俳句

季語|竹の春(たけのはる)

仲秋の季語 竹の春

竹の春の俳句と季語竹は常緑性ではあるが、四季それぞれに違った表情を見せる。
5月頃にタケノコとして現れた竹は、6月いっぱいは地上部がグングン伸びるが、それと同時に栄養分を取られた葉は、黄変して落葉する。これを竹落葉と言い、夏の季語になっている。その後、来春に向けて地下茎に栄養分をためこむために、葉を青々と茂らせる。特に秋の半ばには若葉が映え、これを竹にとっての春ととらえて「竹の春」という。

「竹の春」は、旧暦八月の異名で、俳諧歳時記栞草には「筍譜」の引用で、「竹は八月、これを小春といふ。熱去んと欲し寒来んと欲す、故に小春といふ」とある。

▶ 関連季語 竹の秋(春)

【竹の春の俳句】

おのが葉に月おぼろなり竹の春  与謝蕪村

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季語|鰯(いわし)

三秋の季語 

鰯汲む(いわしくむ)鰯売(いわしうり)

鰯の俳句と季語魚類ニシン目ニシン亜目に属する沿岸性の回遊魚で、赤身の青魚。日本では、ニシン科のマイワシ・ウルメイワシ、カタクチイワシ科のカタクチイワシの3種を指す。ただし、ウルメイワシ(潤目鰯)は、冬の季語となる。
年中水揚げされ食されるが、冬に産卵期を迎える鰯は秋が旬で、脂がのって、煮ても焼いても美味い。新鮮であれば、刺身は非常に美味。

弱って腐りやすいために「よわし」と呼ばれ、「いわし」に転訛したと考えられている。低級な魚「下魚」ととらえられ、「いやし」が転訛したとする説もある。
「鰯」の文字は国字であるが、奈良時代の長屋王邸宅跡出土木簡に既に見られる文字である。

塩鰯を焼く臭気と煙は鬼を払うと言われ、節分には、柊の小枝と焼いた鰯の頭を門口に挿す。これを「柊鰯(ひいらぎいわし)」と言い、「鰯の頭挿す」などで冬の季語となる。

【鰯の俳句】

鰯船火の粉散らして闇すすむ  山口誓子
鰯売る坂逆光に照り出さる  角川源義

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季語|蓑虫(みのむし)

三秋の季語 蓑虫

蓑虫の季語と俳句ミノガ科のガの幼虫は、口から出した糸で葉などを綴り合せ、その中に棲む。雄は羽化して巣から出るが、雌は芋虫のような姿で、一生を蓑の中で過ごす。
大きくてよく目にするものにオオミノガがあるが、オオミノガは7月頃に孵化してすぐに蓑を作り始め、蓑を背負ったまま葉を食べて大きくなる。10月頃から越冬に入り、ひとところで動かなくなる。6月頃に雄は蓑を抜け出し、蓑の中から発する雌のフェロモンに誘引されて交尾する。産卵は蓑の中で行われ、雌が死ぬとともに幼虫が蓑から這い出して来る。

秋には「蓑虫鳴く」の季語もあるが、蓑虫は鳴かない。現在では、バッタ目のカネタタキの鳴き声を聞いて「蓑虫鳴く」の季語が生まれたと考えられている。
なお、「蓑虫鳴く」と言った時、その声は「ちちよ、ちちよ(父よ、父よ)」と聞きなす。「枕草子」には、

蓑虫いとあわれなり。鬼の生みたれば、親に似てこれもおそろしき心あらむとて、親のあやしききぬ引き着せて、
「いま秋風吹かむをりぞ来むとする。待てよ」
といひおきて、逃げて往にけるも知らず、風の音を聞き知りて、八月ばかりになりぬれば、
「ちちよ、ちちよ」
とはかなげに鳴く、いみじうあはれなり。

とある。これを以て、「鬼の子」で蓑虫を指す。

【蓑虫の俳句】

蓑虫の音を聞きに来よ草の庵  松尾芭蕉

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季語|青蜜柑(あおみかん)

三秋の季語 青蜜柑

青蜜柑の俳句と季語まだ熟しきらない蜜柑の皮は濃緑色をしている。俳句で「青蜜柑」といった場合、主に青いうちに食される温州みかんを指すが、本来は糖度を上げるために摘果されるものを言った。酸っぱさが特徴の青蜜柑の露地ものは、9月下旬くらいより店頭に並ぶ。

▶ 関連季語 蜜柑(冬)

【青蜜柑の俳句】

行く秋のなほ頼もしや青蜜柑  松尾芭蕉
青蜜柑おのが青さに青ざめて  後藤比奈夫

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季語|秋の七草(あきのななくさ)

三秋の季語 秋の七草

秋の七草の俳句と季語秋を代表する草花である、撫子女郎花藤袴桔梗
春の七草に対応するが、「春の七草」は食して無病息災を祈るものであるのに対して、「秋の七草」は、その美しさを愛でるもの。
万葉集に山上憶良の和歌で

秋の野に咲きたる花を指折り かき数ふれば七種の花
萩の花 尾花 葛花 撫子の花 女郎花 また藤袴 朝顔の花

があり、これが元になっていると言われている。ここでは「朝顔の花」になっているが、古くは「朝顔」は「桔梗」のことだったと考えられている。

【秋の七草の俳句】

子の摘める秋七草の茎短か  星野立子

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季語|渡り鳥(わたりどり)

三秋の季語 渡り鳥

鳥渡る小鳥来る

渡り鳥の俳句と季語(夢二わたりどり国立国会図書館オンライン)秋に北方から渡ってくる鳥を主に指す。秋の季語となる種類の鳥になど、冬の季語となる種類の鳥に白鳥などがあるが、いずれも「渡り鳥」とすれば秋の季語となる。
また、のように、季節に従って日本国内を移動する鳥は「漂鳥」と言うが、これも「渡り鳥」の季語を用いて差し支えはない。秋に南方へ帰る時鳥なども「渡り鳥」ではあるが、その去り際は影が薄く、通常は「渡り鳥」の季語を当てはめない。ただし、燕には七十二候に「玄鳥去」があり、燕帰るで秋の季語になる。
「渡り鳥」は春に北方へ帰るが、この時は鳥帰るという。

【渡り鳥の俳句】

木曾川の今こそ光れ渡り鳥  高浜虚子
鳥わたるこきこきこきと罐切れば  秋元不死男

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季語|啄木鳥(きつつき・たくぼくちょう・けら・けらつつき)

三秋の季語 啄木鳥

きつつきけらつつき

コゲラ(啄木鳥)キツツキ目キツツキ科に属する鳥として、アオゲラ・アカゲラ・コゲラ・ヤマゲラ・クマゲラなどが知られる。渡りをせずに森林などに生息し、木を嘴で突いて穴をあける。この木をつつくことをドラミングと言い、「木の中の虫を捕らえて餌にする」「木に穴をあけて巣にする」「コミュニケーションをとる」の、大きく分けて3つの目的がある。
求愛行動として木をつつくのは初夏にピークを迎えるが、秋は木の葉が落ちて、その姿を確認しやすい。よって、秋の季語になっている。

「キツツキ」という名の鳥は存在せず「〇〇ケラ」のような名前がついている。俳諧歳時記栞草に、「昔、玉造に天王寺を建し時、此鳥、群来て寺の軒を啄き損ず。故に寺啄(てらつつき)と名く。守屋が怨霊、鳥となりしといふ」とある。ここにある「てらつつき」が「けらつつき」に転訛し、「ケラ」と呼ぶようになったとの説がある。

【啄木鳥の俳句】

木つつきの死ねとて敲く柱かな  小林一茶

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季語|鹿(しか)

三秋の季語 鹿

雄鹿(おじか)雌声(めじか)鹿の声(しかのこえ)

鹿ウシ目シカ科シカ属ニホンジカ。日本には、エゾシカ・ホンシュウジカ・キュウシュウジカ・マゲシカ・ヤクシカ・ケラマジカ・ツシマジカの7つの亜種がある。雌雄別々に群れを形成し、9月から11月に交尾を行う。この繁殖期に発する雄の声が哀愁を帯びており、古くから和歌に歌われることが多く、秋の季語となった。
古くは、皮を意味する「か」と呼ばれていた。それに肉を表す「し」がついて、「しか」と呼ばれるようになったと言われている。また、雄を指す「兄(せ)」に「鹿(か)」がくっついて「せか」と呼ばれていたものが、転訛して「しか」になったとの説もある。

古事記の天岩戸の項には、「天の香山の真男鹿(さをしか)の肩を内抜きに抜きて、天の香山の天の波々迦を取りて、占合まかなはしめて」とあり、鹿の骨を使った太占(ふとまに)の記述がある。
万葉集には妻恋の声を歌った舒明天皇の

夕されば小倉の山に鳴く鹿の 今宵は鳴かず寝ねにけらしも

などがある。また、「紅葉に鹿」と言われるように、紅葉とともに歌われたものも多く、古今和歌集にのる

奥山に紅葉踏み分け鳴く鹿の 声聞く時ぞ秋はかなしき

などがよく知られている。

春日大社では、武甕槌命が神鹿に乗って鹿島神社からやってきたと伝わるため、神の使いとして大切にされている。宮島の鹿は、不浄を嫌って狩猟が禁止されたために増えたと言われている。

【鹿の俳句】

おれがふく笛と合はすや鹿の声  小林一茶
鹿啼てはゝその木末あれにけり  与謝蕪村

【鹿の鳴き声】
繁殖期の雄鹿の鳴き声と、雌鹿の警戒音。(YouTube 動画)

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季語|栗(くり)

晩秋の季語 

虚栗(みなしぐり)栗の実(くりのみ)丹波栗(たんばぐり)落栗(おちぐり)

栗の季語と俳句ブナ科クリ属の栗。自生する柴栗(山栗)に比べ、栽培品種(大栗)の果実は大粒。9月から10月頃に毬が割れ、中の茶色い実が現れる。通常、毬の中には3つの実が入っている。
「くり」の語源には諸説あるが、「石」を表す古語「くり」にあるとする説が有力か。

青森県の三内丸山遺跡から出土した栗のDNA分析から、縄文時代にはすでに栗の栽培が行われていたと考えられており、日本人には古くから食されてきたものである。日本書紀には、持統天皇7年に、桑や梨などとともに五穀を補助するために栽培が推奨されている。古事記には既に枕詞として「三栗」が出てくる。応神記の「蟹の歌」と「髪長比売」の項で、「中」に掛かる。
万葉集にも「栗」は3歌あるが、ひとつの長歌以外は、「三栗」として枕詞として使われている。
俳諧撰集に「虚栗」(其角1683年)があるが、これは宝井其角の「凩よ世に拾はれぬみなし栗」から来ている。虚栗を歌った土御門院の御製に、

うづもるる木の葉が下のみなしぐり かくて朽ちなん身をばをしまず

がある。
慣用句として知られるものに、「火中の栗を拾う」「桃栗三年柿八年」などがある。童謡に「大きな栗の木の下で」、昔話に「猿蟹合戦」がある。

【栗の俳句】

いがながら栗くれる人の誠かな  正岡子規

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季語|流星(りゅうせい・ながれぼし)

三秋の季語 流星

星飛ぶ(ほしとぶ)夜這星(よばいぼし)

露の俳句と季語小天体が大気に突入する時に発光する現象。通常100~150km上空で光り始める。これは、小天体自体が光って見えているのではなく、摩擦によってプラズマ化したガスが発光したものである。特に明るいものは「火球」と呼ばれることもあるが、これは季語にはならない。
流星となるものは普通、「流星物質」と呼ばれる、彗星などが放出した塵である。塵の塊のある空間が地球の公転軌道と重なった時、流星群となる。秋は、ペルセウス座流星群や、しし座流星群、オリオン座流星群が観測できる、流星の観測しやすい季節である。

枕草子に「星は、すばる。彦星。夕づつ。よばひ星、すこしをかし。尾だになからましかば、まいて」とあるが、ここに言う「よばひ星」は「尾」について言及されており、彗星のことだとの説がある。
流れ星を霊魂と見なして願をかけるキリスト教と結びつき、昭和に入って日本では、流星が消えるまでに願いを3回唱えると叶うと言われるようになった。

【流星の俳句】

星飛べり空に淵瀬のあるごとく  佐藤鬼房

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