俳句

季語|桜鯛(さくらだい)

晩春の季語 桜鯛

桜鯛の季語俳句ハタ科の海水魚にサクラダイがあるが、季語となるのは、真鯛。
桜が花盛りの頃、瀬戸内海などの内海沿岸では、産卵のために真鯛が集まってくる。繁殖期の雌の真鯛の体色は桜色に染まり、脂がのって旨いとされる。丁度、年度初めにも時期が重なるため、「めでたい」に掛けて縁起物として扱われる。
ブランド物として知られているものには、明石の鯛、鳴門鯛などがある。産卵が終わった鯛は、体色も落ち、「麦わら鯛」という。
俳諧歳時記栞草には、春之部三月に分類され、本朝食鑑の引用で「歌書に云、春三月、さくらの花ひらきて、漁人多くこれをとる。故に桜鯛と云」とあり、併せて「夫木和歌抄」藤原為家の

ゆく春のさかひの浦のさくらだひ あかぬかたみにけふや引らん

を載せる。

【桜鯛の俳句】

桜鯛かなしき目玉くはれけり  川端茅舎

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季語|春燈(しゅんとう)

三春の季語 春燈

春の灯(はるのひ)春灯(はるともし)春の燭(はるのしょく)

季語と俳句の春燈日が伸びゆく中に明りを灯せば、明るく艶やかなイメージが広がる。和歌では、玉葉和歌集の藤原定家に

山の端の月まつ空の匂ふより 花にそむくる春のともし火

がある。
また、安住敦と大町糺が久保田万太郎を主宰として創刊した俳句誌に「春燈」があり、創刊の辞には「いくら苦しくなつても、たとへば、夕霧の中にうかぶ春の灯は、われわれにしばしの安息をあたへてくれるだらう」とある。

【春燈の俳句】

春の灯のあるひは暗くやはらかく  久保田万太郎
春燈消すやいよいよ眠れぬ夜  大野朱香

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季語|弥生(やよい)

晩春の季語 弥生

弥生の季語と俳句陰暦三月のことであるが、新暦3月の別名としても用いる。俳諧歳時記栞草に、奥儀抄の引用で「此月をやよひと云ことは、春至りて萌出たる草の、この月いよいよ生れば、いやおひ月と云を、やよひとは云也」とある。

【弥生の俳句】

終日の雨めづらしき弥生かな  伊藤信徳

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季語|仲春(ちゅうしゅん)

仲春の季語 仲春

春なかば

仲春の季語と俳句陰暦二月。啓蟄から春分まで。七十二候では、蟄虫啓戸・桃始笑・菜虫化蝶・雀始巣・桜始開・雷乃発声。

【仲春の俳句】

仲春や庭の撩乱古机  松根東洋城

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季語|春風(はるかぜ・しゅんぷう)

三春の季語 春風

春の風(はるのかぜ)

季語の春風と俳句春一番も春風であり、春風は時に恐ろしいものであるが、季語で「春風」を用いる時には、「春風駘蕩」の言葉もあるように、のどかなあたたかさが強調される。また、「風光る」などの季語もあるように、春の風は心を躍らせるものを内包している。
万葉集には「春風」として歌われた和歌が2首あり、大友家持は

春風の音にし出なばありさりて 今ならずとも君がまにまに

と歌った。

【春風の俳句】

春風にこぼれて赤し歯磨粉  正岡子規
春風や闘志抱きて丘に立つ  高浜虚子
ドア開いてゐれば出て見る春の風  稲畑汀子

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季語|日永(ひなが)

三春の季語 日永

永き日(ながきひ)永日(えいじつ)

季語と俳句で日永春の日中は、日脚がのびて長く感じる。因みに、「短夜」は夏、「夜長」は秋、「日短」は冬の季語。
東京では、12月に16時半頃に日の入りしていたものが、3月下旬には18時をまわる。

万葉集には作者不詳の和歌で、

霞立つ春の永日を奥処なく 知らぬ山路を恋ひつつか来む

がある。

▶ 関連季語 遅日(春)

【日永の俳句】

飛べそうな気がする永き日の岬  五島高資

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季語|冴返る(さえかえる)

初春の季語 冴返る

冴返るの俳句と季語春先、暖かくなり始めた頃に急に寒さが戻ることがある。「寒の戻り」と言ったり「凍返る」と言ったりもする。関連季語に「余寒」がある。
和歌に由来する季語であり、藤原為家が

さえかへり山風あるる常盤木に 降りもたまらぬ春の沫雪

と歌っている。また謡曲八島に、「思いぞ出づる昔の春 月も今宵に冴えかえり」と、義経の幽霊が現れる。

【冴返るの俳句】

三日月はそるぞ寒はさえかへる  小林一茶
人に死し鶴に生れて冴え返る  夏目漱石

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季語|引鴨(ひきがも)

初春の季語 引鴨

鴨帰る(かもかえる)行く鴨(ゆくかも)

引鴨の俳句と季語冬鳥として渡ってきたマガモなどの鴨が、春になってロシア東部から極東にかけての北方へ帰っていく様を引鴨という。地域によって違いはあるが、3月頃が渡りのピークである。
ただし、マガモなどの渡りをする種類の鴨であっても、居残るものがあり、春に見られるものを「春の鴨」「残る鴨」、夏に見られるものを「通し鴨」という。

▶ 関連季語 鴨(冬)

【引鴨の俳句】

行く鴨にまことさびしき昼の雨  加藤楸邨
のこれるは荒波にをり鴨かへる  水原秋桜子

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季語|風車(かざぐるま)

三春の季語 風車

風車売(かざぐるまうり)

季語と俳句で風車俳句での「風車」は、玩具の風車であり、「かざぐるま」として春の季語となる。ただし、キンポウゲ科に「風車」の名を持つ花があり、「風車の花」で夏の季語となる。
その歴史は古く、既に平安時代にはあったと考えられ、中国でも「風車」と書くことから、渡来してきたものと考えられる。江戸時代には、新春の遊び道具の一つとなる。江戸雑司ヶ谷の鬼子母神で参拝みやげとして売られていたものは有名で、「玄英の雑司ヶ谷詣」として喜多川歌麿の浮世絵にもなっている。

【風車の俳句】

あたたかき風がぐるぐる風車  正岡子規
峠くだる子胸にくるくる風車  加藤楸邨
風背負ひ風車売去りにけり  石原八束

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季語|蛙(かわず・かえる)

三春の季語 

初蛙(はつかわず)・殿様蛙(とのさまがえる)・赤蛙(あかがえる)・土蛙(つちがえる)

殿様蛙脊椎動物亜門・両生綱・カエル目に分類される。古称は「かわず(かはづ)」であるが、これは主にその鳴き声を愛でるカジカガエルを指す言葉である。日本に見られる蛙の代表種に、ニホンアマガエルがいるが、「雨蛙」とした場合は夏の季語となる。また、「青蛙」「ひき蛙」「牛蛙」も夏の季語である。地中で冬眠するニホンアマガエルは、3月頃から11月頃まで活動する。春の季語とした場合は、休眠から覚めて、水辺で繁殖活動を始めた頃のものとなる。

万葉集には「かはづ」として20首が登場し、厚見王に

かはづ鳴く神奈備川に影見えて 今か咲くらむ山吹の花

があるように、カジカガエルの鳴き声を愛でる。平安時代になるとアマガエルとの混同がみられるようになり、現在に至る。江戸時代になって詠まれた松尾芭蕉の「古池や~」の句は、「不易流行」の代表句と捉えられ、現在につながる俳句の端緒になったとされることがある。ちなみにカジカガエルを指す「河鹿(かじか)」は、夏の季語である。
日本では「帰る」に掛けられることがあり、「お金がかえる」として、蛙に関するものを財布の中に入れておくと、財を成すと言われる。また、「井の中の蛙大海を知らず」「蛇に睨まれた蛙」「ゆで蛙」「蛙の子は蛙」など、蛙を使った多くの言葉が生まれている。

【蛙の俳句】

古池や蛙とびこむ水の音  松尾芭蕉
やせ蛙負けるな一茶これにあり  小林一茶

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