝をめぐれば鷽の啼く  加舎白雄

【鷽の鳴き声】
繁殖期は山地の針葉樹林に生息するが、冬には10羽ほどで低地の林間にやってくることもある。映像では「琴弾鳥」の由来となった動作は分からない。(YouTube 動画)

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季語|岩燕(いわつばめ)

晩春の季語 岩燕

岩燕ツバメ科ツバメ属イワツバメは、ツバメより小ぶりで、ツバメに比べて尾羽の切込みが浅い。腰が白い羽毛で覆われるのもイワツバメの特徴である。九州以北に夏鳥として飛来し、温暖な地方では越冬することもある。
3月中旬から4月頃に飛来し、海岸や山地の岩場に、泥と枯れ草を使って壷形の巣をつくる。最近では、コンクリートの建造物に、集団で営巣する様子も観察される。8月頃まで繁殖活動を行い、そのほとんどのものは秋に南へと去っていく。

因みに広東料理の高級食材となる「燕の巣」は、本種のものではなくアマツバメ科の鳥の巣で、ツバメやイワツバメとは全く違う種類の鳥である。

【岩燕の俳句】

岩燕風を嫌ひて濤を好く  原裕

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