俳句

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向井去来 

君が手もまじるなるべし花すすき 
をととひはあの山越つ花盛り 
涼しさよ白雨ながら入日影 
こけざまにほうと抱ゆる西瓜かな 
秋風や白木の弓に弦張らん 
岩端やここにも独り月の客 
柿主や梢はちかきあらし山  (猿蓑)
なき名きく春や三年の生きわかれ  (丈艸誄)
手のうへにかなしく消る螢かな 
凩の地にも落さぬしぐれ哉 
涼しさの野山にみつる念佛哉 
振舞や下座に直る去年の雛 
賽銭も用意顔なり花の森 
猪のねに行くかたや明の月 
病中のあまりすするや冬ごもり 
手をはなつ中に落けり朧月 
霊棚の奥なつかしや親の顔 
夕すずみ疝気おこして帰りけり 
いそがしや沖のしぐれの眞帆片帆 
兄弟の顔見あはすやほととぎす 
青みたる松より花の咲きこぼれ 
梅にすずめの枝の百なり 
弓張の角さし出す月の雲 
なくなくも小さき草鞋もとめかね 
中連子中きりあくる月影に 
駒牽の木曾やいづらん三日の月 
電のかきまぜて行く闇夜かな 
應々といへどたゝくや雪のかど 
幾年の白髪も神の光りかな 
元旦や土つかふたる顔もせず 
しぐるるや紅の小袖を吹きかへし 
一畦はしばし鳴きやむ蛙哉 
馬道や庵をはなれて霜の屋根 
年の夜の鰤や鰯や三の膳 
岩端や爰にもひとり月の客 
みやこにも住みまじりけり相撲取り 
のぼり帆の淡路はなれぬ汐干かな 

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