季語|紅粉の花(べにのはな)

仲夏の季語 紅粉の花

紅藍花(べにばな)・紅花(べにばな)・紅の花(べにのはな)・末摘花(すえつむはな)

紅粉の花の俳句と季語エジプト原産、キク科ベニバナ属の一年草。末摘花(すえつむはな)とも呼ぶ、夏の季語となる花。日本には3世紀に呉から渡来してきたと考えられており、「呉藍(くれのあい)」「久礼奈為(くれない)」などと呼んだ。
染めた衣類は色落ちしやすいことから、紅花は「うつろう」「はかない」に結びつく。大伴家持が、その移ろい易さを橡と比較した和歌が、万葉集に載る。

紅はうつろふものぞ橡の なれにし来ぬになほしかめやも

紅花からとれる紅は、「紅一匁金一匁」と言われるほどに高価で、江戸時代の産地だった最上川流域を潤した。今では中国産に押され生産量は減ったものの、紅花は山形県の県花に指定されている。山形県では、紅花が咲く7月上旬に、「べにばな祭」が開催される。

紅花は、染料以外にも用途が広い。乾燥させた花は紅花(こうか)と呼ぶ、血行促進作用がある生薬にする。小町紅と呼ぶ口紅も製造された。紅花の種子を搾れば、紅花油にもなる。

【紅粉の花の俳句】

まゆはきを俤にして紅粉の花  松尾芭蕉

▶ 夏の季語になった花 見頃と名所

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季語|香水(こうすい)

三夏の季語 香水

香水の俳句と季語体臭を消すことが本来の使用目的であり、体臭が最もきつくなる夏場は、活躍の場が広がるために、夏の季語となる。

もとは宗教的用途で使われた。ギリシャには、紀元前1850年頃に香水を製造していたという工場跡地が遺っている。風呂に入ると病気になりやすいと信じられた近世ヨーロッパでは、臭い消しのために香水が重宝された。
マリリン・モンローが、寝る時にシャネルNo.5を身に着けていると答えた話は有名。

【香水の俳句】

亡き人の香水使ふたびに減る  岩田由美

▶ 俳句にインスパイアされた香水「HAIKU」



季語|鰹(かつお)

三夏の季語 

松魚(かつお)

鰹の俳句と季語(書画五拾三驛)江戸時代に初物が縁起物として珍重されたことから、現在に至るまで鰹と言えば初夏の風物詩となっている。しかし、フィリピン沖から北上を始める鰹は、3月には鹿児島を通過し、8月頃に三陸沖にまで達して南下する、日本では春から秋にかけて親しまれる魚である。
江戸時代には鎌倉沖のものが珍重され、現代では土佐沖のものが有名である。しかし、一番脂がのっているのは三陸沖に達したころのもの。脂肪を蓄えた鰹は、やがて南下を始め「戻り鰹」となる。秋口の鰹には「トロカツオ」の名もつき、初鰹より旨いとの声もある。

鰹の語源は、身が堅いことから「かたうお」にあるとされる。その身を使った鰹節は、世界一堅い食品とも言われている。
鰹の食用利用は古く、5世紀頃には干鰹が作られていたと見られ、江戸時代に現在の鰹節に近い「熊野節」が作られるようになった。

古事記の雄略天皇条に堅魚(かつを)の記述がある。それによると、天皇が河内に御幸した折、堅魚を上げて天皇の御舎のように作った家があったので、焼き払おうとした。神社建築に残る鰹木のことであるが、「カツオを上げること」は、限られた者の住居にだけ許されていたことが分かる。

▶ 関連季語 初鰹(夏)

【鰹の俳句】

鰹売いかなる人を酔はすらん  松尾芭蕉

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季語|桐の花(きりのはな)

初夏の季語 桐の花

桐咲く(きりさく)花桐(はなぎり)

桐の花の俳句と季語シソ目キリ科キリ属の落葉高木。中国原産。青桐とは異なるため、白桐とも表記する。5月から6月が花の見ごろであるため、夏の季語となる。
桐材は狂いが少なく虫も寄り付きにくいことから、高級箪笥などの材料となる。かつては、女子の誕生とともに植栽して、結婚する際に伐採し、嫁入り道具にした。

桐は、鳳凰の止まる木として神聖視された。そのため、五七の桐など、その木に咲く桐の花を模した紋が図案化され、高貴な紋章となった。
皇室では、嵯峨天皇の頃より菊の御紋に次ぐ位置づけにあり、豊臣秀吉にも下賜された。そのため、五七の桐は「政権担当者の紋章」という認識が定着し、近代になっては「日本国政府の紋章」となった。
また、大判・小判などに桐の紋が打たれていたところから転じて、「桐」は金銭を表す言葉にもなった。

桐は成長速度が早く、切ってもまたすぐに花を咲かせることから、キリの名前の由来は「切る」にあると言われる。
「ピンからキリまで」という言葉があるが、キリは花札の最後、12月の桐のことである。「これっきり」に掛けて、12月に桐の花を持ってきたと言われている。

姦通罪に問われるスキャンダルの渦中に発表された、北原白秋の第一歌集「桐の花」は、歌壇に衝撃を与えている。その中の一首に

桐の花ことにかはゆき半玉の 泣かまほしさにあゆむ雨かな

がある。

【桐の花の俳句】

暁をさへぎるものや桐の花  松瀬青々

▶ 夏の季語になった花 見頃と名所

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季語|天道虫(てんとうむし)

三夏の季語 天道虫

てんたう虫(てんとうむし)てんとむし

季語鞘翅目テントウムシ科の小型甲虫。葉の先端から飛び立つ様を、太陽に向かって飛んで行くと解し、「天道虫」と表記する。
単にテントウムシと言えば、黄赤と黒の組み合わせの豊富なバリエーションを持つナミテントウを指すが、これとは別のナナホシテントウの方が一般的なイメージを持つ。
アブラムシなどを食べる益虫として知られているが、種類によっては草食性のものもある。外敵に襲われると、強い臭いと苦味を持つ黄色い体液を出し、撃退する。
夏の季語になっているが、どちらかと言えば春に目立つ。成虫で越冬するものが冬場に発見されることもしばしばあるし、ナナホシテントウは夏眠することも知られている。

日本でも西洋でも縁起のいい昆虫とされ、英語には「マリアの遣い」という意味の「Lady bird」の呼称がある。また、テントウムシが体に止まっている時間の長さによって婚期が分かるとか、黄色いテントウムシは特別な幸運を呼ぶなどとの言い伝えがある。
その幸せを歌ったチェリッシュの「てんとう虫のサンバ」は、アルバム収録だったものがシングルカットされ、1973年に大ヒットするという幸運に恵まれている。

【天道虫の俳句】

のぼりゆく草細りゆく天道蟲  中村草田男



季語|卯の花(うのはな)

初夏の季語 卯の花

山卯木(やまうつぎ)

卯の花(ウツギ)アジサイ科ウツギ属の落葉低木にウツギがあり、5月から6月頃に白い花をつける。ウツギは「空木」と書き、茎が中空になっているところからこの名前がついた。
「卯月」に関して、十二支の4番目が「卯」であるところからきているという説があるが、十二支を使用した中国の暦では、冬至を含む月を子月とするため、卯月は旧暦の2月。そのため、卯の花が咲く頃という意味で、旧暦4月は「卯月」となったという説が有力である。

佐佐木信綱作詞の童謡「夏は来ぬ」で「卯の花の匂う垣根に~」と歌われているように、卯月は夏の始まり。卯の花は初夏を象徴する花であり、夏の季語となる。
万葉集には「卯の花」を歌ったものが24首あり、その多くに、「夏は来ぬ」で歌われるようにホトトギスが登場する。石上堅魚の

霍公鳥来鳴き響もす卯の花の 伴にや来しと問はましものを

は、ホトトギスに問いかけようとしている。卯の花と一緒に来たのかと。
また、梅雨前の長雨を「卯の花くたし」というが、これも万葉集に載る大伴家持の一首

卯の花を腐す長雨の始水に 寄る木屑なす寄らむ子もがも

からきている。ただし、八雲御抄では「春されば卯の花ぐたし我が越えし 妹が垣間は荒れにけるかも」を根拠とする。

花ことばは「謙虚」。おからのことを「卯の花」とも言うが、これはともに白色をしているところからきた。

【卯の花の俳句】

卯の花に母の写真の古りにけり  石田郷子

▶ 夏の季語になった花 見頃と名所

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季語|八十八夜(はちじゅうはちや)

晩春の季語 八十八夜

八十八夜の俳句と季語1656年の伊勢暦に記され、1685年からはじまる貞享暦に正式に採用された、日本独自の雑節のひとつ。
立春を起算日として88日目。5月上旬に当たる。「夜」がつくのは、月齢から日を数えていた太陰暦の名残とされる。
現在では「八十八夜」は「新茶の日」とされるが、八十八夜は春の季語、新茶は夏の季語である。
「八十八夜の別れ霜」などと言われるように、遅霜が発生することもある。

「八」「十」「八」の組み合わせで「米」の漢字となることから、農事の吉日。「茶摘」で歌われるように、この日に摘まれた新茶は縁起物となる。

▶ 関連季語 新茶(夏)

【八十八夜の俳句】

出流れの晩茶も八十八夜かな  正岡子規



季語|新茶(しんちゃ)

初夏の季語 新茶

新茶の俳句と季語その年の最初に生育した新芽を摘み採ってつくったお茶のことで、一番茶とも呼ばれる。新茶は二番茶や三番茶に比べて苦みが少なく、爽やかな香りがする。
新茶と言えば初夏の季語となり、5月頃のものだとされるが、現在の茶どころは静岡県や鹿児島県であり、温暖な鹿児島では4月中旬から新茶が出回る。
童謡「茶摘」で知られる八十八夜は、立春から数えて八十八日目で、5月のはじめ。八十八夜に摘み採られる茶は、不老長寿の縁起物の新茶として珍重される。因みに八十八夜は春の季語。

【新茶の俳句】

新茶の香真昼の眠気転じたり  小林一茶



季語|蚕豆(そらまめ・さんとう)

初夏の季語 蚕豆

蚕豆の俳句と季語蚕に似たさやを空に向かってつけるために、ソラマメの名がついた。空豆とも書き、野良豆・天豆・夏豆・四月豆などともいう。西南アジア原産で、イスラエルの新石器時代の遺跡からも出土。インド僧・菩提仙那が行基に贈ったとされ、日本へは8世紀ごろ渡来したと考えられている。
3月から4月にかけて白い花を咲かせ、4月から6月に収穫される。豆は、塩ゆでなどにして食す。豆菓子に「いかり豆」があるが、これは、蚕豆を揚げて塩をふったものである。

【蚕豆の俳句】

そら豆はまことに青き味したり  細見綾子

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季語|筍(たけのこ・たかんな)

初夏の季語 

竹の子(たけのこ)笋(たけのこ・たかんな)たかんな

筍の俳句と季語(下屋敷乃笋つみ)イネ科タケ亜科タケ類の若芽・筍は夏の季語。これを食す習慣は、主に中華圏のものである。しかし、日本でも古くから食されていたことが知られており、古事記にも記載がある。
それは「黄泉の国」の項。黄泉醜女(よもつしこめ)に追われた伊耶那岐(いざなぎ)が、湯津爪櫛(ゆつつまぐし)を投げ捨てたところに笋(たかむな)が生じたとある。黄泉醜女がそれを抜いて食べている間に、伊耶那岐は逃げた。
古くは、古事記に見るように「たかむな・たかんな」の表現が一般的だったが、これは「竹の菜」の転訛などと言われている。

食材としては、地上に稈が出現する間際のものを使用するのが普通。夏の季語になってはいるが、種類によって出現時期が異なる。最も代表的な孟宗竹は、3月から4月。最も美味と言われている淡竹(はちく)は、3月から5月。夏の季語に適合するものに真竹があり、これは、5月から6月にかけて出現する。

筍を題材にした和歌には、古今和歌集に載る凡河内躬恒の

今更に何生ひ出づらむ竹の子の 憂き節しげき世とは知らずや

がよく知られている。
筍の句として有名な嵐雪の「竹の子や児の歯ぐきのうつくしき」は、源氏物語「横笛」に見える薫の成長を詠んだもの。
また、古くから馴染み深い食材だけに「雨後のタケノコ」「タケノコ生活」など、慣用句も多い。

【筍の俳句】

筍や雨粒ひとつふたつ百  藤田湘子

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