季語|柏餅(かしわもち)

初夏の季語 柏餅

柏餅の季語と俳句5月5日の端午の節句に供物とする、柏の葉で餡餅を包んだ和菓子。柏の葉は、新しい葉が茂るまでは枯れ葉が落ちないことから、子孫繁栄の願いが込められる。
柏餅は江戸時代中期に関東で生まれたもので、関西では柏の葉が入手しにくかったことから、猿捕茨(さるとりいばら)の葉で代用される。因みに、俳諧歳時記栞草(1851年)では「畿内には、さのみ用ひぬ事なり」とある。

「かしわ」は本来、ブナ科のカシワを指す「槲」の文字が当てられるべきであり、俳諧歳時記栞草にも「槲餅」とあるが、現在では専ら、ヒノキ科のコノテガシワを指す「柏」が使われるようになった。
「かしわ」の語源には、「炊葉(かしきは)」があり、元は、食べ物を包むのに使われた葉のことを指した。

【柏餅の俳句】

てのひらにのせてくださる柏餅  後藤夜半

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季語|花見酒(はなみざけ)

晩春の季語 花見酒

季語と俳句で花見酒花見の際に飲む酒を「花見酒」と言うが、特に桜を見ながら飲む酒を言う。「花見酒」の言葉自体は、酒を売って金儲けをしようとして向島に行き、結局酒を飲んだだけで終わってしまったという落語の噺から来ている。
桜の花を愛でることは平安時代から続く行事であるが、そこに酒宴が定着したのは、慶長3年3月15日(1598年4月20日)に豊臣秀吉が醍醐寺で開催した「醍醐の花見」だと言われている。

花札では、「菊に盃」と「桜に幔幕」の二枚の札が揃った時、「花見酒」という。

【花見酒の俳句】

むさし野やつよう出てきた花見酒  井原西鶴

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季語|狐火(きつねび)

三冬の季語 狐火

狐火の俳句と季語「狐火」とは、火の気のないところに現れる怪火をいう。「鬼火」と同じものと捉えられがちであるが、「鬼火」は信仰に基づいて語られることが多いのに対し、「狐火」は人を惑わすものとして捉えられることが多い。
リン化水素が燃えて発する炎と考えられることがあり、「燐火」と呼ばれる。また、光の異常屈折によって発生するとも説明される。通常は夏場に発生するものであるが、「狐火」が冬の季語となるのは、「狐」が冬の季語となることや、大晦日の夜に関八州の狐が集まり行列をなしたという「王子の狐火」の伝承の影響と見られる。

伝承では、「狐火」とは狐の口から吐き出される松明のような色をした怪火で、一列に並んで現れる。ついたり消えたりする炎で、近付くと消えてしまうという。

【狐火の俳句】

狐火や髑髏に雨のたまる夜に  与謝蕪村
狐火を信じ男を信ぜざる  富安風生

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季語|マスク(ますく)

三冬の季語 マスク

季語と俳句とマスク「マスク」は、「覆うもの」を表す英語「mask」からきている。この「mask」の語源は、仮面などを表すイタリア語「maschera」、あるいは幽霊を表すラテン語「mascus」にあるという説がある。

マスクにも、スポーツなどで使う特殊マスクの他、医療用や産業用、家庭用などがあるが、俳句で「マスク」と言う場合は家庭用を指し、空気中に存在する有害物質を防御する役割と、自らが持つ病原体を他者に移さない役割を期待されている。
また、顔を覆うことで防寒や保湿の役割も果たす。そのために、寒くて感染症が流行りやすい冬の季語として定着したが、現代では花粉症対策として用いる機会が増え、むしろ春の方がマスク人口が多い傾向にある。さらには新型コロナウィルスの蔓延により、年中手放せない必須アイテムともなった。それでも、俳句で「マスク」を用いる場合、「冬」を念頭に置かなければならない。

マスクの歴史を見ると、17世紀にヨーロッパでペストが流行した時、医師は、防御用に鳥のくちばしに似た仮面を着けたと言われている。日本では、明治初期に炭鉱などで粉塵除けに用いられたものが現代のマスクにつながるものであり、1918年のスペイン風邪で、防疫用として注目を集めるようになった。当時のマスクは、金網に布を貼り付けたような構造をしており、炭鉱などで使用されていたものだったために、汚れの目立たない黒が一般的なものであった。1950年にはガーゼマスクが登場し、主役となったが、現在では使い捨ての不織布マスクが多く用いられている。
新型コロナウィルスの流行で、効用やファッション面などがクローズアップされ、様々な進化が継続中である。

【マスクの俳句】

マスクして我と汝でありしかな  高浜虚子

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季語|綿虫(わたむし)

初冬の季語 綿虫

大綿(おおわた)雪蛍(ゆきほたる)雪虫(ゆきむし)雪婆(ゆきばんば)

綿虫の俳句と季語アブラムシ科の昆虫で、白腺物質を分泌するものの通称。リンゴの害虫として知られるリンゴワタムシや、ワタアブラムシ、トドノネオオワタムシなどがある。
暖かい時期には単為生殖を行うが、越冬前に翅を持った成虫が現れ、交尾する。その、ふわふわと飛ぶ様が小雪のように見える。

春の季語となる「雪虫」もあるが、こちらは、初春の雪上に見られるセッケイカワゲラである。

【綿虫の俳句】

大綿の骸草の香したりけり  荒井和昭

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季語|咳(せき)

三冬の季語 

咳く(しわぶく)

咳の俳句と季語「咳き(しわぶき)」ともいう。気道に侵入した異物を吐き出す防御反応が「咳」であり、体温が下がって免疫力が低下する冬場には、咳をすることが多くなる。また、乾燥しやすい冬場には、喉の粘液が薄くなり、咳が出やすい。
咳には、インフルエンザや新型コロナなどの病原体によるものや、喘息、アトピーによるものなど、様々な要因がある。また、その要因によって、痰のからまった咳になったり、乾いた咳になったりする。痰のからまった咳は下気道の病気、乾いた咳は上気道の病気を疑う必要がある。

【咳の俳句】

咳の子のなぞなぞあそびきりもなや  中村汀女
咳をしても一人  尾崎放哉

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季語|鰭酒(ひれざけ)

三冬の季語 鰭酒

季語と俳句と鰭酒河豚などの鰭を火で炙って、燗酒の中に入れたもの。琥珀色になり、独特のコクが出て香ばしい。
米の供給不足で三倍増醸清酒(三増酒)が出回った戦時中、その不味さを消すために考案された飲み方である。当時とは比べものにならないくらい美味い日本酒が出回る現在でも、日本酒の人気の飲み方として定着している。

ちなみに河豚の本場の下関では、河豚の刺身を燗酒の中に入れることがあり、これを「身酒」という。これも冬の季語である。

【鰭酒の俳句】

鰭酒や逢へば昔の物語  高浜年尾



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季語|雪見酒(ゆきみざけ)

晩冬の季語 雪見酒

雪見酒の俳句と季語雪を見ながら酒を飲むこと。「雪見の宴」は古くから日本にある風習で、「十訓抄」(1252年)には、白河院の雪見に「雪見酒」の記述が見られる。
雪を愛でながら盃を傾けるというのは、燗ができる日本酒ならではの特殊な楽しみ方で、昨今では、湯につかりながら雪見酒ができるということを売りにしている温泉旅館もある。

【雪見酒の俳句】

雪見酒一とくちふくむほがひかな  飯田蛇笏

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季語|寒造(かんづくり)

晩冬の季語 寒造

寒造の俳句と季語「寒造」とは、12月から2月頃に造られる日本酒の仕込み方法である。現在では、一年を通じて日本酒を醸造する「四季醸造」に相対する言葉として用いられることがある。
かつての酒は四季それぞれに造られ、冬場につくられるものを「寒酒」といった。貯蔵方法が改善され、日持ちする酒が造られ始める中で、1667年に伊丹で、「寒造り」が確立された。1673年には、酒の腐敗による米の無駄遣いなどを防止するために、幕府によって「寒造り令」が発令されて、酒造りは冬場に行われるものとなった。これは、農閑期を利用した杜氏集団が形成されることにつながったとも言われている。

【寒造の俳句】

奥深きその情けこそ寒づくり  西山宗因
並蔵はひびきの灘や寒作り  宝井其角

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季語|霜柱(しもばしら)

三冬の季語 霜柱

霜柱の俳句と季語地中の水分が毛管現象によって地表で柱状に凍結したものを「霜柱」と呼び、数センチの高さの氷柱になることもある。地中の水が凍ってできたものであり、水蒸気が昇華したとは異なる。
かたい土では発生せず、関東ローム層は霜柱をよく生じることで有名である。耕地によく生じるが、土が持ち上げられて植物が浮き上がる「霜崩れ」の被害につながる。
「新撰和歌六帖」(1243年)に藤原光俊の和歌が載る。

谷ふかみ岩屋にたてる霜柱 たれ冬籠るすみかなるらん

シソ科の植物に「シモバシラ」があるが、秋に花をつける植物で、枯れた茎に霜柱ができることからこの名がついた。

【霜柱の俳句】

霜柱はがねのこゑをはなちけり  石原八束

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