俳句

季語|霜(しも)

三冬の季語 

朝霜(あさじも・あさしも)霜の花(しものはな)大霜(おおしも)強霜(つよしも)霜解(しもどけ)霜の声(しものこえ)

霜の俳句と季語物体の表面の温度が霜点より下がった時、空気中の昇華した水蒸気が、物体表面で結晶となったものを「霜」という。つまり、物体の表面に空気中の水蒸気が凍り付いたもので、地中の水分が凍った霜柱とは異なる。放射冷却現象の発生する晴れた寒い夜にできやすいが、昼間でも生じることがある。
平年の初霜の観測は、北海道では10月中、その他の地域は11月中が多いが、東京では12月20日となっている。二十四節気には霜の降り始める時期を指す「霜降」があり、10月23日頃となる。終霜は、北海道で5月、北日本で4月、その他の地域では3月、東京は2月20日となっている。

万葉集にも多く詠みこまれており、仁徳天皇の皇后・磐姫皇后は

ありつつも君をば待たむうち靡く 我が黒髪に霜の置くまでに

と歌っている。枕草子には、

冬はつとめて。雪の降りたるは言ふべきにもあらず、霜のいと白きも、またさらでもいと寒きに、火など急ぎおこして、炭持て渡るも、いとつきづきし。昼になりて、ぬるくゆるびもていけば、火桶の火も、白き灰がちになりてわろし。

とある。

【霜の俳句】

両袖に泣子やかこふ閨のしも  久村暁台
南天をこぼさぬ霜の静かさよ  正岡子規

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季語|濁り酒(にごりざけ)

仲秋の季語 濁り酒

濁酒(だくしゅ・にごりざけ)どぶろく・どびろく

濁り酒の俳句と季語 米と米麹と水を原料として発酵させて醪となるが、これを濾過していない酒を「どぶろく」と言う。酒税法では「その他の醸造酒」に分類される。なお、濁りを残して絞られた「濁り酒」の多くは、「清酒」に分類される。
「どぶろく」は、未発酵の米が含まれるために甘味を有している。自家醸造が比較的容易であるため、年中作られていた。ただし、日本酒の醸造年度が10月1日から始まるように、日本酒の兄弟のような存在である「どぶろく」の醸造もまた、秋が起点となる。
11月23日の新嘗祭では、白酒と黒酒が供されるが、白酒は白濁した濁酒である。
今では酒税法により、免許なしでの醸造が厳しく禁じられているが、自家醸造自由化運動などを経て、免許なしでも醸造できる「どぶろく特区」が、地域振興のために誕生している。

「どぶろく」の語源は、醪の混ざった状態の「濁醪(だくろう)」の転訛だと言われている。俳諧歳時記栞草には、「大和本草」の引用で「酴醿花の条下に云、本邦のは白花、千葉菊の如し。依て筑紫にて菊いばらといふ。中華には黄色なる者ありと、農政全書に記せり。故に黄色の醁(のごりざけ)を酴醿醁(どびろく)といふ。」とある。「どぶろく」は「溷六」とも書くが、これは泥酔した者を指す言葉でもある。

【濁り酒の俳句】

どぶろくにゑうて身を投ぐ大地あり  森川暁水
山里や杉の葉釣りてにごり酒  小林一茶

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季語|新米(しんまい)

晩秋の季語 新米

今年米(ことしまい)

新米の俳句と季語地域や品種によって新米の出回る時期には違いがあり、九州など7月ごろから出回るところもあるが、概ね10月頃に店頭に並ぶ。JAS法では、収穫年の年末までに精白や袋詰めがされた米を、「新米」という。
俳諧歳時記栞草では、新米は秋之部九月に分類される。

新人のことを「新米」と呼ぶが、新しい前掛けをして店頭に立っていた新人を「新前掛け」と呼び、それが「新前(しんまえ)」「しんまい」に転訛し、「新米」の文字があてられたという説がある。
食糧管理法における「新米」は、11月1日から翌年の10月31日までに収穫された米を言い、収穫した翌年の10月31日を過ぎると「古米」になる。

【新米の俳句】

新米のまだ艸の実の匂ひ哉  与謝蕪村

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季語|女郎花(おみなえし)

初秋の季語 女郎花

をみなめし

女郎花の俳句と季語(十二月ノ内葉月つき見) マツムシソウ目オミナエシ科オミナエシ属の多年生植物。沖縄以外の日本全土に分布し、日当たりの良い草地に自生している。8月から10月にかけて、数ミリの黄色い合弁花を多数つけるところから、「粟花(あわばな)」とも呼ばれる。秋の七草に数え上げられる。
姿が似ている植物に、白い花を咲かせる男郎花(おとこえし)があり、これに対応させて「女郎花」と呼ばれるようになったとされる。古くは万葉集にも歌われ、14首が知られる。中臣女郎が

をみなへし佐紀沢に生ふる花かつみ かつても知らぬ恋もするかも

と歌ったのをはじめ、「佐紀」に掛かる枕詞となる。
俳諧歳時記栞草(1851年)には秋之部七月に「女郎花(をみなへし)・荼花(をとこへし)」として立項されており、「此花を女子の艶姿にたとへて読こと、歌・俳諧ともに同じ」とある。

根は生薬となり「敗醤根」と呼ばれる。花が萎れると腐った醤油のような臭いを発するところから「敗醤(はいじょう)」とも呼ばれるが、これは本来は「男郎花」の呼び名であった。

【女郎花の俳句】

我ものに手折れば淋し女郎花  大島蓼太
女の香放ちてその名をみなへし  稲垣きくの

▶ 秋の季語になった花 見頃と名所

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季語|竹の春(たけのはる)

仲秋の季語 竹の春

竹の春の俳句と季語竹は常緑性ではあるが、四季それぞれに違った表情を見せる。
5月頃にタケノコとして現れた竹は、6月いっぱいは地上部がグングン伸びるが、それと同時に栄養分を取られた葉は、黄変して落葉する。これを竹落葉と言い、夏の季語になっている。その後、来春に向けて地下茎に栄養分をためこむために、葉を青々と茂らせる。特に秋の半ばには若葉が映え、これを竹にとっての春ととらえて「竹の春」という。

「竹の春」は、旧暦八月の異名で、俳諧歳時記栞草には「筍譜」の引用で、「竹は八月、これを小春といふ。熱去んと欲し寒来んと欲す、故に小春といふ」とある。

▶ 関連季語 竹の秋(春)

【竹の春の俳句】

おのが葉に月おぼろなり竹の春  与謝蕪村

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季語|鰯(いわし)

三秋の季語 

鰯汲む(いわしくむ)鰯売(いわしうり)

鰯の俳句と季語魚類ニシン目ニシン亜目に属する沿岸性の回遊魚で、赤身の青魚。日本では、ニシン科のマイワシ・ウルメイワシ、カタクチイワシ科のカタクチイワシの3種を指す。ただし、ウルメイワシ(潤目鰯)は、冬の季語となる。
年中水揚げされ食されるが、冬に産卵期を迎える鰯は秋が旬で、脂がのって、煮ても焼いても美味い。新鮮であれば、刺身は非常に美味。

弱って腐りやすいために「よわし」と呼ばれ、「いわし」に転訛したと考えられている。低級な魚「下魚」ととらえられ、「いやし」が転訛したとする説もある。
「鰯」の文字は国字であるが、奈良時代の長屋王邸宅跡出土木簡に既に見られる文字である。

塩鰯を焼く臭気と煙は鬼を払うと言われ、節分には、柊の小枝と焼いた鰯の頭を門口に挿す。これを「柊鰯(ひいらぎいわし)」と言い、「鰯の頭挿す」などで冬の季語となる。

【鰯の俳句】

鰯船火の粉散らして闇すすむ  山口誓子
鰯売る坂逆光に照り出さる  角川源義

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季語|蓑虫(みのむし)

三秋の季語 蓑虫

蓑虫の季語と俳句ミノガ科のガの幼虫は、口から出した糸で葉などを綴り合せ、その中に棲む。雄は羽化して巣から出るが、雌は芋虫のような姿で、一生を蓑の中で過ごす。
大きくてよく目にするものにオオミノガがあるが、オオミノガは7月頃に孵化してすぐに蓑を作り始め、蓑を背負ったまま葉を食べて大きくなる。10月頃から越冬に入り、ひとところで動かなくなる。6月頃に雄は蓑を抜け出し、蓑の中から発する雌のフェロモンに誘引されて交尾する。産卵は蓑の中で行われ、雌が死ぬとともに幼虫が蓑から這い出して来る。

秋には「蓑虫鳴く」の季語もあるが、蓑虫は鳴かない。現在では、バッタ目のカネタタキの鳴き声を聞いて「蓑虫鳴く」の季語が生まれたと考えられている。
なお、「蓑虫鳴く」と言った時、その声は「ちちよ、ちちよ(父よ、父よ)」と聞きなす。「枕草子」には、

蓑虫いとあわれなり。鬼の生みたれば、親に似てこれもおそろしき心あらむとて、親のあやしききぬ引き着せて、
「いま秋風吹かむをりぞ来むとする。待てよ」
といひおきて、逃げて往にけるも知らず、風の音を聞き知りて、八月ばかりになりぬれば、
「ちちよ、ちちよ」
とはかなげに鳴く、いみじうあはれなり。

とある。これを以て、「鬼の子」で蓑虫を指す。

【蓑虫の俳句】

蓑虫の音を聞きに来よ草の庵  松尾芭蕉

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季語|青蜜柑(あおみかん)

三秋の季語 青蜜柑

青蜜柑の俳句と季語まだ熟しきらない蜜柑の皮は濃緑色をしている。俳句で「青蜜柑」といった場合、主に青いうちに食される温州みかんを指すが、本来は糖度を上げるために摘果されるものを言った。酸っぱさが特徴の青蜜柑の露地ものは、9月下旬くらいより店頭に並ぶ。

▶ 関連季語 蜜柑(冬)

【青蜜柑の俳句】

行く秋のなほ頼もしや青蜜柑  松尾芭蕉
青蜜柑おのが青さに青ざめて  後藤比奈夫

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季語|秋の七草(あきのななくさ)

三秋の季語 秋の七草

秋の七草の俳句と季語秋を代表する草花である、撫子女郎花藤袴桔梗
春の七草に対応するが、「春の七草」は食して無病息災を祈るものであるのに対して、「秋の七草」は、その美しさを愛でるもの。
万葉集に山上憶良の和歌で

秋の野に咲きたる花を指折り かき数ふれば七種の花
萩の花 尾花 葛花 撫子の花 女郎花 また藤袴 朝顔の花

があり、これが元になっていると言われている。ここでは「朝顔の花」になっているが、古くは「朝顔」は「桔梗」のことだったと考えられている。

【秋の七草の俳句】

子の摘める秋七草の茎短か  星野立子

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季語|渡り鳥(わたりどり)

三秋の季語 渡り鳥

鳥渡る小鳥来る

渡り鳥の俳句と季語(夢二わたりどり国立国会図書館オンライン)秋に北方から渡ってくる鳥を主に指す。秋の季語となる種類の鳥になど、冬の季語となる種類の鳥に白鳥などがあるが、いずれも「渡り鳥」とすれば秋の季語となる。
また、のように、季節に従って日本国内を移動する鳥は「漂鳥」と言うが、これも「渡り鳥」の季語を用いて差し支えはない。秋に南方へ帰る時鳥なども「渡り鳥」ではあるが、その去り際は影が薄く、通常は「渡り鳥」の季語を当てはめない。ただし、燕には七十二候に「玄鳥去」があり、燕帰るで秋の季語になる。
「渡り鳥」は春に北方へ帰るが、この時は鳥帰るという。

【渡り鳥の俳句】

木曾川の今こそ光れ渡り鳥  高浜虚子
鳥わたるこきこきこきと罐切れば  秋元不死男

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