仲夏の季語 菱の花
菱(ひし)・水栗(みずぐり)
ミソハギ科ヒシ属ヒシは、日本全国の池や沼などに自生する一年草の浮葉植物である。「浮草」のように見えるが、茎は池の底に着く。7月から9月頃に白い花を咲かせる。「菱の実」は秋の季語になる。
種子は蒸すと栗のような食味になるため、「水栗」の別名があり、日本では古くから食用として用いられてきた。万葉集には、柿本人麻呂の和歌で
君がため浮沼の池の菱摘むと 我が染めし袖濡れにけるかも
がある。ただし、ここに歌われているのは菱の実のことだと考えられている。
俳諧歳時記栞草(1851年)では夏之部五月に分類されているが、春之部正月に「菱の花をほこらす」が立項されており、左義長の火で餅を焼いて食べることだという。
すきまなく並ぶさまをいう「緊(ひし)と」が語源になったと考えられ、それが「ひし」に転訛したものと考えられる。

バショウ科バショウ属バショウは、7月から9月頃に花をつける。中国原産とされるが、英名はジャパニーズ・バナナである。花も実もバナナによく似ているが、実は種が多くて苦みが強いために食用に適さない。
キジカクシ科スズラン亜科ジャノヒゲ属ジャノヒゲは、北海道から九州の森林に自生する常緑の多年生草本で、7月から8月頃に白色または薄紫の花を下向きにつける。庭などを緑で覆うためのグラウンドカバープランツとしてよく利用される。また、水に強いために、アクアプランツとして水槽で利用されることもある。
「綿花(めんか)」とすれば、綿の実であるふわふわとしたコットンフラワーのことであるが、「綿の花」として夏の季語になるのは、本当の花の方である。因みに、収穫した綿は「新綿」として秋の季語となり、「綿」は防寒に用いられることから冬の季語になる。
キョウチクトウ科キョウチクトウ属セイヨウキョウチクトウの亜種であるキョウチクトウは常緑広葉樹で、熱帯地域では一年中花が咲くが、日本では6月から9月頃に開花し、夏の季語となる。寒さには弱いため、生育するのは関東以南である。花の色は桃色であるが、赤や黄色、白などの園芸品種もある。
ゴマ科ゴマ属ゴマは、アフリカのサバンナ原産の一年草で、7月から8月頃に花をつけ、「胡麻の花」で夏の季語になる。種を採る「胡麻」は秋の季語になる。分類学上、ゴマ属の植物は数十種あるが、食用にされるのは一種のみ。ただし、数千にのぼる品種がある。
ウリ科ヘチマ属ヘチマは、7月から9月頃に黄色い花をつける蔓性の一年生植物で、「糸瓜の花」は夏の季語になる。実が成るのは8月から10月頃で、こちらは「
ラン科ミズトンボ属サギソウは、本州から九州の湿地帯に自生する日本原産の植物で、準絶滅危惧種に指定されている。園芸品種には「天の川」「銀河」などの名がつくものがある。スズメガによる虫媒花で、7月から8月頃に花をつける。
キク科ダリア属の多年生草本植物の総称で、花は6月から7月が最盛期であるが、11月頃まで咲く品種もある。ダリアの原種はピンナタ、コッキネアなど数種。園芸品種は数万種にのぼり、最も多くの品種を持つ植物のひとつ。
マメ科エンジュ属エンジュは、中国原産の落葉高木。日本へは、仏教の伝来とともに渡来したとの見方がある。街路樹として植えられ、東京ではプラタナス・イチョウに次いで多い。7月から8月頃に小さな花がたくさん咲く。