俳句

季語|栗(くり)

晩秋の季語 

虚栗(みなしぐり)栗の実(くりのみ)丹波栗(たんばぐり)落栗(おちぐり)

栗の季語と俳句ブナ科クリ属の栗。自生する柴栗(山栗)に比べ、栽培品種(大栗)の果実は大粒。9月から10月頃に毬が割れ、中の茶色い実が現れる。通常、毬の中には3つの実が入っている。
「くり」の語源には諸説あるが、「石」を表す古語「くり」にあるとする説が有力か。

青森県の三内丸山遺跡から出土した栗のDNA分析から、縄文時代にはすでに栗の栽培が行われていたと考えられており、日本人には古くから食されてきたものである。日本書紀には、持統天皇7年に、桑や梨などとともに五穀を補助するために栽培が推奨されている。古事記には既に枕詞として「三栗」が出てくる。応神記の「蟹の歌」と「髪長比売」の項で、「中」に掛かる。
万葉集にも「栗」は3歌あるが、ひとつの長歌以外は、「三栗」として枕詞として使われている。
俳諧撰集に「虚栗」(其角1683年)があるが、これは宝井其角の「凩よ世に拾はれぬみなし栗」から来ている。虚栗を歌った土御門院の御製に、

うづもるる木の葉が下のみなしぐり かくて朽ちなん身をばをしまず

がある。
慣用句として知られるものに、「火中の栗を拾う」「桃栗三年柿八年」などがある。童謡に「大きな栗の木の下で」、昔話に「猿蟹合戦」がある。

【栗の俳句】

いがながら栗くれる人の誠かな  正岡子規

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季語|流星(りゅうせい・ながれぼし)

三秋の季語 流星

星飛ぶ(ほしとぶ)夜這星(よばいぼし)

露の俳句と季語小天体が大気に突入する時に発光する現象。通常100~150km上空で光り始める。これは、小天体自体が光って見えているのではなく、摩擦によってプラズマ化したガスが発光したものである。特に明るいものは「火球」と呼ばれることもあるが、これは季語にはならない。
流星となるものは普通、「流星物質」と呼ばれる、彗星などが放出した塵である。塵の塊のある空間が地球の公転軌道と重なった時、流星群となる。秋は、ペルセウス座流星群や、しし座流星群、オリオン座流星群が観測できる、流星の観測しやすい季節である。

枕草子に「星は、すばる。彦星。夕づつ。よばひ星、すこしをかし。尾だになからましかば、まいて」とあるが、ここに言う「よばひ星」は「尾」について言及されており、彗星のことだとの説がある。
流れ星を霊魂と見なして願をかけるキリスト教と結びつき、昭和に入って日本では、流星が消えるまでに願いを3回唱えると叶うと言われるようになった。

【流星の俳句】

星飛べり空に淵瀬のあるごとく  佐藤鬼房

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季語|轡虫(くつわむし)

初秋の季語 轡虫

がちやがちや

轡虫の俳句と季語直翅目バッタ目キリギリス科の昆虫。別名に管巻(くだまき)。本州から九州に生息する、国内最大種のバッタ。夜行性で、葛の葉を好んで食す。
雄は、7月下旬から10月にかけて「ガチャガチャ」と鳴く。馬のくつわの音に似た鳴き声を持つことから、「くつわむし」という。またそれを「ガチャガチャ」と聞きなして、「がちやがちや」ともいう。

【轡虫の俳句】

森を出て会ふ灯はまぶしくつわ虫  石田波郷

【轡虫の鳴き声】
本州・四国・九州に分布し、7月下旬から10月にかけて鳴き声を聞くことが出来る。その鳴き声は、「がちゃがちゃ」と聞きなす。(YouTube 動画)

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季語|桔梗(ききょう)

初秋の季語 桔梗

桔梗の俳句と季語(東京広尾原桔梗)キキョウ科の多年生草本植物で、日本全土に自生するが、自生株は絶滅危惧種に指定されている。秋の七草のひとつ。
6月中旬から9月にかけて花をつけ、その花は「桔梗」で秋の季語となる。花は青紫のものが普通であるが、白や桃色のものもある。つぼみが風船のように見えるため、イギリスでは「balloon flower」と呼ばれる。
根にはサポニンが多く含まれ生薬となり、鎮咳・去痰・排膿作用がある。

古くから和歌に歌われてきた花であり、万葉集にも5首あるが、いずれも「あさがお」として載る。これは、作者不詳で載る

朝顔は朝露負ひて咲くといへど 夕影にこそ咲きまさりけり

に歌われるように、朝だけでなく夕方にも咲いていること、現代に言う「朝顔」が、奈良時代末期に渡来したものと考えられていることからの通説である。
「ききょう」の名は、薬草としての漢名である「桔梗(きちこう)」からの転化である。
桔梗の花をモチーフにした「桔梗紋」は、明智光秀が用いていたことで有名である。安倍晴明が使用した五芒星は、桔梗印と呼ぶ。

【桔梗の俳句】

かたまりて咲きて桔梗の淋しさよ  久保田万太郎

▶ 秋の季語になった花 見頃と名所

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季語|冷房(れいぼう)

晩夏の季語 冷房

冷房の俳句と季語エアコンやクーラーで室内の空気を冷やすことを冷房という。ちなみにクーラーは冷却専用機器、エアコンは暖房も兼ねた機器のことである。キヤリア社を設立するウィリス・キャリアによって、冷房用機器が発明されたのは1906年。
日本における冷房は、江戸時代の1773年に、加賀藩の前田候が諸大名を接待するに当たって、雪や氷を使って客間を冷やしたことにはじまるとされる。1960年ころより、空調設備を入れるビルが増加し、1973年のオイルショックを経て空調技術も向上した。

【冷房の俳句】

冷房にゐて水母めくわが影よ  草間時彦

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季語|夕顔(ゆうがお)

晩夏の季語 夕顔

夕がほ(ゆうがお)

夕顔の俳句と季語「夕顔の実」は秋の季語であり、かんぴょうの原料となる。「夕顔」ではその花を指し、夏の季語となる。ちなみに、秋の季語となる「朝顔」はヒルガオ科サツマイモ属であるが、「夕顔」はウリ科ユウガオ属である。瓢箪は夕顔の変種である。
実の形によって、細長い「ナガユウガオ」と、丸みを帯びた「マルユウガオ」とに大別される。
夏の夕方に白い花を咲かせるところから夕顔といい、翌日の午前中まで咲いている。北アフリカまたはインドが原産地とされ、古くから日本に渡来していたと考えられている。

清少納言は、花はともかくも、鬼灯に似た実を好ましく思わず、枕草子に、

夕顔は花のかたちも朝顔に似て、言ひ続けたるにいとをかしかりぬべき花の姿に、実の有様こそいとくちをしけれ。などて、さはた生ひ出でけむ。ぬかづきといふ物のやうにだにあれかし。されどなほ夕顔といふ名ばかりはをかし。

とある。このように、かつては卑俗な地位に甘んじていたが、源氏物語で名を上げる。
源氏物語では「夕顔」の巻に、垣根の夕顔に目が留まり出会った女性との話が出てくる。夕顔は、凡河内躬恒の「心あてに折らばや折らむ初霜の 置きまどはせる白菊の花」を本歌取して和歌を贈り、それに光源氏の返歌がつく。

心あてにそれかとぞ見る白露の 光添へたる夕顔の花
寄りてこそそれかとも見めたそかれに ほのぼの見つる花の夕顔

しかし夕顔は、逢引きした某院で魔物に襲われてはかなく死んでしまう。

【夕顔の俳句】

夕貌や妹見ざる間に明けわたる  高桑闌更
夕がほや月の鏡もまたでさく  横井也有

▶ 夏の季語になった花 見頃と名所

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季語|目白(めじろ)

三秋の季語 目白

目白の季語スズメ目メジロ科メジロ属。全国に分布する留鳥。鶯色の体色で、目の周りが白い。目の周りが白いことから「めじろ」と呼ばれる。雑食だが、蜜を好む。
秋の季語にはなっているが、夏に分類する歳時記もある。俳諧歳時記栞草では、秋八月に分類され、「眼白鳥」とある。「柿を好む」とあることから、秋の季語となったものだろう。その体色から、葉の茂った夏季には見つけにくい。むしろ、新緑前の春季に、椿の蜜を吸いに来るのがよく観察される。梅の蜜も好むため、鶯と間違えられることがある。
声が美しいため、江戸時代から「鳴き合わせ」がよく行われていた。現在では鳥獣保護法により愛玩目的での捕獲・飼育が禁止されている。
和歌山県と大分県では県鳥に指定されており、大分県では「めじろん」というマスコットキャラクターも生まれている。
押し合って枝に並ぶ習性があることから、「目白押し」という慣用句がある。

【目白の俳句】

誰やらが口まねすれば目白鳴く  正岡子規

【目白の鳴き声】
「チーチー」という地鳴きもあるが、花の蜜を吸いに来るときなどは、高く可愛らしい声で鳴く。(YouTube 動画)

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季語|簾(すだれ)

三夏の季語 

葭簀(よしず)青簾(あおすだれ)日除(ひよけ)日覆(ひおおい・ひおい)

簾の俳句と季語暑さ除けで窓の外や軒先に用いる日除は、夏の風物詩である。
簾は、竹や葦などを編んだものを、吊り下げて用いる。青簾は、青竹を細く割って編まれた簾で、竹の香が立つ。葭簀は、葦を編んだものを軒先などに立て掛けて使用するもの。立簾とも言う。日覆や日除と言った場合には、布で作った覆いも含まれる。

簾の語源は、「簀垂れ」にある。中国では前漢時代に既に存在しており、中国から日本に伝わったと考えられている。
万葉集には額田王の和歌で、近江天皇を思ひてつくる歌として、

君待つとわが恋ひをればわが屋戸の 簾動かし秋の風吹く

がある。現在ではグリーンカーテンとして、植物を日除として使用することも多い。

【簾の俳句】

ほうほうと雨吹きこむや青簾  正岡子規

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季語|萍(うきくさ)

三夏の季語 

浮草(うきくさ)

萍(ウキクサ)池や水田などの水面を覆う水草で、根は水底に届かず、水面を漂う。別の呼び方に「根無草」もある。
近年大繁殖が問題となっている外来種「ホテイアオイ」なども「浮草」と呼ぶことがあるが、通常はウキクサ属に分類される「ウキクサ」をいう。5㎜ほどの小さな葉を、流れのない水面に浮かべ、夏に目立たない花をつける。「俳諧歳時記栞草」夏の部「五月」に「萍の花」があり、「白花あり」とあるが、ここにいう「萍」はスイレンの一種である「ヒツジグサ」のことだと考えられる。

万葉集のころは「浮きまなご」と呼ばれていたと考えられ、作者不詳の和歌に

解き衣の恋ひ乱れつつ浮きまなご 生きても我はあり渡るかも

がある。また、能因歌枕に「うきくさとはあだに浮きたることにたとふ」とあり、和歌の世界では「憂き」「浮く」に掛ける。古今和歌集には、壬生忠岑の和歌で

たぎつ瀬に根ざしとどめぬ浮草の 浮きたる恋も我はするかな

がある。

【萍の俳句】

雨ならず萍をさざめかすもの  富安風生

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季語|金亀虫(こがねむし)

三夏の季語 金亀虫

金亀子(こがねむし)ぶんぶん

金亀虫の俳句と季語コガネムシは黄金虫とも書き、鞘翅目コガネムシ科に属する甲虫である。同じコガネムシ科に属し、金属光沢のあるものに「カナブン」がいるが、一般に金亀虫と呼ばれているものとカナブンの生態は大きく異なる。金亀虫の頭部は丸っぽいが、カナブンの頭部は四角い。金亀虫の成虫は葉を食して生活しているが、カナブンは樹液をすする。金亀虫の幼虫は植物の根などを食す害虫であるが、カナブンは腐葉土を食して発酵させる益虫である。
俳諧歳時記栞草には「大和本草」の引用で、「五六月、草蔓に生ず。南人収て以粉に養ふ。婦人、白粉の器中に入おく。雄は緑色、光あり。雌は灰色、光なし。形状は飛蛾に似て長し。翼あり。額に両角ありて長し。六足あり。俗、玉虫といふ。」とある。

コガネムシと言えば、野口雨情作詞の童謡に「黄金虫は金持ちだ 金蔵建てた蔵建てた」と歌われるが、この童謡のコガネムシは、チャバネゴキブリのことではないかと言われている。

【金亀虫の俳句】

金亀虫擲つ闇の深さかな  高浜虚子

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