季語|鷹(たか)

三冬の季語 

鷲(わし)

鷹の俳句と季語(生写四十八鷹白鷹五葉のまつ)鷲も鷹も、タカ目タカ科に属し、一般には大きめのものを鷲、小さめのものを鷹と呼んでいる。ただし、イヌワシと並ぶほどの大きさを持つクマタカも鷹と呼ばれるのを考えると、鷹斑模様がはっきりと出るものを「タカ」とすることの方が正しいか。
日本で有名なのは、体の大きい順に、イヌワシ、クマタカ、オオタカ、ハイタカであり、普通に「鷹」と言った場合は「オオタカ」を指す。成長すると肩羽が青みがかることから、「オオタカ」は、「アオタカ」の転訛と考えられている。
その他、日本で見られるタカ科の鳥に、トビ、ミサゴ、ノスリ、サシバ、ツミなどがある。似た形状を持つ猛禽類にハヤブサがあるが、こちらはハヤブサ目ハヤブサ科ハヤブサ属に分類され、近年の研究ではスズメに近い種類だと考えられている。

オオタカをはじめとする鷹は、古くから鷹狩に使われており、埴輪にも鷹匠と見られるものがある。仁徳紀には、百済で倶知(くち)と呼ばれる鷹が、罠にかかった話があり、調教した後、皮の縄を足につけ、尾に鈴をつけて鷹狩をしたとある。
万葉の時代、大伴家持は鷹を愛でていたと見られ、

矢形尾の真白の鷹をやどに据ゑ 掻き撫で見つつ飼はくしよしも

の歌が万葉集に載る。
高いところを飛ぶから「タカ」になったという語源説がある。古くから親しまれてきた鳥だけあって、慣用句になったものもいくつかあり、「鵜の目鷹の目」「鳶が鷹を生む」「能ある鷹は爪を隠す」「一富士二鷹三茄子」などがある。また、政治的分類で強硬派をタカ派と呼び、ハト派と対を成す。

春と秋にはタカの渡りが観測されるが、運が良ければ、多くの鷹が竜巻状に上昇していく鷹柱というものが見られる。芭蕉の句で有名な愛知県の伊良湖岬は、タカの渡りで有名なポイントで、秋にはサシバの鷹柱がよく観測されるという。

【鷹の俳句】

鷹一つ見つけてうれし伊良古崎  松尾芭蕉
かの鷹に風となづけて飼ひ殺す  正木ゆう子

【夢紡ぎの宿 月の渚】

伊良湖岬の先端にある全室露天風呂付、オーシャンビューの人気宿。月の美しさが売りであるが、運が良ければ部屋からタカの渡りも観測できる。楽天トラベル・お客さまが評価する「泊まってよかったランキング」全国1位にも輝いた実績。

季語|短日(たんじつ)

三冬の季語 短日

日短(ひみじか)

短日の俳句と季語日没が早くなるに従い、昼の時間が短く感じられる冬。冬至を境に、昼の時間は次第に長くなってくるものの、東京では1月下旬になってようやく、日没時間が17時をまわる。
春は日永、夏は短夜、秋は夜長の季語がそれぞれにある。

【短日の俳句】

妻よ我が短日の頬燃ゆるかな  石田波郷

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季語|枯草(かれくさ・こそう)

三冬の季語 枯草

草枯る(くさかる)

枯草の俳句と季語「草枯(くさかれ)」は秋のことを言うが、枯草は冬の季語になる。俳諧歳時記栞草に「枯草の露」は、秋之部に分類され、「枯野・枯草は冬なれども、露をむすびては秋なり」とある。


▶ 関連季語 秋草(秋)

【枯草の俳句】

枯草原白猫何を尋ねゆくや  石田波郷
枯草の一すぢ指にまきてはとく  横山白虹

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季語|柳(やなぎ)

晩春の季語 

風見草(かざみぐさ)・遊び草(あそびぐさ)

柳の俳句と季語日本で柳と言えば、主にシダレヤナギを指す。これは中国原産で、奈良時代に渡来した。雌雄の区分があり、日本で見られるもののほとんどは雄株。落葉性で、秋の終わりに一気に葉が散る。春には、葉をつけて、雌株は柳絮という綿毛を生じて実を飛散させる。

河畔に多く見られるのは、柳が水気の多い土地を好むことと、洪水で流されたものが茎伏せで繁殖したためである。また、生命力が強いことから、水害防止に水際に植えられてきた結果でもある。有名な「銀座の柳」も、同時に植えられた桜や松が、水害で枯死した結果残ったと言われている。
このようにシダレヤナギは、古くから街路樹として用いられてきた。これは、悪鬼を遠ざけるために植えられていた長安がモデルとなっており、長安を模して街づくりが行われた名残でもある。明治以降、桜がより好まれるようになるまで、街路樹と言えば柳であり、柳を取り上げた句も数多い。
しかし日本では、いつしか、シダレヤナギの枝を伝って霊が降りてくると言われるようになった。一般には、その佇まいが幽霊を連想させるからだと言われている。

ヤナギの漢字表記には「柳」と「楊」があり、枝が垂れ下がるシダレヤナギには「柳」、枝が立ち上がる種類には「楊」の字を当てる。万葉集では両方使われているが、明確な区分がなされているかは定かでない。次の歌は作者不詳の東歌。

楊奈疑こそ伐れば生えすれ世の人の 恋に死なむをいかにせよとぞ

「ヤナギ」の語源は「矢の木」であり、むかしは柳で矢が作られていた。

【柳の俳句】

ほんのりと日のあたりたる柳哉  志太野坡

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季語|枯野(かれの)

三冬の季語 枯野

枯れ野(かれの)

枯野の俳句と季語草木の枯れはてて荒涼とした原野は、郷愁を誘う。「枯野」の句で最も有名なのは、事実上の芭蕉の辞世とも言われる「旅に病んで夢は枯れ野をかけめぐる」だろう。芭蕉があこがれた西行には、

朽ちもせぬその名ばかりをとどめおきて 枯野の薄かたみにぞ見る

という中将実方を弔った歌がある。「奥の細道」の道中で笠島に入った芭蕉は、同じように中将実方の塚を訪ねようとしたが、雨がひどくて疲れもあって、遠くから眺めたと記している。

古代において「枯野」と言えば船の名である。古事記(仁徳記)と日本書紀(応仁紀)と、記述に違いは見られるが、いずれも枯野という名の優れた船があったことが書かれている。そして、その船が使えなくなった時、塩を焼いて、焼け残りで琴を作ったとある。その時に、

枯野を塩に焼き其が余り琴に作り掻き弾くや 由良の門の門中の海石に振れ立つ浸漬の木のさやさや

という歌が歌われている。日本書紀の記述を辿れば、枯野は伊豆の軽野(狩野)から贈られた船だと想像できる。
この船名の枯野は恐らく「狩野」の転訛だと思われるが、本来「枯」は、「刈」「狩」に通じる言葉である。

【枯野の俳句】

旅に病んで夢は枯れ野をかけめぐる  松尾芭蕉
吾が影の吹かれて長き枯れ野かな  夏目漱石

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季語|草の穂(くさのほ)

三秋の季語 草の穂

草の絮(くさのわた)穂草(ほくさ)

草の穂の俳句と季語イネ科やカヤツリグサ科の中の「草」と呼ばれる雑草は、秋に穂を出すものが多い。その穂は花であり実となるが、やがて綿状になって飛散するものもある。綿の中には種子が含まれ、翌年発芽して勢力を伸ばす。

【草の穂の俳句】

草の穂の埃やあれもこれも過ぎ  加藤楸邨
穂草立つ墳も刈田も雨の音  水原秋桜子

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季語|瀧(たき)

三夏の季語 

滝(たき)瀑布(ばくふ)

瀧の俳句と季語国土地理院の定義によると、瀧とは、「流水が急激に落下する場所で落差が5メートル以上、常時水が流れているもの」。形状によって分類がなされており、直瀑や分岐瀑、段瀑、海岸瀑などがある。日本三大名瀑として有名な瀧もあるが、那智滝・華厳滝の2瀑以外は、袋田の滝や白糸の滝が挙げられるなど、定まっていない。

瀧が夏の季語となったのは、近世になってからだと言われている。芭蕉に「しばらくは瀧に籠るや夏の初め」があり、瀧から涼を連想させることはあり、「夏」とゆるく結びついていた。俳諧歳時記栞草では、瀧のそばに造る殿舎を「滝殿」として夏之部六月に分類している。実際に、梅雨や台風の影響で最も水量が多くなり、瀧の力が最大になるのは夏季であり、夏の季語となるのに不備はない。
因みに、水量が最小になる冬には「涸滝」の季語がある。

万葉集にも多くの「瀧」が詠まれているが、この頃には、急流を「瀧」と表現した形跡がある。大石蓑麻呂は、安芸国の長門島で

石走る瀧もとどろに鳴く蝉の 声をし聞けば都し思ほゆ

と歌っている。「たき」の語源も、急流を指す「たぎつせ」、つまり「滾る」であると言われている。
また、万葉集には瀧を垂水(たるみ)と呼んだ歌も掲載されており、こちらの方が、現在の「瀧」を指すのではないかと言われている。いずれも「石走る」の枕詞を伴う。
その内の一首、詠み人知らずのこの歌、

命をし幸くよけむと石走る 垂水の水をむすびて飲みつ

のように、瀧の水には霊力があると信じられており、瀧の水を飲んで若返ったという伝説も各地に残る。
「後漢書」党錮伝に、黄河上流にある竜門を登りきった鯉は竜になるという。「鯉の瀧登り」の語源である。

【瀧の俳句】

瀧落ちて群青世界とどろけり  水原秋桜子
酒のみに語らんかゝる瀧の花  松尾芭蕉

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季語|雪女(ゆきおんな)

晩冬の季語 雪女

雪女郎(ゆきじょろう)

雪女の俳句と季語(東錦絵)雪の妖怪で、「ユキムスメ」「ユキオンバ」「ユキオナゴ」などと呼ばれることも。「宗祇諸国物語」(西村市郎右衛門:1685年)には、宗祇の越後滞在時に雪女に遭遇したとの記述がある。その時の雪女は、背丈1丈(約3メートル)、二十歳たらずの色白の美女だったとのこと。春先に雪女はおかしいだろうと宗祇が言うと、花や木の葉が散り時に美しいのと同じようなものだとの返答を得た。

雪女の伝説は、日本各地に残り、いずれも哀調を帯びる。代表的なものには、氷柱が雪女になったというのがあり、嫁にした男が風呂に入れると消えてしまったという伝説がある。
また、雪女は人間の精気を奪うとも言われ、雪女の呼びかけに対して返事をしないと、谷底へ突き落されるとも、凍死させられるともいう。吹雪の晩に子供(雪ん子)を抱いて立つ雪女に子守を頼まれると、その子はどんどん重くなり、終いに雪に埋もれて凍死する。

小泉八雲の怪談「雪女」は、西多摩郡調布村の伝承をもとにしたもの。雪の晩に雪女に殺されなかった樵が、知らずに雪女と結婚し、その正体を知ってしまう物語である。

【雪女の俳句】

雪女この世の人は嘘を言う  蝦名石蔵
雪女こちふりむいてゐたともいふ  長谷川素逝



『中古』耳なし芳一・雪女—八雲怪談傑作集 (講談社 青い鳥文庫)
5388円(税込/送料別)
カード利用可・海外配送不可・翌日配送不可
「初版発行日」1992/06/15 「著者」小泉 八雲 (著) 「出版社」講談社
【KSC】

季語|寒木瓜(かんぼけ)

晩冬の季語 寒木瓜

冬の木瓜(ふゆのぼけ)

寒木瓜の俳句と季語木瓜の花は春の季語になるが、11月頃から花を咲かせる品種もあり、寒木瓜と呼ぶ。品種には「かんちどり」「かんさらさ」「しののめ」「べにぼたん」などがある。

▶ 関連季語 木瓜の花(春)

【寒木瓜の俳句】

寒木瓜のほとりにつもる月日かな  加藤楸邨

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季語|立春(りっしゅん)

初春の季語 立春

春立つ(はるたつ)春来る(はるくる)春となる(はるとなる)

立春の俳句と季語二十四節気の第1。2月4日ころから2月20日ころの雨水の前日までであるが、一般的にはその初日をいう。冬至と春分の中間であり、季節の決まりごとは、この日が起点となる。立春とは言え、この頃が一年で最も寒さが厳しい。立春を境に、「寒中見舞い」は「余寒見舞い」に切り替わる。
立春は、必ずしも旧暦1月1日ではなく、立春が朔と重ならない場合は、年内に立春が2回存在するなどということもある。そのことを歌った在原元方の

年の内に春はきにけりひととせを こぞとやいはんことしとやいはん

は、古今和歌集巻第一の巻頭を飾る。

【立春の俳句】

音なしに春こそ来たれ梅一つ  黒柳召波

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