俳句

季語|夏木立(なつこだち)

三夏の季語 夏木立

夏木(なつき)

夏木立の季語と俳句夏木立は、暑い夏の日ざしを遮る役目も果たす。「俳諧歳時記栞草」には、「新緑おひしげりたるさまを歌にもよむ也」とある。
江戸時代中期に雑俳様式の一つ「笠付(5文字の題に7・5を付けるもの)」を確立したとされる堀内雲鼓に、「夏木立」(1695年)という雑俳書がある。
与謝野晶子の「恋衣」(明治38年)に、

鎌倉や御仏なれど釈迦牟尼は 美男におわす夏木立かな

の歌が収められている。

【夏木立の俳句】

木啄も庵はやぶらず夏木立  松尾芭蕉
日のめぐみうれしからずや夏木立  堀内雲鼓

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季語|朝顔(あさがお)

初秋の季語 朝顔

牽牛花(けんぎゅうか・けんごか・あさがお)

季語(当盛十花撰・牽牛花)ヒルガオ科サツマイモ属の一年性植物。ヒマラヤ原産とも言われるがよく分かっていない。日本へは、奈良時代の遣唐使が、薬として持ち帰ったと言われており、その名が万葉集にも5首出てくる。ただし、万葉集におけるアサガオは、よみびと知らずで知られる

朝顔は朝露負ひて咲くといへ 夕影にこそ咲きまさりけり

に表れるように、夕方にも咲いていたと考えられることから、キキョウまたはムクゲだという説もあり、現代に言う朝顔は、平安時代に中国から渡来してきたとも言われている。

アサガオは「朝貌」とも書き、「朝の容貌」のことで「朝の美人」の意と言われるが、これはかつてのアサガオであるキキョウやムクゲのことを言ったものか。今に言うアサガオは、朝ごとに花を咲かせることをもって「朝顔」とする。
中国ではアサガオのことを「牽牛」と言うが、薬として高価な種を得るために、牛を引くほどの返礼をしたからだと言われている。このようにアサガオの花を「牽牛花」とも呼んでいたことから、アサガオの栽培が流行った江戸時代には織姫を指し、縁起物となった。七夕には、入谷鬼子母神に復活した朝顔市が、多くの人で賑わっている。晩夏から花をつけるが、七夕との縁から秋の季語となる。

上島鬼貫の「独ごと」(1718年)には「朝がほははかなき世のことはりをしらしめ、なさけしらぬ人すら仏にむかふ心をおこせば、しぼめる夕をこそ此花の心とやいはむ」とある。

【朝顔の俳句】

朝顔につるべとられてもらい水  加賀千代女

▶ 秋の季語になった花 見頃と名所

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季語|泡立草(あわだちそう)

三秋の季語 泡立草

背高泡立草(せいたかあわだちそう)・代萩(だいはぎ)

泡立草の俳句と季語キク科アキノキリンソウ属の多年草。日本にむかしから自生していた秋の麒麟草は、セイタカアワダチソウと同属。セイタカアワダチソウは北アメリカ原産で、日本には切り花用の観賞植物として明治時代末期に導入された。代萩とも呼ばれ、萩の代用として切り花や簾に用いる。日本の侵略的外来種ワースト100にもなり、その拡散が問題になっている。アメリカ軍の輸入物資についていた種子から広がったと見られているが、蜜源植物であることから、養蜂業者が全国に広めたとも言われている。
ハーブティーにしたり、若芽をてんぷらにするなどして利用することもある。
ブタクサとよく似ているが、ブタクサはキク科ブタクサ属。かつては花粉症の元凶と見られたこともあるが、セイタカアワダチソウの花粉は飛散しにくい。花粉症の原因となりやすいのは、ブタクサの方。

【泡立草の俳句】

操車場泡立草が押し寄せて  大島民郎

▶ 秋の季語になった花 見頃と名所

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季語|クリスマス(くりすます)

仲冬の季語 クリスマス

聖夜(せいや)降誕祭(こうたんさい)

クリスマスの俳句と季語12月25日、イエス・キリストの降誕を祝う祭り。西方教会では西暦345年には始まっていた。キリストの誕生日ではなく、冬至と結び付けられた祭りと考えられている。クリスマスは家族とともに過ごし、モミの木のクリスマスツリーの下にプレゼントを置くのが恒例行事となっている。
日本では、1552年に現在の山口市において、イエズス会が行ったのが初めてのクリスマス。以降、禁教令の影響を被っていたが、明治時代の1900年、明治屋のクリスマス商戦から広がっていった。

【クリスマスの俳句】

へろへろとワンタンすするクリスマス  秋元不死男

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季語|冬木(ふゆき・ふゆぎ)

三冬の季語 冬木

冬木の俳句と季語常緑樹、落葉樹問わず冬の樹木。冬でも落葉しないときわ木のこともまた「冬木」という。万葉集には、巨勢宿奈麻呂の

我がやどの冬木の上に降る雪を 梅の花かとうち見つるかも

の歌がある。

【冬木の俳句】

大空に伸び傾ける冬木かな  高浜虚子

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季語|水仙(すいせん)

晩冬の季語 水仙

雪中花(せっちゅうか)

水仙の俳句と季語ヒガンバナ科。地中海沿岸が原産で、中国(唐)を経由して渡来したと考えられている。福井の越前海岸をはじめ、水仙の名所が海辺に多いのは、海流に乗って漂着したものが自生したものと考えられる。「水仙」としての初出は、「下学集」(1444年)か。

ギリシャ神話には、自らの容姿に惚れたナルキッソスが、女神ネメシスにより水仙に変えられたという話があり、ナルシストの語源ともなった。「スイセン」という名は、中国での呼び名「水仙」を音読みしたもので、「水辺に咲く仙境の花」の意。欧米では「希望」の象徴とされる。

【水仙の俳句】

水仙の花のみだれや藪屋敷  広瀬惟然

▶ 冬の季語になった花 見頃と名所

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季語|金魚(きんぎょ)

三夏の季語 金魚

和金(わきん)・出目金(でめきん)

金魚フナの突然変異を利用して生まれた観賞魚。原産地は中国で、南北朝時代には既に飼育されていたとされる。日本には室町時代に伝来。延享5年(1748年)に安達喜之の「金魚養玩草」が出版されると人気を博し、金魚売りや金魚すくいなどの販売形態も成立。現在では、奈良県大和郡山市や愛知県弥富市、山形県庄内地方などが養殖地として有名。
祭の露店での金魚すくいは、夏の風物詩。よって夏の季語となる。

金魚の種類としては、「琉金」「和金」「出目金」などがある。

【金魚の俳句】

いつ死ぬる金魚と知らず美しき  高浜虚子

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季語|若鮎(わかあゆ)

晩春の季語 若鮎

上り鮎(のぼりあゆ)小鮎(こあゆ)・鮎の子(あゆのこ)

若鮎の俳句と季語冬場に海で育った稚鮎は、3月頃から川を遡上する。「若鮎」はまた、清々しい若さの比喩ともなる。

▶ 関連季語 鮎(夏)

【若鮎の俳句】

若鮎の二手になりて上りけり  正岡子規

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季語|落鮎(おちあゆ)

三秋の季語 落鮎

錆鮎(さびあゆ)秋の鮎(あきのあゆ)

落鮎の俳句と季語秋は鮎の産卵期。体は鉄錆のような色となり、川を下って産卵地である河口へと向かい、一生を終える。なお、雌の中には越冬する個体もあるという。

▶ 関連季語 鮎(夏)

【落鮎の俳句】

落ち落ちて鮎は木の葉となりにけり  前田普羅

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季語|鮎(あゆ)

三夏の季語 

年魚(ねんぎょ)・香魚(こうぎょ)

鮎の俳句と季語キュウリウオ目に分類されるアユは、成魚は川で生活し、稚魚は海で生活する。秋に川を下って河口域に産卵し、孵化して5㎝程度に育ったアユは、春に川を遡上する。石についた藻類を食べることにより独特の香りを放ち、香魚とも呼ばれる。また、一年で一生を終えることから年魚とも呼ばれる。水産資源保護の観点から、11月から5月は禁漁になる。

古くから親しまれてきた魚で、古事記の神功皇后条には、卯月上旬に筑紫の末羅県の玉島の里の小河(佐賀県唐津市の玉島川)で、「年魚」釣りを行ったとある。日本書紀にはさらに、アユを「細鱗魚」と表し、その釣りにより新羅遠征を占ったとある。このことからアユに「鮎」の字が当てられたと見られるが、奈良時代までの「鮎」は、中国同様ナマズを指す漢字だったと言われている。万葉集には8種の魚が登場するが、中でもアユは、最多の16首が詠まれている。大伴旅人を中心とした「松浦河に遊ぶ」と題された歌群には、神功皇后以来の末羅県(松浦)における鮎釣りの行事が詠み込まれている。

松浦川川の瀬光り鮎釣ると 立たせる妹が裳の裾濡れぬ

なお、アユの語源は、神前に供える食物「饗(あえ)」にあるとする説が有力。

「鮎」では、6月1日の鮎漁解禁の日を含む夏の季語となるが、「若鮎」は春の季語、「錆鮎」は秋の季語となる。

【鮎の俳句】

かくぞあれ鮎に砂かむ夜べの月  炭太祇

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