季語|喜雨(きう)

晩夏の季語 喜雨

慈雨(じう)

喜雨夏場の旱は農作物の収穫に影響する上、気温の上昇を招き、体力をも奪う。そのため、日照り続きのあとに降る雨のことを「喜雨」「慈雨」と呼ぶ。夏の土用の頃の雨である。

【喜雨の俳句】

つまだちて見るふるさとは喜雨の中  加藤楸邨

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季語|夏酒(なつざけ)

三夏の季語 夏酒

夏酒特定の種類の酒を指すのではなく、夏に飲む酒を「夏酒」と呼ぶ。夏の季語になる「酒」には、焼酎ビール甘酒蝮酒冷酒煮酒などがある。
近年では、夏の日本酒の販促のために「夏酒」という、夏でもスッキリ飲める日本酒のカテゴリーが生まれている。

【夏酒の俳句】

夏酒やわれと乗りこむ火の車  立花北枝



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季語|鵺(ぬえ)

三夏の季語 

虎鶫(とらつぐみ)・鵺鳥(ぬえどり)

鵺鵺は、トラツグミのことであるが、「ヒョーヒョー」と薄気味悪く鳴く声から、猿の顔、狸の胴体、虎の手足、蛇の尾を持つ想像上の生物をも生み出した。この想像上の生物は、平家物語の「鵺の事」に取材し、謡曲にもなっている。
古事記の八千矛の神の歌物語に、他の鳥と並んで「青山に鵼(ぬえ)は鳴きぬ」と出てくるところから、古くから鳥と認識されていたものと考えられる。万葉集には鵺鳥として6首に歌われ、「うらなけ」「片恋づま」「のどよふ」の枕詞となっている。柿本人麻呂には

久方の天の川原に鵺鳥の うら嘆けましつすべなきまでに

の和歌がある。
俳諧歳時記栞草(1851年)では、秋の部八月に分類されている。

トラツグミは、留鳥または漂鳥として周年生息する鳥で、北海道では夏鳥として見られる。山地の広葉樹林を棲み処とし、夏場に繁殖する。その独特の鳴き声は、雄の縄張り宣言であり、夜間に聞かれる。

【鵺の俳句】

頼政も鵺も昔の宿帳に  高浜虚子

【鵺の鳴き声】
鵺とも呼ばれるトラツグミは、体長30センチほどの鳥。夜間に気味悪く鳴くため、「幽霊鳥」とか「地獄鳥」と呼ばれることもある。(YouTube 動画)

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季語|梅雨明(つゆあけ)

晩夏の季語 梅雨明

梅雨明梅雨をもたらす梅雨前線は、太平洋高気圧の勢力拡大とともに北上し、日本列島は梅雨明となる。沖縄では6月20日頃、大阪や東京では概ね7月20日頃となる。ただし、東京では6月に梅雨明した年や、8月まで梅雨が続いた年もある。また、1993年は梅雨明宣言がなかった年となっている。

▶ 関連季語 梅雨(夏)

【梅雨明の俳句】

梅雨あけて奥の山より一つ蝉  前田普羅

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季語|青梅(あおうめ)

仲夏の季語 青梅

梅の実(うめのみ)実梅(みうめ)

青梅俳句で「」とすれば花を指し、春の季語になるが、梅の実は夏の季語となる。ただし、俳諧歳時記栞草(1851年)には、「梅とばかりいひても、実のさまにいひとればよし」とあり、実であることが分かれば「梅」でも構わないとされる。
梅の実の収穫期は6月から7月にあたり、そのためにこの頃に降る雨は「梅雨」と書くようになった。
梅の実は、完熟すれば赤みを帯びて「黄梅」と呼ぶが、初期の状態では緑色をしており、これを「青梅」と呼び、梅酒にしたりなどする。熟すほどに梅干しにすることが多くなる。青梅には青酸配糖体アミグダリンが含まれており、呼吸困難を引き起こしたりなどするため、生食はできない。
梅の実は、食用以外にも「烏梅(うばい)」と呼ばれる整腸などに用いられる漢方薬に加工したりもする。

天満宮に祀られる菅原道真公は梅をこよなく愛したために、梅の種のことを「天神様」と呼ぶ。「梅は食うとも核食うな、中に天神寝てござる」との慣用句もあるが、これは梅の種に毒があることを知らせるものである。

【青梅の俳句】

青梅の臀うつくしくそろひけり  室生犀星

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季語|蟻(あり)

三夏の季語 

蟻の道(ありのみち)蟻の塔(ありのとう)蟻塚(ありづか)

蟻ハチ目アリ上科アリ科に属する昆虫の総称。日本に生息する主なものに、アミメアリ・トビイロケアリ・サムライアリ・ヒメアリ・イエヒメアリなどがある。通常は土壌に穴を掘って巣をつくり、女王蟻・雄蟻・兵隊蟻・働き蟻で構成される。兵隊蟻や、蟻の大部分を占める働き蟻は全て雌である。働き蟻は女王や幼虫などの世話、餌の運搬などの仕事を分担する。餌の運搬は老齢蟻が担当することが多い。
繁殖は年一回であり、夏場に翅を持った雄蟻と翅を持った新女王蟻が現れ、それぞれ巣を離れて結婚飛行を行い、他の巣の個体と交尾する。一生分の精子を得た新女王蟻は翅を落として新しい巣で卵を産み続けるが、雄蟻は交尾後すぐに死んでしまう。卵は、餌やフェロモンによって女王蟻になったり働き蟻になったりする。

身近な昆虫のため、「蟻」を使った慣用句は多く、群衆が列を作ってそぞろ歩く「蟻の熊野詣」や、油断大敵を言った「千里の堤も蟻の穴から」などの言葉がある。最近では社会構成を蟻にたとえる「働きアリの法則」がよく使われる。これは、よく働く蟻と、普通に働く蟻と、さぼっている蟻の割合が、2:6:2になることを示したものである。
文学では、イソップ物語の「アリとキリギリス」がよく知られる。

シロアリは、ゴキブリ目シロアリ下目に属し、この項目における蟻とは別種である。また、蟻の巣として「蟻の塔」「蟻塚」を季語として利用することもある。蟻の中にはエゾアカヤマアリのように蟻塚をつくるものもあるが、目につきやすいのはシロアリの蟻塚である。ちなみに白蟻も夏の季語となる。

【蟻の俳句】

たゞ蟻の為すまゝに蝶の衰へる  嶋田青峰

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季語|蟻地獄(ありじごく)

三夏の季語 蟻地獄

あとずさり

蟻地獄ウスバカゲロウの幼虫のことを、蟻地獄と言う。軒下等の砂地にすり鉢状の巣をつくり、などの生物が落下してくるのをつかまえて体液を吸う。後方にしか進めないことから、「あとずさり」とも呼ばれる。成虫になるとウスバカゲロウ(薄翅蜉蝣)と呼ばれ、これも夏の季語になる。ただし、ウスバカゲロウはアミメカゲロウ目であり、儚いことの象徴のような存在であるカゲロウ目の蜉蝣(秋の季語となる)とは別種である。
ウスバカゲロウの幼虫期間は数年に及ぶので一年中見られるが、夏場は終齢幼虫として体の大きくなった個体が存在する上、餌となる蟻の活動が活発なために夏の季語となっている。常に待ちの姿勢で生きているが、餌がなくても数カ月生きていられるという。

すり鉢状の巣のこと自体を「蟻地獄」と言うこともあり、蟻地獄は脱け出せない苦しい状況のことを指す言葉にもなっている。

【蟻地獄の俳句】

蟻地獄みなゆふかげを地獄にし  山口誓子

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季語|毛虫(けむし)

三夏の季語 毛虫

毛虫焼く(けむしやく)

毛虫の幼虫の内、毛や棘に覆われているものを「毛虫」という。蝶となるものではアカタテハやヒョウモンチョウ、蛾となるものではドクガやヒトリガなどの幼虫が毛虫と呼ばれる。
毛虫の中には毒を持ったものも存在し、毒針毛に触れるとかゆみを生じたりなどする。これら危険な毛虫には、ドクガ、ヒトリガ、カレハガ、イラガなどがある。

毛虫が見られるのは春から秋にかけてであるが、特に蛾の活動が活発になる5月頃からよく見られるようになる。人体に影響を与え植物を食する毛虫は、昔から積極的に駆除されてきたが、古くは棒の先に油をしみこませた布を巻き付け、それに火をつけてあぶり殺したりした。これを「毛虫焼く」という。

【毛虫の俳句】

毛虫焼く火のめらめらと美しき  木下夕爾

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季語|氷室(ひむろ)

晩夏の季語 氷室

氷室氷を夏まで貯えておく室のことで、山陰の洞穴を利用したり穴を掘ったりした中に、真冬に採取した氷を納め、上に茅などを保冷のために敷きつめる。ここで保管された氷は、旧暦四月一日から九月末日まで天皇に供せられ、これを「氷室御調(ひむろのみつぎ)」と呼んでいた。平城京へ献氷していた氷室神社は、現在も奈良市にある。
日本書紀の仁徳天皇六十二年条には、皇子である額田大中彦が山上より発見した窟について尋ねると、氷室だという回答を得たという話が載る。その氷を天皇に献上すると喜ばれたので、毎年冬季に仕込むようになったという。

氷室がある山は冷涼であるため、桜の開花が遅れる。これを「氷室の桜」として夏の季語にする。
謡曲には、丹波国の氷室山を舞台にした「氷室」の演目がある。

【氷室の俳句】

水の奥氷室尋ぬる柳哉  松尾芭蕉

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季語|簟(たかむしろ)

三夏の季語 

竹席(ちくせき)・竹筵(たけむしろ)

簟細く割った竹を編んだ敷物のこと。ひんやりとした触感があるため、夏場の寝床に使ったりなどする。俳諧歳時記栞草(1851年)に「簟は竹席也。竹を以て席(むしろ)とす」とある。

【簟の俳句】

簟五尺四方の世界哉  正岡子規

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