カテゴリー: 三春
季語|春の雪(はるのゆき)
三春の季語 春の雪
立春以降に降る雪。「牡丹雪」は、雪の結晶が多数付着し合い、花びらのように大きな雪片をもつ雪のことを言う。これは、春に限って降るものではないが、気温が上昇する中で降る雪は、雪片が大きくなりがちである。地面に落ちるとすぐに融けることが多い。
▶ 関連季語 淡雪(春)
【春の雪の俳句】
春の雪霏々として又降つて来る 正岡子規




季語|目刺(めざし)
季語|青饅(あおぬた)
季語|松むしり(まつむしり)
三春の季語 松むしり
松毟鳥(まつむしり・まつむしりどり)
「松むしり」は、スズメ目キクイタダキ科キクイタダキ属キクイタダキ(菊戴)のこと。系統的にはウグイスに近く、かつてはウグイス科に分類されていた。日本で最も小さな鳥とも言われている。
中部以北で繁殖し、留鳥であるが西日本では冬鳥として飛来する。山地の針葉樹林に生息し、秋には暖かいところに移動し、平野部の公園でも見ることができる。
松の若葉をむしる習性があるところから「松むしり」の名があるが、菊戴の方が一般的な呼び名である。ただし、「松むしり」は春の季語になるのに対し、「菊戴」は秋の季語になる。
新芽のあたりに生息する昆虫を捕食している様子が、松をむしっているように見えて「松むしり」の名がついた。
季語|浅蜊(あさり)
三春の季語 浅蜊
「浅蜊」はマルスダレガイ科アサリ属の二枚貝の総称で、アサリやヒメアサリを指す。塩分が薄い砂浜の浅いところに生息する。
貝殻には様々な色があり、同じ模様を持ったものはないとも言われる。
浅蜊を中心とした貝を遠浅の砂浜で採る「潮干狩」は春の季語になっており、特に旧暦三月三日の大潮は一年で最も干満差が激しくなり、はるか沖まで行って貝を採ることができる。浅蜊はこの時期、産卵を控えて旨みが増す。
浅蜊は、古代から重要な食材であったと考えられており、貝塚などから夥しい数の貝殻が出土している。浅蜊汁や浅蜊飯など、現代でも様々な形で調理される。しかし、海底ではほとんど移動しないため、有毒プランクトンを食べ続けて貝毒に汚染される危険性が高い貝でもある。
「あさり」は、砂に棲む貝を指す「砂利(さり)」と「浅い」が結びついたものだとの説がある。つまり、浅蜊とは、浅いところに棲む貝という意味である。「漁る」は、浅蜊採りが語源になっているとの説があるが、逆に「漁る」が浅蜊の語源であるとの説もある。
季語|鷽(うそ・うそどり)
三春の季語 鷽
鷽姫(うそひめ)
スズメ目アトリ科ウソ属ウソ。ヨーロッパからアジア北部にかけて分布し、日本では漂鳥あるいは冬鳥として観察できる。
春に桜や桃の蕾などを食べ、繁殖期となる夏には昆虫を食べる。雄の頬や喉には赤い羽毛があるが雌にはなく、雄は照鷽(てりうそ)、雌は雨鷽(あめうそ)と呼ぶ。
その声は口笛に似ており、鷽の名は、口笛を意味する古語「うそ」から来ている。「琴弾鳥(ことひきどり)」とも呼ぶが、これは、鳴く時に脚を上げて琴を弾くような動作をするところから来ている。
新春の季語に「鷽替」があるが、これは、1月7日の夜に太宰府天満宮で行われる特殊神事を指す。御祭神の菅原道真が蜂に襲われた時、鷽が助けに来てくれたという故事に基づくものである。
【鷽の俳句】
照り雨や滝をめぐれば鷽の啼く 加舎白雄
【鷽の鳴き声】繁殖期は山地の針葉樹林に生息するが、冬には10羽ほどで低地の林間にやってくることもある。映像では「琴弾鳥」の由来となった動作は分からない。(YouTube 動画)
季語|蛤(はまぐり・うむき・はま)
三春の季語 蛤
「ハマグリ」は、マルスダレガイ上科マルスダレガイ科ハマグリ属の二枚貝で、近縁種にチョウセンハマグリやシナハマグリもあり、見た目で区別することは難しい。中国産のシナハマグリに対し、チョウセンハマグリは「汀線蛤」と書き、在来種である。チョウセンハマグリはハマグリよりも深いところに生息し、殻に厚みがある。
日本における生息地は、北海道から九州沿岸の砂泥の中で、縄文時代から重要な食材になっていた。食材としては2月から4月の春が旬で、桑名の焼蛤は名物になっている。
二枚の貝殻がぴったりと重なり合うことから、夫婦和合の縁起物であり、結婚式には蛤のお吸物が出る。また、三月三日の雛祭に食べると、良縁を招くとされる。
「貝合わせ」という重なり合う貝殻を探し出す遊びがあるが、この貝合わせには蛤が使用された。
古くは二枚貝の総称として「はまぐり」が使用されていたと言われ、「浜の栗」が語源になっているとされる。
古事記には「大国主の神」の項に蛤貝比売(うむがいひめ)が登場し、赤貝を神格化したキサ比売(きさがいひめ)とともに、大火傷を負った大国主を蘇らせている。ここでは、赤貝の汁を絞って薬としたものを、蛤の貝殻に入れるかのような描き方がされている。
不良少年らを指して「ぐれる」と言うことがあるが、これは「はまぐり」がもとになった「ぐりはま」から来ている。「ぐりはま」とは、殻がぴったりと合わないことを指したもので、食い違いを意味する。そこから「ぐれはま」に転訛し、いつしか不良少年らを指して「ぐれる」と言うようになった。
季語|宝貝(たからがい)
三春の季語 宝貝
タカラガイ科の巻貝の総称で、熱帯から亜熱帯の海域に分布する。日本近海では約100種が知られている。子安貝と呼ぶこともあり、その場合は、大型のハチジョウダカラを指すことが多い。ハチジョウダカラの貝殻は、妊婦が持つと安産になるとされてきた。
古代中国の殷王朝をはじめ、その貝殻は、世界中で貨幣として用いられてきた。そのため、金銭に関する漢字の部首には「貝」が用いられることが多い。日本では、縄文時代に既に装身具として使用され、「竹取物語」(平安時代前期)にも、燕が産むという珍宝「燕の子安貝」として登場する。現在でも高値で取引されることがある。
俳句に詠まれるのは主にその貝殻であり、春の季語となるのは、同じく春の季語となる「貝寄風」に関連し、春は浜辺に貝殻を探す季節だからである。また、「竹取物語」に関連して、春に営巣する燕が生むからだという説もある。
季語|はこべ
三春の季語 はこべ
はこべら・繁縷(はこべら)・ひよこぐさ
ナデシコ科ハコベ属の植物で、日本には20種弱が知られているが、「はこべ」と言うと、主に「コハコベ」と「ミドリハコベ」を指す。茎が暗紫色を帯びて全体に小さいのがコハコベで、全体が緑で大きいのがミドリハコベである。「はこべら」として春の七草のひとつにもなっている。因みに「ひよこぐさ」はミドリハコベである。
花は10弁に見えるが、切れ込みが深いために正式には5弁である。道端や畑などに自生し、若い茎葉をお浸しにしたり、小鳥の餌にする。また、乾燥したものは繁縷(はんろう)という生薬にもなり、歯磨き粉などに利用した。
「はこべ」の文献上の初出は「本草和名」(918年)に「波久倍良(はくべら)」と載るもので、語源は「蔓延芽叢(はびこりめむら)」であるという説などがある。
石田波郷は「第二の故郷」と呼んだ東京都江東区に「はこべらや焦土のいろの雀ども」の俳句を詠んだ。その縁で、江東区文化コミュニティー財団が「はこべら俳句大会」を主催してきた。