俳句

季語|松葉牡丹(まつばぼたん)

晩夏の季語 松葉牡丹

日照草(ひでりぐさ)・爪切草(つめきりそう)

松葉牡丹スベリヒユ科スベリヒユ属マツバボタンは、南アメリカ原産の一年草で、オランダ経由で江戸時代末期に渡来した。
6月から9月頃に赤・橙・桃・黄・白色などの花をつける。八重咲きが多いが、一重もある。一つの花は数日で萎むが、夏の間、次から次に咲く。多肉質の葉を持ち、高温乾燥に強い。

葉を松に、花を牡丹に見立てて「松葉牡丹」と名付けられた。炎天下にも咲くので「日照草」、茎を切って土に挿すと簡単に根付くので「摘切り草」転じて「爪切草」とも呼ばれる。

【松葉牡丹の俳句】

小豆干し松葉牡丹はまだ燃えて  清崎敏郎

▶ 夏の季語になった花 見頃と名所

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季語|茴香の花(ういきょうのはな)

仲夏の季語 茴香の花

フェンネル(ふぇんねる)

茴香の花 セリ科ウイキョウ属ウイキョウはヨーロッパ原産の多年草で、株全体からスパイシーな香りが漂う。
古くから栽培されているハーブのひとつで、古代エジプトや古代ローマでも栽培されていた記録がある。日本には平安時代に中国から渡来し、果実を生薬にした。種子は香辛料にもするが、葉を使うこともある。臭い消しのために魚料理に使うことが多く、「魚のハーブ」とも呼ばれる。

「茴香(ういきょう)」は中国から伝わった名をそのまま用いていると考えられ、和名は「呉の母/懐香(くれのおも)」。「回香」とも書き、回教徒(イスラム教徒)がもたらした植物の意とも、腐った魚の香気を回復する意とも言われる。英名はフェンネル。
6月から8月頃、黄色い小花をたくさんつける。

【茴香の花の俳句】

茴香の夕月青し百花園  川端茅舎

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季語|馬鈴薯の花(ばれいしょのはな・じゃがいものはな・じゃがたらのはな)

初夏の季語 馬鈴薯の花

馬鈴薯の花ナス科ナス属ジャガイモはアンデス山脈原産で、日本には1598年にオランダ人によって持ち込まれたとされる。ジャガタラ(ジャカルタ)を経由して長崎へ伝来したため、ジャガタライモとされたが、ジャガイモと呼ばれるようになった。形が馬鈴に似ることからバレイショとも呼ばれる。ただし中国で「馬鈴薯」は、マメ科のホドイモを指す。
江戸時代後期には、飢饉対策として北海道や東北地方に持ち込まれ、現在でも北海道が全国の収穫量の8割を占める。

ジャガイモには春植えされる品種と秋植えされる品種があり、「馬鈴薯の花」として夏の季語になるジャガイモは春植えのもので、「男爵」や「メークイン」がそれに当たる。6月から7月頃に男爵は淡紫の花、メークインは紫や白い斑入の花を咲かせる。
ジャガイモは、地下茎を芋として収穫するため、栄養を花に取られないようにするために花を摘み取ることがある。ただし、受粉能力が低く、実をつけることが稀であるため、通常は花を咲かせる。
マリーアントワネットは、ジャガイモ栽培を推奨するためにジャガイモの花を好んで身につけたという。

【馬鈴薯の花の俳句】

馬鈴薯の花の日数の旅了る  石田波郷

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季語|擬宝珠(ぎぼうし・ぎぼし・ぎぼうしゅ)

仲夏の季語 擬宝珠

擬宝珠の花(ぎぼうしのはな・ぎぼしのはな)

擬宝珠の俳句と季語キジカクシ科リュウゼツラン亜科ギボウシ属の総称で、日本ではオオバギボウシやコバギボウシなどが山地の湿り気の多い場所に自生する。6月から7月頃に紫や白の花をつけるが、その蕾が擬宝珠に似ることから「擬宝珠」の名がついた。
朝開いて夕方には萎れる一日花であるが、花茎に多数の花をつけて、下から順に咲いていくので、数日間花を楽しむことができる。

最も多くの種が存在するのは日本であり、シーボルトらによって日本からヨーロッパに渡った。それが園芸品種として改良され、再び日本に持ち込まれている。海外ではオーストラリアの植物学者の名に因んで「ホスタ」と呼ばれ、日本でも「ホスタ」と呼ばれることが多くなった。

俳諧歳時記栞草(1851年)には夏之部五月に分類され、「玉簪(ぎぼうし)」として立項されている。ここには、「花の象を以て名を命す」ともあるが、葉の形が橋の欄干の擬宝珠に似ているところから「ぎぼうし」と呼ぶとの説明もなされている。

【擬宝珠の俳句】

ぎぼし咲き海霧がむしばむ一墓標  金尾梅の門

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季語|矢車草(やぐるまそう)

仲夏の季語 矢車草

矢車菊(やぐるまぎく)

矢車草の俳句と季語キク科ヤグルマギク属ヤグルマギクのことを「矢車草」と呼ぶ。しかし、ユキノシタ科ヤグルマソウ属には種としてヤグルマソウがある。
ヤグルマギクは4月から7月頃、ヤグルマソウは6月から7月に開花する。ヤグルマギクは矢車に似た花の形から、ヤグルマソウは葉のつき方が「矢車」に似ることから名がついた。
俳句の世界では、ヤグルマギクの花を「矢車草」として詠むのが一般的で、通常はヤグルマソウを指さない。ただ、近年では明確に区別するために、「矢車菊」として詠むことも増えてきた。

ヤグルマギクはヨーロッパ原産で、元々はコーンフラワーと呼ばれる農地の雑草だったが、園芸用に改良された。
ドイツ皇帝は、ヤグルマギクの花冠を紋章としたため、「皇帝の花」と呼ばれるようになり、ドイツの国花となっている。
学名は「Centaurea cyanus L.」であるが、「Centaurea」はギリシャ神話の怪物ケンタウルスであり、ケンタウルスが傷を負った時、この花を使って治療したという。
原種の花は青紫色であるが、サファイアの色味をこの花に擬えることがある。

【矢車草の俳句】

清貧の閑居矢車草ひらく  日野草城

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矢車菊ヤグルマギク
キク科ヤグルマギク属ヤグルマギク。4月から7月頃に紫・桃・白などの花を咲かせる。ヨーロッパ原産で、明治時代に渡来してきたもの。花壇などに植えられるが、野生化したものも見られる。「矢車」の名は、端午の節句の頃に咲く花の形からきている。

矢車草ヤグルマソウ
ユキノシタ科ヤグルマソウ属ヤグルマソウ。6月から7月頃に花を咲かせるが、花弁は無く、白色の萼が花弁のように見える。日本原産で、谷沿いの林床などに群生する。「矢車」の名は、葉の形からきている。

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季語|石楠花(しゃくなげ)

初夏の季語 石楠花

石楠の花(しゃくなげのはな)

石楠花の俳句と季語ツツジ科ツツジ属シャクナゲ亜属無鱗片シャクナゲ節の総称で、日本ではアズマシャクナゲやツクシシャクナゲなどが自生し、4月から5月頃に花が咲く。
石楠花を大まかに分類すると、日本石楠花と西洋石楠花がある。日本石楠花は葉の裏に細かい毛があり、山奥で咲くために幻の花とも見なされてきた。西洋石楠花は、19世紀にイギリス人がヒマラヤから持ち帰って普及させたもの。近代になって日本にも西洋石楠花が入ってくると、街中で園芸種が栽培されるようになった。

初夏の季語に分類されることが多いが、晩春の季語に分類する歳時記もあり、俳諧歳時記栞草(1851年)には春之部三月に分類されている。ここでは「しゃくなんげ」と読ませ、「しゃくなぎとも云う」とある。本草書からの引用で、「石間の陽に向の処に生ず。故に石南と名づく」とある。

【石楠花の俳句】

石楠花の紅ほのかなる微雨の中  飯田蛇笏

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季語|蛍袋(ほたるぶくろ)

仲夏の季語 蛍袋

釣鐘草(つりがねそう)

蛍袋の俳句と季語キキョウ科ホタルブクロ属ホタルブクロは、北海道から九州の草原や道端に自生する多年草で、6月から7月頃に紫や白色の花をつける。花は袋状になっており、その中にを入れて遊んだことから「蛍袋」の名がついた。また、花の形が釣鐘に似ていることから「釣鐘草」とも呼ばれる。

【蛍袋の俳句】

ほたるぶくろ重たき光ひとつづゝ  山田みづえ

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季語|萱草の花(かんぞうのはな)

晩夏の季語 萱草の花

萱草(かんぞう)黄花萱草(きばなかんぞう)忘草(わすれぐさ・わするるくさ)

萱草の花の俳句と季語萱草とは忘草の中国名で、主に中国原産のヤブカンゾウを指す。ヤブカンゾウは、ススキノキ科ワスレグサ属ワスレグサの一品種で、有史以前に渡来したものが本州以南の野原や薮などに群生している。7月頃に花を咲かせ、一つの花は一日で萎む。
ワスレグサにはノカンゾウやハマカンゾウもあり、これらも「萱草」として詠んで差し支えはない。また、分類範囲をワスレグサ属まで広げると夕菅も「忘草」であり、ゼンテイカと呼ばれる日光黄菅も「萱草」と詠むことがある。

中国では、若草を食べると酔って憂を忘れると言われ、この花を持っていると辛いことを忘れることができると信じられた。そのことから日本では「忘草」と呼ばれ、万葉集に「わすれぐさ」で5首が載る。大伴旅人には次の和歌がある。

忘れ草我が紐に付く香具山の 古りにし里を忘れむがため

また、萱草の「萱」は元々、忘れることを意味する「諼」であったとの説もある。
ただし、「忘草」として「夏水仙」や「煙草(植物)」を指すこともあるので注意が必要である。

【萱草の花の俳句】

萱草や浅間をかくすちぎれ雲  寺田寅彦

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季語|夕菅(ゆうすげ)

晩夏の季語 夕菅

黄菅(きすげ)

夕菅ススキノキ科ワスレグサ属ウコンカンゾウの変種。本州から九州の山地に育つ日本原産の多年草で、6月から8月頃に百合に似た黄色い花を咲かせ、「黄菅」とも呼ばれる。
夕方から翌日の午前中まで花を咲かせる。虫媒花で、スズメガを呼ぶ。葉が「スゲ(萓)」に似て、夕方から咲き始めることから「夕菅」の名がついた。

近縁種にススキノキ科ワスレグサ属ゼンテイカがあり、「日光黄菅」と呼ばれている。5月から7月頃に咲き、こちらも晩夏の季語になっている。

▶ 関連季語 萱草の花(夏)

【夕菅の俳句】

夕菅は胸の高さに遠き日も  川崎展宏

▶ 夏の季語になった花 見頃と名所

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季語|百日草(ひゃくにちそう)

晩夏の季語 百日草

百日草の俳句と季語 キク科ヒャクニチソウ属ヒャクニチソウは、メキシコ原産の一年草で、日本へは1862年頃に一重咲きのものが渡来し、その後アメリカから八重咲などの園芸種が持ち込まれ、花壇などによく植えられている。白・赤・紫・黄色など、様々な色の花を5月から10月頃に咲かせる。
開花期間が長いことから「百日草」と名付けられた。また、花の寿命が長いことから浦島草とも呼ばれる。一つの花は二週間ほど咲き続けるため、長期間楽しむことができる。別名のジニアは、ドイツの植物学者の名に因んで植物分類学を確立したリンネが名付けた。

両性である筒状花を囲むように、花びらに見える雌花が咲く。原種は、黄色い筒状花を囲むように赤紫の一重の花を咲かせる目立たないものだとされる。現在では「ダリア咲き」「ポンポン咲き」などの品種も人気となっている。
高温乾燥に強いことから、盆を中心とした仏前花として広まった。

【百日草の俳句】

蝶歩く百日草の花の上  高野素十
これよりの百日草の花一つ  松本たかし

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