仲秋の季語 紫苑
鬼の醜草(おにのしこぐさ)・十五夜草(じゅうごやそう)・しおに
キク科シオン属シオンは、シベリアなどの北東アジア原産の多年草。日本では阿蘇山などに自生するが、平安時代以前に薬用として中国から持ち込まれたものが野生化したとも言われている。平安時代からは、観賞用に庭にもよく植えられており、9月から10月頃に花が咲く。
中国では「紫菀」と書く。紫の庭園というような意味になる。「思草(おもいぐさ)」の別名もあるが、南蛮煙管・女郎花・竜胆(いずれも秋の季語になる)も「思草」と呼ばれることがあるので、注意が必要である。
万葉集には大伴家持の和歌で
わすれ草わがした紐につけたれど 鬼のしこ草ことにしありけり
がある。ここでは「鬼のしこ草」を「しこのしこくさ」と読ませる。役立たずの厭わしい草という意味になり、雑草の意で用いられており、紫苑のことではないという説がある。
「俊頼髄脳」(平安時代後期)に、「忘草」と呼ばれる萱草と対比させて、「忘れぬ草」として出てくる。それによると、親を亡くした兄弟がいて、兄は親への思いを断ち切るために墓に萱草を植え、弟は親への思いを忘れないために紫苑を植えた。ある日、弟の前に墓守の鬼が出て、弟を憐れんで予知能力を授けた。故に予知夢を招くことから、紫苑は、嬉しいことがある人は植えて愛でるとよいが、嘆くことがある人は植えてはいけないと言われている。因みに鬼の醜草の語源はここにあり、「鬼の教えより」という意味で「鬼の師子草」となり、「しおに」と呼ばれるようになったという。
【紫苑の俳句】
紫苑にはいつも風あり遠く見て 山口青邨

マメ科クズ属クズは、北海道から九州までの荒れ地などに自生する蔓性の多年草で、8月中旬から9月頃に花をつける。
タデ科イヌタデ属アイは蓼藍(たであい)とも呼ばれ、藍染めに利用される。イヌタデによく似る一年生植物で、原産地は東南アジア。8月から10月頃に花が咲くが、藍染めのために、開花前から葉が摘み取られていく。これを「藍刈」と呼んで、夏の季語になる。開花後は、染料として採れる葉の量は減ってしまう。
イネ科ヨシ属ヨシの花のことで、「蘆」「葦」「芦」「葭」と書いて「よし」とも読むが、古名は「あし」。平安時代から、「悪し」につながることから「良し」に掛けて「よし」と呼ばれるようになったとされる。関西では、金銭を意味する「おあし」に通じるために、現在でも「あし」と呼ぶ。因みに、穂が出ていないものを「芦」、穂が出ているものを「葦」とする。
タデ科イヌタデ属ミズヒキは、日本全国の平地の路傍などに自生し、8月から10月頃の午前中に花を咲かせる。
シュウカイドウ科シュウカイドウ属シュウカイドウはベゴニアの一種で、8月から10月頃に花をつける。
オミナエシ科オミナエシ属オトコエシは、
キク科ヒヨドリバナ属フジバカマは、中国原産の多年草で、関東以西の本州・四国・九州の草地などに自生している。8月から10月頃に花をつける。
イネ科イネ属イネは、「
キンポウゲ科トリカブト属の植物の総称で、ヤマトリカブト・ホソバトリカブトなど、日本には約30種が自生している。栽培種もあり、平地から高山まで比較的普通に見られる植物で、葉はヨモギとよく間違えられる。7月から10月頃に花をつける。