カテゴリー: 季語
季語|スイートピー
晩春の季語 スイートピー
マメ科レンリソウ属スイートピーは、シチリア島原産の蔓性の一年草。「麝香豌豆(じゃこうえんどう)」「香豌豆(かおりえんどう)」「麝香連理草(じゃこうれんりんそう)」とも呼ばれ芳香を持つが、近年市場で見られるものは、品種改良で香りが弱くなったものが多い。
スイートピーは「sweet pea」と書き、「甘い豌豆」の意であるが、有毒植物で食すことはできない。ここにいう甘さとは、その香りのことである。
秋蒔きしたものは、4月から6月頃に花が咲く。ただ、よく目にするのは温室で切り花用に栽培されたもので、こちらは11月から4月頃によく見られる。
スイートピーは17世紀末にカトリック僧のフランシス・クパニによって、シチリア島で発見された。当初は小さな花を咲かせていたが、品種改良によって現在見られるような形に変化していった。日本には、江戸時代末期に渡来したと言われている。
1982年の松田聖子のヒット曲「赤いスイートピー」でも親しまれる花であるが、当時は鮮やかな赤い花色を持つ種はなかった。2002年に登場した「ビビアンレッド」という品種によって実現した。色鮮やかな切り花の中には、白い花に色のついた液を吸わせたものがあり、「染めスイートピー」と呼ばれる。
【スイートピーの俳句】
スイートピー蔓のばしたる置時計 長谷川かな女
季語|山茱萸の花(さんしゅゆのはな)
季語|蕗の薹(ふきのとう)
初春の季語 蕗の薹
キク科フキ属フキは、「蕗」や「蕗の葉」として夏の季語になるが、1月から3月頃に見られる若い花茎は、「蕗の薹」として春の季語になる。フキは食用として栽培されるが、全国の湿り気の多い場所に自生する植物でもある。
フキは雌雄異株であるため、蕗の薹にも雌雄がある。雌株はややまばらに蕾が集まり、糸くずのような雌しべが白く見えるのに対し、雄株は黄みを帯びた花が密集しているように見える。通常、「蕗の薹」は蕾の状態で収穫され、山菜として供される。食味は、雄株の方が苦みが強く、より蕗の薹らしさを感じられる。
植物学者の伊藤篤太郎博士は、1904年の時事新報に「冬の七艸」のひとつとして蕗の薹を挙げている。他の6つは、「福寿草」「節分草」「雪割草」「寒葵」「寒菊」「水仙」である。
俳諧歳時記栞草(1851年)に「貞享式」の引用で、「中古の式目には、蕗のたふも蕗の花も同く春に用ひたれど、此名は例の賞玩より、むら消の雪にむすぶとも、蕗のたふは冬と定むべし。しかれども蕗花は、漢には賈島が春雪の詩より、春とはいはんも宜なれど、その名はさして俳諧の用なし。但し蕗の芽は春にして、一物二用の例といふべき也」とある。
【蕗の薹の俳句】
埋火や野辺なつかしき蕗の薹 早野巴人
季語|金縷梅(まんさく)
季語|サイネリア
季語|金盞花(きんせんか)
晩春の季語 金盞花
キク科キンセンカ属キンセンカは、地中海沿岸原産の一日花で、12月から5月頃に花が見られる。「常春花」「長春花」「ときしらず」と呼ばれたり、冬咲の「冬しらず」と呼ばれるものもあり、花期は長いが、花の最盛期である晩春の季語となる。
江戸時代に中国から渡来したと言われているが、室町時代にはすでに入ってきており、「長春花」と呼ばれていたという説がある。また、江戸時代に入ってきたのは花が大きい「唐金盞花」と呼ばれるもので、「本金盞花」と呼ばれる小型のものが、それ以前からあったという説もある。
「金盞花」は中国でつけられた名前で、語源は、その花色と形にあり、「金色の盃」という意味。
イギリスでは聖母マリアの祝日を祝う花として「マリーゴールド」と呼ばれていたが、メキシコ原産のマンジュギク属の花が入ってきた時に、その名を譲り、「ポット・マリーゴールド」と呼ばれるようになった。「鉢植えのマリーゴールド」という意味である。
【金盞花の俳句】
金盞花あまりし命何なさむ 角川源義
季語|三色菫(さんしきすみれ)
晩春の季語 三色菫
スミレ科スミレ属サンシキスミレはヨーロッパ原産の野生植物であるが、他のスミレ属の植物と交配させた園芸種が、パンジーと呼ばれて日本でも親しまれている。なお、花径4センチメートル以下の小さなものは、ビオラと呼んで区別することがある。パンジーには多くの種類があり、10月から5月くらいまで、カラフルな花を観察することができる。
パンジーの本格的な品種開発が行われ始めたのは1813年で、日本へは江戸時代末期の1864年に渡来したと言われている。
パンジーの語源は、フランス語の「パンセ(思想)」にあり、その花を、物思いに耽る人の顔と見る。それは、自由思想のシンボルであった。海外では、勇気がない男性を侮辱する時に「pansy」を用い、ヒモを意味する「ponce」の語源ともなっている。
日本では「三色菫」とも呼ばれるカラフルな花を特徴とするパンジーであるが、JIS慣用色名における「パンジー」はRGBでは#40317Eの、紫系統の色になる。
【三色菫の俳句】
野路来れば三色菫作る家 松本たかし
季語|福寿草(ふくじゅそう)
新春の季語 福寿草
キンポウゲ科フクジュソウ属フクジュソウは、北海道から九州に自生する多年草で、毒草である。花の中の温度を下げないために花弁を開閉するため、日が出ると開き、隠れると萎む。
2月から4月頃に開花し、旧暦では元日に咲いたことから元日草と呼ばれた。現在でも正月用に花屋で売られているが、これはハウス栽培されたもの。
「難を転じて福となす」と掛けて、南天の実と組み合わせて縁起物とする。
早春にめでたい黄金色の花を咲かせることから、元は「福告ぐ草」と呼ばれていたが、江戸時代の初めに、新年を祝う草として「福寿草」に変わっていったという。江戸時代には、器に植えて贈り合った。
万葉集に柿本人麻呂の和歌で
春さればまづ三枝の幸くあらば 後にも逢はむな恋ひそ我妹
があるが、この「三枝(さきくさ)」は福寿草の可能性があると言われている。
【福寿草の俳句】
花よりも名に近づくや福寿草 加賀千代女
▶ 新春の季語になった花 見頃と名所
▶ 俳句の季節「念ずれば福寿草の花開く」
季語|侘助(わびすけ)
三冬の季語 侘助
ツバキ科ツバキ属の常緑低木で、椿の雑種。有楽椿(うらくつばき:別名にタロウカジャ)を基本種とするもので、葯が退化して花粉を作らない。椿は春の季語になるのに対し、侘助は11月から3月頃に咲いて、冬の季語になる。椿に比べて、花は小ぶりである。
野生種はなく、来歴ははっきりしないが、室町時代に中国から渡来した品種が関わっていると考えられている。一説ではツバキとチャノキの雑種であるとされ、「侘助」の名は、茶道と縁が深い言葉である「侘び」と「数寄」からなるとされる。基本種となる「有楽椿」の名は、織田信長の弟で茶人でもあった織田有楽斎が好んだことによると言われている。
【侘助の俳句】
侘助の咲きかはりたる別の花 富安風生