季語|峰入(みねいり)

晩春の季語 峰入

入峯(にゅうぶ)

峰入修験者(山伏)が大峰山(奈良県)に入って修行することを峰入という。天台宗本山派では、陰暦四月に熊野から吉野に抜けるコースの「順の峯」をとり、これを季語にしたもの。夏の季語にする歳時記もある。
真言宗当山派では、陰暦七月に吉野から熊野に抜ける「逆の峯」をとり、「逆の峰入」として秋の季語になる。現在では両派とも吉野から入る。

大峰山は山上ヶ岳・稲村ヶ岳・八経ヶ岳などからなる峰々で、狭義には山上ヶ岳を指す。修験道の聖地であり、飛鳥時代に役小角によって開山された。なお、最高峰は山上ヶ岳(1719m)ではなく、八経ヶ岳(1915m)である。

【峰入の俳句】

峰入りやおもへば深き芳野山  加舎白雄

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季語|駒鳥(こまどり・こま)

三夏の季語 駒鳥

駒鳥駒鳥は、鳥綱スズメ目ヒタキ科コマドリ属に分類される。夏鳥として中華人民共和国南部から4月頃に飛来してくるコマドリと、伊豆諸島や種子島・屋久島に生息するタネコマドリがいる。亜高山帯の渓谷の針葉樹林などで、昆虫などを捕食しながら生活し、春から初夏にかけて繁殖活動を行う。
ヨーロッパには「ヨーロッパコマドリ」がおり、最も親しまれている鳥の一種となっている。
ウグイスオオルリとともに、日本三鳴鳥に挙げられる。鳴き声が馬のいななきに似ているところから「駒鳥」と命名された。

俳諧歳時記栞草(1851年)では、春之部「兼三春物」に分類する。現代でも、歳時記によっては春に分類したり夏に分類したりする。

【駒鳥の俳句】

駒鳥の声ころびけり岩の上  斯波園女

【駒鳥の鳴き声】
笹が下草として茂った亜高山帯の森林などに生息しており、目にする機会は少ない。美しい声で鳴き、日本三鳴鳥に挙げられている。(YouTube 動画)

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季語|目刺(めざし)

三春の季語 目刺

目刺イワシを塩漬けした後、目に竹串や藁を通して乾燥させたもの。鰓に刺したものは「頬刺」と呼ぶ。焼いて食べる。鰯の種類としては、カタクチイワシやウルメイワシなどを用いる。
の旬は秋から冬にかけてであるが、目刺は冬場の乾燥した気候を利用して干してつくられるので、食べごろは春となる。
実業家であった土光敏夫氏が、質素な暮らしぶりで「メザシの土光さん」としても親しまれたように、「貧しい食卓」の象徴としても取り上げられる。

【目刺の俳句】

ぼうぼうと燃ゆる目刺を消しとめし  中村汀女

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季語|苺の花(いちごのはな)

晩春の季語 苺の花

花苺(はないちご)

苺の花狭義には、バラ科オランダイチゴ属オランダイチゴの花を指す。現在では温室栽培が盛んで、苺の果実は冬場に見る事が多いが、5月頃から出回る露地物の苺は、3月から5月頃に花をつける。

▶ 関連季語 苺(夏)

【苺の花の俳句】

室咲に苺の花もあるあはれ  水原秋桜子

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季語|清明(せいめい)

晩春の季語 清明

清明節(せいめいせつ)

清明二十四節気の一つで、陰暦三月の節。太陽が黄道上の15度の位置を通過する時分で、春分から15日目(4月5日頃)にあたる。「清明節」ともいい、中国では先祖祭が行われた。沖縄でも重要な節日になっており、「清明祭」が行われる。
広義では、穀雨の前日までの15日間を「清明」という。「清浄明潔」を略した言葉であり、清らかで明るい様子を言ったものである。この頃は、風も清らかで、空気も澄んで見える。

【清明の俳句】

鳥ゐるや清明節のつちくれに  吉岡禅寺洞

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季語|鯨突(くじらつき)

三冬の季語 鯨突

捕鯨船(ほげいせん)

鯨突鯨突とは、鯨を銛で突いて捕えることである。江戸時代には「鯨組」が組織されて、全国で年間数百頭もの鯨が捕獲されていた。

日本における捕鯨の歴史は古く、すでに縄文時代には鯨食文化があったと考えられている。ただし、積極的な捕鯨があったかどうかは見解が分かれており、座礁鯨を食用にしたとの説もある。
万葉集には「鯨魚取り(いさなとり)」の和歌があることから、奈良時代には積極的な捕鯨が行われていたと考えられている。古くは簎や鉾などを用いて捕鯨していたと考えられるが、鎌倉時代には手銛によるセミクジラやコククジラの捕鯨が始まり、江戸時代のはじめに和歌山の太地で網をかけて銛で突く漁法が開発されたことにより、ナガスクジラの捕鯨も可能になった。明治時代には、捕鯨砲を用いるノルウェー式捕鯨が導入されて、それまでの漁法は一掃された。
世界的には、主に鯨油を得るために鯨の乱獲が行われ、20世紀には鯨類資源は枯渇した。そのため1948年に国際捕鯨委員会(IWC)が設立され、1982年には商業捕鯨モラトリアムが採択され、商業捕鯨は一時停止されることとなった。1951年にIWCに加盟した日本は、1985年に商業捕鯨の一時停止決議を受け入れて調査捕鯨のみを行っていたが、2019年に脱退した。
日本で捕獲された鯨は、食用にされるとともに、鯨骨や鯨ひげは様々な道具に加工し、鯨油は除虫材や灯火用などに利用された。

多くのクジラには回遊する習性があり、江戸時代には、地方によって捕獲シーズンは異なっていた。俳諧歳時記栞草(1851年)では「鯨突」が冬之部に分類されているが、捕鯨が盛んだった紀州熊野浦では、仲冬がシーズンだった。
日本の開国につながった黒船来航は、日本の港を捕鯨のための供給基地にする目的があったとされている。

▶ 関連季語 鯨(冬)

【鯨突の俳句】

一番は逃げて跡なし鯨突  炭太祇
捕鯨船嗄れたる汽笛をならしけり  山口誓子

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季語|鯨(くじら・いさ・いさな)

三冬の季語 

初鯨(はつくじら)・抹香鯨(まっこうくじら)・背美鯨(せみくじら)・座頭鯨(ざとうくじら)・長須鯨(ながすくじら)

鯨哺乳類クジラ目は、歯を持つハクジラと、歯を持たずヒゲを持つヒゲクジラに大別される。ハクジラ類には、マッコウクジラやイルカが含まれ、ヒゲクジラ類にはセミクジラやナガスクジラ、ザトウクジラが含まれる。日本周辺には、上記4種を含む約40種類が生息しており、太平洋側のホエールウォッチングでは主にマッコウクジラやザトウクジラが観察できる。
多くのクジラには回遊する習性があり、ザトウクジラは、冬は沖縄や小笠原の海、夏はとロシアやアラスカの海へと移動する。ホエールウォッチングは、北海道では夏場、沖縄では冬場がベストシーズンとされる。
俳諧歳時記栞草(1851年)では「鯨突」が冬之部に分類されており、紀州熊野浦では仲冬が盛りだとする。ここから「鯨」も冬の季語に分類される。

万葉集では「鯨魚(いさな)」と呼ばれ、長歌に多く歌われている。「鯨魚取り」で、「浜」「海」「灘」を導く枕詞になる。古事記では神武天皇条の長歌に「久治良(くぢら)」があるが、鯨を指すかどうかは不明。
「くじら」の語源は、背が黒くて腹が白いことから、「くらしら(黒白)」と呼ばれていたものが転訛したところからきたとの説が有力。

日本では古くから食されており、縄文時代の遺跡から鯨の骨が発掘される。座礁鯨を食材としたのが鯨食の始まりだと考えられている。鎌倉時代には手銛による捕鯨が始まり、江戸時代のはじめに和歌山の太地で、網をかけて銛で突く漁法が発見されたことで捕鯨が拡大した。
19世紀に始まった捕鯨砲を用いるノルウェー式捕鯨は、捕鯨を容易にし、おもに鯨油を得るための鯨の乱獲をまねいた。1948年には国際捕鯨委員会(IWC)が設立され、1982年には商業捕鯨モラトリアムが採択され、商業捕鯨は一時停止されることとなった。

【鯨の俳句】

鯨よる浜とよ人もたゞならず  尾崎紅葉

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季語|末黒(すぐろ)

初春の季語 末黒

末黒野焼きなどのあとに、草木が黒く焦げていることを「末黒」という。
野焼きは主に、山火事の防止や生態系の管理などを目的に行うものである。春先に行うことで、地下に眠る植物を生かしつつ、地表の虫や雑草などを減少させることができる。ただ、近年では地球温暖化対策などの観点から、抑制される傾向にある。

【末黒の俳句】

暁の雨やすぐろの薄はら  与謝蕪村

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季語|青饅(あおぬた)

三春の季語 青饅

青饅芥子菜を酢味噌であえたもの。魚介類を加えることもある。俳諧歳時記栞草(1851年)では春之部「兼三春物」に分類し、「和漢三才図会」の引用で「芥(からし)の葉青きを醋(す)に合せ、魚膾に和してこれを食ふ。俗に阿乎乃太(あをのた)といふ」とある。
「饅」とは饅膾(ぬたなます)の略称で、酢味噌で和えた料理のこと。見た目を沼田に見立てて「ぬた」と呼んだもので、室町時代にはすでに存在していた。
青饅の「青」は、芥子菜の青さを表現したもので、青饅が春の季語になるのも、芥子菜の旬が2月から4月になるためである。

【青饅の俳句】

青饅や家路の果に家はあり  友岡子郷

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季語|草木瓜(くさぼけ)

晩春の季語 草木瓜

櫨子の花(しどみのはな)・地梨の花(じなしのはな)

草木瓜草木瓜は、バラ科ボケ属の植物で、関東以西の山地の斜面など、日当たりのよいところに自生する。同属の木瓜は、平安時代に中国から入ってきたと考えられており、日本の在来種がこの「草木瓜」である。
草木瓜は、木瓜よりも低木で、棘のある枝が横に広がり、草のように見える。木瓜よりやや遅れて、4月から5月頃に花が咲く。花は一重の朱色であるが、八重咲きや、黄色や白い花を咲かせるものもある。
別名に「櫨子(しどみ)」があるが、これは秋にできる果実からきた名前で、酸っぱいその実を「酸ど実」と呼んだものが転訛したと考えられている。
庭に植えると火事を招くとの俗説があり、庭木としては好まれない。

【草木瓜の俳句】

草木瓜や放牛の歩み十歩ほど  大野林火

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