投稿者: uranari
季語|甘酒(あまざけ)
三夏の季語 甘酒
米こうじと米を原料とし、粥としたものに米こうじを入れて速醸させたものを一夜酒と呼んで、古くは、夏に清酒を造れない酒造の副業とした。俳諧歳時記栞草にも「一夜酒」で「六月」に分類されており、甘酒と同事とある。
甘酒には、酒粕を原料とするものもあり、こちらは、湯に酒粕を溶いて砂糖などの甘味を加えて作る。どちらもアルコールはほとんど含まれず、現代ではソフトドリンクに分類される飲料である。
「日本書紀」には、甘酒の起源とされる天甜酒の記述がある。それによると、神吾田鹿葦津姫(コノハナサクヤヒメ)が、皇祖神を生んだ後に、卜定田の稲をもって、醸したという。おそらく口噛み酒だっただろう。
延喜式の醴酒(こさけ・れいしゅ)も一夜酒と呼ばれることがあったが、こちらは酒で醸した酒であるため、アルコール度はかなり高く、現在でいう貴醸酒のようなものだったのだろう。これを六月朔日に奉納するという。
万葉集にある山上憶良の貧窮問答歌には「糟湯酒」が登場し、これは酒粕を溶いた甘酒のようなものだと考えられている。歌の中で憶良は、「寒さの中で塩をなめながら糟湯酒をすすり、咳をしながら鼻をすする」とあるので、風邪に効くとの認識が当時からあったものと考えられる。
江戸時代に、夏の栄養ドリンクとしての地位を築いたことが今につながり、俳句では夏の季語となっている。現代では雛祭りの「白酒」にイメージを重ねることも多いが、こちらは焼酎やみりんなどを用いて時間をかけて作るもので、アルコール分も9%ほどある。
【甘酒の俳句】
甘酒にいま存命の一本箸 伊丹三樹彦
一夜酒隣の子迄来たりけり 小林一茶
季語|暮春(ぼしゅん)
晩春の季語 暮春
暮の春(くれのはる)・春暮るる(はるくるる)・晩春(ばんしゅん)
春のおわり頃を指す季語で、春の夕方を指す場合には「春の暮」を用いる。また、「暮春」「晩春」は陰暦3月の異称でもある。
季語|春の山(はるのやま)
季語|春惜しむ(はるおしむ)
季語|摘草(つみくさ)
三春の季語 摘草
春の行楽に草摘みがある。対象となるのは、蓬・土筆などの食用となるもの、紫雲英・菫・蒲公英などの花がある。食用となるものを摘む場合、「菜摘む」ともいう。
万葉集の冒頭に雄略天皇の歌で、
籠もよみ籠持ち 掘串もよみ掘串持ち この丘に菜摘ます子家告らせ 名告らさね そらみつ大和の国はおしなべてわれこそ居れ しきなべてわれこそ座せ われこそは告らめ 家をも名をも
があり、その他にも「菜摘」の歌は数首歌われており、春の行事であったことが伺える。
東洋学者の白川静は、草摘みは魂振りのためにする宗教的なものであったと指摘している。これは、七草粥を食することにもつながる。ただ、七草や若菜摘みは、「新春」が区分される現代では、新春の季語となる。
【摘草の俳句】
指先の傷やきのふの蓬摘み 能村登四郎