三春の季語 鮠
コイ科の淡水魚の内、中型で細長い体型を持つものの総称で、ウグイやオイカワ・カワムツなどを指す。柳の葉に似ていることから、柳鮠とも呼ぶ。晩春に繁殖期を迎える。
食材として利用されることは少ないが、中部地方などでは郷土料理となっているところもある。旬は冬から春にかけてである。
紙鳶(いか・いかのぼり・しえん)・凧揚げ(たこあげ)・凧合戦(たこがっせん)・連凧(れんだこ)・奴凧(やっこだこ)・カイト(かいと)
凧揚げは正月の風物詩となっている地方が多いが、端午の節句の行事となっているところもある。長崎のハタ揚げなど、春の行事として定着している地方も多い。なお、正月の凧は武者凧などとして、新春の季語に分類される。
中国で軍事目的に利用されていたものが伝わり、「和名類聚抄」(931年~938年)には「紙鳶」「紙老鳶(しろうし)」として登場するが、春の季語となったのは、「はなひ草」(立圃1636年)あたりからだと考えられている。
江戸時代には大凧合戦が日本各地で行われるようになり、喧嘩や農作物被害なども増え、禁止令が出ることがあった。明暦元年(1655年)の禁止令では、それまで「いか」と呼んでいたものを「たこ」と呼びかえて抵抗したという話も伝わる。
立春以降に降る雪。「牡丹雪」は、雪の結晶が多数付着し合い、花びらのように大きな雪片をもつ雪のことを言う。これは、春に限って降るものではないが、気温が上昇する中で降る雪は、雪片が大きくなりがちである。地面に落ちるとすぐに融けることが多い。
▶ 関連季語 淡雪(春)
春の雪霏々として又降つて来る 正岡子規
松毟鳥(まつむしり・まつむしりどり)
「松むしり」は、スズメ目キクイタダキ科キクイタダキ属キクイタダキ(菊戴)のこと。系統的にはウグイスに近く、かつてはウグイス科に分類されていた。日本で最も小さな鳥とも言われている。
中部以北で繁殖し、留鳥であるが西日本では冬鳥として飛来する。山地の針葉樹林に生息し、秋には暖かいところに移動し、平野部の公園でも見ることができる。
松の若葉をむしる習性があるところから「松むしり」の名があるが、菊戴の方が一般的な呼び名である。ただし、「松むしり」は春の季語になるのに対し、「菊戴」は秋の季語になる。
新芽のあたりに生息する昆虫を捕食している様子が、松をむしっているように見えて「松むしり」の名がついた。
「浅蜊」はマルスダレガイ科アサリ属の二枚貝の総称で、アサリやヒメアサリを指す。塩分が薄い砂浜の浅いところに生息する。
貝殻には様々な色があり、同じ模様を持ったものはないとも言われる。
浅蜊を中心とした貝を遠浅の砂浜で採る「潮干狩」は春の季語になっており、特に旧暦三月三日の大潮は一年で最も干満差が激しくなり、はるか沖まで行って貝を採ることができる。浅蜊はこの時期、産卵を控えて旨みが増す。
浅蜊は、古代から重要な食材であったと考えられており、貝塚などから夥しい数の貝殻が出土している。浅蜊汁や浅蜊飯など、現代でも様々な形で調理される。しかし、海底ではほとんど移動しないため、有毒プランクトンを食べ続けて貝毒に汚染される危険性が高い貝でもある。
「あさり」は、砂に棲む貝を指す「砂利(さり)」と「浅い」が結びついたものだとの説がある。つまり、浅蜊とは、浅いところに棲む貝という意味である。「漁る」は、浅蜊採りが語源になっているとの説があるが、逆に「漁る」が浅蜊の語源であるとの説もある。
鷽姫(うそひめ)
スズメ目アトリ科ウソ属ウソ。ヨーロッパからアジア北部にかけて分布し、日本では漂鳥あるいは冬鳥として観察できる。
春に桜や桃の蕾などを食べ、繁殖期となる夏には昆虫を食べる。雄の頬や喉には赤い羽毛があるが雌にはなく、雄は照鷽(てりうそ)、雌は雨鷽(あめうそ)と呼ぶ。
その声は口笛に似ており、鷽の名は、口笛を意味する古語「うそ」から来ている。「琴弾鳥(ことひきどり)」とも呼ぶが、これは、鳴く時に脚を上げて琴を弾くような動作をするところから来ている。
新春の季語に「鷽替」があるが、これは、1月7日の夜に太宰府天満宮で行われる特殊神事を指す。御祭神の菅原道真が蜂に襲われた時、鷽が助けに来てくれたという故事に基づくものである。
照り雨や滝をめぐれば鷽の啼く 加舎白雄
【鷽の鳴き声】繁殖期は山地の針葉樹林に生息するが、冬には10羽ほどで低地の林間にやってくることもある。映像では「琴弾鳥」の由来となった動作は分からない。(YouTube 動画)