晩春の季語 黄楊の花
黄楊はツゲ科ツゲ属の常緑低木で、3月から4月頃に淡黄色の花弁のない小花をつける。日本の固有変種で、山形県から屋久島にかけて広く分布している。似た植物にイヌツゲがあるが、こちらはモチノキ科の別種である。イヌツゲに対して、黄楊のことを「ホンツゲ」ともいう。
「黄楊」の漢字は、黄色い花が咲く柳を表している。「つげ」の語源は、葉が次々につくところにあるとの説がある。「柘植」とも書く。
黄楊は、古来細工物の材木として珍重され、櫛などに仕立てられた。万葉集にも黄楊の櫛が歌われている。また、樹高が低く枝葉が密になるので、垣根によく用いられている。
【黄楊の花の俳句】
閑かさにひとりこぼれぬ黄楊の花 阿波野青畝

バラ科サクラ属の果樹である桜桃は、夏にはサクランボと呼ぶ実をつける。その木はチェリーとも呼ぶ。多くの種類があるが、サクランボを採る目的で植えられた木のほとんどは、西洋実桜(せいようみざくら)と呼ばれる、地中海沿岸を原産地とする品種からつくられたものである。日本へは、明治時代初期に導入された。
アヤメ科フリージア属フリージアは南アフリカ原産で、2月から6月頃に黄・白・紫などの花をつける。原種は16種類あり、オランダを中心に品種改良がすすめられ、数百種の園芸品種がある。そのほとんどは芳香があり、「香雪蘭(こうせつらん)」とも呼ばれている。白と黄色以外のものはウィルスに弱いため、見かけることは少ない。
ヒノキ科スギ亜科スギ属スギは、日本特産の雌雄同株の常緑針葉樹。本州から屋久島の山間部に自生あるいは植林され、2月から4月頃に開花し、
マメ科レンリソウ属スイートピーは、シチリア島原産の蔓性の一年草。「麝香豌豆(じゃこうえんどう)」「香豌豆(かおりえんどう)」「麝香連理草(じゃこうれんりんそう)」とも呼ばれ芳香を持つが、近年市場で見られるものは、品種改良で香りが弱くなったものが多い。
サイネリアは、キク科ペリカルリス属のシネラリアのこと。シネラリアでは「死」を連想させるため、「サイネリア」の名で流通している。
キク科キンセンカ属キンセンカは、地中海沿岸原産の一日花で、12月から5月頃に花が見られる。「常春花」「長春花」「ときしらず」と呼ばれたり、冬咲の「冬しらず」と呼ばれるものもあり、花期は長いが、花の最盛期である晩春の季語となる。
スミレ科スミレ属サンシキスミレはヨーロッパ原産の野生植物であるが、他のスミレ属の植物と交配させた園芸種が、パンジーと呼ばれて日本でも親しまれている。なお、花径4センチメートル以下の小さなものは、ビオラと呼んで区別することがある。パンジーには多くの種類があり、10月から5月くらいまで、カラフルな花を観察することができる。
ミズキ科ミズキ属ヤマボウシ亜属の落葉高木「ハナミズキ」は、アメリカヤマボウシとも呼ぶ。北米原産で、日本に入ってきたのは明治時代以降である。
名残の花とも言い、咲き残った桜の花を指す。「余花」とすると、夏の季語となる。