落椿(おちつばき)

三春の季語 落椿

季語散り落ちた椿の花。

▶ 関連季語 椿(春)

落椿ふむ外はなき径かな  富安風生

インターネット歳時記

椿(つばき)

三春の季語 椿

山茶(さんちゃ)・山椿(やまつばき)

季語ツバキ科ツバキ属の常緑樹で、冬から春に花をつける。普通に見られるヤブツバキは、日本原産。同じツバキ属の山茶花は花びらがひとつひとつ散っていくのに対し、椿は花ごと落花するため、病床では厭われる。首が落ちるような落花の様を武士が嫌っていたというのは俗説で、武士は、その潔さを愛でた。江戸時代には特に二代将軍徳川秀忠が好んだことから、ユキツバキなどと掛け合わせる品種改良が盛んに行われ、花だけでなく葉や枝も観賞対象とした。
椿の木をヨーロッパに持ち帰った宣教師カメルに因み、西洋では「カメリア」の名で知られている。1848年には、フランスのアレクサンドル・デュマ・フィスが小説「椿姫」を書き上げ、現在まで世界各地で舞台公演・映画化が行われている。

椿の種子から採取する椿油は燃料油にするなど、様々な用途があるが、特に整髪料としては有名で高価。縁結びに御利益があると言われる島根県の八重垣神社は、夫婦椿こと「連理の椿」があることでも知られているが、資生堂の花椿マークは、この八重垣神社にある椿をモチーフにしている。なお、八重垣神社の御祭神は、ヤマタノオロチ伝説で知られる素盞嗚尊(スサノオノミコト)と櫛稲田姫(クシナダヒメ)である。和歌のはじめとされる「八雲立つ出雲八重垣妻込みに八重垣造る其の八重垣を」に因む神社である。
椿には神霊が宿るという伝承があり、椿の古木は化けると言われている。また、人魚の肉を食べて800歳まで若さを保ったとされる八百比丘尼は、椿の花を持って全国行脚したとされる。
万葉集には椿の歌が9首あり、坂門人足は

巨勢山のつらつら椿つらつらに 見つつ思はな巨勢の春野を

と歌った。この歌をはじめとして、万葉集には、列をなした椿をつらつら見る「列々椿」の歌が2首ある。

「つばき」の語源は、光沢のある葉を成す木のことを指した艶葉樹(つやばき)とされる。なお、「椿」の字を当てるのは日本独自のものであり、中国では「海石榴」である。中国で「椿」は、チャンチンというセンダン科の植物のことである。

赤い椿白い椿と落ちにけり  河東碧梧桐

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春の夜(はるのよ)

三春の季語 

春の闇(はるのやみ)

季語気持ちが高揚してくる春の夜ではあるが、小倉百人一首にも載る周防内侍の

春の夜の夢ばかりなる手枕にかひなく立む名こそをしけれ

のように、はかない夢に結び付けられることがしばしばある。

▶ 関連季語 春

春の夜は桜に明けてしまひけり  松尾芭蕉
をみなとはかかるものかも春の闇  日野草城

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春(はる)

三春の季語 

春の日(はるのひ)・東帝(とうてい)・青帝(せいてい)

季語太陽暦では3月から5月まで、陰暦では1月から3月までを春という。二十四節気では、立春から立夏の前日まで。語源は、田畑を「墾る(はる)」からきているという説がある。古今和歌集の紀友則の歌、

ひさかたの光のどけき春の日にしづ心なく花の散るらむ

は、百人一首33番。

発句也松尾桃青宿の春  松尾芭蕉
春や昔十五万石の城下哉  正岡子規

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蝶(ちょう・てふ)

三春の季語 

紋白蝶(もんしろちょう)・蝶々(てふてふ・ちょうちょう)・胡蝶(こちょう)・黄蝶(きちょう)

季語同じ蝶でも、「揚羽蝶」は夏の季語となる。蝶のことを新撰字鏡では「かわひらこ」とし、亡くなった人の魂をも表した。川の近くでひらひら飛んでいたからこの名前がついたと言われ、蝶の古名とされるが、カワトンボとの混同ではないかとも疑われる。
因みに蝶は、奈良時代に唐から入ってきた言葉で、「てふ」と読んだ。万葉集に蝶の歌は載らないが、巻五の梅の歌の序文に1箇所だけ「新蝶」として出てくる。古今和歌集には、僧正遍照の和歌として

散りぬればのちはあくたになる花を思ひ知らずも惑ふてふかな

がある。

白壁の浅き夢みし蝶の春  秋元不死男

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花薺(はななずな)

三春の季語 花薺

薺咲く(なずなさく)三味線草(しゃみせんぐさ)・ぺんぺん草(ぺんぺんぐさ)・薺の花(なずなのはな)

季語春の七草のひとつ薺は、「薺」だけだと新春の季語。麦栽培の伝来と共に渡来した史前帰化植物と考えられている。平安時代後期、源俊頼の歌に現れたのが初出か。

君がため夜ごしにつめる七草のなづなの花を見てしのびませ

語源には諸説あるが、夏になると枯れてなくなることから、夏無(なつな)から来たとする説が有力である。生命力の強い植物であることから、「ぺんぺん草が生える」「ぺんぺん草も生えない」は、慣用句として使われる。

なづな咲きふり返りても風の音  岸田稚魚

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菫(すみれ)

三春の季語 

すみれ草(すみれぐさ)・一夜草(ひとよぐさ)

季語在来種である菫は、日本各地に自生。花言葉は、「謙虚」「誠実」。万葉集にも「すみれ」あるいは「つほすみれ」として現れ、古くからすみれ摘みの習慣があったことが伺われる。山部赤人には次の歌があり、菫の別名「一夜草」の語源になった。

春の野にすみれ摘みにと来しわれそ野を懐かしみ一夜寝にける

スミレの語源は、植物学者牧野富太郎による、大工道具の「墨入れ」に似ていることから「すみれ」となったという説が有名。

菫程な小さき人に生れたし  夏目漱石
山路きて何やらゆかしすみれ草  松尾芭蕉

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春の雨(はるのあめ)

三春の季語 春の雨

春雨(はるさめ・しゅんう)

季語万葉集にはすでに春雨が歌われている。よみ人しらずではあるが、

春雨のやまず降る降る我が恋ふる
人の目すらを相見せなくに

などがある。また、嘉永年間 (1848年~1855年) に流行した端唄に「春雨」がある。

春雨にしっぽり濡るる鶯の
羽風に匂う梅が香や
花にたわむれしおらしや
小鳥でさえもひと筋に
ねぐら定めぬ気はひとつ
わたしゃ鶯 主は梅
やがて身まま気ままになるならば
さあ鶯宿梅ぢゃないかいな
さあ何でもよいわいな

傘ささぬ人のゆききや春の雨  永井荷風
春雨やものがたりゆく蓑と傘  与謝蕪村

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春夕焼(はるゆうやけ)

三春の季語 春夕焼

春茜(はるあかね)

季語単に「夕焼」といった場合は夏。夕焼の翌日は晴れるという。

夕焼の言葉が成立したのは比較的新しく、江戸時代後半に「夕焼」を詠んだ句が散見される。季語となったのは明治以降である。なお、中世には「ほてり」と呼んでいたらしい。中国では夕焼に「霞」の字を当てる。「やけ」も夕焼けを指す言葉として使われているが、朝焼けにも使用されていることから、「やけ」とは「明け」あるいは「朱」の転訛かもしれない。

春夕焼へ遠き鶴嘴そろひ落つ  加藤楸邨

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春の水(はるのみず)

三春の季語 春の水

春水(しゅんすい)水温む(みずぬるむ)春の川(はるのかわ)・水の春(みずのはる)

季語川や池や水田の水。雪どけや春雨で水かさは増し、次第に温み、命を育む。海水に対して「春の水」を用いることはない。

「水」は、「満つ」からきているという説がある。古事記における水の神・弥都波能売(ミツハノメ)は、火神・迦具土(カグツチ)を生んで陰部を火傷した伊耶那美(イザナミ)の、尿が化成したとある。

春の水山なき国を流れけり  与謝蕪村

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