季語|春隣(はるとなり・はるどなり)

晩冬の季語 春隣

春近し(はるちかし)

季語と俳句春隣晩冬には、春の気配を感じて嬉しくなることがある。古今和歌集に、清原深養父の歌で、

冬ながら春の隣の近ければ 中垣よりぞ花はちりける

がある。

【春隣の俳句】

叱られて目をつぶる猫春隣  久保田万太郎
白き巨船きたれり春も遠からず  大野林火

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季語|寒星(かんぼし・かんせい)

三冬の季語 寒星

冬星(ふゆぼし)冬の星(ふゆのほし)冬星座(ふゆせいざ)

季語と俳句寒星冬は、日没が早く空気も澄むことから、天体観測には最も適した季節だと言える。また、この時期はジェット気流が強くなるため、星の瞬きが美しい。
観察できる一等星も多くなる季節であり、オリオンやスバルなども肉眼で見ることができる。

冬の代表的な星座に、三ツ星が美しいオリオン座や、夜の空で一番明るい恒星シリウスを持つおおいぬ座、赤い一等星アルデバランを持つおうし座などがある。また、ベテルギウス・シリウス・プロキオンを結ぶ冬の大三角も観察できる。

【寒星の俳句】

寒星や神の算盤たゞひそか  中村草田男

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季語|河豚(ふぐ・ふく・ふくべ・かとん)

三冬の季語 河豚

季語と俳句河豚フグ目フグ科トラフグ属にトラフグ・マフグなどがあり、日本では古くから食されてきた。特にトラフグは美味とされるが、肝や卵巣にフグ毒(テトロドトキシン)を持つため、調理には免許を必要とする。
なお、フグ毒は海洋細菌によって産生されるため、陸上養殖で人工餌を与えることで河豚を無毒化することが可能になっている。
ふぐの旬は「秋の彼岸から春の彼岸まで」と言われ、薄作りにした河豚刺(てっさ)、河豚鍋、河豚のひれ酒などが喜ばれている。

貝塚から河豚の骨が出て来ることから、日本では縄文時代から食されていたと考えられているが、フグ毒に当たる者が多かったために、豊臣秀吉の朝鮮出兵では「河豚食禁止令」が出されている。江戸時代も、藩によっては河豚食を禁止し、明治時代には全国的に河豚の販売が禁止となった。季語 春帆楼
そんな中、伊藤博文が下関の春帆楼に宿泊した際、時化で食材がなかったため罰せられることを覚悟して提供したところ、食味に感激。山口県では、明治21年(1888年)に全国に先駆けて解禁となり、春帆楼はふぐ料理公許第一号店となった。その春帆楼は、日清講和条約が結ばれた場所である。

怒ると膨らむことから、語源は「膨らむ」にあるとする説が有力。漢字で「河豚」と表記するのは、中国で食用とされるメフグは河川に生息しており、豚のような鳴き声を発するからだと言われている。
平安時代には「ふく」「ふくべ」と呼ばれており、「ふぐ」と呼んでいたのは、江戸時代の関東地方だと言われている。俳諧歳時記栞草では「河豚魚」で「ふぐ」と読む。現在では、河豚で有名な下関での呼称「ふく」の方が異称のように思われており、フグが「不遇」を想起するために、フク(福)となったなどと言われる。
また、大阪では「てっぽう」と呼ぶが、これは、時々毒に当たることを「たまに当たる」としたところから来ている。当たると、痺れが体全体に広がっていき、呼吸麻痺を引き起こして死に至る。

【河豚の俳句】

もののふの河豚にくはるる悲しさよ  正岡子規

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季語|鮟鱇(あんこう・あんこ)

三冬の季語 鮟鱇

季語と俳句鮟鱇アンコウ目アンコウ科の魚。日本で食されるのは、その中でもキアンコウ(ホンアンコウ)とアンコウ(クツアンコウ)。これらは、砂泥状の海底を持つ深海に生息し、手足のように変形したヒレで海底を移動している。
アンコウ漁は、産卵を終えた7月から8月までが禁漁期間となり、旬は11月から2月。江戸時代には「三鳥二魚」と呼ばれる5大珍味に数え上げられ、鶴・雲雀・鷭・鯛と並ぶ高級食材だった。
体全体が柔軟で粘りがあるため、「吊るし切り」という独特の方法で捌かれて、七つ道具と言われる身・皮・胃・肝臓・卵巣・鰓・鰭に切り分けていく。身は柳肉と呼ばれ、淡白な食感が特徴。最も知られる鮟鱇料理は、鮟鱇鍋。あん肝は「海のフォアグラ」とも呼ばれ、酒の肴として人気がある。

その特徴的な大きな顎が、「あんこう」の語源になったとの説がある。俳諧歳時記栞草には、「華臍魚」と書いて「あんかう」と読ませ、「老婆魚(ろうばぎょ)、綬魚(じゅぎょ)、琵琶魚(びはぎょ)の諸名あり」とある。

【鮟鱇の俳句】

鮟鱇の骨まで凍ててぶちきらる  加藤楸邨

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季語|冬椿(ふゆつばき)

晩冬の季語 冬椿

寒椿(かんつばき)

季語(生写四十八鷹百舌鳥枯かしは冬椿)早咲きの椿を冬椿という。また、サザンカとツバキの交雑種にカンツバキという品種がある。このカンツバキは、11月から2月頃に花をつける。
宮尾登美子の小説に「寒椿」があり、1992年に、高知を舞台に映画化された。

▶ 関連季語 椿(春)

【冬椿の俳句】

冬椿花はのこらぬこゝちかな  服部土芳
ふるさとの町に坂無し冬椿  鈴木真砂女

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季語|玉子酒(たまござけ)

三冬の季語 玉子酒

卵酒(たまござけ)

季語と俳句と玉子酒酒に鶏卵、砂糖を混ぜて作るホットカクテルの一種。
俳諧歳時記栞草に「寒気を禦がんために飲之」とあるように、風邪をひいた時に飲むものとの認識があるが、風邪への効果は認められていない。一種の滋養強壮剤ではある。

【玉子酒の俳句】

玉子酒どちらが先に死ぬなどと  橋本村童

ふつうは家庭で作られるものであるが、伊達家御用蔵として知られる「勝山」は「たまご酒」を市販し、人気を博している。100年以上の伝統を持つ玉子酒である。



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【宮城県仙台市】

季語|山眠る(やまねむる)

三冬の季語 山眠る

眠る山(ねむるやま)

季語と季語山眠る(女十題竹久夢二国立国会図書館オンライン)郭煕(1023年?~1085年?)の画論「臥遊録」に、「春山淡冶にして笑うが如く、夏山蒼翠にして滴るが如く、秋山明浄にして粧うが如く、冬山惨淡として眠るが如く」とある。これをもとに、「山笑ふ」は春、「山滴る」は夏、「山粧ふ」は秋、「山眠る」は冬。
冬山の静まり返った様子をいう。俳諧歳時記栞草では、「山眠」と書いて「やまねぶる」。

【山眠るの俳句】

天竜へ崩れ落ちつつ眠る山  松本たかし

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季語|冬至(とうじ)

仲冬の季語 冬至

冬至南瓜(とうじかぼちゃ)

季語と俳句の冬至冬至日とも言い、一年のうちで最も昼が短くなる日のことを指し、12月22日前後となる。また、二十四節気の第22で、大雪と小寒に挟まれた期間のことでもある。この期間の七十二候は、初候が夏枯草が芽を出すという「乃東生」、次候が鹿が角を落とす「麋角解」、末候が雪の下で麦が芽を出す「雪下出麦」。
太陽が最も南に到るこの日、陽の気が弱まり、陰の気が最も強くなる日であるとされる。俳諧歳時記栞草には、「冬至に三義あり、一は陰極るの至り、二は陽気はじめて至る、三は日南に行くの至り、故に冬至といふ」とある。
冬至のことを「一陽来復」とも言うが、陰が極まり陽に転ずることを指している。東京の穴八幡宮では、冬至祭が盛大に催され、「一陽来復」の御守を求めて多くの人が訪れる。

この日、小豆を使った冬至粥を食べ、冬至風呂と称して柚子湯に入る。冬至粥には邪気を祓う効用があるとされ、柚子は「融通」に掛けて、冬至に「湯治」の意味を込める。
また、冬至南瓜も知られるが、冬至に「ん」のつくものを食べると運気が上昇するとの縁起かつぎにより、「なんきん」を食べるのである。

19年に1度、冬至の日が朔になることがあり、これを朔旦冬至(さくたんとうじ)と言って、瑞祥とされる。直近の朔旦冬至は2014年であったが、次回は特殊事情で19年後にならず、2052年となる。

【冬至の俳句】

門前の小家もあそぶ冬至かな  野沢凡兆

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季語|狼(おおかみ)

三冬の季語 

季語と俳句の狼ネコ目イヌ科イヌ属。タイリクオオカミの亜種であり、ハイイロオオカミと同種のニホンオオカミは、本州・四国九州に棲んでいた。1905年に奈良県東吉野村で捕獲されたのを最後に、絶滅したと考えられている。また、北海道には毛並が茶色のエゾオオカミが生息していたが、これも1900年ごろに絶滅した。
イヌは、オオカミが飼い馴らされて家畜化したものと考えられている。西洋では牧畜が盛んだったこともあり、害獣との位置付けが強いが、農耕社会である日本では、害獣を駆逐する益獣としての位置付けから、神格化されることもあった。そのため、「おおかみ」の語源は「大神」であるとされる。
また、真神(まかみ)は狼を神格化した古語であり、万葉集には舎人娘子の和歌として、

大口の真神が原に降る雪は いたくな降りそ家もあらなくに

が載る。

日本神話における狼は、ヤマトタケルの項が印象的。景行天皇紀に、ヤマトタケルが信濃山中で迷った時に、白き狗が出てきて、美濃に導いたとある。この「白き狗」が狼のことで、ヤマトタケルにゆかりのある秩父の三峯神社は、狼を守護神としている。
欽明天皇紀には、秦大津父という臣を得た時の話が出て来る。秦大津父が伊勢からの帰りに、二匹の狼が取っ組み合いをしており、「貴き神にして、あらき行を楽む」とある。「もし猟士に逢はば、禽られむこと尤く速けむ」と言って、その取っ組み合いを押しとどめ、「ともに命全けてき」と解き放った。

西洋では、グリム童話の「赤ずきん」「狼と七匹の子山羊」、イソップ物語の「オオカミ少年」など、悪いイメージで語られる物語が多いが、古代ローマの建国神話には、建国者の育ての親だとも語られている。

【狼の俳句】

狼をのがれて淋し山の月  島田五空

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季語|年の暮(としのくれ)

暮の季語 年の暮

年の瀬(としのせ)年暮るる(としくるる)歳晩(さいばん)

季語と俳句の年の暮一年の終わりの期間を年の暮というが、感覚的には、新年の準備を始める12月中旬ころから大晦日まで。
徒然草第十九段では、次のように年末の慌ただしさを表現している。

さて、冬枯のけしきこそ、秋にはをさをさ劣るまじけれ。汀の草に紅葉の散り止まりて、霜いと白うおける朝、遣水より烟の立つこそをかしけれ。年の暮れ果てて、人ごとに急ぎあへるころぞ、またなくあはれなる。すさまじきものにして見る人もなき月の寒けく澄める、廿日余り空こそ、心ぼそきものなれ。御仏名、荷前の使立つなどぞ、あはれにやんごとなき。公事ども繋く、春の急ぎにとり重ねて催し行はるゝさまぞ、いみじきや。追儺より四方拝に続くこそ面白けれ。晦日の夜、いたう闇きに、松どもともして、夜半過ぐるまで、人の、門叩き、走りありきて、何事にかあらん、ことことしくのゝしりて、足を空に惑ふが、暁がたより、さすがに音なくなりぬるこそ、年の名残も心ぼそけれ。亡き人のくる夜とて魂祭るわざは、このごろ都にはなきを、東のかたには、なほする事にてありしこそ、あはれなりしか。

▶ 関連季語 年の内(暮)

【年の暮の俳句】

ともかくもあなたまかせの年の暮  小林一茶
分別の底たゝきけり年の暮  松尾芭蕉

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