俳句

季語|雪達磨(ゆきだるま)

晩冬の季語 雪達磨

雪仏(ゆきぼとけ)

江戸名所道戯尽の雪達磨と季語雪を2つ丸めて、それぞれ頭と胴としたものを、重ねてダルマ型とする。木の枝などを使って目鼻もつける。海外にも同様のものがあり、日本語訳では「雪人」「雪男」「雪人形」などとされるが、日本のものと違って3段になっているものが普通である。

歌川広景の「江戸名所道戯尽」に雪達磨が描かれていることから、日本では、遅くとも江戸時代の終わりころには作られるようになっていた。俳諧歳時記栞草(1851年)にも、「兼三冬物」に分類されて「雪仏、雪布袋、雪達磨」が載る。それによると、新拾遺和歌集(1365年)の詞書の引用で「雪にて丈六のほとけをつくり奉りて、供養すとてよめる、云々」とある。該当するのは、釈教歌の部の瞻西上人の「いにしへの鶴の林のみゆきかと 思ひとくにそあはれなりける」の和歌の詞書である。これによると、中世の日本では、信仰の為に雪仏が作られていたと読める。ただ、俳諧歳時記栞草には「雪布袋、雪達磨、みな雪中の戯に作る也」ともあり、江戸時代後期には現代のように遊びの一環として作られていたことが分かる。

石川県白山市には、「雪だるま祭り」というものがある。
慣用句に「雪だるま式」があるが、これは、雪を転がしていくとどんどん大きくなっていくように、ものごとを進めていくにあたり、程度が激しくなっていく様をいう。

【雪達磨の俳句】

とるとしもあなた任せぞ雪仏  小林一茶
家々の灯るあはれや雪達磨  渡辺水巴

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季語|若水(わかみず)

新春の季語 若水

若井(わかい)

若水の俳句と季語古くは立春に天皇に奉じられた水のことをいったが、現在では元日の朝に初めて汲む水のことを指す。「若井」とは、若水を汲む井戸のこと。
若水には邪気を払う力があるとされ、神棚に供えた後に、飲んだり口を漱いだり食事に使用したりする。かつて多くの地方で、若水を汲むことは、年男の最初の仕事とされた。

万葉集にある「天橋も長くもがも高山も高くもがも 月夜見の持てる越水い取り来て 君に奉りてをち得てしかも」の「越水」は「変若水」とも書き「おちみず」と読む。これは、飲めば若返るといわれた霊薬で、ここにあるように月の神・ツクヨミが司ると言われた。このような信仰は世界中に存在しており、それが「若水」につながったと考えられる。
養老元年(717年)の詔に「醴泉は美泉なり。もって老を養うべし。蓋し水の精なればなり。天下に大赦して霊亀三年を改め養老元年と成すべし」とあり、養老の滝の水を若水として改元したと伝わる。
西行法師家集に、

とけそむるはつ若水の氷にて 春たつことのまつくまれぬる

の和歌がある。

【若水の俳句】

若水や冬は薬にむすびしを  志太野坡

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季語|ラグビー(らぐびー)

三冬の季語 ラグビー

ラガー(らがー)

ラグビーの俳句と季語ジェントルマンのスポーツと賞される「ラグビー(Rugby)」は、英国発祥のスポーツで、「ラガー(Rugger)」もその競技を指す言葉である。ただし「ラガー」は、日本では「ラガーマン」とともに競技者を指す言葉でもある(因みにビールのラガーの綴りは Lager であり、下面発酵で醸造されるビールのスタイル)。
「ラグビー」を漢字にすると、「闘球(とうきゅう)」になる。

1823年に、名門私立学校であるラグビー校におけるフットボールの試合中、ボールを抱えて走り出したことがラグビーの起源だとされている。その後英国では、13人制のラグビーリーグと、15人制のラグビーユニオンに分かれ、日本では1874年にイギリスの船員によって横浜で開催されたのが最初である。その後、1899年に慶応大学に赴任したクラーク教授を中心に、日本ではラグビーユニオンが普及していくことになる。

ラグビーユニオンは世界的に人気を集め、現在ではワールドカップやオリンピック(7人制)もある。また、日本ではセミプロの「ジャパンラグビートップリーグ」があり、海外には「スーパーラグビー」などのプロリーグもある。
日本で開催され、大観衆を集めたラグビーワールドカップ2019は2019年の9月20日から11月2日に行われたように、冬に限定されるスポーツというわけではない。けれども「ラグビー」が冬の季語となるのは、早明戦などの学生ラグビーが開催されてきたところに因る。「最新俳句歳事記」(1930年平凡社)には既に立項されており、1933年に山口誓子の連作があり、「ラグビー」が冬の季語として定着したとされる。近年でも、高校ラグビーや大学ラグビー・日本選手権が、年末から年始のメディアを賑わせてきた。

【ラグビーの俳句】

ラグビーのジャケツちぎれて闘へる  山口誓子
ラガー等のそのかちうたのみじかけれ  横山白虹

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季語|小正月(こしょうがつ)

新春の季語 小正月

女正月(おんなしょうがつ)

小正月の俳句と季語(五節句之内睦月)元日の大正月に対して、一月十五日を小正月という。または、十四日から十六日、あるいは十五日から二十日までを小正月と言うこともある。
日本の古代の暦は、満月となる十五日が起点であったと考えられており、現在でも農業関係の儀式が多く残り、「望粥の節供」「赤小豆粥の節供」とも言う。「女正月」と言うのは、松の内に忙しかった女性が、ようやく解放されて正月気分を味わえるところからきている。

「土佐日記」や「枕草子」に記されるように、小正月の朝には小豆粥を食べる習慣がある。赤い小豆には邪気を払う力があるとされているため、小豆粥を食べて、一年の無病息災を祈るのである。
かつては、小正月に元服の儀を行っていたことから、2000年に1月第2月曜日に変更されるまでは、1月15日に成人式が行われていた。その他、小正月に行われる行事として、「左義長」や「どんど焼き」、「粥占」などがある。

【小正月の俳句】

松とりて世ごころ樂し小正月  高井几董
衰ふや一椀おもき小正月  石田波郷

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季語|除夜(じょや)

暮(仲冬)の季語 除夜

年の夜(としのよ・としのよる)

除夜の俳句と季語1年の最後の日、12月31日の大晦日は、新しい年を迎えるために過ぎ去った日を取り除くという意味で、除日という。よって、この日の夜を除夜という。中国では「除夕」と呼ぶ。
神社では大祓の儀式があり、寺院では除夜の鐘を撞く。

【除夜の俳句】

としの夜や猫にかぶせる鬼の面  小林一茶
年の夜やめざめて仰ぐ星ひとつ  石田波郷

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季語|鰤(ぶり)

三冬の季語 

寒鰤(かんぶり)

鰤の俳句と季語スズキ目アジ科に分類される回遊性の大型肉食魚。関東では、モジャコ⇒ワカシ⇒イナダ⇒ワラサ⇒ブリ、関西では、モジャコ⇒ワカナ⇒ツバス⇒ハマチ⇒メジロ⇒ブリと名前を変える出世魚で、80cm、あるいは6㎏以上のものをブリという。最大では、全長150cm40kgのものが知られている。因みに、ツバス・ハマチは夏の季語である。
鰤の旬は、近海に回遊する産卵期前の冬。12月初旬に初鰤が出回り始め、2月頃まで鰤漁が続く。この頃に鳴る雷は鰤起しと呼び、豊漁を呼ぶと言われている。
島根県・鳥取県での漁獲量が多いが、現在では漁獲量の3倍に上る量の養殖が行われている。

「鰤」は、師走に脂が乗って旨くなる魚であることを示す和製漢字である。「ブリ」の発音は、脂が多い魚であるため、「アブラ」が転訛したものだと言われている。

【鰤の俳句】

いのちかけて待ちゐし鰤や鰤来る  上村占魚

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季語|鰤起し(ぶりおこし)

三冬の季語 鰤起し

鰤起しの俳句と季語鰤は冬を代表する魚であるが、北陸では、初鰤の季節である師走の雷を「鰤起し」と呼び、豊漁の前兆ととらえた。実際に、時化後には鰤が大漁になると言われるが、鰤起しはまた、雪を呼ぶ雷でもある。
現代では、地方を問わず、12月から1月頃に鳴る雷を概ね「鰤起し」という。

▶ 関連季語 鰤(冬)

【鰤起しの俳句】

流人墓地みな壊えてをり鰤起し  石原八束

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季語|白鳥(はくちょう)

晩冬の季語 白鳥

大白鳥(おおはくちょう)

白鳥の俳句と季語白鳥は、カモ科に属する。日本で見られるオオハクチョウやコハクチョウは、シベリアやオホーツク海沿岸で繁殖し、日本などで越冬する。コハクチョウの方が、オオハクチョウよりも列島を南下する傾向がある。公園の池で飼われている白鳥は、ヨーロッパに分布するコブハクチョウが持ち込まれたものである。
飛来地は、北海道から島根県にまで広がり、青森県の「小湊のハクチョウおよびその渡来地」は国の特別天然記念物になっている。また、新潟県の瓢湖は、白鳥の飛来によりラムサール条約に登録されている。10月から3月頃まで、その姿を見る事ができる。

古くは鵠(たづ・くぐい)と呼ばれ、古事記の垂仁天皇「本牟智和気の御子」の項に出てくる。本牟智和気は、ものを言わない御子であったが、鵠を見て初めて言葉を発したという。
また、倭建の命は亡くなった後に八尋白智鳥(やひろしろちとり)になって飛び立ったといわれ、その舞い降りた河内の国に、「白鳥の御陵」がつくられた。日本書紀では、その倭建の命の御子であった仲哀天皇が、陵の池に放つ白鳥を全国に求めた。その時、「白鳥なりといふとも、焼かば黒鳥になるべし」と言って白鳥を掠め取った蘆髪蒲見別王を、誅殺している。
万葉集には「しらとり」として2首が載るが、いずれも現代でいう白鳥を指したものではないようだ。

白鳥の飛羽山松の待ちつつぞ 我が恋ひわたるこの月ごろを  笠女郎
白鳥の鷺坂山の松蔭に 宿りて行かな夜も更けゆくを  柿本人麻呂

バレエにおいては、「白鳥の湖」がよく知られている。悪魔に白鳥にされてしまったオデットと、彼女に恋した王子の悲恋の物語である。
童話では、アンデルセンの「みにくいアヒルの子」がよく知られている。
因みに、不倫の恋を成就させようとゼウスが姿を変えたという「はくちょう座」は、夏の星座である。

【白鳥の俳句】

白鳥の音なく降りし水輪かな  上村占魚

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季語|風邪(かぜ)

三冬の季語 風邪

風邪籠(かぜごもり)感冒(かんぼう)風邪心地(かぜごこち)

風邪の俳句と季語呼吸器系の感染症による体調不良を言い、「風邪」という病名はない。原因となるウイルスの種類は、数百にのぼると言われており、細分化することが難しく、的確な治療方法も確立されてはいない。
主な症状は、くしゃみ・咳・咽頭痛・鼻水・頭痛であり、発熱を伴う。重症化しやすいインフルエンザやコロナは、風邪として扱わないことが普通である。
通常の風邪は軽症で終わることが多いが、「風邪は万病の元」と言われるように、快癒させる薬もないために素人療法が大きな病気を招くこともある。
古くから知られる民間療法は、主に、風邪に対抗する体力をつけるためのものであり、食物を用いるものが多い。主なものは、卵酒・生姜湯・葛湯などである。

【風邪の俳句】

戀猫の歸り来ぬ風邪の枕もと  久保より江

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季語|竈猫(かまどねこ)

三冬の季語 竈猫

炬燵猫(こたつねこ)かじけ猫(かじけねこ)へつつひ猫(へっついねこ)

竈猫の俳句と季語(日本風景選集)寒さに弱い猫は、冬場、暖かいところへ移動して丸まり、惰眠をむさぼっていることがよくある。竈があった昔は、火を落としたその竈の中に丸まり、灰だらけになったりしたものだ。それを「灰猫」とも呼んだ。「へっつい猫」ともいうが、「へっつい」は、落語の「へっつい幽霊」「へっつい盗人」で知られる「竈」のことである。
竈が少なくなった現代では、炬燵の中に入り込む姿がよく観察され、「炬燵猫」と呼ばれる。近年では、「炬燵猫」というテレビアニメも放映されている。
なお、「竈猫」は比較的新しい季語であり、富安風生の1934年の俳句「何もかも知つてをるなり竈猫」が高浜虚子に認められたことで、季語の地位を確立した。

俳句になった生物 ⇒ 

【竈猫の俳句】

何もかも知つてをるなり竈猫  富安風生
薄目あけ人嫌ひなり炬燵猫  松本たかし

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