カテゴリー: 季語
季語|春の暮(はるのくれ)
季語|春深し(はるふかし)
季語|巣立ち(すだち)
晩春の季語 巣立ち
初夏に分類することもある「巣立ち」。身近な鳥である雀や燕は、春から夏にかけて数度繁殖活動を行うため、巣立ちも春から夏にかけて数度ある。けれども現代では、年度替わりが含まれる日本の慣習に重ねて、「巣立ち」を春にイメージする傾向がある。
余談ではあるが、巣立ちのタイミングと生存率を調査した研究結果がある。それによると、はやく巣立ちした小鳥は、まだ成長が十分ではないために外敵などに襲われて死ぬ確率が高い。それに対して遅く巣立ちした個体は、生存率が高いという結果が示されている。
野鳥は我先に巣立つイメージがあるが、むしろ兄弟に追い出されるような形で巣立つものなのかもしれない。
季語|片栗の花(かたくりのはな)
初春の季語 片栗の花
ユリ科カタクリ属に属する50年ほど生きる多年草で、万葉集に大伴家持が歌った
もののふの八十娘子らが汲み乱ふ 寺井の上の堅香子の花
の「堅香子(かたかご)」は片栗のことだと言われている。この「かたかご」が「かたかごゆり」となり、「かたくり」に転訛したと考えられている。
旧正月の頃に花をつけるため、初百合とも呼ばれる。ただし、山地では6月頃まで花は残っている。花は普通は紫であるが、シロバナカタクリと呼ばれる白色のものもある。ニリンソウなどとともに群生をつくり、「スプリング・エフェメラル(春の妖精)」と呼ばれている。
カタクリは、春先から初夏の2か月ほどしか地上に現れず、一年の大半を土中の鱗茎として休眠する。そのため、花を咲かせるための栄養を蓄積するまでに時間がかかり、種子の発芽から花を咲かせるまでに10年近くの歳月を要する。
良く知られている片栗粉は、もともとはこの片栗の鱗茎を日干して抽出したもので、滋養など様々な薬効が知られていた。しかし採れる量が少ないため、現在ではそのほとんどがジャガイモなどから精製されており、薬効も認められない。
【片栗の花の俳句】
日をかけて咲く片栗の蔭の花 馬場移公子
季語|桜鯛(さくらだい)
晩春の季語 桜鯛
ハタ科の海水魚にサクラダイがあるが、季語となるのは、真鯛。
桜が花盛りの頃、瀬戸内海などの内海沿岸では、産卵のために真鯛が集まってくる。繁殖期の雌の真鯛の体色は桜色に染まり、脂がのって旨いとされる。丁度、年度初めにも時期が重なるため、「めでたい」に掛けて縁起物として扱われる。
ブランド物として知られているものには、明石の鯛、鳴門鯛などがある。産卵が終わった鯛は、体色も落ち、「麦わら鯛」という。
俳諧歳時記栞草には、春之部三月に分類され、本朝食鑑の引用で「歌書に云、春三月、さくらの花ひらきて、漁人多くこれをとる。故に桜鯛と云」とあり、併せて「夫木和歌抄」藤原為家の
ゆく春のさかひの浦のさくらだひ あかぬかたみにけふや引らん
を載せる。
【桜鯛の俳句】
桜鯛かなしき目玉くはれけり 川端茅舎