俳句

季語|侘助(わびすけ)

三冬の季語 侘助

侘助ツバキ科ツバキ属の常緑低木で、椿の雑種。有楽椿(うらくつばき:別名にタロウカジャ)を基本種とするもので、葯が退化して花粉を作らない。椿は春の季語になるのに対し、侘助は11月から3月頃に咲いて、冬の季語になる。椿に比べて、花は小ぶりである。
野生種はなく、来歴ははっきりしないが、室町時代に中国から渡来した品種が関わっていると考えられている。一説ではツバキとチャノキの雑種であるとされ、「侘助」の名は、茶道と縁が深い言葉である「侘び」と「数寄」からなるとされる。基本種となる「有楽椿」の名は、織田信長の弟で茶人でもあった織田有楽斎が好んだことによると言われている。

【侘助の俳句】

侘助の咲きかはりたる別の花  富安風生

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季語|枇杷の花(びわのはな)

初冬の季語 枇杷の花

枇杷咲く(びわさく)

枇杷の花バラ科ビワ属ビワは、中国南西部原産で、四国や九州などに自生する。発掘遺物によって、弥生時代には渡来していたと考えられており、正倉院書物には食用にしていた旨の記載がある。ただし、これら野生化していたと見られる枇杷は果肉が少ない。
栽培品種は、中国では2000年以上前からあったとされるが、日本では江戸時代末期に導入されている。日本で栽培されているのは、実がやや長めの「茂木」と丸い「田中」で、この2品種で90%を超える。

「枇杷の花」は11月から12月頃に見られる、芳香がある地味な花である。果実は、「枇杷」として夏の季語になる。
「枇杷」は元は楽器の「琵琶」を指す漢字であったと言われている。5世紀頃に中国で栽培が始まると、その実の形が「琵琶」に似ており、「枇杷」に木偏がつくことから、その地位を奪い、琵琶は「琴」の一種として「琵琶」の字が当てられたという。

【枇杷の花の俳句】

枇杷咲いて長き留守なる館かな  松本たかし

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季語|八手の花(やつでのはな)

初冬の季語 八手の花

花八ツ手(はなやつで)・天狗の羽団扇(てんぐのはうちわ)

八手の花ウコギ科ヤツデ属ヤツデは、関東以西の海岸近くの山林などに自生する常緑低木で、日陰でもよく育つ。11月から12月頃に花をつける虫媒花である。葉に白い斑が入った品種など、栽培品種も開発され、庭木として利用されている。
「八手」の名は、掌を開いたような葉の形状からきている。また、その形状から「天狗の羽団扇」とも呼ばれ、魔物を追い払う力があると考えられてきた。

【八手の花の俳句】

花八ツ手まぢかき星のよく光る  石橋秀野

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季語|柊の花(ひいらぎのはな)

初冬の季語 柊の花

花柊

柊の花モクセイ科モクセイ属ヒイラギは、関東以西の山地に自生する雌雄異株の常緑小高木。半日陰を好み、11月から12月頃に、キンモクセイに似た芳香を持つ白い花を咲かせる。
「ひいらぎ」は、葉の刺に触れて痛むことをいう「疼ぐ(ひいらぐ)」が語源になっている。老木になると、葉の棘はとれて丸くなっていく。
節分には、柊の枝に鰯の頭をつけて門戸に掲げ邪気を退散させる。これは、「柊挿す」として節分(晩冬)の季語になっている。
また、古くから邪鬼の侵入を防ぐと言われ、家の表鬼門(北東)に植えられてきた。葉に棘があるため、防犯目的で生垣として植えられることも多い。
ちなみに、クリスマスに用いられる柊は、春に花を咲かせるモチノキ科のセイヨウヒイラギで、このモクセイ科のヒイラギとは別種である。
ヒイラギモクセイという品種もあるが、これはギンモクセイとヒイラギの雑種で、10月頃に花を咲かせる。

【柊の花の俳句】

柊咲くあとはこぼるるより他なく  加倉井秋を

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季語|石蕗の花(つわぶきのはな・つわのはな)

初冬の季語 石蕗の花

石蕗(つわぶき・つわ)花石蕗(はなつわぶき・はなつわ)

石蕗の花キク科ツワブキ属ツワブキは、10月から12月頃、福島県以南の海岸近くの岩場や山地などに黄色い花を咲かせる。日陰を好む常緑多年草で、葉が縮れたり、斑が入ったりする園芸品種も開発されている。
葉の形がフキに似ており、艶があることから「つやはぶき」と呼ばれ、それが転訛したとの説がある。この艶のある葉によって、潮風を浴びる海岸部でも生育することができる。
俳諧歳時記栞草(1851年)には冬之部十月に「大茎の花(つはのはな)」として立項され、「一名、山吹といふ」ともある。
九州地方では、3月から4月頃、若い葉柄を食す。島根県津和野町は石蕗が町名の由来となっており、町の花となっている。

【石蕗の花の俳句】

石蕗咲いていよいよ海の紺たしか  鈴木真砂女
沖荒れてひかり失なふ石蕗の花  柴田白葉女

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季語|茶の花(ちゃのはな)

初冬の季語 茶の花

茶の花ツバキ科ツバキ属チャノキは中国原産で、茶の原料になる。常緑樹で、樹高は10メートルに達することもあるが、栽培変種は作業性を考慮して腰ぐらいの高さに抑えて栽培される。
10月から11月頃に、椿に似た小ぶりの白い花を下向きにつける。ただ、茶葉に栄養を行きわたらせるために花芽を摘み取ってしまうため、茶畑では茶の花を目にする機会はほとんどない。

茶の渡来時期は定かではないが、奈良時代には仏教行事に使用されていることから、それ以前である。鎌倉時代になると、喫茶が習慣化されて栽培が盛んになり、逸出したものが野生化している。ただし、縄文時代の遺跡から茶の実の化石が発見されており、在来種が自生しているとの見解もある。現在飲用されている日本茶の元となるものは、1191年に栄西が中国から持ち帰った種子の子孫で、1955年に静岡県登録品種になった「やぶきた」系統が約9割を占めている。

出雲地方には「ぼてぼて茶」というものがあり、これは茶と茶の花を煮たてて、その中ににぎり飯などを入れて食するものである。
ちなみに、茶席に飾る花のことは「茶花(ちゃばな)」と呼ぶ。季語にはならないので注意が必要である。

【茶の花の俳句】

茶の花や利休が目にはよしの山  山口素堂

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季語|野菊(のぎく)

仲秋の季語 野菊

野菊(リュウノウギク)菊(キク科キク属イエギク)」といえば、中国伝来の栽培種で、野生のものはない。しかし、キク科の中にイエギクに似たものがあり、ヨメナ・リュウノウギク・シマカンギク・ノコンギク・シオンなどを、野生の菊の意で「野菊」と呼ぶ。自生種としては約350種、帰化植物としては150種があると言われている。コスモスヒマワリもキク科ではあるが、その形状の違いから、「野菊」と呼ぶことはない。

文学では、1906年1月に「ホトトギス」に発表された伊藤左千夫の小説「野菊の墓」が有名である。

【野菊の俳句】

名もしらぬ小草咲さく野菊かな  山口素堂

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季語|竜胆(りんどう・りゅうたん)

仲秋の季語 竜胆

濃竜胆(こりんどう)

竜胆リンドウ科リンドウ属の多年生植物の総称であり、エゾリンドウ・ミヤマリンドウなどがあるが、トウリンドウの変種リンドウを「竜胆」とすることが多い。本州から九州の山地に自生し、9月から10月頃の晴天時に花を開く。
葉の形が笹に似ているところから「笹竜胆」とも呼ばれ、家紋にも取り入れられている。
根は生薬のリュウタンとして胃薬になり、「竜胆」の名は、熊胆よりも苦いという意味でつけられた中国名で、「りんどう」は音読みの転訛。日本名としては「胃病み草(いやみぐさ)」がある。また「思い草」と呼ばれることもあるが、秋の季語となる南蛮煙管・女郎花・紫苑も同じ名で呼ばれることがあるので注意が必要である。

【竜胆の俳句】

濃竜胆ひたせる渓に櫛梳り  杉田久女

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季語|花畑(はなばたけ)

三秋の季語 花畑

花畠(はなばたけ)花壇(かだん)花圃(かほ)花園(はなぞの)

花畑近代俳句では、「花畑」は概ね秋の季語とする。俳諧御傘(松永貞徳1651年)では「花畠」が春に置かれ、俳諧歳時記栞草(1851年)では「花圃(はなばたけ)」「花園」が春三月に、「花畠」が秋八月に置かれている。ただし俳諧歳時記栞草に、「花圃」「花園」は「種(うう)るところ」とあり、花を植える場所を指す意で分類されている。滑稽雑談(四時堂其諺1713年)では「花壇」を秋八月に分類し、「是も草花の多時を以て、秋とするならし」とある。

「花畑」と「花園」に明確な違いはないが、「花畑」はどちらかというと作物の延長線上にあり、下を向いて咲く花がある場所。それに対して「花園」は、上を向いて咲く花がある場所を指す傾向がある。
「お花畑」という季語もあるが、これは、近代になって登山が盛んになって生まれた季語であり、その花は高山植物を指し、夏の季語となる。

【花畑の俳句】

彳めば昴が高し花畑  松本たかし

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季語|紫苑(しおん)

仲秋の季語 紫苑

鬼の醜草(おにのしこぐさ)・十五夜草(じゅうごやそう)・しおに

紫苑キク科シオン属シオンは、シベリアなどの北東アジア原産の多年草。日本では阿蘇山などに自生するが、平安時代以前に薬用として中国から持ち込まれたものが野生化したとも言われている。平安時代からは、観賞用に庭にもよく植えられており、9月から10月頃に花が咲く。
中国では「紫菀」と書く。紫の庭園というような意味になる。「思草(おもいぐさ)」の別名もあるが、南蛮煙管・女郎花・竜胆(いずれも秋の季語になる)も「思草」と呼ばれることがあるので、注意が必要である。

万葉集には大伴家持の和歌で

わすれ草わがした紐につけたれど 鬼のしこ草ことにしありけり

がある。ここでは「鬼のしこ草」を「しこのしこくさ」と読ませる。役立たずの厭わしい草という意味になり、雑草の意で用いられており、紫苑のことではないという説がある。
「俊頼髄脳」(平安時代後期)に、「忘草」と呼ばれる萱草と対比させて、「忘れぬ草」として出てくる。それによると、親を亡くした兄弟がいて、兄は親への思いを断ち切るために墓に萱草を植え、弟は親への思いを忘れないために紫苑を植えた。ある日、弟の前に墓守の鬼が出て、弟を憐れんで予知能力を授けた。故に予知夢を招くことから、紫苑は、嬉しいことがある人は植えて愛でるとよいが、嘆くことがある人は植えてはいけないと言われている。因みに鬼の醜草の語源はここにあり、「鬼の教えより」という意味で「鬼の師子草」となり、「しおに」と呼ばれるようになったという。

【紫苑の俳句】

紫苑にはいつも風あり遠く見て  山口青邨

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