俳句

季語|渡り鳥(わたりどり)

三秋の季語 渡り鳥

鳥渡る小鳥来る

渡り鳥の俳句と季語(夢二わたりどり国立国会図書館オンライン)秋に北方から渡ってくる鳥を主に指す。秋の季語となる種類の鳥になど、冬の季語となる種類の鳥に白鳥などがあるが、いずれも「渡り鳥」とすれば秋の季語となる。
また、のように、季節に従って日本国内を移動する鳥は「漂鳥」と言うが、これも「渡り鳥」の季語を用いて差し支えはない。秋に南方へ帰る時鳥なども「渡り鳥」ではあるが、その去り際は影が薄く、通常は「渡り鳥」の季語を当てはめない。ただし、燕には七十二候に「玄鳥去」があり、燕帰るで秋の季語になる。
「渡り鳥」は春に北方へ帰るが、この時は鳥帰るという。

【渡り鳥の俳句】

木曾川の今こそ光れ渡り鳥  高浜虚子
鳥わたるこきこきこきと罐切れば  秋元不死男

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季語|啄木鳥(きつつき・たくぼくちょう・けら・けらつつき)

三秋の季語 啄木鳥

きつつきけらつつき

コゲラ(啄木鳥)キツツキ目キツツキ科に属する鳥として、アオゲラ・アカゲラ・コゲラ・ヤマゲラ・クマゲラなどが知られる。渡りをせずに森林などに生息し、木を嘴で突いて穴をあける。この木をつつくことをドラミングと言い、「木の中の虫を捕らえて餌にする」「木に穴をあけて巣にする」「コミュニケーションをとる」の、大きく分けて3つの目的がある。
求愛行動として木をつつくのは初夏にピークを迎えるが、秋は木の葉が落ちて、その姿を確認しやすい。よって、秋の季語になっている。

「キツツキ」という名の鳥は存在せず「〇〇ケラ」のような名前がついている。俳諧歳時記栞草に、「昔、玉造に天王寺を建し時、此鳥、群来て寺の軒を啄き損ず。故に寺啄(てらつつき)と名く。守屋が怨霊、鳥となりしといふ」とある。ここにある「てらつつき」が「けらつつき」に転訛し、「ケラ」と呼ぶようになったとの説がある。

【啄木鳥の俳句】

木つつきの死ねとて敲く柱かな  小林一茶

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季語|鹿(しか)

三秋の季語 鹿

雄鹿(おじか)雌声(めじか)鹿の声(しかのこえ)

鹿ウシ目シカ科シカ属ニホンジカ。日本には、エゾシカ・ホンシュウジカ・キュウシュウジカ・マゲシカ・ヤクシカ・ケラマジカ・ツシマジカの7つの亜種がある。雌雄別々に群れを形成し、9月から11月に交尾を行う。この繁殖期に発する雄の声が哀愁を帯びており、古くから和歌に歌われることが多く、秋の季語となった。
古くは、皮を意味する「か」と呼ばれていた。それに肉を表す「し」がついて、「しか」と呼ばれるようになったと言われている。また、雄を指す「兄(せ)」に「鹿(か)」がくっついて「せか」と呼ばれていたものが、転訛して「しか」になったとの説もある。

古事記の天岩戸の項には、「天の香山の真男鹿(さをしか)の肩を内抜きに抜きて、天の香山の天の波々迦を取りて、占合まかなはしめて」とあり、鹿の骨を使った太占(ふとまに)の記述がある。
万葉集には妻恋の声を歌った舒明天皇の

夕されば小倉の山に鳴く鹿の 今宵は鳴かず寝ねにけらしも

などがある。また、「紅葉に鹿」と言われるように、紅葉とともに歌われたものも多く、古今和歌集にのる

奥山に紅葉踏み分け鳴く鹿の 声聞く時ぞ秋はかなしき

などがよく知られている。

春日大社では、武甕槌命が神鹿に乗って鹿島神社からやってきたと伝わるため、神の使いとして大切にされている。宮島の鹿は、不浄を嫌って狩猟が禁止されたために増えたと言われている。

【鹿の俳句】

おれがふく笛と合はすや鹿の声  小林一茶
鹿啼てはゝその木末あれにけり  与謝蕪村

【鹿の鳴き声】
繁殖期の雄鹿の鳴き声と、雌鹿の警戒音。(YouTube 動画)

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季語|栗(くり)

晩秋の季語 

虚栗(みなしぐり)栗の実(くりのみ)丹波栗(たんばぐり)落栗(おちぐり)

栗の季語と俳句ブナ科クリ属の栗。自生する柴栗(山栗)に比べ、栽培品種(大栗)の果実は大粒。9月から10月頃に毬が割れ、中の茶色い実が現れる。通常、毬の中には3つの実が入っている。
「くり」の語源には諸説あるが、「石」を表す古語「くり」にあるとする説が有力か。

青森県の三内丸山遺跡から出土した栗のDNA分析から、縄文時代にはすでに栗の栽培が行われていたと考えられており、日本人には古くから食されてきたものである。日本書紀には、持統天皇7年に、桑や梨などとともに五穀を補助するために栽培が推奨されている。古事記には既に枕詞として「三栗」が出てくる。応神記の「蟹の歌」と「髪長比売」の項で、「中」に掛かる。
万葉集にも「栗」は3歌あるが、ひとつの長歌以外は、「三栗」として枕詞として使われている。
俳諧撰集に「虚栗」(其角1683年)があるが、これは宝井其角の「凩よ世に拾はれぬみなし栗」から来ている。虚栗を歌った土御門院の御製に、

うづもるる木の葉が下のみなしぐり かくて朽ちなん身をばをしまず

がある。
慣用句として知られるものに、「火中の栗を拾う」「桃栗三年柿八年」などがある。童謡に「大きな栗の木の下で」、昔話に「猿蟹合戦」がある。

【栗の俳句】

いがながら栗くれる人の誠かな  正岡子規

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季語|流星(りゅうせい・ながれぼし)

三秋の季語 流星

星飛ぶ(ほしとぶ)夜這星(よばいぼし)

露の俳句と季語小天体が大気に突入する時に発光する現象。通常100~150km上空で光り始める。これは、小天体自体が光って見えているのではなく、摩擦によってプラズマ化したガスが発光したものである。特に明るいものは「火球」と呼ばれることもあるが、これは季語にはならない。
流星となるものは普通、「流星物質」と呼ばれる、彗星などが放出した塵である。塵の塊のある空間が地球の公転軌道と重なった時、流星群となる。秋は、ペルセウス座流星群や、しし座流星群、オリオン座流星群が観測できる、流星の観測しやすい季節である。

枕草子に「星は、すばる。彦星。夕づつ。よばひ星、すこしをかし。尾だになからましかば、まいて」とあるが、ここに言う「よばひ星」は「尾」について言及されており、彗星のことだとの説がある。
流れ星を霊魂と見なして願をかけるキリスト教と結びつき、昭和に入って日本では、流星が消えるまでに願いを3回唱えると叶うと言われるようになった。

【流星の俳句】

星飛べり空に淵瀬のあるごとく  佐藤鬼房

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季語|轡虫(くつわむし)

初秋の季語 轡虫

がちやがちや

轡虫の俳句と季語直翅目バッタ目キリギリス科の昆虫。別名に管巻(くだまき)。本州から九州に生息する、国内最大種のバッタ。夜行性で、葛の葉を好んで食す。
雄は、7月下旬から10月にかけて「ガチャガチャ」と鳴く。馬のくつわの音に似た鳴き声を持つことから、「くつわむし」という。またそれを「ガチャガチャ」と聞きなして、「がちやがちや」ともいう。

【轡虫の俳句】

森を出て会ふ灯はまぶしくつわ虫  石田波郷

【轡虫の鳴き声】
本州・四国・九州に分布し、7月下旬から10月にかけて鳴き声を聞くことが出来る。その鳴き声は、「がちゃがちゃ」と聞きなす。(YouTube 動画)

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季語|桔梗(ききょう)

初秋の季語 桔梗

桔梗の俳句と季語(東京広尾原桔梗)キキョウ科の多年生草本植物で、日本全土に自生するが、自生株は絶滅危惧種に指定されている。秋の七草のひとつ。
6月中旬から9月にかけて花をつけ、その花は「桔梗」で秋の季語となる。花は青紫のものが普通であるが、白や桃色のものもある。つぼみが風船のように見えるため、イギリスでは「balloon flower」と呼ばれる。
根にはサポニンが多く含まれ生薬となり、鎮咳・去痰・排膿作用がある。

古くから和歌に歌われてきた花であり、万葉集にも5首あるが、いずれも「あさがお」として載る。これは、作者不詳で載る

朝顔は朝露負ひて咲くといへど 夕影にこそ咲きまさりけり

に歌われるように、朝だけでなく夕方にも咲いていること、現代に言う「朝顔」が、奈良時代末期に渡来したものと考えられていることからの通説である。
「ききょう」の名は、薬草としての漢名である「桔梗(きちこう)」からの転化である。
桔梗の花をモチーフにした「桔梗紋」は、明智光秀が用いていたことで有名である。安倍晴明が使用した五芒星は、桔梗印と呼ぶ。

【桔梗の俳句】

かたまりて咲きて桔梗の淋しさよ  久保田万太郎

▶ 秋の季語になった花 見頃と名所

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季語|冷房(れいぼう)

晩夏の季語 冷房

冷房の俳句と季語エアコンやクーラーで室内の空気を冷やすことを冷房という。ちなみにクーラーは冷却専用機器、エアコンは暖房も兼ねた機器のことである。キヤリア社を設立するウィリス・キャリアによって、冷房用機器が発明されたのは1906年。
日本における冷房は、江戸時代の1773年に、加賀藩の前田候が諸大名を接待するに当たって、雪や氷を使って客間を冷やしたことにはじまるとされる。1960年ころより、空調設備を入れるビルが増加し、1973年のオイルショックを経て空調技術も向上した。

【冷房の俳句】

冷房にゐて水母めくわが影よ  草間時彦

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季語|夕顔(ゆうがお)

晩夏の季語 夕顔

夕がほ(ゆうがお)

夕顔の俳句と季語「夕顔の実」は秋の季語であり、かんぴょうの原料となる。「夕顔」ではその花を指し、夏の季語となる。ちなみに、秋の季語となる「朝顔」はヒルガオ科サツマイモ属であるが、「夕顔」はウリ科ユウガオ属である。瓢箪は夕顔の変種である。
実の形によって、細長い「ナガユウガオ」と、丸みを帯びた「マルユウガオ」とに大別される。
夏の夕方に白い花を咲かせるところから夕顔といい、翌日の午前中まで咲いている。北アフリカまたはインドが原産地とされ、古くから日本に渡来していたと考えられている。

清少納言は、花はともかくも、鬼灯に似た実を好ましく思わず、枕草子に、

夕顔は花のかたちも朝顔に似て、言ひ続けたるにいとをかしかりぬべき花の姿に、実の有様こそいとくちをしけれ。などて、さはた生ひ出でけむ。ぬかづきといふ物のやうにだにあれかし。されどなほ夕顔といふ名ばかりはをかし。

とある。このように、かつては卑俗な地位に甘んじていたが、源氏物語で名を上げる。
源氏物語では「夕顔」の巻に、垣根の夕顔に目が留まり出会った女性との話が出てくる。夕顔は、凡河内躬恒の「心あてに折らばや折らむ初霜の 置きまどはせる白菊の花」を本歌取して和歌を贈り、それに光源氏の返歌がつく。

心あてにそれかとぞ見る白露の 光添へたる夕顔の花
寄りてこそそれかとも見めたそかれに ほのぼの見つる花の夕顔

しかし夕顔は、逢引きした某院で魔物に襲われてはかなく死んでしまう。

【夕顔の俳句】

夕貌や妹見ざる間に明けわたる  高桑闌更
夕がほや月の鏡もまたでさく  横井也有

▶ 夏の季語になった花 見頃と名所

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季語|目白(めじろ)

三秋の季語 目白

目白の季語スズメ目メジロ科メジロ属。全国に分布する留鳥。鶯色の体色で、目の周りが白い。目の周りが白いことから「めじろ」と呼ばれる。雑食だが、蜜を好む。
秋の季語にはなっているが、夏に分類する歳時記もある。俳諧歳時記栞草では、秋八月に分類され、「眼白鳥」とある。「柿を好む」とあることから、秋の季語となったものだろう。その体色から、葉の茂った夏季には見つけにくい。むしろ、新緑前の春季に、椿の蜜を吸いに来るのがよく観察される。梅の蜜も好むため、鶯と間違えられることがある。
声が美しいため、江戸時代から「鳴き合わせ」がよく行われていた。現在では鳥獣保護法により愛玩目的での捕獲・飼育が禁止されている。
和歌山県と大分県では県鳥に指定されており、大分県では「めじろん」というマスコットキャラクターも生まれている。
押し合って枝に並ぶ習性があることから、「目白押し」という慣用句がある。

【目白の俳句】

誰やらが口まねすれば目白鳴く  正岡子規

【目白の鳴き声】
「チーチー」という地鳴きもあるが、花の蜜を吸いに来るときなどは、高く可愛らしい声で鳴く。(YouTube 動画)

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