俳句

季語|稲の花(いねのはな)

初秋の季語 稲の花

稲の花イネ科イネ属イネは、「」で三秋の季語になるが、「稲の花」だと初秋の季語。品種によってバラツキはあるが、8月頃に穂が出て花を咲かせる。花は頴花(えいか)と呼び、ひとつの穂に100個ほどついている。頴花の開花時間は午前中の10時頃から12時頃と短く、穂先から順に開花していき、ひとつの穂の開花期間は1週間ほどである。
風媒花ではあるが、栽培種ではほとんどが自家受粉する。受粉を確実にするため、開花期間に田圃に入ってはならない。

【稲の花の俳句】

おだやかに戻る暑さや稲の花  木下夕爾

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季語|鳥兜(とりかぶと)

仲秋の季語 鳥兜

鳥頭(とりかぶと)

鳥兜キンポウゲ科トリカブト属の植物の総称で、ヤマトリカブト・ホソバトリカブトなど、日本には約30種が自生している。栽培種もあり、平地から高山まで比較的普通に見られる植物で、葉はヨモギとよく間違えられる。7月から10月頃に花をつける。
全草に毒性アルカロイド(アコニチン等)を含み、ドクウツギやドクゼリとともに、日本三大有毒植物の一つに数え上げられる。トリカブトに含まれるアコニチンの致死量は約5gであるが、葉を数グラム食べるだけで数十分で全身が痺れ、呼吸不全になって死亡することもあるという。解毒剤はないため、中毒時は胃洗浄を行う。
毒性は強いが漢方として利用することがあり、根を烏頭(うず)とか附子(ぶし)と呼んで生薬にし、鎮痛などに用いる。ちなみに、醜い者を「ブス」と呼ぶことがあるが、附子中毒で顔がゆがんだ状態を言ったものだとする説がある。
語源は、花の形が舞楽などで用いられる鳥兜に似ているところにある。

【鳥兜の俳句】

今生は病む生なりき鳥頭  石田波郷

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季語|茗荷の花(みょうがのはな)

初秋の季語 茗荷の花

秋茗荷(あきみょうが)

茗荷の花ショウガ科ショウガ属ミョウガは、花および若芽が食用となり、一般的には花穂を単に「茗荷」と呼ぶ。この「茗荷」は、蕾の塊のようなものである。因みに花穂が開花する前のものは「茗荷の子」と呼んで夏の季語になる。
茗荷の花の季節は7月から10月で、植え付ける時期によって、夏茗荷と呼ばれるものと秋茗荷と呼ばれるものに分かれる。秋茗荷の方が赤っぽくなり、一般的には美味いと言われる。

東アジア原産で、日本へはかなり古い時代に中国から渡来したと考えられている。魏志倭人伝に蘘荷(じょうか)として出ており、日本では古くから栽培も行われていたと考えられているが、現在のところ食用で栽培されているのは日本だけである。
釈迦の弟子に、自分の名前すら忘れてしまう者がおり、釈迦は名を書いた旗を荷わせたという。その者の死後、墓から生えてきた草に「名荷」と名付けたという。根拠はないが、「食べると物忘れがひどくなる」と言われている。
武士は「冥加」に掛けて、茗荷紋を使用したという。

【茗荷の花の俳句】

つぎつぎと茗荷の花の出て白き  高野素十

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季語|蓼の花(たでのはな)

初秋の季語 蓼の花

蓼の穂(たでのほ)・穂蓼(ほたで)

蓼の花タデ科イヌタデ属の植物全般を一般的には「タデ」と呼ぶ。しかし、「蓼食う虫も好きずき」でいう蓼はヤナギタデのことであり、「蓼」で夏の季語となる。
通常は、7月から10月頃に咲くヤナギタデの花を「蓼の花」と呼んで秋の季語にする。よく見かけるイヌタデの花も「蓼の花」として差し支えないが、「赤まんま」と呼んで区別することが多い。
ヤナギタデは、日本全国の水田や湿地に生育し、葉が柳に似ることから名がついた。葉には強い辛みがあり、刺し身のつまにしたりする。

万葉集には「穂蓼」の和歌が2首あり、平群朝臣には

童ども草はな刈りそ八穂蓼を 穂積の朝臣が腋草を刈れ

がある。これは、穂積の朝臣の腋臭をからかった歌で、「八穂蓼を」は「穂積」に掛かる枕詞である。因みに「八穂蓼」はヤナギタデのことである。

【蓼の花の俳句】

二三日なまけごころや蓼の花  鈴木真砂女

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季語|吾亦紅(われもこう)

仲秋の季語 吾亦紅

吾亦紅バラ科ワレモコウ属ワレモコウは、北海道から九州までの草地に自生し、7月から10月頃に花弁のない花を、花穂の上から下へと順に開花させていく。開花したてはピンクであるが、やがて赤褐色になる(画像の花穂の下部は、咲いたばかりでピンク色をしている)。根は乾燥させて地楡(ちゆ)という生薬にする。
「吾木香」「我毛紅」「我毛香」「我妹紅」とも書く。語源に定説はないが、「吾もまた紅なり」と吾亦紅が言ったというおとぎ話や、木香に似た香りがするために「吾(われ)木香」と言ったという説などがある。
源氏物語の第四十二帖「匂宮」に登場し、「ものげなきわれもかう」と表現される。「ものげなき」とは、「みすぼらしい」などの意味がある。

【吾亦紅の俳句】

吾亦紅ぽつんぽつんと気ままなる  細見綾子

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季語|煙草の花(たばこのはな)

三秋の季語 煙草の花

花煙草(はなたばこ)

煙草の花ナス科タバコ属タバコは南アメリカ原産で、栽培種は一年草として扱われるが、元は多年草である。7月から9月頃に花をつけるが、花が咲く前の6月から8月頃に、葉を利用するために収穫するため、花を見ることは稀である。
インディオによって栽培され用いられていた煙草が、1492年10月のコロンブスの上陸によって、はじめて西洋に知られるようになった。16世紀初めに、西インド諸島を制圧したスペイン人が、喫煙習慣をヨーロッパに持ち込んだ。日本へは、1543年の鉄砲の伝来とともにポルトガル人によって喫煙習慣が伝えられたとされるが、煙草の種子が伝わったのは1601年である。長崎県平戸市に「日本最初たばこ種子渡来之地」の碑がある。その後1605年に、長崎で初めて煙草が植えられた。
現在では健康に悪影響があるとされる煙草であるが、ヨーロッパに渡来した当初は万能薬と見る向きもあった。
「たばこ」の語源は、スペイン語やポルトガル語の「tabaco(tabacco)」で、インディオが用いた喫煙具のことだという説がある。

【煙草の花の俳句】

花たばこ空に明日あり便りまつ  角川源義

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季語|鬱金の花(うこんのはな)

初秋の季語 鬱金の花

鬱金の花ショウガ科ウコン属ウコンは、インド原産の多年草で7月から9月頃に花をつける。別名に「きぞめぐさ」がある。日本へは十六世紀に渡来した。
本来の「鬱金」は秋ウコンとか赤ウコンと呼ばれるもので、春ウコン(黄ウコン・姜黄)や夏ウコン(紫ウコン・白ウコン)は同属別種である。因みに中国では春ウコンを「鬱金」とし、日本で鬱金とするものは姜黄(きょうおう)と呼ぶ。
鬱金はターメリックの名でも知られる。根茎には、肝臓に良いとされるクルクミンが含まれ、生薬にしたり、スパイスや黄色い染料にしたりして用いる。

【鬱金の花の俳句】

時雨馳せうこんの花のさかりなる  大野林火

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季語|白粉花(おしろいばな)

仲秋の季語 白粉花

白粉の花(おしろいのはな)・白粉草(おしろいぐさ)・夕化粧(ゆうげしょう)

白粉花オシロイバナ科オシロイバナ属オシロイバナはメキシコ原産で、江戸時代初期に渡来。夕方4時ころから咲き始めるため、英語では「フォーオクロック」と呼ぶ。
7月から9月頃に赤・白・黄色の花を朝まで開き、次から次へと咲いていく。一つの株から異なる色の花が咲くものもある。なお、花弁は退化しており、花弁のように見えるのは萼である。寒さには弱いため、日本では冬には枯れることが普通である。
花が萎むと黒くて丸い実をつけ、この実を割ると白い粉が採れるために「白粉花(おしろいばな)」と呼ばれるようになった。俳諧歳時記栞草(1851年)には秋之部八月に分類され、「これを採て婦人の面に塗。光沢、鉛粉(おしろい)に優れり」とあり、江戸時代には白粉として実用化されていたことが分かる。現代では、子供がおしろいに見立てて遊ぶことが多い。また、花の奥の蜜を吸って遊んだりもする。

「夕化粧」の別名もある。分類学上では、月見草の仲間にアカバナ科マツヨイグサ属ユウゲショウがあるが、こちらは通常「赤花夕化粧」と呼んで区別する。

【白粉花の俳句】

おしろいは妹のものよ俗な花  正岡子規

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季語|撫子(なでしこ)

初秋の季語 撫子

大和撫子(やまとなでしこ)

撫子ナデシコ科ナデシコ属の総称であるが、通常はカワラナデシコを「撫子」と呼ぶ。7月から10月頃に花をつけるカワラナデシコは、本州以西に自生し、「大和撫子」の異称もある。秋の七草の一つである。
盛夏の花が秋にも残ることから、古くは撫子を常夏と呼んだが、現在では、中国から渡来したセキチクの園芸品種「トコナツ」を「常夏」として、夏の季語とする。

万葉集には26首歌われ、山上憶良の和歌で七種の花として秋の七草に定着する。ただ、夏雑歌に分類されるものがあれば秋相聞に分類されるものもあり、古くから季節が曖昧にされる花であった。大伴家持は

我が宿のなでしこの花盛りなり 手折りて一目見せむ子もがも

など、12首の撫子の和歌を万葉集に載せている。なお、撫子の語源は「撫でし子」にあると言われ、和歌も「撫でし子」に掛けて愛おしい者を歌うことが多い。
源氏物語の第二十六帖「常夏」には、

なでしこのとこなつかしき色を見ば もとの垣根を人や尋ねむ

の和歌があり、ここから巻名が取られている。

俳諧歳時記栞草(1851年)では、「瞿麦(なでしこ)」として夏之部五月に分類され、「草花譜」の引用で「単弁なるものを石竹(せきちく)と名づく。千弁なるものを洛陽花(らくやうくわ)と名づく…」とある。また、「剪紅紗(のうぜん)に似たるものを瞿麦とし、切又なきものを石竹とす…」ともある。石竹は中国由来のセキチクのことで、現代でも夏の季語として扱われるが、この当時、「撫子」との明確な区分はなされていない。江戸時代にもナデシコの夏秋問題は論議されてきたが、書物により見解は異なり、定位置を得ることはなかった。
近代に入っても、俳諧歳時記(新潮社1951年)など「撫子」を夏に分類する歳時記は残るが、江戸時代に開発されたトコナツが園芸ブームの煽りを受けて「常夏」として定着したことから、秋の七草に数え上げられる「撫子」は秋の季語にほぼ定着している。

【撫子の俳句】

かさねとは八重撫子の名成べし  河合曾良
露の世や露のなでしこ小なでしこ  小林一茶

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▶ 俳句の季節「大和撫子の季節」

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季語|鳳仙花(ほうせんか)

初秋の季語 鳳仙花

爪紅(つまくれない・つまぐれ・つまべに・つまくれ)

鳳仙花ツリフネソウ科ツリフネソウ属ホウセンカは、東南アジア原産の一年草。6月から9月頃、赤を中心に白やピンクなどの花を咲かせ、二週間くらいたって実が熟すと、触るだけで種が弾けて飛び散る。
女児が爪を染めて遊んだため、「爪紅」とも呼ばれる。沖縄民謡の「てんさぐの花」は鳳仙花のことであり、一番の歌詞は「てんさぐぬ花やちみさちにすみち親ぬゆうしぐとぅやちむにすうみり」であるが、「鳳仙花は爪先に染めて親の教訓は心に染みる」という意味である。

中国で、この花を鳳凰に見立てたため「鳳仙花」の名がつき、日本ではそれを音読みする。室町時代後期の「仙伝抄」に載ることから、16世紀以前に渡来してきたものと考えられている。

【鳳仙花の俳句】

暴れ空の暮れゐて赤し鳳仙花  富田木歩

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